2014年09月20日
THE SINGER アート・ガーファンクルの新しいベスト盤
01
THE SINGER Art Garfunkel
ザ・シンガー アート・ガーファンクル
アート・ガーファンクルの新しいベスト盤が出ました。
全キャリアを通じて選曲された2枚組です。
当初は4月に出るとアナウンスされ、僕もネットで予約したものの
突然延期となり、もう出ないのかなと思いかけたところで、
9月になってやや唐突な印象で結局は出ました。
キャリアを通じたベスト盤ということで、
サイモン&ガーファンクルの曲とソロの曲が一緒に並んでいます。
ポール・サイモンはソロになってからWarnerに移籍しましたが、
アーティはずっとColumbiaのままだからできたのでしょうね。
内訳は、全34曲中、S&Gは8曲、ソロは26曲うち新曲2曲。
ベスト盤は、年代順に編集するものと、年代は関係なく
何かの意図で編集するものの2つに大別されますが、
アーティのこれは後者で、つまり、S&Gの曲が
ソロの合間に時々出てくるという仕掛けになっています。
僕は、S&Gとポール・サイモンは全アルバムを聴いてきていますが、
アーティのソロアルバムはまだ2枚しか聴いたことがなく、
おまけにベスト盤も持っていません。
理由は簡単、アーティはリマスター盤が出ていないから。
聴きたいんですけどね、すごく、とっても。
アーティのベスト盤と聞いて飛びついたわけですが、
S&Gの曲も入っていると知って最初は正直ちょっとがっかりでした。
こういう編集はどうなのかな。
すべてのキャリアを通して聴くことで、アート・ガーファンクルという
ひとりの歌手の姿、その生き様に迫ろうという意図は感じます。
でも、うがった見方をすれば、アーティのソロだけでは商売にならない
という会社の上層部の魂胆も見え隠れするような・・・
僕は、アーティだけでよかったなあ。
と思っていました、最初のうちは。
1枚目の1曲目、最初からいきなり「明日に架ける橋」ですからね。
これはちょっと販促、ではなく反則と思いましたが、誤変換が
たまたま洒落になっていて面白くてそのまま残しました(笑)。
なんて文句は、イントロが終わるまでには霧消していました。
やっぱり、すごい曲だよね。
札幌ドーム公演で(記事こちら)、アーティが最後まで
体を震わせながらも堂々と歌い通し、脇にいたポール・サイモンが
立場も役回りも忘れて純粋に一人の人間として感動して
アーティを見つめていた姿がもう忘れられなくて。
だから、うん、やっぱりこの曲はアーティの曲でもあるんだな、
入っているのはむしろ当然。
こうして1曲目から気持ちが入ってゆくのは、結局のところ
うまくのせられてしまったということなのでしょうね。
でもやはり、へそ曲がりの僕だからもう一度だけ言う、
やっぱりいきなり1曲目は反則でしょ(笑)。
と思ったけど、オリジナルアルバムでも1曲目だからいいのか。
収録されているS&Gの曲は、このCDの登場順で以下の8曲です。
Bridge Over Troubled Water
For Emily, Whanever I May Find Her
Scarborough Fair / Canticle
Kathy's Song
The Sound Of Silence
So Long, Frank Lloyd Wright
My Little Town
April Come She Will
ひとつ補足、Disc2-Tr11:My Little Townは、
S&G解散後のポール・サイモンの1976年のソロアルバム
STILL CRAZY AFTER ALL THESE YEARSの曲で、
その曲のみアーティが参加して事実上のS&G再結成と
話題になった曲で、厳密にはS&Gの曲ではない、ともいえます。
さらに蛇足、ポール・サイモンは解散後Warnerに移籍した
と書きましたが、現在はその時代の版権もSONY/BMGに移っていて、
つまりアーティと同じ、だからこの曲を入れることも
特に問題はなかったのでしょうね。
楽曲はアーティ自身の選曲によるものですが、
S&Gについては納得の選曲ですね。
当然のことながらコンドルのようにポールが主に歌う曲はないし、
ポールがアーティにあてこすりした曲が入っているはずもなく(笑)。
Disc1-Tr12:Scarborogh Fair / Canticle
Disc2-Tr4:The Sound Of Silence
これらはS&Gの象徴のような曲だから外せない一方で、
「ボクサー」「セシリア」や「冬の散歩道」は歌の内容に
ポールらしさが強く出ていて選ばなかったのでしょうね。
「ロビンソン」も入っていないけれど、ふと思った、これは
アーティらしさもポールらしさも半々、という感じがしますね。
Disc2-Tr6:So Long, Frank Lloyd Wrightは、
CDを買う前にS&Gの曲も入ったベスト盤だと聞いた時に、
真っ先に入っているだろうなと思った曲でしたが、僕の中では
これがS&G時代のアーティの代表と感じているのでしょう。
もっとも、作ったのはポール・サイモンですが、でもポールは
アーティの気持ちは分かっていたということなのでしょうね。
「エミリー」「キャシー」と女性の名前がついた2曲があることが
興味深いし、さらにいえばもう1曲は"She"という単語が入っていて、
この選曲は納得できます。
なぜ納得できるかは、後でもう一度話します。
先ほど文句はいい、買う前はちょっとがっかりしたと書きましたが、
やっぱりS&Gの曲が出てくると落ち着きますね。
曲自体が云々というよりは、昔からよく知っている曲という意味で。
今の僕はアーティの曲はまだよく知らないから、節目節目で
そういう曲が出てくると気持ちの切り替えにもなるし、だれないし。
02
さて、アーティの曲はほんとに知らなくて、ここに収められた中で
アーティのものとして知っていたのはたったの2曲だけ。
他に有名なカヴァー曲がありますが、その2曲も有名なカヴァー。
Disc1-Tr8:(What A) Wonderful World
言わずと知れたサム・クックの曲だけど
サムの話をすると長くなるのでここではそれだけ。
なんとポール・サイモンも参加しているのです。
つまり、S&GプラスJTという、冷静に考えるとものすごい。
でも、なぜ当時はWarnerのポール・サイモンが絡むのかは、
ちょっと分からないですね、でも楽しいからいいじゃないですか。
この演奏は、この曲が持っている子どもっぽさを強く感じますね。
大人になってもそういう気持ちを忘れないのはいいことだ、
と言いたいようなアレンジと歌い方で、元々穏やかな曲だけど、
とんがったところがなくて、しかししっかりとしていて聴きやすい。
アーティっぽいのはもちろんだけどこれまた好カヴァーですね。
他に僕が知っているカヴァー曲は2曲。
Disc2-Tr12:O Come All Ye Faithful
これはクリスマスソングとして有名ですが、
まさに「天使の歌声」アーティらしい響き。
もう1曲がDisc2-Tr16:When A Man Loves A Woman
パーシー・スレッジのあまりにも有名なあれですが、
最初にオリジナルにはないパッセージが2回繰り返されていて、
違う曲かと思いました。
まるでソウルっぽくなくて、やはりアーティの世界ですね。
Disc1-Tr16:Lena、Disc2-Tr2:Long Way Home
この2曲の新録音の新曲です。
ただ、残念なのが、So Much In Loveが入っていないこと。
1988年にシングルカットされ、当時はCDシングルが出始めで
物珍しくて楽しかったので買って聴いて大好きになった曲ですが、
当然入っているものだろうと思ったら、なかった。
仕方ないのかな、本人が選曲しているということで、
何か違うと感じたのでしょうけど、でも残念でなりません。
他はこれから聴いて覚えてゆくわけですが、
アーティの世界、アーティの音楽は文学的ですね。
ポール・サイモンもそうかもしれないけれど、アーティは特に、
サリンジャー、カポーティ、SFだけどブラッドベリーなどなど、僕は
あまり多く読んだことはないけれど、アメリカ文学の香りがします。
繊細で、言葉で空気を切り裂くような感覚。
或いは、歌という表現のかたちの中で、
言葉が空気のように舞いながら流れていく。
詩、ではなく、小説ですね。
でも、小説だけど、物語の組み立てよりは描写にこだわり、
流れを大切にするより気持ちの赴くままに話が進む、そんな物語。
パティ・スミスのように詩人が音楽をやったというのではなく、
小説でやりたいことを音楽にしてみた、そんな感じを
今回のベスト盤を聴いて強く受けました。
S&Gから女性の名前が入った曲を2曲選んでいるのも、
文学的な、小説の香りを感じました。
なによりも音楽が綺麗ですからね。
美しいというよりは綺麗で、きれいに流れていく。
アーティのソロは自作の曲が少ないのですが、
そういう曲を選んで歌って自分のものにしているのでしょう。
ところで、このCDが4月から発売延期になったのは、
そんなアーティの音楽が夏には合わないからじゃないかな、
と思いました。
秋がまさにぴったり、夏よりは冬のほうが断然似合う、春もいい。
でも夏はだめ。
4月に出せば夏休みシーズンに向けたものとなってしまうのですが、
アーティ自身もそれは分かっていて、発売を秋にしたのではないか。
そんな気がしてなりません。
アート・ガーファンクルは広義のロックのアーティストではあるけれど、
ロックという解釈の幅が広くなったのはアーティのおかげかもしれない、
と思ったり。
アーティはコンサートで実際に見て、天然記念物的な人というか、
いたずらから始まって悪いことは幾つか(も)してきたし
いわゆる「いい人」じゃないんだけど、でも、周りにいる人は
放っておくことができなくて、憎めないやつ、という印象を持ちました。
先ほど「生き様」と書きましたが、アーティにはそんなどろどろとした
部分を感じない、何か別のところに存在しているような人。
気持ちが向くままに行動し発言するので誤解を与えやすいけれど、
その分、とっても純粋な人。
だけど、だから、歌を歌うと「天使の歌声」。
そのギャップが面白くもあり、凄いと思える部分ですね。
結局のところ、合間合間にS&Gの曲があるのも納得というか、
それはそれでとってもいいと思って今は聴いています。
まったくもって身勝手なものだ(笑)。
リンクは左が国内盤、右が僕が買った海外盤。
値段が半分くらいなので、両方施したほうがいいかと思いました。
ところで余談。
昨年、ポール・サイモンの70歳を記念した2枚組ベスト盤が出ましたが、
ポールのそのタイトルがSONGWRITER。
2人合わせて「シンガー・ソングライター」になるのは、
座布団1枚(笑)、楽しいですね。
アーティは、ほんと、これを機にアルバムを聴き進めてゆきたい。
だからアルバムのリマスター盤も出してくれないかな・・・
最後にもうひとつ。
ジャケットの写真はアーティがピンボケなのはなぜだろう。
趣味とはいえ写真を撮る人間としては、そこがすごく気になりました。
でも、ピンボケでも何かこう伝わってくるものがある、感じるものがある。
いつも他の人とはちょっと違ったことを考えてきたということかな・・・
ピンボケでもイメージを伝えられるのがプロの写真家なのでしょうね。
秋は新譜がたくさん出る、音楽聴きにはうれしい季節。
これからも、なるべくたくさん紹介できればと思います。
THE SINGER Art Garfunkel
ザ・シンガー アート・ガーファンクル
アート・ガーファンクルの新しいベスト盤が出ました。
全キャリアを通じて選曲された2枚組です。
当初は4月に出るとアナウンスされ、僕もネットで予約したものの
突然延期となり、もう出ないのかなと思いかけたところで、
9月になってやや唐突な印象で結局は出ました。
キャリアを通じたベスト盤ということで、
サイモン&ガーファンクルの曲とソロの曲が一緒に並んでいます。
ポール・サイモンはソロになってからWarnerに移籍しましたが、
アーティはずっとColumbiaのままだからできたのでしょうね。
内訳は、全34曲中、S&Gは8曲、ソロは26曲うち新曲2曲。
ベスト盤は、年代順に編集するものと、年代は関係なく
何かの意図で編集するものの2つに大別されますが、
アーティのこれは後者で、つまり、S&Gの曲が
ソロの合間に時々出てくるという仕掛けになっています。
僕は、S&Gとポール・サイモンは全アルバムを聴いてきていますが、
アーティのソロアルバムはまだ2枚しか聴いたことがなく、
おまけにベスト盤も持っていません。
理由は簡単、アーティはリマスター盤が出ていないから。
聴きたいんですけどね、すごく、とっても。
アーティのベスト盤と聞いて飛びついたわけですが、
S&Gの曲も入っていると知って最初は正直ちょっとがっかりでした。
こういう編集はどうなのかな。
すべてのキャリアを通して聴くことで、アート・ガーファンクルという
ひとりの歌手の姿、その生き様に迫ろうという意図は感じます。
でも、うがった見方をすれば、アーティのソロだけでは商売にならない
という会社の上層部の魂胆も見え隠れするような・・・
僕は、アーティだけでよかったなあ。
と思っていました、最初のうちは。
1枚目の1曲目、最初からいきなり「明日に架ける橋」ですからね。
これはちょっと販促、ではなく反則と思いましたが、誤変換が
たまたま洒落になっていて面白くてそのまま残しました(笑)。
なんて文句は、イントロが終わるまでには霧消していました。
やっぱり、すごい曲だよね。
札幌ドーム公演で(記事こちら)、アーティが最後まで
体を震わせながらも堂々と歌い通し、脇にいたポール・サイモンが
立場も役回りも忘れて純粋に一人の人間として感動して
アーティを見つめていた姿がもう忘れられなくて。
だから、うん、やっぱりこの曲はアーティの曲でもあるんだな、
入っているのはむしろ当然。
こうして1曲目から気持ちが入ってゆくのは、結局のところ
うまくのせられてしまったということなのでしょうね。
でもやはり、へそ曲がりの僕だからもう一度だけ言う、
やっぱりいきなり1曲目は反則でしょ(笑)。
と思ったけど、オリジナルアルバムでも1曲目だからいいのか。
収録されているS&Gの曲は、このCDの登場順で以下の8曲です。
Bridge Over Troubled Water
For Emily, Whanever I May Find Her
Scarborough Fair / Canticle
Kathy's Song
The Sound Of Silence
So Long, Frank Lloyd Wright
My Little Town
April Come She Will
ひとつ補足、Disc2-Tr11:My Little Townは、
S&G解散後のポール・サイモンの1976年のソロアルバム
STILL CRAZY AFTER ALL THESE YEARSの曲で、
その曲のみアーティが参加して事実上のS&G再結成と
話題になった曲で、厳密にはS&Gの曲ではない、ともいえます。
さらに蛇足、ポール・サイモンは解散後Warnerに移籍した
と書きましたが、現在はその時代の版権もSONY/BMGに移っていて、
つまりアーティと同じ、だからこの曲を入れることも
特に問題はなかったのでしょうね。
楽曲はアーティ自身の選曲によるものですが、
S&Gについては納得の選曲ですね。
当然のことながらコンドルのようにポールが主に歌う曲はないし、
ポールがアーティにあてこすりした曲が入っているはずもなく(笑)。
Disc1-Tr12:Scarborogh Fair / Canticle
Disc2-Tr4:The Sound Of Silence
これらはS&Gの象徴のような曲だから外せない一方で、
「ボクサー」「セシリア」や「冬の散歩道」は歌の内容に
ポールらしさが強く出ていて選ばなかったのでしょうね。
「ロビンソン」も入っていないけれど、ふと思った、これは
アーティらしさもポールらしさも半々、という感じがしますね。
Disc2-Tr6:So Long, Frank Lloyd Wrightは、
CDを買う前にS&Gの曲も入ったベスト盤だと聞いた時に、
真っ先に入っているだろうなと思った曲でしたが、僕の中では
これがS&G時代のアーティの代表と感じているのでしょう。
もっとも、作ったのはポール・サイモンですが、でもポールは
アーティの気持ちは分かっていたということなのでしょうね。
「エミリー」「キャシー」と女性の名前がついた2曲があることが
興味深いし、さらにいえばもう1曲は"She"という単語が入っていて、
この選曲は納得できます。
なぜ納得できるかは、後でもう一度話します。
先ほど文句はいい、買う前はちょっとがっかりしたと書きましたが、
やっぱりS&Gの曲が出てくると落ち着きますね。
曲自体が云々というよりは、昔からよく知っている曲という意味で。
今の僕はアーティの曲はまだよく知らないから、節目節目で
そういう曲が出てくると気持ちの切り替えにもなるし、だれないし。
02
さて、アーティの曲はほんとに知らなくて、ここに収められた中で
アーティのものとして知っていたのはたったの2曲だけ。
他に有名なカヴァー曲がありますが、その2曲も有名なカヴァー。
Disc1-Tr8:(What A) Wonderful World
言わずと知れたサム・クックの曲だけど
サムの話をすると長くなるのでここではそれだけ。
なんとポール・サイモンも参加しているのです。
つまり、S&GプラスJTという、冷静に考えるとものすごい。
でも、なぜ当時はWarnerのポール・サイモンが絡むのかは、
ちょっと分からないですね、でも楽しいからいいじゃないですか。
この演奏は、この曲が持っている子どもっぽさを強く感じますね。
大人になってもそういう気持ちを忘れないのはいいことだ、
と言いたいようなアレンジと歌い方で、元々穏やかな曲だけど、
とんがったところがなくて、しかししっかりとしていて聴きやすい。
アーティっぽいのはもちろんだけどこれまた好カヴァーですね。
他に僕が知っているカヴァー曲は2曲。
Disc2-Tr12:O Come All Ye Faithful
これはクリスマスソングとして有名ですが、
まさに「天使の歌声」アーティらしい響き。
もう1曲がDisc2-Tr16:When A Man Loves A Woman
パーシー・スレッジのあまりにも有名なあれですが、
最初にオリジナルにはないパッセージが2回繰り返されていて、
違う曲かと思いました。
まるでソウルっぽくなくて、やはりアーティの世界ですね。
Disc1-Tr16:Lena、Disc2-Tr2:Long Way Home
この2曲の新録音の新曲です。
ただ、残念なのが、So Much In Loveが入っていないこと。
1988年にシングルカットされ、当時はCDシングルが出始めで
物珍しくて楽しかったので買って聴いて大好きになった曲ですが、
当然入っているものだろうと思ったら、なかった。
仕方ないのかな、本人が選曲しているということで、
何か違うと感じたのでしょうけど、でも残念でなりません。
他はこれから聴いて覚えてゆくわけですが、
アーティの世界、アーティの音楽は文学的ですね。
ポール・サイモンもそうかもしれないけれど、アーティは特に、
サリンジャー、カポーティ、SFだけどブラッドベリーなどなど、僕は
あまり多く読んだことはないけれど、アメリカ文学の香りがします。
繊細で、言葉で空気を切り裂くような感覚。
或いは、歌という表現のかたちの中で、
言葉が空気のように舞いながら流れていく。
詩、ではなく、小説ですね。
でも、小説だけど、物語の組み立てよりは描写にこだわり、
流れを大切にするより気持ちの赴くままに話が進む、そんな物語。
パティ・スミスのように詩人が音楽をやったというのではなく、
小説でやりたいことを音楽にしてみた、そんな感じを
今回のベスト盤を聴いて強く受けました。
S&Gから女性の名前が入った曲を2曲選んでいるのも、
文学的な、小説の香りを感じました。
なによりも音楽が綺麗ですからね。
美しいというよりは綺麗で、きれいに流れていく。
アーティのソロは自作の曲が少ないのですが、
そういう曲を選んで歌って自分のものにしているのでしょう。
ところで、このCDが4月から発売延期になったのは、
そんなアーティの音楽が夏には合わないからじゃないかな、
と思いました。
秋がまさにぴったり、夏よりは冬のほうが断然似合う、春もいい。
でも夏はだめ。
4月に出せば夏休みシーズンに向けたものとなってしまうのですが、
アーティ自身もそれは分かっていて、発売を秋にしたのではないか。
そんな気がしてなりません。
アート・ガーファンクルは広義のロックのアーティストではあるけれど、
ロックという解釈の幅が広くなったのはアーティのおかげかもしれない、
と思ったり。
アーティはコンサートで実際に見て、天然記念物的な人というか、
いたずらから始まって悪いことは幾つか(も)してきたし
いわゆる「いい人」じゃないんだけど、でも、周りにいる人は
放っておくことができなくて、憎めないやつ、という印象を持ちました。
先ほど「生き様」と書きましたが、アーティにはそんなどろどろとした
部分を感じない、何か別のところに存在しているような人。
気持ちが向くままに行動し発言するので誤解を与えやすいけれど、
その分、とっても純粋な人。
だけど、だから、歌を歌うと「天使の歌声」。
そのギャップが面白くもあり、凄いと思える部分ですね。
結局のところ、合間合間にS&Gの曲があるのも納得というか、
それはそれでとってもいいと思って今は聴いています。
まったくもって身勝手なものだ(笑)。
リンクは左が国内盤、右が僕が買った海外盤。
値段が半分くらいなので、両方施したほうがいいかと思いました。
ところで余談。
昨年、ポール・サイモンの70歳を記念した2枚組ベスト盤が出ましたが、
ポールのそのタイトルがSONGWRITER。
2人合わせて「シンガー・ソングライター」になるのは、
座布団1枚(笑)、楽しいですね。
アーティは、ほんと、これを機にアルバムを聴き進めてゆきたい。
だからアルバムのリマスター盤も出してくれないかな・・・
最後にもうひとつ。
ジャケットの写真はアーティがピンボケなのはなぜだろう。
趣味とはいえ写真を撮る人間としては、そこがすごく気になりました。
でも、ピンボケでも何かこう伝わってくるものがある、感じるものがある。
いつも他の人とはちょっと違ったことを考えてきたということかな・・・
ピンボケでもイメージを伝えられるのがプロの写真家なのでしょうね。
秋は新譜がたくさん出る、音楽聴きにはうれしい季節。
これからも、なるべくたくさん紹介できればと思います。
Posted by guitarbird at 20:54
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