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2015年03月03日

SHADOWS IN THE NIGHT ボブ・ディランの新譜

01
SHADOWS IN THE NIGHT ボブ・ディランの新譜

SHADOWS IN THE NIGHT Bob Dylan
シャドウズ・イン・ザ・ナイト ボブ・ディラン
 (2015)

ボブ・ディランの新譜が出ました。
今年僕が初めて買った今年出た新譜がこれでした。
36作目のスタジオ録音新作であるこのアルバムは、
フランク・シナトラで知られた曲のカヴァー集です。

近年は大物による古い歌のカヴァー集がすっかり定着しましたが、
ついにボブ・ディランもか、と、一昨年までの僕は思ったことでしょう。
それでも大好きなアーティストの新譜はうれしいに違いないけれど、
正直、そりゃオリジナル曲を聴きたいけれどまあそれもありかな、
くらいの期待度で終わっていたかもしれない。
ところが、今回のボブ・ディランのカヴァー集という話には、
聴く前からかなり期待していました。

昨年、何があって変わったかといえば、ひとつはもちろん、
ボブ・ディランが札幌に来てコンサートをしてくれたこと。
もうひとつは、ボブ・ディランに関する2冊の本を読んだこと。
1冊は萩原健太の「ボブ・ディランは何を歌ってきたのか」、
もう1冊は湯浅学「ボブ・ディラン ロックの精霊」でした。

それまでの僕は、ボブ・ディランは「偉大なるソングライター」
というイメージで聴いていました。
クリスマスアルバムなど、過去にカヴァー曲だけのアルバムを
出してはいましたが、軸足はそこにあるのだろうと。

しかし、今の僕には、ボブ・ディランという人はこう映っています。
「ただ歌を歌いたい人」。
ボブ・ディランは、「ソングライター」以前に「歌手」だったのです。
歌で思いを伝えたい人、メッセージというよりは「思い」を。

曲についていえば、実はディランは当初から
「曲には限界があり、すべての曲は焼き直しに過ぎない」
という考えを持っていたことが分かりました。
特に21世紀に入ってからの曲は、有名な何かに似た曲が
散見されるようになっていて、ディランに対して
「ソングライター」としてのイメージを強く持っていた僕は、
笑うに笑えない、ディランの「才能が枯渇した」という発言は
決してジョークではなかったのかと、寂しい思いをしたものです。
しかもそうした曲をコンサートで何曲か演奏し歌っていたことで、
ディランのその考えがよく分かった気がしました。
コンサートについていえば、グレイテスト・ヒッツ的なものを
予想し期待していた僕は思惑違いだったのですが、でも、
がっかりしたかといえば決してそうではなく、目の前で
バンドを従えてギターを弾かずに歌うボブ・ディランの姿を見て、
そうかこういう人だったのかと納得して帰りました。
正直、いちばん好きなMr. Tanbourine Manは演奏して欲しかった
けれど、それはまた聴く機会があるだろうと思い直しました。

そう思えたのは、歌うことが好きな人だとよく分かったから。
70歳を超えたアーティストに対して最近は、もう最後の来日公演か
などとよく言われるようになりましたが、ボブ・ディランについては
逆に、きっとまた来日公演をしてくれるに違いないと、
確信のようなものを得ました。
ボブ・ディランにとっては、ステージで歌うのは自然なことだから。
ただ、札幌にまた来てくれるかどうかは分からないですが、
そうなったら東京に行けばいい。

やっぱりコンサートで生の姿を見ると、考え方が変わりますね。
コンサートは単なる音楽イベント以上の「体験」だと強く思います。
そして、本を読むと考えが深くなる。
僕は根っからの「本人間」「活字人間」なのだとも思いました。
そして幸いなことに、昨年の僕はそれが重なったのでした。

今回の新作、僕は楽しみでしょうがなかった。
なぜフランク・シナトラ? と、やはり最初は思いましたが、それも
「歌うこと」が好きなボブ・ディラン、世代的なこともあって、
シナトラになにがしかの影響を受けるのは当然と今は思えます。

もちろん、ディランのあの声であの歌い方だから、
昔風の堂々とした歌い方つまり「クルーナー」とはいきません。
意識もしていないと思います。
でも、そこに囚われないからこそ、曲の違う面を引き出していて、
ディランがロック的精神を体現していることがあらためて分かり、
ロック好き、ディラン好きとしてはほっとするものがあります。
そしてもちろん引き込まれる。

スタンダード系にめっぽう弱い僕、知っている曲は2曲だけでしたが、
それだけにかえって新鮮に映りました。


02 冒頭写真にと考えたけど赤い服がイメージに合わない
SHADOWS IN THE NIGHT ボブ・ディランの新譜

1曲目 I'm A Fool To Want You
最初に暗く重たい曲を持ってきたのは、はっとさせられます。
別にルールも何もないんだけど、最初は明るく楽しくのせる
という固定概念のようなものを覆されてかえって印象に残ります。
ドラムレス、ベースレス、ゆらゆらと浮かぶペダルスティールだけの中、
ディランの歌い方は、あまりにも貴方を好きなりすぎた自分を恨む、
怨念のようなものを感じます。
一方で、これは意図したことではなく自然なことなのでしょうけど、
節や旋律によっては優しさも感じられる。
そうかやはりディランは根っからの「歌手」なのだと。
曲としては昭和歌謡に通じる何かがありますが、そもそも
昭和歌謡がそうした洋楽の焼き直しの面があったから、
そういうものだというところに落ち着くかと思います。


2曲目 The Night We Called It A Day
このアルバムを印象付けているのは、Donny Herronが演奏する
ペダルスティールの音でしょうね。
そうそう、いつものバンドでチャーリー・セクストンもいますが、
基本はあくまでもペダルスティール。
2曲目にして「馬鹿者」から脱してうまくいったようで、でもそれを
決して声を大にせず、包み込むように柔らかく歌うディランがいい。
余談ですが、"Herron"とは"heron"=鷺のことですが、
鷺=湿地、湿地=南部、とイメージが頭の中でつながる、
というのは強引ですね、はい(笑)。


3曲目 Stay With Me
今回のYou-Tube映像はこの曲です。
これは素直に歌メロがいいですね。
少しずつ音が上がっていく歌メロ、声が高い部分になると、
ディランの歌声にはなんともいえぬ「かわいげ」がある。
70歳の男性でレジェンドに対してそういう言い方は失礼だと
分かっていますが、でも僕はこう表現せざるを得ない。
それだけ歌い方が身近に感じられる、ということです。
そして低音の張り切ったような声の出し方ももはや「ディラン節」。
そしてこの曲の歌い方には、クリスマスアルバムで経験したことが
そのままうまく反映されているように感じました。


4曲目 Autumn Leaves
冒頭のペダルスティールの音に、まるで落ち葉のように心がゆらめく。
ほんとうに音から映像がイメージできる。
でも、イントロは明るい音色で、最初は「枯葉」とは気付かない。
一息置いて、ディランがあの有名なフレーズを歌い出す。
月並みですが、ぞくぞくっと来ましたね。
エリック・クラプトンも近年歌っていましたが、欧米の人にとって
この曲の持つ意味の大きさがあらためて分かります。
欧米に限らずここ日本でもそうでしょうけど。
ただ、1曲目を聴いたがために、この曲でのディランの歌い方は
この曲に対するイメージよりずっと平穏に聴こえてきますが、
そこが意外というか、新しいのでしょう。


5曲目 Why Try To Change Me Now
ディランが古い曲を歌うわけですが、聴きながら、これらの曲に
ディランのルーツを求めようとしていない自分に気づきます。
それは、ルーツというより、今のディランを感じているからでしょう。
僕もディランには、いい意味でもう割り切って接しているようです。
ところで、このアルバムに対して、ローリング・ストーン誌では
「まるでディラン自身がそこにいて経験してきたようだ」と
評されたそうですが、その感覚もよく分かります。


02 元気なマーサ(別の他が元気ではないという意味ではない・・・)
SHADOWS IN THE NIGHT ボブ・ディランの新譜


6曲目 Some Enchanted Evening
「ある歓喜の夜」、つまりこのアルバムのことではないか。
歓喜の中心には歌がある。
2人で過ごしたのかもしれないし、仲間内のパーティかもしれない。
ロックの歴史を作った偉大な人であり、世界中でCDが売られる
人であるのに、まるですぐそこにいるように感じられる。
僕個人が小さな会場のライヴに行ったということもありますが、
ディランの歌の本質的なものがそこにはあると考えます。


7曲目 Full Moon And Empty Arms
スタンダードだけにどこかで耳にしたことがある可能性は
高いのですが、この曲はそれとは違う感覚がありました。
デヴィッド・リーン監督の映画『逢びき』の曲ではないか。
ということは、ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第2番か。
クラシックから歌メロを拝借する例はままありますが、
もしかしてこれもそうなのかな、いや、ただ似ているだけ?
ただ、「満月と空虚な腕」、つまり抱かれるはずの人がいない、
という内容は『逢びき』のテーマ「不倫」とも重なります。
でも、この曲の歌い方は、ひとりであることを楽しんでいる
かもしれない、と思わされる妙な明るさがあります。


8曲目 Where Are You ?
今回はディランの歌い方にばかり気持ちがゆきますが、
聴き手を決して突き放さないのもその理由だと思いました。
萩原健太さんは「個人的には絶対に付き合いたくない人」
と書いていたけれど、歌を通すと「いい人」のイメージになってしまう。
もしかして、ディラン自身、そういう自分と世の中の反応との
乖離を楽しんでいるのではないかな。
それも含め、自然なこととして受け入れている。


9曲目 What'll I Do
この2曲はイメージ的にもつながっていますね。
「君はいずこ?」から「僕はどうすればいい」となる。
既成の曲もドラマ仕立てに組み立てるのはさすが。
というか、それを期待してしまうだけかな。
こうしてみると、失恋とまではゆかなくても、恋がうまく進んでいない
状況というのは曲のモチーフとして昔から強いのだと分かります。
まあ、多くの人が実生活で感じることであり、当たり前なのでしょうけど。
それにしてもディランの歌い方は、どこか明るく楽天的で、
なるようにしかならないと達観していることを感じます。


10曲目 That Lucky Old Sun
知っている2曲のうち1曲が最後に待ち構えていました。
僕はレイ・チャールズでよく聴いてきましたが、レイの歌では、
周りに誰もいないけれど降り注ぐ日差しを浴びていると
僕は何でもできる、という前向きさをこの曲から感じます。
そしてこの曲のディランの歌い方、感動のひとこと。
派手に華々しく盛り上げるのではない、感動というのは、
それとはイコールでもないし含まれるものでもない。
歌に歌われている思いがどれだけ伝わるか、という
歌手としての基本をディランは実践してくれています。
上手いという言葉とは別の世界がある。
ボブ・ディランの歌とはそういうものでしょう。
ここまでずっと同じテンポ、同じような曲調で歌ってきても、
最後の最後に違った感慨を得られる、そこも感動の源。
聴き終わると、大きな優しさが心に残ります。




そうはいっても、このジャケット写真はやっぱり、
その路線を狙ったポーズを決めていますかね。

38分くらいしかない短いアルバムですが、この長さが絶妙。

このアルバム、一般的には夜のイメージでしょう。
実際、曲名をみても夜を表したものが多いし。
でも僕はなぜか朝によく聴き、朝に合うなあと思います。
短いので仕事に行く前に聴くこともできるし、何より
前向きに感じられるのが、朝にはいいのでしょうね。
しかしいずれにせよ、「夜の影」というタイトル、
その名の通りの曲はないのですが、人間の心模様、心のひだの
裏表を歌いたいというディランの歌への思いが伝わってきます。

正直いえば、ここまで気に入るとは予想していませんでした。
まるでボブ・ディランがいい人のように書いてしまいましたが、
僕はディランとは音楽を通してしか接することはないから、
音楽は正直である、と割り切って余計なことを考えずに聴けば
それでいいのだと思います。
それに僕は、好きになるとほめまくるタイプですからね(笑)。

ひな祭りには合わないかもしれないけれど。

最後はお約束のYou-Tube映像、Stay With Meを。



 





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Posted by guitarbird at 20:54 │ロックA-B
この記事へのコメント
ギタバさん、こんにちは。

1961年1月24日(ぽちが紀伊半島の片隅に
生れ落ちた前日やねん)にNYにたどり着いた
ディランさんがいまもこうして元気に渋いお声を
披露されてること自体に驚きつつもうれしいことやね、ギタバさん。

 「~ディランは結局のところ最高に魅力的な
パフォーマーであり、歌手としての魅力と力量によって、
その地位を築いたからにほかならない。」
(中山康樹「ボブ・ディラン解体新書より)

ディランは最高の作詞・作曲家でありながらも
それ以上に唄うことが大好きなおっさんやとおれも思うなぁ、
そしてポールも最高のメロディメイカーでありながら
バンドで唄い演奏することがむちゃ大好きなひとですよね、元締め。

ディランの「枯葉」ってどうなんだと思ってましたが
「余計なことを考えずに聴けばそれでいいのだと思います。」
はいっ、おっしゃる通りでございます(^o^;
そして、康樹はんもゆうてましたが「ディランに
入り口はあっても出口はないんやで~」ですね、元締め。
Posted by ぽちわかや at 2015年03月04日 14:35
ぽちわかやさん、こんにちわ
ディランとぽちわかやさんは運命的なつながりがあるのですね。
もしかして時差の関係でほんとにお生まれになった頃に
NYにたどり着いたのかもしれないですよ。

ボブ・ディランは名前は有名だから、特に音楽を聴かない人は
まだ歌っているんだって思うかもしれないですね。

ポールの件はまさにそうですね。
純粋に演奏が好きなことはビートルズ後期の話でも分かるし、
だから89年にライヴ活動が再開できたのは嬉しかったでしょうね。
今との比較という話ではなく、私はあの頃のポールのバンドは
最高によかったと今でも思います。
ディランはバンドに身を委ねるのが好きそうですね。
それと前にも書きましたが、お金をもらうショービジネスとして以前に
ポールは周りにいる人を楽しくさせる天才だと思います。

中江さんの「出口がない」というのはまさにそう思います。
健太さんも同様のことを書いたと記憶しています。
だから余計に、次のアルバムはどうなるのかが気になりますね。
先ほどFacebookで、実はもう1枚分シナトラの曲を録音してある
という情報を得ましたが、それも出るのかどうか。
それと私の考えにご同意いただきありがとうございます。
ディランの場合、極端な話、声がどうしても生理的に受け付けない
という人以外はそれこそとにかく聴いてみるこが出発点だと思います。
というか、それって実は音楽すべてに共通のことのはずですが、
ディランほどの人になると情報やイメージそして噂に惑わされて
なかなか手が出せない人も多そうだと思います。
Posted by guitarbirdguitarbird at 2015年03月04日 15:18

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SHADOWS IN THE NIGHT ボブ・ディランの新譜