2013年06月05日
SLIPPERY WHEN WET ボン・ジョヴィ
01

SLIPPERY WHEN WET Bon Jovi released in 1986
ワイルド・イン・ザ・ストリーツ ボン・ジョヴィ
札幌ドームでファイターズ戦を見てからというもの、
僕の頭の中では毎日、糸井選手のテーマ曲である
ボン・ジョヴィのLivin' On A Prayerが流れ続けていて、
時々歌ったりしています。
この曲については曲ごとの項目で触れるとして、
せっかくなのでアルバムも聴いて記事にしてみました。
アルバムを通して聴くのはもう10年以上振りでしたが、
微妙な懐かしさを感じました。
ボン・ジョヴィは僕が高校時代に出てきて、
最初からそれなり以上に注目されていましたが、
さる事情により、暫くはレコードは買わずに接してきていました。
僕は、最初の頃は、ハードロック・ヘヴィメタル系が
好きな人には受け入れられるけど、それ以外はどうなんだろう
という感じで彼らを捉えていました。
しかし、1986年に発表された3枚目のこのアルバムで、
僕にしては突然という印象で大ブレイクし、
一気にメインストリームに駆け上りました。
僕も最初は、まあ、眉つばものというと失礼ですが、
どうしてそんなに受けたのかという部分が見えなくて
距離を置いていましたが、やっぱり曲がいいのでLPを買いました。
もう1987年に入っていたと思います、浪人生の頃です。
余談ですが、その頃うちで初めてCDプレイヤーを買ったのですが、
最初のうちはまだCDが高く、このボン・ジョヴィのように
ちょっと聴いてみたい、でも外すかもしれない、自信がない、
というものは値段が安いLPを買っていました。
このアルバムについては、シングルの2曲は好きでしたが、
それ以外の曲がどうなんだろうというのが
外すかもしれないという不安な部分でした。
しかし、いざ買って聴いて思ったのが・・・
「悔しいけど素晴らしい」
当時は、よく話の引き合いに出すヘヴィメタル好きの悪友が、
メタル系がヒットするとそれ見たことかという態度を取るのが
とっても気に入らなくて、そこに反発していたのもあり、
若かった僕も、まだメタル系を受け入れていなかった頃でした。
でも、ボン・ジョヴィのこれについては、すぐにこう思いました。
「なんだ、よく聴くと普通のアメリカンロックじゃん」
音がハードに仕立て上げられているだけ、と感じました。
ボン・ジョヴィって、ヘヴィメタルなの?
まあ、ハードロックであるのは間違いないと思いますが、
当時は「ヘヴィメタル」の流れの中で出てきたバンド
というイメージで売られていたと思います。
それらしい服装にマリモパーマをしていましたし(笑)。
でも、今の若い人がボン・ジョヴィを聴くと、
少なくともヘヴィメタルとは思わないでしょうし、
ヘヴィメタルといわれていたことすら、信じられないでしょう。
1987年頃はヘヴィメタルがブームになり、
ヘヴィメタル系がチャートの上位に次々と進出してきていて、
チャートを追って聴いていた僕は驚いたものでした。
このヘヴィメタルブームは、結果としては、僕の音楽人生に、
良くも悪くもいろいろなものを残してくれた大きな出来事でしたが、
そのことを語り出すと長くなるので、今回はボン・ジョヴィのみ。
ボン・ジョヴィの場合は、言葉は悪いかもしれないけど、
ブームに乗った部分はあったのではないかと思います。
元々ハードな音を出してシーンを盛り上げてはいたでしょうけど、
ブームになるにつれてハードな面を前面に押し出していった。
というのは今になって思う部分も半分くらいあるのですが、
もちろんシーン全体が盛り上がったことが大きいのでしょうね。
そしてボン・ジョヴィは、そんな外面を装って売れる以上の、
それをはるかに超えたポテンシャルを持っていることを見せつけ、
20年以上経った今でも、トップに君臨し続けています。
音的には、5作目から徐々にメタルから離れ、少しの紆余曲折を経て、
ちょっとハードなロックの真ん中辺りで安定してきた感があります。
そして近年ではカントリー色も濃く出しているのは、
やはりアメリカ人だからなのかな。
そんなわけで、ボン・ジョヴィがヘヴィメタルだった、
なんて、今となっては、いい意味での笑い話ですね。
アメリカンロックの重要なバンドのひとつだと思います。
なお、このアルバムのジャケットについて、
アーティスト側が望んだアートワークは写真02のものでしたが、
アメリカでは若者には刺激が強すぎるということで、
写真01の、壁の落書きのようなものに差し替えられました。
しかし日本では最初から02でリリースされました。
刺激的・・・まあそうかもしれないですが、
その辺は、国情が垣間見えて興味深いですね。
ただ、その写真は、現行のUS盤CDのブックレットには
そのまま使われています。
買う前に中が見えなければいいのでしょうね(笑)。
02

Tr1:Let It Rock
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora)
今聴くとギターワークがあざといくらいにメタル的味付けですね。
ただ、タイトルは「メタルも何も関係ねぇ」
と宣言しているみたいで、最初からうれしい1曲でした。
ところでこれ、LPでリリースされた当時は、
曲の本編に入る前の前奏の部分には、
Pink Flamingoという曲名がついていたと思いますが、
今のCDではそれはなく、この曲名で統一されています。
Tr2:You Give Love A Bad Name
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora / Desmond Child)
この曲は最初に好きになったボン・ジョヴィの歌です。
当時から思っていたのですが、ボン・ジョヴィって、
歌謡曲の香りがプンプン匂ってきますよね。
情に訴えかけてくる陰りがある歌メロ、ですね。
特にこの曲と次はそれが顕著ですし、そういえば、
1stのRunawayも、日本では、日本語の歌詞を付け、
ドラマのテーマ曲として歌われていましたし。
僕は小学生時代は、両親がテレビやラジオで聞いていた歌謡曲を
よく耳にしていたので、そうした感覚も分かります。
この曲と次は、バンド活動などもしてソロ作も出している作曲家
デスモンド・チャイルド Desmond Childが共作していますが、
彼は一時期、メタル系の有名どころのシングルヒット狙いの曲を
多く手がけていました。
彼の曲は、これでもかというくらいのあざとさとしつこさを持って
劇的に流れてゆくのが特徴で、当時は、ロック評論家などに
「ロックのことが分からない作曲家」と揶揄されていましたが、
歌いやすい曲を作る才能に長けているのは間違いないことで、
それはこれと次の曲が証明していると思います。
この曲はほんとに最初から今までずっと大好きですね。
歌っていて気分がよくなる曲のひとつです。
ただ、ですね、ひとつ残念なのが、サビの部分
♪ Shot through the heart and you're to blame
You give love a bad name
の"through"の舌をかむ発音が、歌詞としては
あまりうまく流れていないような気がすることです。
ポール・マッカートニーならきっと、
もっといいライムを考えていたと思います(笑)。
もちろんこれは僕個人が思うことですけど・・・
あとそれから、当時の僕は、一応は浪人生だったので、
英語の構文の"SVOO"構文を、この曲名で覚えました。
Tr3:Livin' On A Prayer
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora / Desmond Child)
もうこれは名曲中の名曲でしょうね。
普通に音楽を聴くのが好きな30歳以上50歳以下の人であれば、
日本人でも知らない人はいないのではないか、
或いはもう世の中に膾炙しているのでは、と思うくらいに。
札幌ドームでは子どもが口ずさんでいましたし(笑)。
この曲が世に出てから20年以上が経っていますが、
そういう曲が最初に世の中に出た時のことを
リアルタイムで知っているのは、やっぱりうれしいです。
何かこう、ロックに伝説を求める部分があるのでしょうね(笑)。
この曲はとにかくベースが目立つしかっこよくて素晴らしい。
イントロからして印象的なリフを刻みますが、それ以上に
サビの広がりがあるベースラインが、もう死ぬほどカッコいい!
♪ Woh, we're half way there
Woh-oh, livin' on a prayer
Take my hand and we'll make it - I swear
Woh-oh, livin' on a prayer
あ、これがサビです、札幌ドームでファイターズ戦を観る方、
ぜひ覚えて、糸井選手の打席で歌ってくださいね(笑)。
このサビの突き抜けてもまだ止まらない扇情的な歌メロに対して、
まったく別の印象的な旋律で飛び出てくる、まさに歌うベースは、
曲が2倍かそれ以上に膨らんだ感じを受けます。
そのベースラインだけ口ずさむこともあるくらいで、
これだけいいベースラインを持った曲は、そうはないでしょう。
この曲がもうひとつうまいというか味があるのが、サビで
タイトルを歌う部分が「ド」の音で終わっていないこと。
「ド」の音で終わらないと、すっきりと終わった感じがせず、
まだ続きそうな感じを受けるので、この曲の場合は、
「道半ば」という感じがよく伝わってくると思います。
最後に転調するのも、尋常ではない盛り上がり。
ほんとに名曲だと心底から思います。
ちなみに、1990年頃にテレビ東京系で放送されていた、
「タモリの音楽は世界だ!」という番組において、
「ボン・ジョヴィは演歌である」というテーマのもとに、
この曲の魅力が語られていた、なんてこともありました。
やっぱりボン・ジョヴィは、日本人には響くのでしょうね。
(ところでこの曲、邦題はいまだに
「リヴィン・オン・ア・「プレイヤー」なんですね・・・)
Tr4:Social Disease
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora)
これはタイトルがメタル的イディオムですね。
ギターワークがあざといくらいにメタルっぽいし。
でもブラス風のキーボードに、ソウルの片鱗のかけらも見え隠れ。
まあ、そこがアメリカ人の感覚なのかもしれません。
前2曲と次のどうしようもないくらいの名曲に挟まれて、
ちょっとかわいそうな曲でもあります(笑)。
Tr5:Wanted Dead Or Alive
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora)
この曲がヒットしていた頃は、
メタル系でもこんな曲があるんだという驚きをもって
迎えられいていたような気もします。
それって実は、本末転倒というか、ボン・ジョヴィは
単にこういう音楽も好きだということなんでしょね。
イメージ戦略というのはいろいろと面白いです。
曲は、カントリータッチのアコースティック・バラード。
♪ I'm a cowboy, on a steel horse I ride
カウボーイは車に乗っているということですが、
そして彼らは近年はカントリー系のアーティストとも
共演もしていて、それも納得できる部分です。
この曲は大好きで、当時、イントロなどで印象的な、
音が下がっていくアルペジオをギターでコピーしたくらい。
そして僕が好きなロックのスタイルの割と真ん中にある曲。
割とシンプルだけどドラマティックな盛り上げ方は
個人芸の域に達しているとすら思います。
歌詞も抒情的でなかなかいいですし、そしてこの曲は、
外部の作曲者ではなく、ジョン・ボン・ジョヴィと、
ギターのリッチー・サンボラ Richie Sambora
が作っているのがポイント高いです。
そしてそのリッチーのコーラスの声がよくて当時驚きました。
03 音楽記事にはつきものの風景写真、今回は夕方

Tr6:Raise Your Hands
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora)
B面は疾走系のR&Rが並んでいますが、
この辺はブルース・スプリングスティーンと似た感じがします。
そういえばボン・ジョヴィのこの次の4枚目のアルバムは
タイトルがNEW JERSEY、それはボスのホームタウンでもあって、
そのアルバムが出た時、僕は、何か妙に納得した記憶があります。
Tr7:Without Love
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora / Desmond Child)
ボン・ジョヴィが苦手な人って、ジョンのヴォーカルの
歌い方が暑苦しいと感じるのかもしれない・・・
声を絞り出してひっくり返りさらに音が厚くなる部分が特に。
彼の声はさしずめ、「暑くて熱くて厚い」ですね。
いや実はですね、僕こそが、最初はそうでした(笑)。
この曲は特に曲としては軽い感じがするので、
どうしてもっとさらっと歌えないのかな、とか。
まあしかし、その熱情的な歌い方がジョンの特徴だし、
今はそれはそれでいいと思っています。
Tr8:I'd Die For You
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora)
でも、やっぱり、ジョンの歌い方は、
いまだに時として「3あつ=暑熱厚」、かなぁ・・・
この辺は久し振りに聴いて、やっぱりそう思いました。
この曲はおまけに、イントロのピアノの響きから歌メロから、
歌謡曲色がもう、濃いだけ濃すぎるし、
西城秀樹が歌っても分からないと思います(笑)。
あ、もちろん、それは個性だし、僕だって、
その歌い方がいいなと思う時も多くなってきました。
それとジョンは"die"という単語を歌う時の
気持ちの込め方が凄いなといつも思います。
Tr9:Never Say Goodbye
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora)
メタル系とはいっても、こういうしっとりと聴かせる
バラードもあるんだなって。
この少し後に「メタルバラード」が一種の流行りになりましたが。
これは割とよくある感じとスタイルの曲で、
曲自体が極上というわけではないけれど、
印象に残りやすいし、雰囲気は最高にいい曲だと思います。
アルバムの最後の前にあるのも絶妙な配置。
Tr10:Wild In The Streets
(Jon Bon Jovi)
最後は素軽い疾走系のロックンロール、やっぱり好き。
このアルバムは、収録曲からとられた
英語の邦題がついている例ですね。
レインボー RainbowのBENT OUT OF SHAPE(記事こちら)
の邦題も、収録曲から取られた「ストリート・オブ・ドリームス」で、
アルバムタイトル曲が存在しないことも含め、同じ例です。
でも僕は、これはある意味いい邦題だと思います。
「濡れていると滑りやすい」よりはこのほうが、
ストレイトに魅力が伝わってくるし、
そもそも、この原題と02のアートワークは、
メタル的イメージを「ねつ造」し過ぎと、僕は思っていました。
このアルバムを最後まで聴き通すと、
キーボードの軽くてピラピラ鳴る音に時代を感じますね。
そしてもちろん、ヘヴィメタルのオブラートを被せた音作りにも。
それはともかく、最後に元気で明るい曲を持ってくるのは
アルバムとして引き締まって終わるのはよいと思います。
というわけで、ボン・ジョヴィは、
アメリカン・ロックのバンドとして、
日本でいちばん人気があるバンドではないかなと思います。
ところで、アメリカンロックって何?
というのは、今日のところは長くなったので、
今回はイメージとして捉えていただき、またの機会に。
最後に余談を2つ、ひとつめ、ジョン・ボン・ジョヴィは、
本名をJon Francis Bongioviといい、イタリア系移民の子。
彼らがデビューするにあたり、バンド名を決めることになり、
ジョンは本名の苗字をバンド名にしたいということで
レコード会社側と話し合ったところ、レコード会社側には、
Bongioviでは字面がカッコよくなくて野暮ったいので
Bon Joviというスマート(に見える)名前にしろと言われ、
最初はあまり乗り気ではないものの認めてデビューしたのだとか。
確かに言われてみれば、うん、そうですね。
世の中、商才に長けた人っているんだな、って思います。
もうひとつ、これは、JNNニュースバードの
ピーター・バラカン氏が出ている
「CBSドキュメント」で知ったのですが、レコード業界には、
Bon Joviという名前の「バンド」は、厳密には存在しないのだとか。
どういうことかというと、レコード会社との契約上では、
ジョン・ボン・ジョヴィひとりが契約の対象になっていて、
他のメンバーはあくまでも彼のサポート、ということらしいのです。
だけどジョンはとてもいい人である上にやり手なので、
他のメンバーとの意思疎通からはじまり、折衝や利益分配なども、
マネージャーを介さず自分で行っていて、
もちろんCDやツアーでは「正式な」メンバーとなっているし、
他のメンバーもまったく不満はなく続けている、ということです。
その番組を観て、やはり彼はスマートな人なんだなと思い、
少し、いや、かなり彼を見直しました。
などと、札幌ドームで聴いたボン・ジョヴィから、
普段思っていたり接した知見をささっとまとめて
記事にしてみました。

SLIPPERY WHEN WET Bon Jovi released in 1986
ワイルド・イン・ザ・ストリーツ ボン・ジョヴィ
札幌ドームでファイターズ戦を見てからというもの、
僕の頭の中では毎日、糸井選手のテーマ曲である
ボン・ジョヴィのLivin' On A Prayerが流れ続けていて、
時々歌ったりしています。
この曲については曲ごとの項目で触れるとして、
せっかくなのでアルバムも聴いて記事にしてみました。
アルバムを通して聴くのはもう10年以上振りでしたが、
微妙な懐かしさを感じました。
ボン・ジョヴィは僕が高校時代に出てきて、
最初からそれなり以上に注目されていましたが、
さる事情により、暫くはレコードは買わずに接してきていました。
僕は、最初の頃は、ハードロック・ヘヴィメタル系が
好きな人には受け入れられるけど、それ以外はどうなんだろう
という感じで彼らを捉えていました。
しかし、1986年に発表された3枚目のこのアルバムで、
僕にしては突然という印象で大ブレイクし、
一気にメインストリームに駆け上りました。
僕も最初は、まあ、眉つばものというと失礼ですが、
どうしてそんなに受けたのかという部分が見えなくて
距離を置いていましたが、やっぱり曲がいいのでLPを買いました。
もう1987年に入っていたと思います、浪人生の頃です。
余談ですが、その頃うちで初めてCDプレイヤーを買ったのですが、
最初のうちはまだCDが高く、このボン・ジョヴィのように
ちょっと聴いてみたい、でも外すかもしれない、自信がない、
というものは値段が安いLPを買っていました。
このアルバムについては、シングルの2曲は好きでしたが、
それ以外の曲がどうなんだろうというのが
外すかもしれないという不安な部分でした。
しかし、いざ買って聴いて思ったのが・・・
「悔しいけど素晴らしい」
当時は、よく話の引き合いに出すヘヴィメタル好きの悪友が、
メタル系がヒットするとそれ見たことかという態度を取るのが
とっても気に入らなくて、そこに反発していたのもあり、
若かった僕も、まだメタル系を受け入れていなかった頃でした。
でも、ボン・ジョヴィのこれについては、すぐにこう思いました。
「なんだ、よく聴くと普通のアメリカンロックじゃん」
音がハードに仕立て上げられているだけ、と感じました。
ボン・ジョヴィって、ヘヴィメタルなの?
まあ、ハードロックであるのは間違いないと思いますが、
当時は「ヘヴィメタル」の流れの中で出てきたバンド
というイメージで売られていたと思います。
それらしい服装にマリモパーマをしていましたし(笑)。
でも、今の若い人がボン・ジョヴィを聴くと、
少なくともヘヴィメタルとは思わないでしょうし、
ヘヴィメタルといわれていたことすら、信じられないでしょう。
1987年頃はヘヴィメタルがブームになり、
ヘヴィメタル系がチャートの上位に次々と進出してきていて、
チャートを追って聴いていた僕は驚いたものでした。
このヘヴィメタルブームは、結果としては、僕の音楽人生に、
良くも悪くもいろいろなものを残してくれた大きな出来事でしたが、
そのことを語り出すと長くなるので、今回はボン・ジョヴィのみ。
ボン・ジョヴィの場合は、言葉は悪いかもしれないけど、
ブームに乗った部分はあったのではないかと思います。
元々ハードな音を出してシーンを盛り上げてはいたでしょうけど、
ブームになるにつれてハードな面を前面に押し出していった。
というのは今になって思う部分も半分くらいあるのですが、
もちろんシーン全体が盛り上がったことが大きいのでしょうね。
そしてボン・ジョヴィは、そんな外面を装って売れる以上の、
それをはるかに超えたポテンシャルを持っていることを見せつけ、
20年以上経った今でも、トップに君臨し続けています。
音的には、5作目から徐々にメタルから離れ、少しの紆余曲折を経て、
ちょっとハードなロックの真ん中辺りで安定してきた感があります。
そして近年ではカントリー色も濃く出しているのは、
やはりアメリカ人だからなのかな。
そんなわけで、ボン・ジョヴィがヘヴィメタルだった、
なんて、今となっては、いい意味での笑い話ですね。
アメリカンロックの重要なバンドのひとつだと思います。
なお、このアルバムのジャケットについて、
アーティスト側が望んだアートワークは写真02のものでしたが、
アメリカでは若者には刺激が強すぎるということで、
写真01の、壁の落書きのようなものに差し替えられました。
しかし日本では最初から02でリリースされました。
刺激的・・・まあそうかもしれないですが、
その辺は、国情が垣間見えて興味深いですね。
ただ、その写真は、現行のUS盤CDのブックレットには
そのまま使われています。
買う前に中が見えなければいいのでしょうね(笑)。
02

Tr1:Let It Rock
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora)
今聴くとギターワークがあざといくらいにメタル的味付けですね。
ただ、タイトルは「メタルも何も関係ねぇ」
と宣言しているみたいで、最初からうれしい1曲でした。
ところでこれ、LPでリリースされた当時は、
曲の本編に入る前の前奏の部分には、
Pink Flamingoという曲名がついていたと思いますが、
今のCDではそれはなく、この曲名で統一されています。
Tr2:You Give Love A Bad Name
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora / Desmond Child)
この曲は最初に好きになったボン・ジョヴィの歌です。
当時から思っていたのですが、ボン・ジョヴィって、
歌謡曲の香りがプンプン匂ってきますよね。
情に訴えかけてくる陰りがある歌メロ、ですね。
特にこの曲と次はそれが顕著ですし、そういえば、
1stのRunawayも、日本では、日本語の歌詞を付け、
ドラマのテーマ曲として歌われていましたし。
僕は小学生時代は、両親がテレビやラジオで聞いていた歌謡曲を
よく耳にしていたので、そうした感覚も分かります。
この曲と次は、バンド活動などもしてソロ作も出している作曲家
デスモンド・チャイルド Desmond Childが共作していますが、
彼は一時期、メタル系の有名どころのシングルヒット狙いの曲を
多く手がけていました。
彼の曲は、これでもかというくらいのあざとさとしつこさを持って
劇的に流れてゆくのが特徴で、当時は、ロック評論家などに
「ロックのことが分からない作曲家」と揶揄されていましたが、
歌いやすい曲を作る才能に長けているのは間違いないことで、
それはこれと次の曲が証明していると思います。
この曲はほんとに最初から今までずっと大好きですね。
歌っていて気分がよくなる曲のひとつです。
ただ、ですね、ひとつ残念なのが、サビの部分
♪ Shot through the heart and you're to blame
You give love a bad name
の"through"の舌をかむ発音が、歌詞としては
あまりうまく流れていないような気がすることです。
ポール・マッカートニーならきっと、
もっといいライムを考えていたと思います(笑)。
もちろんこれは僕個人が思うことですけど・・・
あとそれから、当時の僕は、一応は浪人生だったので、
英語の構文の"SVOO"構文を、この曲名で覚えました。
Tr3:Livin' On A Prayer
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora / Desmond Child)
もうこれは名曲中の名曲でしょうね。
普通に音楽を聴くのが好きな30歳以上50歳以下の人であれば、
日本人でも知らない人はいないのではないか、
或いはもう世の中に膾炙しているのでは、と思うくらいに。
札幌ドームでは子どもが口ずさんでいましたし(笑)。
この曲が世に出てから20年以上が経っていますが、
そういう曲が最初に世の中に出た時のことを
リアルタイムで知っているのは、やっぱりうれしいです。
何かこう、ロックに伝説を求める部分があるのでしょうね(笑)。
この曲はとにかくベースが目立つしかっこよくて素晴らしい。
イントロからして印象的なリフを刻みますが、それ以上に
サビの広がりがあるベースラインが、もう死ぬほどカッコいい!
♪ Woh, we're half way there
Woh-oh, livin' on a prayer
Take my hand and we'll make it - I swear
Woh-oh, livin' on a prayer
あ、これがサビです、札幌ドームでファイターズ戦を観る方、
ぜひ覚えて、糸井選手の打席で歌ってくださいね(笑)。
このサビの突き抜けてもまだ止まらない扇情的な歌メロに対して、
まったく別の印象的な旋律で飛び出てくる、まさに歌うベースは、
曲が2倍かそれ以上に膨らんだ感じを受けます。
そのベースラインだけ口ずさむこともあるくらいで、
これだけいいベースラインを持った曲は、そうはないでしょう。
この曲がもうひとつうまいというか味があるのが、サビで
タイトルを歌う部分が「ド」の音で終わっていないこと。
「ド」の音で終わらないと、すっきりと終わった感じがせず、
まだ続きそうな感じを受けるので、この曲の場合は、
「道半ば」という感じがよく伝わってくると思います。
最後に転調するのも、尋常ではない盛り上がり。
ほんとに名曲だと心底から思います。
ちなみに、1990年頃にテレビ東京系で放送されていた、
「タモリの音楽は世界だ!」という番組において、
「ボン・ジョヴィは演歌である」というテーマのもとに、
この曲の魅力が語られていた、なんてこともありました。
やっぱりボン・ジョヴィは、日本人には響くのでしょうね。
(ところでこの曲、邦題はいまだに
「リヴィン・オン・ア・「プレイヤー」なんですね・・・)
Tr4:Social Disease
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora)
これはタイトルがメタル的イディオムですね。
ギターワークがあざといくらいにメタルっぽいし。
でもブラス風のキーボードに、ソウルの片鱗のかけらも見え隠れ。
まあ、そこがアメリカ人の感覚なのかもしれません。
前2曲と次のどうしようもないくらいの名曲に挟まれて、
ちょっとかわいそうな曲でもあります(笑)。
Tr5:Wanted Dead Or Alive
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora)
この曲がヒットしていた頃は、
メタル系でもこんな曲があるんだという驚きをもって
迎えられいていたような気もします。
それって実は、本末転倒というか、ボン・ジョヴィは
単にこういう音楽も好きだということなんでしょね。
イメージ戦略というのはいろいろと面白いです。
曲は、カントリータッチのアコースティック・バラード。
♪ I'm a cowboy, on a steel horse I ride
カウボーイは車に乗っているということですが、
そして彼らは近年はカントリー系のアーティストとも
共演もしていて、それも納得できる部分です。
この曲は大好きで、当時、イントロなどで印象的な、
音が下がっていくアルペジオをギターでコピーしたくらい。
そして僕が好きなロックのスタイルの割と真ん中にある曲。
割とシンプルだけどドラマティックな盛り上げ方は
個人芸の域に達しているとすら思います。
歌詞も抒情的でなかなかいいですし、そしてこの曲は、
外部の作曲者ではなく、ジョン・ボン・ジョヴィと、
ギターのリッチー・サンボラ Richie Sambora
が作っているのがポイント高いです。
そしてそのリッチーのコーラスの声がよくて当時驚きました。
03 音楽記事にはつきものの風景写真、今回は夕方

Tr6:Raise Your Hands
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora)
B面は疾走系のR&Rが並んでいますが、
この辺はブルース・スプリングスティーンと似た感じがします。
そういえばボン・ジョヴィのこの次の4枚目のアルバムは
タイトルがNEW JERSEY、それはボスのホームタウンでもあって、
そのアルバムが出た時、僕は、何か妙に納得した記憶があります。
Tr7:Without Love
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora / Desmond Child)
ボン・ジョヴィが苦手な人って、ジョンのヴォーカルの
歌い方が暑苦しいと感じるのかもしれない・・・
声を絞り出してひっくり返りさらに音が厚くなる部分が特に。
彼の声はさしずめ、「暑くて熱くて厚い」ですね。
いや実はですね、僕こそが、最初はそうでした(笑)。
この曲は特に曲としては軽い感じがするので、
どうしてもっとさらっと歌えないのかな、とか。
まあしかし、その熱情的な歌い方がジョンの特徴だし、
今はそれはそれでいいと思っています。
Tr8:I'd Die For You
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora)
でも、やっぱり、ジョンの歌い方は、
いまだに時として「3あつ=暑熱厚」、かなぁ・・・
この辺は久し振りに聴いて、やっぱりそう思いました。
この曲はおまけに、イントロのピアノの響きから歌メロから、
歌謡曲色がもう、濃いだけ濃すぎるし、
西城秀樹が歌っても分からないと思います(笑)。
あ、もちろん、それは個性だし、僕だって、
その歌い方がいいなと思う時も多くなってきました。
それとジョンは"die"という単語を歌う時の
気持ちの込め方が凄いなといつも思います。
Tr9:Never Say Goodbye
(Jon Bon Jovi / Richie Sambora)
メタル系とはいっても、こういうしっとりと聴かせる
バラードもあるんだなって。
この少し後に「メタルバラード」が一種の流行りになりましたが。
これは割とよくある感じとスタイルの曲で、
曲自体が極上というわけではないけれど、
印象に残りやすいし、雰囲気は最高にいい曲だと思います。
アルバムの最後の前にあるのも絶妙な配置。
Tr10:Wild In The Streets
(Jon Bon Jovi)
最後は素軽い疾走系のロックンロール、やっぱり好き。
このアルバムは、収録曲からとられた
英語の邦題がついている例ですね。
レインボー RainbowのBENT OUT OF SHAPE(記事こちら)
の邦題も、収録曲から取られた「ストリート・オブ・ドリームス」で、
アルバムタイトル曲が存在しないことも含め、同じ例です。
でも僕は、これはある意味いい邦題だと思います。
「濡れていると滑りやすい」よりはこのほうが、
ストレイトに魅力が伝わってくるし、
そもそも、この原題と02のアートワークは、
メタル的イメージを「ねつ造」し過ぎと、僕は思っていました。
このアルバムを最後まで聴き通すと、
キーボードの軽くてピラピラ鳴る音に時代を感じますね。
そしてもちろん、ヘヴィメタルのオブラートを被せた音作りにも。
それはともかく、最後に元気で明るい曲を持ってくるのは
アルバムとして引き締まって終わるのはよいと思います。
というわけで、ボン・ジョヴィは、
アメリカン・ロックのバンドとして、
日本でいちばん人気があるバンドではないかなと思います。
ところで、アメリカンロックって何?
というのは、今日のところは長くなったので、
今回はイメージとして捉えていただき、またの機会に。
最後に余談を2つ、ひとつめ、ジョン・ボン・ジョヴィは、
本名をJon Francis Bongioviといい、イタリア系移民の子。
彼らがデビューするにあたり、バンド名を決めることになり、
ジョンは本名の苗字をバンド名にしたいということで
レコード会社側と話し合ったところ、レコード会社側には、
Bongioviでは字面がカッコよくなくて野暮ったいので
Bon Joviというスマート(に見える)名前にしろと言われ、
最初はあまり乗り気ではないものの認めてデビューしたのだとか。
確かに言われてみれば、うん、そうですね。
世の中、商才に長けた人っているんだな、って思います。
もうひとつ、これは、JNNニュースバードの
ピーター・バラカン氏が出ている
「CBSドキュメント」で知ったのですが、レコード業界には、
Bon Joviという名前の「バンド」は、厳密には存在しないのだとか。
どういうことかというと、レコード会社との契約上では、
ジョン・ボン・ジョヴィひとりが契約の対象になっていて、
他のメンバーはあくまでも彼のサポート、ということらしいのです。
だけどジョンはとてもいい人である上にやり手なので、
他のメンバーとの意思疎通からはじまり、折衝や利益分配なども、
マネージャーを介さず自分で行っていて、
もちろんCDやツアーでは「正式な」メンバーとなっているし、
他のメンバーもまったく不満はなく続けている、ということです。
その番組を観て、やはり彼はスマートな人なんだなと思い、
少し、いや、かなり彼を見直しました。
などと、札幌ドームで聴いたボン・ジョヴィから、
普段思っていたり接した知見をささっとまとめて
記事にしてみました。
Posted by guitarbird at 14:54
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