2013年05月10日
CORE ストーン・テンプル・パイロッツ
いつものように
写真など音楽とは関係ないコメントも
大歓迎です!
晴天の霹靂・・・
01
CORE Stone Temple Pilots released in 1993
コア ストーン・テンプル・パイロッツ
ストーン・テンプル・パイロッツ。
僕が最も好きな90年代のロックバンドです、まごうことなき。
ということを、ジャケット写真集や曲を集めた記事などで
彼らに触れる度に僕はずっと言い続けてきていました。
そして、近いうちに記事にします、とも・・・
でも、自分の中で流れがないまま記事も上がらずにいました。
音楽は無理に聴くものでもないし、いつか流れがくるだろうと。
しかし、そんなこと言ってはいられない事態に陥りました。
ストーン・テンプル・パイロッツ再結成!
今月、待ちに待った新しいアルバムが出るのです。
まあ、こうした再結成は多分に金稼ぎなのでしょうけど、
彼らについてはそれはまったく気にしません。
だって、そこが好きなんだもん。
というわけで今日は、ついにというか、
ストーン・テンプル・パイロッツの1stを記事にしました。
新譜の予習も兼ねる、という意味も込めて。
先に余談ですが、ストーン・テンプル・パイロッツを、
日本では略して「ストテン」と呼んでいるようですが、
僕はいつも略してSTPと呼んでいます。
車のエンジンオイルと同じですが、気にしないでください(笑)。
STPは、1990年代のグランジのブームに乗って現れました。
90年代のグランジはロックの世界を変えてしまったといってよく、
それ以降に出てきたハードなロックのバンドの多くは、
ガリガリザリザリしたグランジ的なギターの音を出しています。
グランジでもうひとつ特徴的なのは、
例えばメタルのギターヒーローのようなヒーローがいない、
個が一歩引いていることだと思います。
だから、メタルのように(あざといまでの)ギターソロもなく、
あくまでも曲の流れの中でソロが出てくるという感じです。
まあ、しかし、真性メタルマニアである弟などは、
このグランジの音がいまだに受け入れられないようですが、
それだけ影響力があった、ということでしょう。
STPが出てきた頃は、ニルヴァーナ(記事はこちら)と
パール・ジャム(記事はこちら)が時代の中心にいて、
似たような音を出すバンドが、雨後の筍状態でした。
その数年前にはメタル系の「筍」がたくさんあったのですが、
わずか数年ですっかり変わったと実感していましたし、
メタル系のバンドまでもが、グランジを意識するようにもなりました。
僕は、グランジは、弟のように嫌いということもなく、
上記の2枚やサウンドガーデンは好んで聴いていましたが、
でも、そういう音だから好きで聴く、ということもなく、
自分に合えば聴きますよ、くらいのいつもの姿勢でいました。
僕が最初にSTPを聴いたのは、MTVで流れていたPlushでしたが、
それは実際にグランジの代表曲のひとつに挙げられるくらいに
音の響きはグランジ以外の何物でもありませんでした。
僕は最初その曲だけでは動かなかったのですが、後日、
別の曲をMTVで観て聴いて、気に入ったので買って聴きました。
自分に合えば聴きますよ、まさにその通りでした。
STPについては、買って聴いたところ、音はグランジだけど、
そういう姿勢は感じられませんでした。
ただただ楽しいのです。
だから僕は、彼らが「似非グランジ」と呼ばれるようになって、
一気にSTPが大好きになりました。
へそ曲がりの本領発揮、でしょうかね(笑)。
STPは「本物のニセモノ」であることを感じたからです。
グランジはファッションでもあったので、
若者の生き方とか、姿勢とか、そういうものを表象していて、
どれだけ自然に自分らしくいることができるか、ということを
標榜しながら音楽としても表現していたのでしょう。
バンクーバー五輪で、ある日本人選手の衣装の「乱れ」が
問題になりましたが、それもその流れのひとつだと思います。
若者の怒りやフラストレーションや時には明るいことを
そのまま音楽で表現すればそれ以上は要らないという
ある種のストイックさも感じられました。
そういうことが素直に感じられる音、それがあの
ガリガリのギターの音だった、ということなのでしょう。
反面、華やかさはあまり感じない音楽でもありました
ついでにいえば、ブームにまでなってしまったメタル系の音は、
より若い世代には「贅肉たっぷりの音」と映ったのだと・・・
STPはしかし面白いことに、ヒットした後に、
「似非グランジ」と呼ばれるようになりました。
02 道南ではミズバショウが咲いていた
ロックという音楽はそもそもが、
「人生のすべてを音楽に注ぎ込みました」、ではなく、
「どれだけ真面目な顔をしてバカなことを出来るか」、とか、
「どれだけこっ恥ずかしい普段は言わないことを真面目に言えるか」
といった部分が大事だと思っています。
あざとくても、作りものの部分は残してほしいのです。
そうじゃないと、聴き手側の心が入りこむ余地がなくなり、
自分で聴くという楽しみがなくなるような気がするからです。
ただしもちろん、人間性が音楽から感じられるのは好きです。
それが過剰過多ではなく、それがどんな匙加減で表現できるか、
そこが個性で楽しいところだとも思います。
STPは、音楽を通して素直に自己表現したいという以前に、
音楽をみんなで楽しくやって稼ぎたい、という姿勢が
感じられますが、でも、えげつないというほどではなく、
業界にいる以上売れないより売れたほうがいいに越したことはない
と割り切って臨んで演じているように感じ、
そこからしてこのバンドは違うと思ったのです。
音楽も華やかな雰囲気を最初から感じていましたし。
「似非」その通りです、いいじゃないですか。
「似非」を堂々と名乗って売れた彼らは、
既存の売れ線ロックとは一線を画したグランジのかたちだけを
ちゃっかり借用して、「既存の」ロックのようなことをやっていた。
つまり、「裏の裏は表」、それがSTP、見事な逆転の発想です。
いや、発想だけなら多くの人がたどり着いたかもしれないですが、
圧倒的な音楽的クオリティを持つ彼らは、それを成し遂げました。
ここで思い出すのは、キッス Kissです。
キッスは、ロックがエンターテイメントに傾き過ぎて
一大産業と化した時代に、そこを逆手に取るかたちで、
徹底したエンターテイメント性を追求して大成功したバンド。
STPは90年代に、それと同じことをしたわけで、
だからSTPは「90年代のキッス」であり、そこが
「本物のニセモノ」と僕が呼んでいる部分です。
しかも、大胆不敵というか、「似非」であるはずの彼ら、
デビューアルバムのタイトルがCORE=「核」ですから、
かなりの自信を持っていたこともうかがわれます。
そんなSTPが支持された証拠とでもいうか、
グランジのブームが終わっても人気があまり落ちることなく、
ひとまず、今世紀に入ってから解散するまでは続きました。
なお、解散したのは、音楽的な理由というよりは、
メンバー間の問題だったようです。
ただしここで余談というか、そうは言っても僕は、
ニルヴァーナ NirvanaのNEVERMINDを聴いた時に、
「予想していたよりもしっかりとしたエンターテイメントだ」
と思ったものです。
シーンからの印象として「予想していたより」と感じましたが、
実際は彼らもそういう音楽をやりたかったんだと分かって、
僕が少し曲解していたかもしれないことに気づきました。
そんなニルヴァーナのKurt Cobainが自ら命を絶ってしまったのは、
聴き手と演じ手の間に齟齬が生じていたからかもしれません。
さて、STPをキッスに喩えたのは偶然ではなく、彼らは実際、
70年代ロックのよい面をちゃんと受け継いでいます。
70年代は、ロック音楽が華やかなりし拡散発展期でしたが、
当時やり残したことを再びやっているような感じもします。
そしてVoのスコット・ウィーランド Scott Weilandが、
キッスのポール・スタンリー Paul Stanleyのメイクをして
ステージで歌う姿を当時のMTVの情報で見たことがあったのですが、
それを見てもちろん楽しかったし、うれしかったですし、それは
やっぱり彼らは「似非」だとはっきりと認識した瞬間でした。
そのスコットはどうしようもないジャンキーで、
そこは支持しませんが、ヴォーカリストとして説得力があるし、
ビデオクリップで見せる仕草や顔つきは意外とチャーミング。
表情はあまり変わらない中でも楽しませてくれる人です。
Gtのディーン・ディレオ Dean DeLeoと
Bsのロバート・ディレオ Robert DeLeoは兄弟で、
弟のディーンはなんと、昨年の僕の1位だった
スモーキー・ロビンソンの最新アルバム(記事はこちら)
のクレジットにその名前を見つけ、涙が出るほどうれしかった。
確かにギターヒーロー的派手さはないけど、
曲のツボをよく押さえたギターの演奏が上手い。
兄のロバートは、目立つフレーズで曲を引っ張る演奏をする人
ではないですが、グルーヴ感豊かなプレイでバンドを支えています。
そして曲作りはこの2人に負うところが大きいです。
Dsのエリック・クレッツ Eric Kretzはひょうきんな人。
ヴォーカルはひとりですが、4人とも曲が作れるのもSTPの強み。
そして4人のキャラクターがまたいいのです。
今回は、そんな彼らの1stアルバムを取り上げます。
03 長万部の奇岩(strange rock)風景
Tr1:Dead & Bloated
(Weiland, R. Deleo)
いきなりチープなハンドマイクの声で始まり、
どうしちゃったの、と思った瞬間に心を掴まれている。
変拍子を用いた粘つくハードロック。
曲の展開もうまく流れていて、しかもフック満載。
彼らの特徴として、男くさいメロディとヴォーカルがありますが、
それは1曲目から顕著に表れています。
Tr2:Sex Type Thing
(Weiland, D.Deleo, Kretz)
テンポアップして少しまっすぐに攻め立てる。
攻撃的なギターリフに意外とメロウな歌メロ。
冒頭の"I am I am"と繰り返す部分があえぎ声のよう。
Bメロが来るとついつい口ずさんでしまいますが、
彼らの曲は基本的に口ずさみやすい曲ばかり。
Tr3:Wicked Garden
(Weiland, R.Deleo, D.Deleo)
MTVで2番目に見てCDを買うきっかけになった曲がこれ。
低音リフで攻めてゆくスタイルはまさに70年代ハードロック。
やはりごわごわした音の割には歌メロがよい上に、
歌メロが幾重にも展開して聴かせます。
しかも彼らの曲は、だからといって複雑なことは決してなく
あくまでもポップソング、分かりやすいのが凄いところ。
この曲にはちょっとした思い出があります。
僕が、神田の楽器店でレス・ポール・スペシャルを買った時に
お店で試奏したうちの1曲が、このリフだったのです。
大きなアンプで大きな音を出して弾くと気分がよかった(笑)。
さらに後日、彼らの2ndアルバムの曲のビデオクリップで、
ディーンが同じタイプの色違いのギターを持っていたのを見て、
とてもうれしかったし、僕がSTPを好きになるのは当然だ
とまで思いました(笑)。
Tr4:No Memory
(D.Deleo)
アコースティック・ギターによるつなぎのインスト曲。
西部劇のBGMのような雰囲気。
Tr5:Sin
(Weiland, R.Deleo)
前の曲から続いて流れてゆく、やはり粘ついた男臭い曲。
ハード一辺倒と思いきや、中間部でアコースティック・ギターを
効果的に使うのは、彼らの芸の細かさも垣間見えます。
Tr6:Naked Sunday
(Weiland, R.Deleo, D.Deleo, Kretz)
まるで八つ当たりするかのように強烈に叩き散らすドラムスに、
ギターとベースも加勢してここが勝負どころとばかりに攻め込む。
そして歌い始めは、言葉ではなく
「あ~ああ~あ うぉおぅうぉおぅ あ~ああ~あ いぇい」
攻めの一手にただただ圧倒される曲。
04 2010年5月9日、或るところの朝の風景
Tr7:Creep
(Weiland, R.Deleo)
彼らの代表曲と呼べるかもしれない名曲級のバラード。
アコースティック主体のこんなバラードを聴くに及んで、
やはり彼らの血は間違いなく70年代からつながっていると確信。
サビの
♪ I'm half the man I used to be
という部分の流れる歌メロが美しく、その歌メロをガイドする
アルペジオのギターがまた絶妙な味わい。
いや、久し振りにじっくり聴くと、名曲と言いたい気分です。
Tr8:Piece Of Pie
(Weiland, R.Deleo)
Tr3もそうですが、3拍目を強く叩いて粘つくリズム感は
彼らの独特のスタイル。
それにしても曲の展開の巧さには舌を巻くばかり。
Tr9:Plush
(Weiland, R.Deleo)
僕が最初に聴いた彼らの曲。
ハードだけどポップな、いかにもシングル向きの曲。
それだけに、曲は粘ついているけど、割とまっすぐな曲。
Tr10:Wet My Bed
(Weiland, R.Deleo)
今回、このアルバムは10年振りくらいに聴いたのですが、
この曲だけ印象が薄く、聴いていて思い出しました・・・
それもそのはず、効果音的演奏と語りの曲。
Tr11:Crackerman
(Weiland, R.Deleo, Kretz)
最後の前にこれまでを総括するような、爆発感がある、
すっきりとしたストレイトなロックンロール。
アルバムはまるでコンサートのように流れ的にもしっかりしていて、
STPが超一級のエンターテイメント性を有したバンドであることが
よく分かる1曲です。
Tr12:Where The River Goes
(Weiland, D.Deleo, Kretz)
これを最初に聴いてまさに狂喜乱舞しました。
なぜってこれ、レッド・ツェッペリン Led Zeppelinの
When The Levee Breakesにそっくりだから!
そっくりといっても盗作レベルでの話ではなく、
雰囲気は間違いなくいただいているという意味で、
大河のようなゆったりとした力強いテンポのスタイルが同じ。
Zepと同じくアルバムの最後の曲でもあるし、しかも、
曲名が、Zepの「堤防(levee)が壊れた時に」を受けて、
「河はどこへ流れてゆくのだろう」と続いているのが、
ロック愛、Zep愛、70年代愛を感じてうれしくなるところ。
Amazonのリンクでは早くも新譜の情報が。
わくわくしてきますね!
もし、出来がひどかったとしても、それはそれ、
彼らが大好きなので僕は気にしません。
そしてもちろん新譜は、なるべく早いうちに
記事にして紹介するつもりです、使命感がありますので(笑)。
再結成するに至ったのは、メンバー間の問題が解決した
というよりは、いつまで経っても「問題」が解決しない
ジャンキーであるスコットの救済の意味もあるのかな、
という邪推もしてしまいますが、いずれにせよ楽しみです。
2枚目、3枚目も、新譜の後で記事にできればと思っていて、
だから今回の記事は、彼らについての情報が少なくなっています。
書くことがなくなると困るので・・・(笑)・・・
まあしかし、ひとつの記事で版ソを総括してしまうのではなく、
この1stの記事では、彼らが出てきた頃の雰囲気を閉じ込めておくのも
一つの手ではないかな、と思いました。
そして今回は、石=Stoneの写真は用意できましたが、
寺=Temple、飛行士=Pilotsの写真は用意できなかったので、
それも次回以降への課題としたいと思います(笑)。
さて。
僕は、STPのコンサートに行かなかったことを後悔しています。
確か1994年のことだったと思いますが、STPは、
クラブチッタ川崎などで来日公演を行いました。
僕は行きたかったのですが、クラブチッタ川崎は行ったことがなく、
スタンディングということで疲れるだろうなと思い、
行くのをやめました。
しかし、やっぱり、後悔しています、激しく。
もしまた来日公演があれば、ぜひ行きたい、行きます。
今回、ついにSTPを記事にして、自分自身も予習ができました。
☆
最後は、2010年5月10日、本日のA公園の桜の様子です。
05
この木は、公園内でいちばん花が多く咲いている木でしたが、
これでまだ6分くらいかな。
つぼみが開いていない木のほうがまだ多いという感じです。
写真など音楽とは関係ないコメントも
大歓迎です!
晴天の霹靂・・・
01
CORE Stone Temple Pilots released in 1993
コア ストーン・テンプル・パイロッツ
ストーン・テンプル・パイロッツ。
僕が最も好きな90年代のロックバンドです、まごうことなき。
ということを、ジャケット写真集や曲を集めた記事などで
彼らに触れる度に僕はずっと言い続けてきていました。
そして、近いうちに記事にします、とも・・・
でも、自分の中で流れがないまま記事も上がらずにいました。
音楽は無理に聴くものでもないし、いつか流れがくるだろうと。
しかし、そんなこと言ってはいられない事態に陥りました。
ストーン・テンプル・パイロッツ再結成!
今月、待ちに待った新しいアルバムが出るのです。
まあ、こうした再結成は多分に金稼ぎなのでしょうけど、
彼らについてはそれはまったく気にしません。
だって、そこが好きなんだもん。
というわけで今日は、ついにというか、
ストーン・テンプル・パイロッツの1stを記事にしました。
新譜の予習も兼ねる、という意味も込めて。
先に余談ですが、ストーン・テンプル・パイロッツを、
日本では略して「ストテン」と呼んでいるようですが、
僕はいつも略してSTPと呼んでいます。
車のエンジンオイルと同じですが、気にしないでください(笑)。
STPは、1990年代のグランジのブームに乗って現れました。
90年代のグランジはロックの世界を変えてしまったといってよく、
それ以降に出てきたハードなロックのバンドの多くは、
ガリガリザリザリしたグランジ的なギターの音を出しています。
グランジでもうひとつ特徴的なのは、
例えばメタルのギターヒーローのようなヒーローがいない、
個が一歩引いていることだと思います。
だから、メタルのように(あざといまでの)ギターソロもなく、
あくまでも曲の流れの中でソロが出てくるという感じです。
まあ、しかし、真性メタルマニアである弟などは、
このグランジの音がいまだに受け入れられないようですが、
それだけ影響力があった、ということでしょう。
STPが出てきた頃は、ニルヴァーナ(記事はこちら)と
パール・ジャム(記事はこちら)が時代の中心にいて、
似たような音を出すバンドが、雨後の筍状態でした。
その数年前にはメタル系の「筍」がたくさんあったのですが、
わずか数年ですっかり変わったと実感していましたし、
メタル系のバンドまでもが、グランジを意識するようにもなりました。
僕は、グランジは、弟のように嫌いということもなく、
上記の2枚やサウンドガーデンは好んで聴いていましたが、
でも、そういう音だから好きで聴く、ということもなく、
自分に合えば聴きますよ、くらいのいつもの姿勢でいました。
僕が最初にSTPを聴いたのは、MTVで流れていたPlushでしたが、
それは実際にグランジの代表曲のひとつに挙げられるくらいに
音の響きはグランジ以外の何物でもありませんでした。
僕は最初その曲だけでは動かなかったのですが、後日、
別の曲をMTVで観て聴いて、気に入ったので買って聴きました。
自分に合えば聴きますよ、まさにその通りでした。
STPについては、買って聴いたところ、音はグランジだけど、
そういう姿勢は感じられませんでした。
ただただ楽しいのです。
だから僕は、彼らが「似非グランジ」と呼ばれるようになって、
一気にSTPが大好きになりました。
へそ曲がりの本領発揮、でしょうかね(笑)。
STPは「本物のニセモノ」であることを感じたからです。
グランジはファッションでもあったので、
若者の生き方とか、姿勢とか、そういうものを表象していて、
どれだけ自然に自分らしくいることができるか、ということを
標榜しながら音楽としても表現していたのでしょう。
バンクーバー五輪で、ある日本人選手の衣装の「乱れ」が
問題になりましたが、それもその流れのひとつだと思います。
若者の怒りやフラストレーションや時には明るいことを
そのまま音楽で表現すればそれ以上は要らないという
ある種のストイックさも感じられました。
そういうことが素直に感じられる音、それがあの
ガリガリのギターの音だった、ということなのでしょう。
反面、華やかさはあまり感じない音楽でもありました
ついでにいえば、ブームにまでなってしまったメタル系の音は、
より若い世代には「贅肉たっぷりの音」と映ったのだと・・・
STPはしかし面白いことに、ヒットした後に、
「似非グランジ」と呼ばれるようになりました。
02 道南ではミズバショウが咲いていた
ロックという音楽はそもそもが、
「人生のすべてを音楽に注ぎ込みました」、ではなく、
「どれだけ真面目な顔をしてバカなことを出来るか」、とか、
「どれだけこっ恥ずかしい普段は言わないことを真面目に言えるか」
といった部分が大事だと思っています。
あざとくても、作りものの部分は残してほしいのです。
そうじゃないと、聴き手側の心が入りこむ余地がなくなり、
自分で聴くという楽しみがなくなるような気がするからです。
ただしもちろん、人間性が音楽から感じられるのは好きです。
それが過剰過多ではなく、それがどんな匙加減で表現できるか、
そこが個性で楽しいところだとも思います。
STPは、音楽を通して素直に自己表現したいという以前に、
音楽をみんなで楽しくやって稼ぎたい、という姿勢が
感じられますが、でも、えげつないというほどではなく、
業界にいる以上売れないより売れたほうがいいに越したことはない
と割り切って臨んで演じているように感じ、
そこからしてこのバンドは違うと思ったのです。
音楽も華やかな雰囲気を最初から感じていましたし。
「似非」その通りです、いいじゃないですか。
「似非」を堂々と名乗って売れた彼らは、
既存の売れ線ロックとは一線を画したグランジのかたちだけを
ちゃっかり借用して、「既存の」ロックのようなことをやっていた。
つまり、「裏の裏は表」、それがSTP、見事な逆転の発想です。
いや、発想だけなら多くの人がたどり着いたかもしれないですが、
圧倒的な音楽的クオリティを持つ彼らは、それを成し遂げました。
ここで思い出すのは、キッス Kissです。
キッスは、ロックがエンターテイメントに傾き過ぎて
一大産業と化した時代に、そこを逆手に取るかたちで、
徹底したエンターテイメント性を追求して大成功したバンド。
STPは90年代に、それと同じことをしたわけで、
だからSTPは「90年代のキッス」であり、そこが
「本物のニセモノ」と僕が呼んでいる部分です。
しかも、大胆不敵というか、「似非」であるはずの彼ら、
デビューアルバムのタイトルがCORE=「核」ですから、
かなりの自信を持っていたこともうかがわれます。
そんなSTPが支持された証拠とでもいうか、
グランジのブームが終わっても人気があまり落ちることなく、
ひとまず、今世紀に入ってから解散するまでは続きました。
なお、解散したのは、音楽的な理由というよりは、
メンバー間の問題だったようです。
ただしここで余談というか、そうは言っても僕は、
ニルヴァーナ NirvanaのNEVERMINDを聴いた時に、
「予想していたよりもしっかりとしたエンターテイメントだ」
と思ったものです。
シーンからの印象として「予想していたより」と感じましたが、
実際は彼らもそういう音楽をやりたかったんだと分かって、
僕が少し曲解していたかもしれないことに気づきました。
そんなニルヴァーナのKurt Cobainが自ら命を絶ってしまったのは、
聴き手と演じ手の間に齟齬が生じていたからかもしれません。
さて、STPをキッスに喩えたのは偶然ではなく、彼らは実際、
70年代ロックのよい面をちゃんと受け継いでいます。
70年代は、ロック音楽が華やかなりし拡散発展期でしたが、
当時やり残したことを再びやっているような感じもします。
そしてVoのスコット・ウィーランド Scott Weilandが、
キッスのポール・スタンリー Paul Stanleyのメイクをして
ステージで歌う姿を当時のMTVの情報で見たことがあったのですが、
それを見てもちろん楽しかったし、うれしかったですし、それは
やっぱり彼らは「似非」だとはっきりと認識した瞬間でした。
そのスコットはどうしようもないジャンキーで、
そこは支持しませんが、ヴォーカリストとして説得力があるし、
ビデオクリップで見せる仕草や顔つきは意外とチャーミング。
表情はあまり変わらない中でも楽しませてくれる人です。
Gtのディーン・ディレオ Dean DeLeoと
Bsのロバート・ディレオ Robert DeLeoは兄弟で、
弟のディーンはなんと、昨年の僕の1位だった
スモーキー・ロビンソンの最新アルバム(記事はこちら)
のクレジットにその名前を見つけ、涙が出るほどうれしかった。
確かにギターヒーロー的派手さはないけど、
曲のツボをよく押さえたギターの演奏が上手い。
兄のロバートは、目立つフレーズで曲を引っ張る演奏をする人
ではないですが、グルーヴ感豊かなプレイでバンドを支えています。
そして曲作りはこの2人に負うところが大きいです。
Dsのエリック・クレッツ Eric Kretzはひょうきんな人。
ヴォーカルはひとりですが、4人とも曲が作れるのもSTPの強み。
そして4人のキャラクターがまたいいのです。
今回は、そんな彼らの1stアルバムを取り上げます。
03 長万部の奇岩(strange rock)風景
Tr1:Dead & Bloated
(Weiland, R. Deleo)
いきなりチープなハンドマイクの声で始まり、
どうしちゃったの、と思った瞬間に心を掴まれている。
変拍子を用いた粘つくハードロック。
曲の展開もうまく流れていて、しかもフック満載。
彼らの特徴として、男くさいメロディとヴォーカルがありますが、
それは1曲目から顕著に表れています。
Tr2:Sex Type Thing
(Weiland, D.Deleo, Kretz)
テンポアップして少しまっすぐに攻め立てる。
攻撃的なギターリフに意外とメロウな歌メロ。
冒頭の"I am I am"と繰り返す部分があえぎ声のよう。
Bメロが来るとついつい口ずさんでしまいますが、
彼らの曲は基本的に口ずさみやすい曲ばかり。
Tr3:Wicked Garden
(Weiland, R.Deleo, D.Deleo)
MTVで2番目に見てCDを買うきっかけになった曲がこれ。
低音リフで攻めてゆくスタイルはまさに70年代ハードロック。
やはりごわごわした音の割には歌メロがよい上に、
歌メロが幾重にも展開して聴かせます。
しかも彼らの曲は、だからといって複雑なことは決してなく
あくまでもポップソング、分かりやすいのが凄いところ。
この曲にはちょっとした思い出があります。
僕が、神田の楽器店でレス・ポール・スペシャルを買った時に
お店で試奏したうちの1曲が、このリフだったのです。
大きなアンプで大きな音を出して弾くと気分がよかった(笑)。
さらに後日、彼らの2ndアルバムの曲のビデオクリップで、
ディーンが同じタイプの色違いのギターを持っていたのを見て、
とてもうれしかったし、僕がSTPを好きになるのは当然だ
とまで思いました(笑)。
Tr4:No Memory
(D.Deleo)
アコースティック・ギターによるつなぎのインスト曲。
西部劇のBGMのような雰囲気。
Tr5:Sin
(Weiland, R.Deleo)
前の曲から続いて流れてゆく、やはり粘ついた男臭い曲。
ハード一辺倒と思いきや、中間部でアコースティック・ギターを
効果的に使うのは、彼らの芸の細かさも垣間見えます。
Tr6:Naked Sunday
(Weiland, R.Deleo, D.Deleo, Kretz)
まるで八つ当たりするかのように強烈に叩き散らすドラムスに、
ギターとベースも加勢してここが勝負どころとばかりに攻め込む。
そして歌い始めは、言葉ではなく
「あ~ああ~あ うぉおぅうぉおぅ あ~ああ~あ いぇい」
攻めの一手にただただ圧倒される曲。
04 2010年5月9日、或るところの朝の風景
Tr7:Creep
(Weiland, R.Deleo)
彼らの代表曲と呼べるかもしれない名曲級のバラード。
アコースティック主体のこんなバラードを聴くに及んで、
やはり彼らの血は間違いなく70年代からつながっていると確信。
サビの
♪ I'm half the man I used to be
という部分の流れる歌メロが美しく、その歌メロをガイドする
アルペジオのギターがまた絶妙な味わい。
いや、久し振りにじっくり聴くと、名曲と言いたい気分です。
Tr8:Piece Of Pie
(Weiland, R.Deleo)
Tr3もそうですが、3拍目を強く叩いて粘つくリズム感は
彼らの独特のスタイル。
それにしても曲の展開の巧さには舌を巻くばかり。
Tr9:Plush
(Weiland, R.Deleo)
僕が最初に聴いた彼らの曲。
ハードだけどポップな、いかにもシングル向きの曲。
それだけに、曲は粘ついているけど、割とまっすぐな曲。
Tr10:Wet My Bed
(Weiland, R.Deleo)
今回、このアルバムは10年振りくらいに聴いたのですが、
この曲だけ印象が薄く、聴いていて思い出しました・・・
それもそのはず、効果音的演奏と語りの曲。
Tr11:Crackerman
(Weiland, R.Deleo, Kretz)
最後の前にこれまでを総括するような、爆発感がある、
すっきりとしたストレイトなロックンロール。
アルバムはまるでコンサートのように流れ的にもしっかりしていて、
STPが超一級のエンターテイメント性を有したバンドであることが
よく分かる1曲です。
Tr12:Where The River Goes
(Weiland, D.Deleo, Kretz)
これを最初に聴いてまさに狂喜乱舞しました。
なぜってこれ、レッド・ツェッペリン Led Zeppelinの
When The Levee Breakesにそっくりだから!
そっくりといっても盗作レベルでの話ではなく、
雰囲気は間違いなくいただいているという意味で、
大河のようなゆったりとした力強いテンポのスタイルが同じ。
Zepと同じくアルバムの最後の曲でもあるし、しかも、
曲名が、Zepの「堤防(levee)が壊れた時に」を受けて、
「河はどこへ流れてゆくのだろう」と続いているのが、
ロック愛、Zep愛、70年代愛を感じてうれしくなるところ。
Amazonのリンクでは早くも新譜の情報が。
わくわくしてきますね!
もし、出来がひどかったとしても、それはそれ、
彼らが大好きなので僕は気にしません。
そしてもちろん新譜は、なるべく早いうちに
記事にして紹介するつもりです、使命感がありますので(笑)。
再結成するに至ったのは、メンバー間の問題が解決した
というよりは、いつまで経っても「問題」が解決しない
ジャンキーであるスコットの救済の意味もあるのかな、
という邪推もしてしまいますが、いずれにせよ楽しみです。
2枚目、3枚目も、新譜の後で記事にできればと思っていて、
だから今回の記事は、彼らについての情報が少なくなっています。
書くことがなくなると困るので・・・(笑)・・・
まあしかし、ひとつの記事で版ソを総括してしまうのではなく、
この1stの記事では、彼らが出てきた頃の雰囲気を閉じ込めておくのも
一つの手ではないかな、と思いました。
そして今回は、石=Stoneの写真は用意できましたが、
寺=Temple、飛行士=Pilotsの写真は用意できなかったので、
それも次回以降への課題としたいと思います(笑)。
さて。
僕は、STPのコンサートに行かなかったことを後悔しています。
確か1994年のことだったと思いますが、STPは、
クラブチッタ川崎などで来日公演を行いました。
僕は行きたかったのですが、クラブチッタ川崎は行ったことがなく、
スタンディングということで疲れるだろうなと思い、
行くのをやめました。
しかし、やっぱり、後悔しています、激しく。
もしまた来日公演があれば、ぜひ行きたい、行きます。
今回、ついにSTPを記事にして、自分自身も予習ができました。
☆
最後は、2010年5月10日、本日のA公園の桜の様子です。
05
この木は、公園内でいちばん花が多く咲いている木でしたが、
これでまだ6分くらいかな。
つぼみが開いていない木のほうがまだ多いという感じです。
Posted by guitarbird at 18:54
│ロックQ-Z