2013年05月09日
THE BRIDGE / Billy Joel
久しぶりに、深夜のロックネタを。
01

THE BRIGDE / Billy Joel
ザ・ブリッジ ビリー・ジョエル released in 1986
いきなり言いますが、おそらく
ビリーでは、最も人気がないアルバムでしょう。
それは、なぜか。
ビリー・ジョエルらしくないから。
アルバム全体の雰囲気は、よく言えば、
リラックスしていて、というか、そういう風に装っていて、
悪く言えば、緩い、とにかく緩い。
前作AN INNOCENT MANで、
オールディーズ風に挑戦して大成功したことが
音楽内外でさまざまに影響したのか、この頃ビリーは、
個人的に、いろいろと悩んでいたのではないかなぁ、と。
元々ビリーは、本人曰く、優柔不断な人らしいのですが、
心の支えを失いかけて、露頭に迷っているような感じがします。
ただし、それまでもビリーは、
迷うことからいい作品を生み出してきた、
その姿が、人間味あふれる音楽を作ってきた、
とも言えるのですが。
しかしやはり、いつまでも若くてハングリーではない。
今度は、本格的に行き詰ったな・・・
このアルバムからは、そんなことも感じます。
いや、リリース当時から、感じていました。
そして、解決の糸口を見つけようと努力はしたけど、
見つからないまま、契約というタイムリミットに襲われ、
不本意なかたちでリリースした・・・
そんな感じが、拭えません。
「橋」というタイトルは、
そんな状況を乗り越えたいという願いだったのかもしれません。
豪華ゲストが3人も参加しているのが、
悩んでいるまたひとつの証拠でもあるように思えますし、
他の人の声が入っているのが、
ビリーらしくなさを助長している、そんなところでしょう。
それについては、各々の曲にて、また。
02

Tr1:Running On Ice
ピアノの連打で颯爽とアルバムは幕を切って落とす。
いいぞ、これ!
期待感十分、なだれ込むような展開もいいし、
アルバムの冒頭としては、合格点以上の佳曲。
さりげなくスカなのが、さりげなく新しい気も(笑)。
Tr2:This Is The Time
70年代ソウルの影響がうかがえる、都会風のバラード。
なかなかに聴かせる曲。
ただ。
ビリーは以前は、
黙っていても「都会風」の音がにじみでていた人なのに、
ここでは「都会風ソウル」という上着をまとっているのが
気になるといえば、気になる・・・
Tr3:A Matter Of Trust
これは僕も大好きで、ベスト盤に入っていても、
70年代の数多の名曲にもひけをとらない曲だと思います。
なんといっても、思いっきりビートルズ風(笑)。
じゃあ、ビートルズでこれに似た曲があるかというと
そういうわけでもないんだけど、
とにかく、ビートルズの香りが漂う曲。
ここまでは、危ういながらも、悪くない流れで進むのだが・・・
03

Tr4:Modern Woman
この曲が大好きな人、ごめんなさい!
この曲が始まると、一気に瓦解する、そんな感じが・・・
これは浮いている。
ベット・ミドラー主演の映画「殺したい女」のテーマ曲。
オールド時代にモダンなロックンロールをやってみた、
というノリだけど、チープな感じは否めない。
いろんなところで浮いているのは、
アルバムのコンセプトがしっかりしていない証拠か。
あるいは、コンセプトがないのか。
そもそも、先に出た曲を後からアルバムに入れるのは、
いろんな意味で、アブナイんですが・・・
Tr5:Baby Grand
豪華ゲスト先陣は、御大レイ・チャールズ。
これはそのまんま、レイ・チャールズ風の、
或いは、正面切ったアメリカン・スタンダード風の曲。
ビリーが自分の世界にレイを招いた、というよりは、
ビリーが呼ばれたような錯覚を起こします。
つまり、ビリーらしさがあまり感じられません。
ただし、先刻出た新譜All My Lifeを聴けば、
この世界もまたビリーの世界であることが、
後になって分かった、という感じもします。
などと書きましたが、これはとってもいい曲です。
名曲、といっても過言ではありません。
2人のゆったりしたヴォーカルが、しみてきます。
04

Tr6:Big Man On Mulberry Street
ビッグバンド風の、というか
もろに、そういう曲をやってみました、という曲。
ただし、Zanzibarのように
自分の世界に引き寄せる強引さがなく、
出来合いのサウンドは、つまらないといえば、つまらない。
おまけに、NYの実在する通りの名前らしいのですが、
そういうリアリティも、あまり感じません。
時代が変わった、といえば、それまでですが・・・
前の曲もそうだけど、このアルバムは、
自分の世界に引き寄せているのではなく、
そちらの世界に擦り寄っていっている。
ただし、これもまたいい曲ではありますが・・・
Tr7:Temptation
これは隠れた名曲。
破綻したメロディを静かな情熱を込めて歌う
ビリーの姿に、心を激しく揺さぶられる。
プロの作曲家が作る「まとまった曲」にはない
この破綻こそが、ロックだ。
破綻がないとロックじゃない。
この曲がなければ、このアルバム、
僕の評価はもっと落ちたと思います。
ほんとにいい曲だなぁ・・・
05

Tr8:Code Of Silence
豪華ゲスト第2弾は、シンディ・ローパー。
あのシンディ・ローパーですよ!
あまりにもインパクト強すぎ!
ビリーは、自信がなかったんだろうな。
それを隠すために、シンディに派手にやってもらった・・・
曲もシンディと共作扱いで、ビリー史上初めて、
作曲者に他の人の名前が入った曲でもあります。
この曲のビリーを聞くと、
なんとかして助けてあげたい、と思います(笑)。
ただ、ただ。
いい曲なんだよなぁ・・・
Tr9:Getting Closer
最後のゲストは、大先輩にして、
当時ソロで最高のキャリアを築いていた
スティーヴ・ウィンウッド。
先の2人と違い、スティーヴは
コーラス程度で声は目立たないのですが、
ハモンドオルガンは逆にフィーチャーされており、
これはもう、胸を借りる、というか、身を委ねている状態。
ビリー自身の意志はどこに行ったの、という感じで、
曲はビリーひとりのものだけど、ビリーらしさがなく、
スティーブの匂いがぷんぷんするから、面白い。
あ、いや、大変だったんだろうな、と・・・
ただ、スタジオでは、いい感じのジャムセッションになって、
プロデューサーが泣く泣くフェイドアウトしたという逸話もあり、
楽しんでいた様子は、伝わってくる。
さりどそれとて、束の間の楽しみだったのかな、と。
そしてアルバムは、
聴き手はおろか、作り手さえもが
混迷に巻き込まれているうちに、幕を閉じる。
などと、結構辛口なことを書きましたが、
僕自身は、このアルバム、大好きです。
聴いた回数では、GLASS HOUSESより多いかも。
なんせ、リアルタイムでLPを聴いたアルバムですし、
愛着はあります。
そして、やはりファンである以上は、
そんな混迷する姿にさえも、接したいものです。
一緒に悩んだり、一筋の明かりを見出したり。
だから、ある意味、
ビリー・ジョエルらしくないというのは、違います。
これもまた、ビリー・ジョエルらしい、と。
ただ、商業芸術である以上、
ビリー・ジョエルという「商品」は厳然と存在するわけで、
それを求めると、ちょっと違うぞ、という意味です。
そして、ビリー・ジョエルらしさを求めないのであれば、
音楽のクオリティはかなり高く、安心して聴けます。
その「品質保証」もまた逆に、ビリーらしくもあるのかも。
なんだかよく分からなくなってきたので、もう終わりにします。
写真について
今回は、「橋」っぽい写真を(!?)選びました。
01:ハウもCDを紹介します
02:A公園のアーチ橋と桜
03:セイヨウタンポポ
04:A公園のデッキ園路と桜
05:橋の欄干にとまるハクセキレイ、恵庭市
06:アイーダとハウ
06

01

THE BRIGDE / Billy Joel
ザ・ブリッジ ビリー・ジョエル released in 1986
いきなり言いますが、おそらく
ビリーでは、最も人気がないアルバムでしょう。
それは、なぜか。
ビリー・ジョエルらしくないから。
アルバム全体の雰囲気は、よく言えば、
リラックスしていて、というか、そういう風に装っていて、
悪く言えば、緩い、とにかく緩い。
前作AN INNOCENT MANで、
オールディーズ風に挑戦して大成功したことが
音楽内外でさまざまに影響したのか、この頃ビリーは、
個人的に、いろいろと悩んでいたのではないかなぁ、と。
元々ビリーは、本人曰く、優柔不断な人らしいのですが、
心の支えを失いかけて、露頭に迷っているような感じがします。
ただし、それまでもビリーは、
迷うことからいい作品を生み出してきた、
その姿が、人間味あふれる音楽を作ってきた、
とも言えるのですが。
しかしやはり、いつまでも若くてハングリーではない。
今度は、本格的に行き詰ったな・・・
このアルバムからは、そんなことも感じます。
いや、リリース当時から、感じていました。
そして、解決の糸口を見つけようと努力はしたけど、
見つからないまま、契約というタイムリミットに襲われ、
不本意なかたちでリリースした・・・
そんな感じが、拭えません。
「橋」というタイトルは、
そんな状況を乗り越えたいという願いだったのかもしれません。
豪華ゲストが3人も参加しているのが、
悩んでいるまたひとつの証拠でもあるように思えますし、
他の人の声が入っているのが、
ビリーらしくなさを助長している、そんなところでしょう。
それについては、各々の曲にて、また。
02

Tr1:Running On Ice
ピアノの連打で颯爽とアルバムは幕を切って落とす。
いいぞ、これ!
期待感十分、なだれ込むような展開もいいし、
アルバムの冒頭としては、合格点以上の佳曲。
さりげなくスカなのが、さりげなく新しい気も(笑)。
Tr2:This Is The Time
70年代ソウルの影響がうかがえる、都会風のバラード。
なかなかに聴かせる曲。
ただ。
ビリーは以前は、
黙っていても「都会風」の音がにじみでていた人なのに、
ここでは「都会風ソウル」という上着をまとっているのが
気になるといえば、気になる・・・
Tr3:A Matter Of Trust
これは僕も大好きで、ベスト盤に入っていても、
70年代の数多の名曲にもひけをとらない曲だと思います。
なんといっても、思いっきりビートルズ風(笑)。
じゃあ、ビートルズでこれに似た曲があるかというと
そういうわけでもないんだけど、
とにかく、ビートルズの香りが漂う曲。
ここまでは、危ういながらも、悪くない流れで進むのだが・・・
03

Tr4:Modern Woman
この曲が大好きな人、ごめんなさい!
この曲が始まると、一気に瓦解する、そんな感じが・・・
これは浮いている。
ベット・ミドラー主演の映画「殺したい女」のテーマ曲。
オールド時代にモダンなロックンロールをやってみた、
というノリだけど、チープな感じは否めない。
いろんなところで浮いているのは、
アルバムのコンセプトがしっかりしていない証拠か。
あるいは、コンセプトがないのか。
そもそも、先に出た曲を後からアルバムに入れるのは、
いろんな意味で、アブナイんですが・・・
Tr5:Baby Grand
豪華ゲスト先陣は、御大レイ・チャールズ。
これはそのまんま、レイ・チャールズ風の、
或いは、正面切ったアメリカン・スタンダード風の曲。
ビリーが自分の世界にレイを招いた、というよりは、
ビリーが呼ばれたような錯覚を起こします。
つまり、ビリーらしさがあまり感じられません。
ただし、先刻出た新譜All My Lifeを聴けば、
この世界もまたビリーの世界であることが、
後になって分かった、という感じもします。
などと書きましたが、これはとってもいい曲です。
名曲、といっても過言ではありません。
2人のゆったりしたヴォーカルが、しみてきます。
04

Tr6:Big Man On Mulberry Street
ビッグバンド風の、というか
もろに、そういう曲をやってみました、という曲。
ただし、Zanzibarのように
自分の世界に引き寄せる強引さがなく、
出来合いのサウンドは、つまらないといえば、つまらない。
おまけに、NYの実在する通りの名前らしいのですが、
そういうリアリティも、あまり感じません。
時代が変わった、といえば、それまでですが・・・
前の曲もそうだけど、このアルバムは、
自分の世界に引き寄せているのではなく、
そちらの世界に擦り寄っていっている。
ただし、これもまたいい曲ではありますが・・・
Tr7:Temptation
これは隠れた名曲。
破綻したメロディを静かな情熱を込めて歌う
ビリーの姿に、心を激しく揺さぶられる。
プロの作曲家が作る「まとまった曲」にはない
この破綻こそが、ロックだ。
破綻がないとロックじゃない。
この曲がなければ、このアルバム、
僕の評価はもっと落ちたと思います。
ほんとにいい曲だなぁ・・・
05

Tr8:Code Of Silence
豪華ゲスト第2弾は、シンディ・ローパー。
あのシンディ・ローパーですよ!
あまりにもインパクト強すぎ!
ビリーは、自信がなかったんだろうな。
それを隠すために、シンディに派手にやってもらった・・・
曲もシンディと共作扱いで、ビリー史上初めて、
作曲者に他の人の名前が入った曲でもあります。
この曲のビリーを聞くと、
なんとかして助けてあげたい、と思います(笑)。
ただ、ただ。
いい曲なんだよなぁ・・・
Tr9:Getting Closer
最後のゲストは、大先輩にして、
当時ソロで最高のキャリアを築いていた
スティーヴ・ウィンウッド。
先の2人と違い、スティーヴは
コーラス程度で声は目立たないのですが、
ハモンドオルガンは逆にフィーチャーされており、
これはもう、胸を借りる、というか、身を委ねている状態。
ビリー自身の意志はどこに行ったの、という感じで、
曲はビリーひとりのものだけど、ビリーらしさがなく、
スティーブの匂いがぷんぷんするから、面白い。
あ、いや、大変だったんだろうな、と・・・
ただ、スタジオでは、いい感じのジャムセッションになって、
プロデューサーが泣く泣くフェイドアウトしたという逸話もあり、
楽しんでいた様子は、伝わってくる。
さりどそれとて、束の間の楽しみだったのかな、と。
そしてアルバムは、
聴き手はおろか、作り手さえもが
混迷に巻き込まれているうちに、幕を閉じる。
などと、結構辛口なことを書きましたが、
僕自身は、このアルバム、大好きです。
聴いた回数では、GLASS HOUSESより多いかも。
なんせ、リアルタイムでLPを聴いたアルバムですし、
愛着はあります。
そして、やはりファンである以上は、
そんな混迷する姿にさえも、接したいものです。
一緒に悩んだり、一筋の明かりを見出したり。
だから、ある意味、
ビリー・ジョエルらしくないというのは、違います。
これもまた、ビリー・ジョエルらしい、と。
ただ、商業芸術である以上、
ビリー・ジョエルという「商品」は厳然と存在するわけで、
それを求めると、ちょっと違うぞ、という意味です。
そして、ビリー・ジョエルらしさを求めないのであれば、
音楽のクオリティはかなり高く、安心して聴けます。
その「品質保証」もまた逆に、ビリーらしくもあるのかも。
なんだかよく分からなくなってきたので、もう終わりにします。
写真について
今回は、「橋」っぽい写真を(!?)選びました。
01:ハウもCDを紹介します
02:A公園のアーチ橋と桜
03:セイヨウタンポポ
04:A公園のデッキ園路と桜
05:橋の欄干にとまるハクセキレイ、恵庭市
06:アイーダとハウ
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Posted by guitarbird at 23:29
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