2009年12月05日
BATTLE STUDIES ジョン・メイヤー
いつものように
写真など音楽に関係ないコメントも
大歓迎です!
この秋に出た新譜で、
僕が最近いちばん気に入っているCDです。
そして僕には「新しい人」。
01

BATTLE STUDIES Jonh Mayer relaesed in 2009
バトル・スタディーズ ジョン・メイヤー
ジョン・メイヤー。
僕は、1999年頃までは、割と積極的にMTVを観ていて、
「新しい人」のCDを買って聴いていました。
まあしかし、最後の頃はほとんどが、
それまで好きな人の新譜の情報を追いかけるだけで、
「新しい人」もそれほど響いてこなくはなっていましたが。
2000年頃についにMTVを観るのをやめると、
札幌に帰ってからFMはまったく聴かなくなっていたし、
情報以上の音楽に接する機会がなくなったので、
必然的に、「新しい人」を聴くのをやめました。
ジョン・メイヤーは、今世紀に入ってから出てきた
「新しい人」のようなので、音楽に接する機会もなく、
こんな人がいるんだ、という情報以上はないまま、
今年まできていました。
でも、僕が接していた数少ない情報の中には、
「ああ、売れてる人なんだな」以上に
僕にとっては意味があることがあったのです。
ギターのFender U.S.A.から、
ジョン・メイヤーのシグネイチャー・モデルの
ストラトキャスターが出ていること。
或る日、ネットでFender U.S.A.のサイトで、
Signatureシリーズを見ていてそれを発見し、驚きました。
彼はギターが上手い、それは情報として知っていましたが、
シグネイチャー・モデルが出ているということは、
かなり有名かつ認められたギタリストであることの証明。
すごい人なんだなぁ、と。
なお余談、この新譜を買ってから知ったのですが、
ジョン・メイヤーは「現代の3大ギタリスト」のひとり、
と呼ばれているそうです。
でも僕は、他の2人が誰なのかを、今のところ知りません。
ただ、この事実を知った時に、そうかやはり今でも、
そのようにして「付加価値を付けて」盛り上げる、
ということが行われているんだな、この業界は、
意外と体質が古いままなんだな、と思いました。
さて、でも、僕は一時期、「新しい人」に対して
意固地なまでに心を開かなくなっていたので、
聴いてみよう、とまでは思いませんでした。
02 旧譜3CDのセット

しかし、今年になってまた「新しい人」に目が向くようになり、
「新しい人」を聴かないのは音楽の楽しみを自ら奪っている、
と自覚するようになってから、ジョン・メイヤーは
そろそろ聴くかな、と思うようになりました。
そんな折、彼の旧譜アルバムのCD3枚のセットが、
2500円くらいで売られていることを知り、
興味があるのでそれを買うことにしました。
当初はブックオフなどで中古を探してとも思いましたが、
1枚当たり800円以下ならむしろ安いし、新品だし、
ちまちま探すよりは一気に買った方がいいかと思いました。
ただしもちろん、一気に3枚も買って気に入らなかったら
どうしよう、という思いもありましたが、
そうだとしても2500円は勉強代だと割り切ることにしました。
まあ、物としても欲しかったというのもあったんですが。
なお余談、この中のROOM FOR SQUARESというアルバムは、
この箱にあるジャケット写真と実際のCDのジャケットの
デザインが違ったのですが、もちろん内容は一緒、
国によりジャケットが違うのでこうなったのでしょう。
さて、ジョン・メイヤーを聴いてみると・・・
すごく気に入った、という感じには少し足りなかったけど、
どういう人でどういう音楽かは実際に聴いて分かったし、
悪くはない、聴いてゆけば何かがつかめそうだな、
という、やや微妙な好感触を得ました。
ただ、僕の劣った音楽記憶力ではもちろん、
アルバム3枚もいっぺんには覚えられないので、
何度かひと通り聴いた後、1枚に絞って聴くことにしました。
03 HEAVIER THINGS・・・ハウのことじゃない(笑)

その1枚がこれ、HEAVIER THINGS
このアルバムが実は、僕とジョン・メイヤーの
最初の接点になりかけたCDだったのです。
というのも、このアルバムは、数年前、
僕がフェンダーのギターの件を知って少し興味が出た頃に、
さるレコード店の輸入盤セールに1000円であったのを、
迷って買わなかった、ということがあったのです。
ジャケットも、まさにストラトを持っていますし。
そしてこれを聴くことにしたもうひとつの理由が、
この中の曲Daughterが、2005年度グラミー賞において、
「最優秀楽曲賞 Song Of The Year」を受賞していたことが
分かったからでした。
僕は、毎年ニュースでグラミー賞の情報は
追っているつもりでしたが、それは知りませんでした。
その頃は、「新しい人」への興味もなかったですし。
なお、僕は、グラミーのAlbum Of The Yearを受賞した
アルバムはすべて買うことにしているのですが、
2005年度は、レイ・チャールズが亡くなられた後で、
レイが、エルトン・ジョン、ウィリー・ネルソン、
ノラ・ジョーンズなど、
多くの人と「デュエット」したアルバム
GENIUS LOVES COMPANYがその賞を受賞しており、
そのCDは当時既に買って持っていました。
ジョン・メイヤーに戻って、そのアルバムを聴いてゆくと
これはかなりだいぶ気に入ってきました。
それを聴いていたところ、この秋に
彼の新譜が出ることを知りました。
それはまったく知らなくて、よい偶然でしたが、
僕は「音楽(と本)には呼ばれる時がある」
と常々思っていて、この偶然は偶然ではない、
きっと呼ばれたんだと思い(笑)、
新譜が出るのをわくわくしながら待っていました。
そして、ついに聴きましたが、
正直、予想していたよりはるかに良かったのです。
「微妙さ」がなくなり、ほんとに好きになりました。
全体の印象としては、よい意味で
「クールな人だな」と感じました。
決して熱くならない人というか、
歌の中で感情がこもって力が入ることがあっても、
熱くはならず、さらっとやり過ごす感じがします。
そう感じさせる要素のひとつとしては、彼は歌の中で
高音になると声がファルセットになることがありますが、
それにより、声や音楽に「熱さ」をこもらせずに、
「熱さ」を逃がしている、そんな感じがしています。
歌、曲、ギターの音は、とにかく心地よさを追い求めていて、
その辺も熱くなりすぎていないと感じる部分です。
そうですね、「涼しい心地よさ」ですね。
これは新しい感性なのかな。
もうこの年代になると、どんな音楽の影響を受けている、
ということを具に見るのは意味がないとも思いますが、
いろんな音楽のいい部分を消化吸収していき、
「涼しいけど心地よい音」を持ち味としたのでしょう。
とにかく、すぅっと気持ちが自然と高ぶり、
またすうっとすぐに落ち着く、そんな音です。
そしてもちろん、歌心はとてもある人であり、
僕はそこが気に入りました。
そうそう、この人の声は、もう少し太くすれば荒れた声、
もう少し細くすればハスキーという
ぎりぎりのところで踏みとどまっている感じの、
決して美声じゃないけど、かなり独特な声ですが、
やっぱり声もまた重要な部分であることも分かります。
しかし一方で、新譜のタイトル
BATTLE STUDIES「戦いの科目」が気になりました。
ジョン・メイヤーは、優男というほどでもないけど、
僕が抱いたイメージからして、「戦い」という言葉が
似合わないような気がしていたからです。
でも実際このアルバムには、少なくとも3曲の曲名に、
直接的に「戦い」に関係する単語が入っていますし、
他も「戦い」に関すると解釈できるものがあります。
だけど歌詞を読んでも、例えばアイアン・メイデンのように
直接的に戦場のことを歌っているわけではないですし、
声高に反戦を歌っているわけでもないようなので、
やはりこれは「男女の仲」であったり、
現代社会において人間はいろいろと「戦っている」ことを
象徴的に表したものであると僕は読みました。
そしてこのタイトルは、そうした「戦い」に備えた
気持ちのありようを科目として上げた、ということでしょうか。
ジャケット写真、コートの襟に手を当てるジョンは、
戦いに備えている心持をよく表わしていると思います。
アルバムは、ジョン・メイヤー自身と、
ドラムスのスティーヴ・ジョーダンのプロデュース。
作曲も、1曲のカバーを除いてはジョン自身。
ベースは、今のザ・フーにいるピノ・パラディーノ、そして
キーボード数曲には、あのフェイシズの名オルガニスト
イアン・マクレガンが参加しています。
若いのに、こうした名のあるベテランを
バックに起用しているというのは、
やはりギタリストとして認めてられるのでしょうし、
それ以上に、彼が古きよきロックの伝統を受け継いだ
「正統派」であることも表わしていると思います。
なお、他のゲスト参加ミュージシャンについては、
曲を追う中で触れてゆきます。
04 ヒヨドリは戦っているのか・・・

Tr1:Heartbreak Warfare
イントロのフェイドインしてくる楽器の音が、
ベートーヴェンの第九の最初に似ていて、僕は、
そこからもう「なんだろう」って引き込まれていました。
軽やかに鳴り続けるエレクトリック・ギターが心地よい
ミドルテンポの、曲名とは裏腹に、爽やかな曲でスタート。
Tr2:All We Ever Do Is Say Goodbye
2曲目にしっとりとしたバラードを持ってきて「落とす」のは
ちょっと反則気味だけど、でも、いい流れを作っています。
逆にこれでぐぃっと気持ちが入っていきます。
言ってしまえば、雰囲気がちょっとジョン・レノン風の曲。
そう感じた時点でこのアルバムは素晴らしいと思いました。
ギターのゲストが、元プリテンダーズ、そして
元ポール・マッカートニーのバンドで僕もステージで観た
ロビー・マッキントッシュ、これはうれしい!
それにしても、新しく出てきた曲で、
こんなにも美しい曲に出会ったのは、いつ以来かな、久しぶり。
何年かすると、新たな「さようなら」の歌の
定番になりそうな予感の、「名曲候補」の曲。
Tr3:Half Of My Heart (with Taylor Swift)
ミドルテンポの素軽いポップな曲、ヒットしそう。
ゲストは、曲名の後に明記されているのですが、
カントリー界の新歌姫、テイラー・スウィフト。
この人はアメリカでかなり売れているのは知っていて、
ちょっと興味はあったのですが、それがこんなかたちで
聴くことができて、ちょっとうれしかったです。
朝の散歩に似合いそうな曲。
Tr4:Who Says
カントリータッチの軽やかで落ち着いた曲は、もちろん、
アコースティック・ギターの響きがまたいい雰囲気。
♪ Plan a trip to Japan alone
という歌詞があるのが、やはり気になる(笑)。
アコースティックギターのゲストは、名手ワディ・ワクテル。
ギタリストがギタリストをゲストとして招く、
このことからも先達への敬意が感じられます。
Tr5:Perfectly Lonely
打って変って少し硬質なエレクトリック・ギターのイントロが
その場の空気をゆっくりとかき回すように切り込んでくる、
ミドルテンポの明るい曲。
だけどタイトルはやっぱり寂しい、はず。
そこをさらりと表すのが新しい感覚、都会的なのかな。
かといって強がりにも聞こえない、自然体で響いてきます。
ギターソロも待ってましたという感じ、ストラトでしょうけど、
でも独特な響きで鳴ってきます。
Tr6:Assasin
この曲名Assasin=暗殺者は特に最初は違和感がありました。
重たくて暗い曲で、サビが印象的で胸に迫ってきます。
でも、やっぱり、熱くはないんです、さらっとしている感じ。
しかし、暗殺したいような気持というのは・・・
後からじわっとしみてきます。
Tr7:Crossroads
そして彼の「熱くないところ」がよく出ているのが、これ。
そう、クリームで有名、ロバート・ジョンソンのあの曲のカバー。
ぜんまい仕掛けのおもちゃみたいな軽いギターリフとリズム隊で、
さらっと歌っているこれは、クリームと比べて聴くと、
マレーシアとスウェーデンくらいに温度感覚が違います。
僕はそして意外とこれが気に入りました。
Tr8:War Of My Life
これは80年代風という感じですね。
僕が育った年代だし、安心して聴けるポップソングです。
♪ I've got a hammer and a heart of glass
だけど、歌詞をじっくりと読むと、
何か尋常ではない恐怖心が描かれていて、
音の心地よさとこの歌詞の心持ちのアンバランスさが
不思議ではあります。
しかしこれ、曲としてはむしろ元気づけられる系で、
敢えて軽く表わすことで前向きさを訴えているのかも。
Tr9:Edge Of Desire
泡が沸き立つみたいなギターのイントロが印象的。
ワルツの、全体的にふわふわした響きの曲。
Tr10:Do You Know Me
アコースティックギターの高音のアルペジオが印象的な、
アルバムでいちばん静かな、落ち着いた曲。
微妙にアフリカのリズムを思い起こさせるのは、
やはり音楽がいろいろと混ざり合った上で表現されている
そんなことも感じました。
アルバムの最後は静かな曲が続きます。
Tr11:Friends, Lovers Or Nothing
ピアノの短いイントロを受けた後、
気持ちがゼロから一気に舞い上がったような
とろけるようなギターの音が心地よい、もう絶品。
歌も、いちばん気持ちがこもっています。
グラミーを取ったDaughterもそうだったけど、この人は、
人と人とのつながりを大切にする人なんだなと思いました。
ゆったりとしたバラードで、これまでの「戦い」を
ここでひとつにまとめる、いわば「大団円」、
これを聴けばすべてがうまく、という感じです。
テンポは遅いけど静かではない、盛り上がる曲。
これもまた将来の名曲候補ですね。
そういう曲が少なくとも2曲あるのが、
このアルバムの充実を物語ってもいます。
このゆったりと構えた曲でアルバムは最後を迎え、
「涼しくて気持ちいい」時間が終わります。
いいですねぇ、とってもいいですよ!
「涼しい心地よさ」がなんともいえない味です。
このアルバム、この人からは、
ロックが培ってきた何か大切なものを、
しっかりと受け継いでいる人であると感じ、
そこがまた安心して聴ける部分だと思いました。
持っていないCDも買い揃えないと(笑)。
もう12月。
毎年僕は、大晦日に、
その年の好きなアルバムの順位を記事にしていますが、
ジョン・メイヤーのこのアルバムは、もしかすると、
逆転で1位になるかもしれない、それほど気に入りました。
やっぱり、「新しい人」を聴く楽しみを、
自ら奪ってはいけないですね、人生、損しますね(笑)。
そして僕は、40代でそのことに気づいて、よかった。
写真など音楽に関係ないコメントも
大歓迎です!
この秋に出た新譜で、
僕が最近いちばん気に入っているCDです。
そして僕には「新しい人」。
01

BATTLE STUDIES Jonh Mayer relaesed in 2009
バトル・スタディーズ ジョン・メイヤー
ジョン・メイヤー。
僕は、1999年頃までは、割と積極的にMTVを観ていて、
「新しい人」のCDを買って聴いていました。
まあしかし、最後の頃はほとんどが、
それまで好きな人の新譜の情報を追いかけるだけで、
「新しい人」もそれほど響いてこなくはなっていましたが。
2000年頃についにMTVを観るのをやめると、
札幌に帰ってからFMはまったく聴かなくなっていたし、
情報以上の音楽に接する機会がなくなったので、
必然的に、「新しい人」を聴くのをやめました。
ジョン・メイヤーは、今世紀に入ってから出てきた
「新しい人」のようなので、音楽に接する機会もなく、
こんな人がいるんだ、という情報以上はないまま、
今年まできていました。
でも、僕が接していた数少ない情報の中には、
「ああ、売れてる人なんだな」以上に
僕にとっては意味があることがあったのです。
ギターのFender U.S.A.から、
ジョン・メイヤーのシグネイチャー・モデルの
ストラトキャスターが出ていること。
或る日、ネットでFender U.S.A.のサイトで、
Signatureシリーズを見ていてそれを発見し、驚きました。
彼はギターが上手い、それは情報として知っていましたが、
シグネイチャー・モデルが出ているということは、
かなり有名かつ認められたギタリストであることの証明。
すごい人なんだなぁ、と。
なお余談、この新譜を買ってから知ったのですが、
ジョン・メイヤーは「現代の3大ギタリスト」のひとり、
と呼ばれているそうです。
でも僕は、他の2人が誰なのかを、今のところ知りません。
ただ、この事実を知った時に、そうかやはり今でも、
そのようにして「付加価値を付けて」盛り上げる、
ということが行われているんだな、この業界は、
意外と体質が古いままなんだな、と思いました。
さて、でも、僕は一時期、「新しい人」に対して
意固地なまでに心を開かなくなっていたので、
聴いてみよう、とまでは思いませんでした。
02 旧譜3CDのセット

しかし、今年になってまた「新しい人」に目が向くようになり、
「新しい人」を聴かないのは音楽の楽しみを自ら奪っている、
と自覚するようになってから、ジョン・メイヤーは
そろそろ聴くかな、と思うようになりました。
そんな折、彼の旧譜アルバムのCD3枚のセットが、
2500円くらいで売られていることを知り、
興味があるのでそれを買うことにしました。
当初はブックオフなどで中古を探してとも思いましたが、
1枚当たり800円以下ならむしろ安いし、新品だし、
ちまちま探すよりは一気に買った方がいいかと思いました。
ただしもちろん、一気に3枚も買って気に入らなかったら
どうしよう、という思いもありましたが、
そうだとしても2500円は勉強代だと割り切ることにしました。
まあ、物としても欲しかったというのもあったんですが。
なお余談、この中のROOM FOR SQUARESというアルバムは、
この箱にあるジャケット写真と実際のCDのジャケットの
デザインが違ったのですが、もちろん内容は一緒、
国によりジャケットが違うのでこうなったのでしょう。
さて、ジョン・メイヤーを聴いてみると・・・
すごく気に入った、という感じには少し足りなかったけど、
どういう人でどういう音楽かは実際に聴いて分かったし、
悪くはない、聴いてゆけば何かがつかめそうだな、
という、やや微妙な好感触を得ました。
ただ、僕の劣った音楽記憶力ではもちろん、
アルバム3枚もいっぺんには覚えられないので、
何度かひと通り聴いた後、1枚に絞って聴くことにしました。
03 HEAVIER THINGS・・・ハウのことじゃない(笑)

その1枚がこれ、HEAVIER THINGS
このアルバムが実は、僕とジョン・メイヤーの
最初の接点になりかけたCDだったのです。
というのも、このアルバムは、数年前、
僕がフェンダーのギターの件を知って少し興味が出た頃に、
さるレコード店の輸入盤セールに1000円であったのを、
迷って買わなかった、ということがあったのです。
ジャケットも、まさにストラトを持っていますし。
そしてこれを聴くことにしたもうひとつの理由が、
この中の曲Daughterが、2005年度グラミー賞において、
「最優秀楽曲賞 Song Of The Year」を受賞していたことが
分かったからでした。
僕は、毎年ニュースでグラミー賞の情報は
追っているつもりでしたが、それは知りませんでした。
その頃は、「新しい人」への興味もなかったですし。
なお、僕は、グラミーのAlbum Of The Yearを受賞した
アルバムはすべて買うことにしているのですが、
2005年度は、レイ・チャールズが亡くなられた後で、
レイが、エルトン・ジョン、ウィリー・ネルソン、
ノラ・ジョーンズなど、
多くの人と「デュエット」したアルバム
GENIUS LOVES COMPANYがその賞を受賞しており、
そのCDは当時既に買って持っていました。
ジョン・メイヤーに戻って、そのアルバムを聴いてゆくと
これはかなりだいぶ気に入ってきました。
それを聴いていたところ、この秋に
彼の新譜が出ることを知りました。
それはまったく知らなくて、よい偶然でしたが、
僕は「音楽(と本)には呼ばれる時がある」
と常々思っていて、この偶然は偶然ではない、
きっと呼ばれたんだと思い(笑)、
新譜が出るのをわくわくしながら待っていました。
そして、ついに聴きましたが、
正直、予想していたよりはるかに良かったのです。
「微妙さ」がなくなり、ほんとに好きになりました。
全体の印象としては、よい意味で
「クールな人だな」と感じました。
決して熱くならない人というか、
歌の中で感情がこもって力が入ることがあっても、
熱くはならず、さらっとやり過ごす感じがします。
そう感じさせる要素のひとつとしては、彼は歌の中で
高音になると声がファルセットになることがありますが、
それにより、声や音楽に「熱さ」をこもらせずに、
「熱さ」を逃がしている、そんな感じがしています。
歌、曲、ギターの音は、とにかく心地よさを追い求めていて、
その辺も熱くなりすぎていないと感じる部分です。
そうですね、「涼しい心地よさ」ですね。
これは新しい感性なのかな。
もうこの年代になると、どんな音楽の影響を受けている、
ということを具に見るのは意味がないとも思いますが、
いろんな音楽のいい部分を消化吸収していき、
「涼しいけど心地よい音」を持ち味としたのでしょう。
とにかく、すぅっと気持ちが自然と高ぶり、
またすうっとすぐに落ち着く、そんな音です。
そしてもちろん、歌心はとてもある人であり、
僕はそこが気に入りました。
そうそう、この人の声は、もう少し太くすれば荒れた声、
もう少し細くすればハスキーという
ぎりぎりのところで踏みとどまっている感じの、
決して美声じゃないけど、かなり独特な声ですが、
やっぱり声もまた重要な部分であることも分かります。
しかし一方で、新譜のタイトル
BATTLE STUDIES「戦いの科目」が気になりました。
ジョン・メイヤーは、優男というほどでもないけど、
僕が抱いたイメージからして、「戦い」という言葉が
似合わないような気がしていたからです。
でも実際このアルバムには、少なくとも3曲の曲名に、
直接的に「戦い」に関係する単語が入っていますし、
他も「戦い」に関すると解釈できるものがあります。
だけど歌詞を読んでも、例えばアイアン・メイデンのように
直接的に戦場のことを歌っているわけではないですし、
声高に反戦を歌っているわけでもないようなので、
やはりこれは「男女の仲」であったり、
現代社会において人間はいろいろと「戦っている」ことを
象徴的に表したものであると僕は読みました。
そしてこのタイトルは、そうした「戦い」に備えた
気持ちのありようを科目として上げた、ということでしょうか。
ジャケット写真、コートの襟に手を当てるジョンは、
戦いに備えている心持をよく表わしていると思います。
アルバムは、ジョン・メイヤー自身と、
ドラムスのスティーヴ・ジョーダンのプロデュース。
作曲も、1曲のカバーを除いてはジョン自身。
ベースは、今のザ・フーにいるピノ・パラディーノ、そして
キーボード数曲には、あのフェイシズの名オルガニスト
イアン・マクレガンが参加しています。
若いのに、こうした名のあるベテランを
バックに起用しているというのは、
やはりギタリストとして認めてられるのでしょうし、
それ以上に、彼が古きよきロックの伝統を受け継いだ
「正統派」であることも表わしていると思います。
なお、他のゲスト参加ミュージシャンについては、
曲を追う中で触れてゆきます。
04 ヒヨドリは戦っているのか・・・

Tr1:Heartbreak Warfare
イントロのフェイドインしてくる楽器の音が、
ベートーヴェンの第九の最初に似ていて、僕は、
そこからもう「なんだろう」って引き込まれていました。
軽やかに鳴り続けるエレクトリック・ギターが心地よい
ミドルテンポの、曲名とは裏腹に、爽やかな曲でスタート。
Tr2:All We Ever Do Is Say Goodbye
2曲目にしっとりとしたバラードを持ってきて「落とす」のは
ちょっと反則気味だけど、でも、いい流れを作っています。
逆にこれでぐぃっと気持ちが入っていきます。
言ってしまえば、雰囲気がちょっとジョン・レノン風の曲。
そう感じた時点でこのアルバムは素晴らしいと思いました。
ギターのゲストが、元プリテンダーズ、そして
元ポール・マッカートニーのバンドで僕もステージで観た
ロビー・マッキントッシュ、これはうれしい!
それにしても、新しく出てきた曲で、
こんなにも美しい曲に出会ったのは、いつ以来かな、久しぶり。
何年かすると、新たな「さようなら」の歌の
定番になりそうな予感の、「名曲候補」の曲。
Tr3:Half Of My Heart (with Taylor Swift)
ミドルテンポの素軽いポップな曲、ヒットしそう。
ゲストは、曲名の後に明記されているのですが、
カントリー界の新歌姫、テイラー・スウィフト。
この人はアメリカでかなり売れているのは知っていて、
ちょっと興味はあったのですが、それがこんなかたちで
聴くことができて、ちょっとうれしかったです。
朝の散歩に似合いそうな曲。
Tr4:Who Says
カントリータッチの軽やかで落ち着いた曲は、もちろん、
アコースティック・ギターの響きがまたいい雰囲気。
♪ Plan a trip to Japan alone
という歌詞があるのが、やはり気になる(笑)。
アコースティックギターのゲストは、名手ワディ・ワクテル。
ギタリストがギタリストをゲストとして招く、
このことからも先達への敬意が感じられます。
Tr5:Perfectly Lonely
打って変って少し硬質なエレクトリック・ギターのイントロが
その場の空気をゆっくりとかき回すように切り込んでくる、
ミドルテンポの明るい曲。
だけどタイトルはやっぱり寂しい、はず。
そこをさらりと表すのが新しい感覚、都会的なのかな。
かといって強がりにも聞こえない、自然体で響いてきます。
ギターソロも待ってましたという感じ、ストラトでしょうけど、
でも独特な響きで鳴ってきます。
Tr6:Assasin
この曲名Assasin=暗殺者は特に最初は違和感がありました。
重たくて暗い曲で、サビが印象的で胸に迫ってきます。
でも、やっぱり、熱くはないんです、さらっとしている感じ。
しかし、暗殺したいような気持というのは・・・
後からじわっとしみてきます。
Tr7:Crossroads
そして彼の「熱くないところ」がよく出ているのが、これ。
そう、クリームで有名、ロバート・ジョンソンのあの曲のカバー。
ぜんまい仕掛けのおもちゃみたいな軽いギターリフとリズム隊で、
さらっと歌っているこれは、クリームと比べて聴くと、
マレーシアとスウェーデンくらいに温度感覚が違います。
僕はそして意外とこれが気に入りました。
Tr8:War Of My Life
これは80年代風という感じですね。
僕が育った年代だし、安心して聴けるポップソングです。
♪ I've got a hammer and a heart of glass
だけど、歌詞をじっくりと読むと、
何か尋常ではない恐怖心が描かれていて、
音の心地よさとこの歌詞の心持ちのアンバランスさが
不思議ではあります。
しかしこれ、曲としてはむしろ元気づけられる系で、
敢えて軽く表わすことで前向きさを訴えているのかも。
Tr9:Edge Of Desire
泡が沸き立つみたいなギターのイントロが印象的。
ワルツの、全体的にふわふわした響きの曲。
Tr10:Do You Know Me
アコースティックギターの高音のアルペジオが印象的な、
アルバムでいちばん静かな、落ち着いた曲。
微妙にアフリカのリズムを思い起こさせるのは、
やはり音楽がいろいろと混ざり合った上で表現されている
そんなことも感じました。
アルバムの最後は静かな曲が続きます。
Tr11:Friends, Lovers Or Nothing
ピアノの短いイントロを受けた後、
気持ちがゼロから一気に舞い上がったような
とろけるようなギターの音が心地よい、もう絶品。
歌も、いちばん気持ちがこもっています。
グラミーを取ったDaughterもそうだったけど、この人は、
人と人とのつながりを大切にする人なんだなと思いました。
ゆったりとしたバラードで、これまでの「戦い」を
ここでひとつにまとめる、いわば「大団円」、
これを聴けばすべてがうまく、という感じです。
テンポは遅いけど静かではない、盛り上がる曲。
これもまた将来の名曲候補ですね。
そういう曲が少なくとも2曲あるのが、
このアルバムの充実を物語ってもいます。
このゆったりと構えた曲でアルバムは最後を迎え、
「涼しくて気持ちいい」時間が終わります。
いいですねぇ、とってもいいですよ!
「涼しい心地よさ」がなんともいえない味です。
このアルバム、この人からは、
ロックが培ってきた何か大切なものを、
しっかりと受け継いでいる人であると感じ、
そこがまた安心して聴ける部分だと思いました。
持っていないCDも買い揃えないと(笑)。
もう12月。
毎年僕は、大晦日に、
その年の好きなアルバムの順位を記事にしていますが、
ジョン・メイヤーのこのアルバムは、もしかすると、
逆転で1位になるかもしれない、それほど気に入りました。
やっぱり、「新しい人」を聴く楽しみを、
自ら奪ってはいけないですね、人生、損しますね(笑)。
そして僕は、40代でそのことに気づいて、よかった。
Posted by guitarbird at 22:29
│ロックC-J