2013年02月07日
BACHELOR NO.2 エイミー・マン
いつものように
写真へのコメントも
大歓迎です!
今日のこの記事のアルバムは、
かつて、まだ僕がBLOGを始めてあまり経っていない頃に
一度取り上げたものです。
しかし、過去記事を見直す作業をしていて読み直すと、
大好きな割には、どうも書き足りなくて、不満が出てきました。
かといって、過去記事は過去記事で、自分の足跡として、
あえてそのままにしておきたいので、
あらためてまた記事にすることにしました。
01

BACHELOR NO.2
OR, THE LAST REMAINS OF THE DODO
Aimee Mann released in 1999
バチェラーNO.2 エイミー・マン
エイミー・マンは、1980年代に
ティル・チューズディのヴォーカルとして
Voices Carryをヒットさせた、シンガー・ソングライターです。
今回は、音楽的なことについて先にまとめます。
彼女は、1999年に、映画『マグノリア』のサントラ
MAGNOLIAを手がけて注目されましたが、
このアルバムは、それを受けてリリースされたもの。
このアルバムにも、そのサントラから何曲かが再収録されていますが、
にもかかわらず、アルバムとしてのイメージの統一感が素晴らしく、
これは、サントラが彼女にソングライターとしての
多大なるインスピレーションを与え、創作活動が充実していたことを
感じさせます。
音的には至ってシンプルなギターが基本のロックで、
アレンジも必要最小限、さらりと聴きやすい音になっています。
エフェクトをかけていないナチュラルなエレクトリック・ギターの音を
存分に味わうことができるのもよい点です。
このアルバムの曲は、流れるようなメロディがすっと心に入ってきて、
それが長いこと心の中に居つきます。
この歌メロの良さは特筆もので、どの曲もついつい口ずさむほど。
これだけ「鼻歌向き」の曲が揃ったアルバムもなかなかないでしょう。
そして何より特徴的なのは、彼女の声。
鼻にかかった、というよりも、鼻と脳の間の空隙で
不規則に共鳴するような不思議な響きの声と、
ささやくような、つぶやくような軽い歌い方は
好き嫌いが分かれるところかもしれません。
しかし、その声に抵抗がなければ、さらには好きであれば、
脳の中の普段は使わない部分を刺激されるような、
妙な心地よさを醸し出してくれる、そんな声です。
あ、もちろん僕は大好きですよ!
そんなエイミー・マン、僕は、
ソロの曲を、1990年代にMTVでよく観て聴いていましたが、
それまでは特に引っかからず、CDを買おうとは思いませんでした。
しかしこれ、タワレコの店頭で見て「ジャケット買い」しました。
僕の「ジャケット買い」史上では最大のヒット、
8回裏の逆転2ランホームランです(笑)。
ではなぜジャケット買いをしたのか。
そのジャケットに写っているのは・・・
02

ドードー
インド洋のモーリシャス諸島などにかつて生息し、
17世紀に絶滅した、飛べない鳥。
そして、『不思議の国のアリス』にも出てくる鳥として、
いまやかなりの知名度を得た「幻の鳥」です。
ただ、このアルバムが出た頃は、少なくとも日本では
知名度はそれほどでもなかったと思い、
この10年での自然への意識の高まりを感じます。
このアルバムのタイトルのBachelorは「独身」ですが
これは「ドードー並に珍しい存在」という比喩であり、
実際、ドードーについて直接触れた曲はないですし、
「第2第3の(もっともっとあるけど)ドードーを生み出すな」という
地球的エコ的自然的メッセージを持った曲も入っていません。
鳥好きの僕としては、それが少し残念なところではありましたが。
とここで、ドードーの余談をはさみます。
今後、ドードーの話をする機会もあまりないかもしれないので。
ドードーがかつて生息していた島では、ドードーがいなくなると、
ドードーがその実を好んで食べていたある種のヤシの仲間の木も
それにつれて減ってきて、絶滅寸前にまでなりました。
調べてみると、その木の実をドードーが食べることにより、
外側の固い殻が消化器官の中で擦られ削られて薄くなり、
それが排泄されることによって、実が芽を出すことが出来た、
そしてドードーが歩くことによりその木の分布を広げるのに
役立っていたらしい、ということが分かってきました。
その島には他にはこの木の実を食べる生物がいないので、
ドードーの絶滅が、直接、他の生物にも影響を与えた、ということです。
ただし、この説は、他方面から否定する向きもあるようなので、
一応、ひとつのお話として紹介しておきました。
次の写真は「不思議の国のアリス」(ちくま文庫)の挿絵で、
右後ろに描かれている大きな鳥がドードー。
03

ところで。
これを聴き続けて少し経ってから僕は、こう思いました。
「この人いったい、いくつなんだ?」<
調べてみると、エイミー・マンは1960年生まれで、
このアルバムがリリースされた時は39歳。
今の僕より少し年下ですが、僕がこれを初めて聴いた時は上でした。
このアルバムを聴き込んでいくと、まさに「年齢不詳」で、
「大学生の恋物語」をイメージし、それが頭で定着しました・・・
そのイメージは最初の頃はなにか違和感がありました。
だって、40歳にもなろうとしているというのに・・・
しかし、それを言っちゃおしまい、というやつですね(笑)。
僕は、かつて、ABBAの魅力を記事にした時に、
ABBAの音楽の魅力のひとつを担っているのは、
「ヴォーカルが年齢不詳である点」というようなことを書きました。
かつては「若者の音楽」であったロックも、
いまや、聴き手も演じ手も、それ相応の年になってきました。
ローリング・ストーンズも、ポール・マッカートニーも、
エリック・クラプトンもみな60代でまだまだ現役でやっていますし、
20代に作ったラブソングを、今でも平気で歌い続けていますから(笑)。
それに、「この人いくつなんだ?」は、翻って、
僕自身にも言えることであるはずですし、そう考えると、
僕もバカなことを考えたというか、墓穴を掘ったというか・・・(笑)。
ただ、音楽というものは、大なり小なり、
聴き手が演じ手の心に近づきたいと思わせる部分があるわけで、
その気持ちの濃淡はアーティストによりけりですが、
僕は、これを聴いて、かなり心を近しく感じたのだけれど、
それが「現実」に戻ってみると違和感があった、
ということであるかもしれません。
音楽を聴いていると、
いつまでも心を若く保てるのかもしれません
それは決して、懐古的な意味(だけ)ではなく、
音楽の世界では、年齢も性別も国境も関係なく、
みんなが若いままなのです。
「音楽は、永遠の心の清涼剤」ですね!
なんて、硬く考えなくても、このアルバムは、
その若々しさが心地よくもあり、微笑ましくもあり、
また、人によっては「ほろ苦い」ものかもしれません・・・
04 今朝、雪まつり会場で見た光景

Tr1:How Am I Different
軽やかなギターの音と少し跳ねたドラムスで静かに始まる。
途中、鐘の音のようなきれいなギターが絡んできながら、
歌メロが次々と繰り出され、劇的に流れてゆく曲。
エイミーのヴォーカルには、すぐに心が奪われます。
最後はギターソロが盛り上げて、冒頭から素晴らしい予感。
Tr2:Nothing Is Good Enough
さらっとしたワルツスタイルのバラード。
サントラにはインストゥルメンタルバージョンが入っていて、
そこに歌詞をつけたものでしょう。
これはふわっとした感覚の「かわいらしい」曲の代表ですね。
軽く歌う彼女の歌唱法が、この軽い曲調では特に魅力的。
Tr3:Red Vines
大人しいバラード。
少し沈んだムードのイントロに続いて、
まるで悩みを打ち明けるように低音で歌ってきたところに突然、
高音の旋律が混ざるのが、聴いていていつもはっとさせられます。
そこから無理なく盛り上がってサビまで流れてゆくのが気持ちいい。
じわっとしみてくるまさに、ワインにほろ酔い気分の曲。
Tr4:The Fall Of The World's Own Optimist
ちょっとだけ教会音楽風の静かな雰囲気を
硬質なギターの印象的なフレーズが打ち破って盛り上がり、
あとはいつものエイミーの世界にどっぷり。
最初に聴いて曲作りのうまさを感じた曲。
このアルバムはコーラスもかなり凝っていて楽しいですね。
Tr5:Satellite
こちらもワルツ、特にワルツの曲は優しくていい感じに響いてきます。
サビに入るティンパニーが気持ちを盛り上げてくれます。
Tr6:Deathly
いきなりすっとんきょうな声で始まってちょっと驚く。
『マグノリア』のサントラから引っ張ってきたうちの1曲。
ストリングスで盛り上げるのはいかにも映画的かな。
静かなようで、結構情熱的な曲。
Tr7:Ghost World
ミドルテンポの明るいポップな曲。
短いギターのイントロでさくさくと歌い始めるこれは、
気持ちをぐんと前に押し進めてくれる「元気ソング」。
以下はサビの部分の歌詞ですが、
So I'm bailing this town-or
Tearing it down-or
Probably more like hanging around
旋律の中でいちばん音が高い部分に「or」という言葉をあてるのが、
意表を突いてて、強く印象に残ります、うまいですね。
最後に盛り上がってどうなるかな、と期待していたところ、
あっさりと終わるのもいいですし。
そういえば、このアルバムの聴きどころのひとつとして、
ギターのバッキングがかなり凝っていて楽しいというのもあります。
05 ブックレットにはこんな絵も・・・

Tr8:Calling It Quits
イントロは少し重い音、歌が始まってもやはり重暗く進み、
だけどタイトルを歌う部分だけ微妙に明るく、しかしすぐ元に戻る。
そして曲全体の印象は決して暗くもネガティブでもないという
ちょっと不思議な響きの曲。
ドラムスのリズムの跳ね具合がそう感じさせるのかも。
いや、違うな(笑)、全体的に祈りのような感じの曲。
サウンド的にもこの中ではいちばん凝った作りです。
Tr9:Susan
すっとボケたようなユーモラスな響きのギターのイントロが面白い。
エイミーがあの声で歌い始めると、やはりすっとぼけた雰囲気。
声の「鼻から抜け具合」も、これは目立ちますね(笑)。
優しく語りかけてくる、ほっこりと笑顔で温まる曲ですね。
Tr10:Backfire
イントロはアコースティックギターで始まりますが、そういえば
このアルバムはエレクトリックとアコースティックのギターの音が
あまり変わらない響きで聴こえてくるのが面白いところ。
でもそれは、アコの響きが好きな人にはマイナス面かも。
とにかく頭に浮かんだことを次々と歌い続けるような元気な曲。
Tr11:It Takes All Kinds
曲全体はほの暗くじわっと迫ってくる雰囲気のバラード。
この中ではいちばんしみてくる感傷的な曲ですね。
コーラスがまたユニークで雰囲気盛り上げます。
この曲はエイミーの不思議な響きのヴォーカルの味が
最大限に引き出されている感じです。
Tr12:Save Me
ベースがもこもこと動き出し、ちょっと雰囲気が変わってスタート。
ノスタルジックな気分に浸るほの暗い印象の曲。
カーペンターズのSuperstarの旋律が
間奏にちょっとだけ織り込まれています。
これもサントラからで、そういえば映画も「心の救済」がテーマでした。
Tr13:Just Like Anyone
ここまで語ってきた物語をさらりとまとめて、
ひとつの境地に達したかのようなすがすがしさがあるフォークバラード。
諦めでもないし、楽観でもないし、
何かがダメになっても、何かは確実に将来につながって伸びている
そんな感じを受けます。
Tr14:You Do
映画の裏テーマ曲でもあったこの曲を最後に置いて、
すっかり落ち着いた雰囲気で終わるのは、ほっとします。
ほんと、救済されたような心休まる、そして癒しの感覚の曲。
そして、この充実したアルバムが平和のうちに終わります。
これ、1990年代の好きなアルバムを10枚挙げろ
と言われれば、間違いなく入ります。
試しに思いついたものを並べてゆくと、
R.E.M. AUTOMATIC FOR THE PEOPLE
(これはリアルタイムのオールタイムで1位ですから)
シェリル・クロウ SHERYL CROW
ポール・マッカートニー FLAMING PIE
アイアン・メイデン FEAR OF THE DARK
といったアルバムが来てますが、それらはみな
独立したカテゴリが出来るほど好きなアーティストなだけ余計に、
僕がこのアルバムがいかに好きかがお分かりいただけるかと。
このアルバムを記事にしたのは、もうひとつ、きっかけがありました。
ひと月ほど前に、近くのブックオフで、
これが750円で売られているのを見つけました。
もちろん持っているものなので買いませんでしたが、しかし、
僕はこのアルバムがほんとうに大好きで、店を出て少ししてから、
なんだかとりつかれたように、ああ、買っておけばよかった、
買うべきだ、と思い始めたんです。
僕は意外と一途な人間のようで(笑)、そう思い始めると
もう買うしか手がない、と、寝るまでには決めていました。
エイミー・マンは一般の知名度も高くないし、
どうせ(マニアが多くないはずのブックオフでなら)売れないだろ、
と、おまじないのように頭の中で唱えていました。
翌日、店に行くと・・・ない、売れてしまった!
それが昨日あった棚、他の棚(洋楽だけですが)すべて
3回くらい舐めるように見直しましたが、どこにもありませんでした。
がっかり。
へえ、売れることがあるんだ、とちょっと驚く一方で、
これはジャケットがほんとに素敵なので、
ジャケット買いした人がいたのかな、とも思いました。
だけど、店を出ることに、ふと思いました。
そうか!
このアルバムの素晴らしさに新たに触れた人が1人現れたんだ、
それは音楽聴きとしてうれしいことじゃないか!
その人は気にいってくれたかなぁ・・・
そう思うと、なんだかとてもいいことをしたようで、うれしくなりました。
完全な勘違いですが(笑)。
そしてその時からまたこのアルバムを
CDプレイヤーの横に出してきて時々聴き、それで記事を読み返し、
いろいろ考えて、ついに新たな記事にした、というわけです。
そしてそして、
僕がこのアルバムをいかに好きかというのもあらためて思い、
また新たなかたちで、このアルバムの良さを語りたかったのでした!
まあ、個人のBLOGだから、
好きなアルバムは何度取り上げても構わないとは思いますが(笑)。
最後に、今年の「さっぽろ雪まつり」の雪像から1枚
07

「北の動物家族」
この生き物たちは、決してドードーにはなりませんように。
写真へのコメントも
大歓迎です!
今日のこの記事のアルバムは、
かつて、まだ僕がBLOGを始めてあまり経っていない頃に
一度取り上げたものです。
しかし、過去記事を見直す作業をしていて読み直すと、
大好きな割には、どうも書き足りなくて、不満が出てきました。
かといって、過去記事は過去記事で、自分の足跡として、
あえてそのままにしておきたいので、
あらためてまた記事にすることにしました。
01

BACHELOR NO.2
OR, THE LAST REMAINS OF THE DODO
Aimee Mann released in 1999
バチェラーNO.2 エイミー・マン
エイミー・マンは、1980年代に
ティル・チューズディのヴォーカルとして
Voices Carryをヒットさせた、シンガー・ソングライターです。
今回は、音楽的なことについて先にまとめます。
彼女は、1999年に、映画『マグノリア』のサントラ
MAGNOLIAを手がけて注目されましたが、
このアルバムは、それを受けてリリースされたもの。
このアルバムにも、そのサントラから何曲かが再収録されていますが、
にもかかわらず、アルバムとしてのイメージの統一感が素晴らしく、
これは、サントラが彼女にソングライターとしての
多大なるインスピレーションを与え、創作活動が充実していたことを
感じさせます。
音的には至ってシンプルなギターが基本のロックで、
アレンジも必要最小限、さらりと聴きやすい音になっています。
エフェクトをかけていないナチュラルなエレクトリック・ギターの音を
存分に味わうことができるのもよい点です。
このアルバムの曲は、流れるようなメロディがすっと心に入ってきて、
それが長いこと心の中に居つきます。
この歌メロの良さは特筆もので、どの曲もついつい口ずさむほど。
これだけ「鼻歌向き」の曲が揃ったアルバムもなかなかないでしょう。
そして何より特徴的なのは、彼女の声。
鼻にかかった、というよりも、鼻と脳の間の空隙で
不規則に共鳴するような不思議な響きの声と、
ささやくような、つぶやくような軽い歌い方は
好き嫌いが分かれるところかもしれません。
しかし、その声に抵抗がなければ、さらには好きであれば、
脳の中の普段は使わない部分を刺激されるような、
妙な心地よさを醸し出してくれる、そんな声です。
あ、もちろん僕は大好きですよ!
そんなエイミー・マン、僕は、
ソロの曲を、1990年代にMTVでよく観て聴いていましたが、
それまでは特に引っかからず、CDを買おうとは思いませんでした。
しかしこれ、タワレコの店頭で見て「ジャケット買い」しました。
僕の「ジャケット買い」史上では最大のヒット、
8回裏の逆転2ランホームランです(笑)。
ではなぜジャケット買いをしたのか。
そのジャケットに写っているのは・・・
02

ドードー
インド洋のモーリシャス諸島などにかつて生息し、
17世紀に絶滅した、飛べない鳥。
そして、『不思議の国のアリス』にも出てくる鳥として、
いまやかなりの知名度を得た「幻の鳥」です。
ただ、このアルバムが出た頃は、少なくとも日本では
知名度はそれほどでもなかったと思い、
この10年での自然への意識の高まりを感じます。
このアルバムのタイトルのBachelorは「独身」ですが
これは「ドードー並に珍しい存在」という比喩であり、
実際、ドードーについて直接触れた曲はないですし、
「第2第3の(もっともっとあるけど)ドードーを生み出すな」という
地球的エコ的自然的メッセージを持った曲も入っていません。
鳥好きの僕としては、それが少し残念なところではありましたが。
とここで、ドードーの余談をはさみます。
今後、ドードーの話をする機会もあまりないかもしれないので。
ドードーがかつて生息していた島では、ドードーがいなくなると、
ドードーがその実を好んで食べていたある種のヤシの仲間の木も
それにつれて減ってきて、絶滅寸前にまでなりました。
調べてみると、その木の実をドードーが食べることにより、
外側の固い殻が消化器官の中で擦られ削られて薄くなり、
それが排泄されることによって、実が芽を出すことが出来た、
そしてドードーが歩くことによりその木の分布を広げるのに
役立っていたらしい、ということが分かってきました。
その島には他にはこの木の実を食べる生物がいないので、
ドードーの絶滅が、直接、他の生物にも影響を与えた、ということです。
ただし、この説は、他方面から否定する向きもあるようなので、
一応、ひとつのお話として紹介しておきました。
次の写真は「不思議の国のアリス」(ちくま文庫)の挿絵で、
右後ろに描かれている大きな鳥がドードー。
03

ところで。
これを聴き続けて少し経ってから僕は、こう思いました。
「この人いったい、いくつなんだ?」<
調べてみると、エイミー・マンは1960年生まれで、
このアルバムがリリースされた時は39歳。
今の僕より少し年下ですが、僕がこれを初めて聴いた時は上でした。
このアルバムを聴き込んでいくと、まさに「年齢不詳」で、
「大学生の恋物語」をイメージし、それが頭で定着しました・・・
そのイメージは最初の頃はなにか違和感がありました。
だって、40歳にもなろうとしているというのに・・・
しかし、それを言っちゃおしまい、というやつですね(笑)。
僕は、かつて、ABBAの魅力を記事にした時に、
ABBAの音楽の魅力のひとつを担っているのは、
「ヴォーカルが年齢不詳である点」というようなことを書きました。
かつては「若者の音楽」であったロックも、
いまや、聴き手も演じ手も、それ相応の年になってきました。
ローリング・ストーンズも、ポール・マッカートニーも、
エリック・クラプトンもみな60代でまだまだ現役でやっていますし、
20代に作ったラブソングを、今でも平気で歌い続けていますから(笑)。
それに、「この人いくつなんだ?」は、翻って、
僕自身にも言えることであるはずですし、そう考えると、
僕もバカなことを考えたというか、墓穴を掘ったというか・・・(笑)。
ただ、音楽というものは、大なり小なり、
聴き手が演じ手の心に近づきたいと思わせる部分があるわけで、
その気持ちの濃淡はアーティストによりけりですが、
僕は、これを聴いて、かなり心を近しく感じたのだけれど、
それが「現実」に戻ってみると違和感があった、
ということであるかもしれません。
音楽を聴いていると、
いつまでも心を若く保てるのかもしれません
それは決して、懐古的な意味(だけ)ではなく、
音楽の世界では、年齢も性別も国境も関係なく、
みんなが若いままなのです。
「音楽は、永遠の心の清涼剤」ですね!
なんて、硬く考えなくても、このアルバムは、
その若々しさが心地よくもあり、微笑ましくもあり、
また、人によっては「ほろ苦い」ものかもしれません・・・
04 今朝、雪まつり会場で見た光景

Tr1:How Am I Different
軽やかなギターの音と少し跳ねたドラムスで静かに始まる。
途中、鐘の音のようなきれいなギターが絡んできながら、
歌メロが次々と繰り出され、劇的に流れてゆく曲。
エイミーのヴォーカルには、すぐに心が奪われます。
最後はギターソロが盛り上げて、冒頭から素晴らしい予感。
Tr2:Nothing Is Good Enough
さらっとしたワルツスタイルのバラード。
サントラにはインストゥルメンタルバージョンが入っていて、
そこに歌詞をつけたものでしょう。
これはふわっとした感覚の「かわいらしい」曲の代表ですね。
軽く歌う彼女の歌唱法が、この軽い曲調では特に魅力的。
Tr3:Red Vines
大人しいバラード。
少し沈んだムードのイントロに続いて、
まるで悩みを打ち明けるように低音で歌ってきたところに突然、
高音の旋律が混ざるのが、聴いていていつもはっとさせられます。
そこから無理なく盛り上がってサビまで流れてゆくのが気持ちいい。
じわっとしみてくるまさに、ワインにほろ酔い気分の曲。
Tr4:The Fall Of The World's Own Optimist
ちょっとだけ教会音楽風の静かな雰囲気を
硬質なギターの印象的なフレーズが打ち破って盛り上がり、
あとはいつものエイミーの世界にどっぷり。
最初に聴いて曲作りのうまさを感じた曲。
このアルバムはコーラスもかなり凝っていて楽しいですね。
Tr5:Satellite
こちらもワルツ、特にワルツの曲は優しくていい感じに響いてきます。
サビに入るティンパニーが気持ちを盛り上げてくれます。
Tr6:Deathly
いきなりすっとんきょうな声で始まってちょっと驚く。
『マグノリア』のサントラから引っ張ってきたうちの1曲。
ストリングスで盛り上げるのはいかにも映画的かな。
静かなようで、結構情熱的な曲。
Tr7:Ghost World
ミドルテンポの明るいポップな曲。
短いギターのイントロでさくさくと歌い始めるこれは、
気持ちをぐんと前に押し進めてくれる「元気ソング」。
以下はサビの部分の歌詞ですが、
So I'm bailing this town-or
Tearing it down-or
Probably more like hanging around
旋律の中でいちばん音が高い部分に「or」という言葉をあてるのが、
意表を突いてて、強く印象に残ります、うまいですね。
最後に盛り上がってどうなるかな、と期待していたところ、
あっさりと終わるのもいいですし。
そういえば、このアルバムの聴きどころのひとつとして、
ギターのバッキングがかなり凝っていて楽しいというのもあります。
05 ブックレットにはこんな絵も・・・

Tr8:Calling It Quits
イントロは少し重い音、歌が始まってもやはり重暗く進み、
だけどタイトルを歌う部分だけ微妙に明るく、しかしすぐ元に戻る。
そして曲全体の印象は決して暗くもネガティブでもないという
ちょっと不思議な響きの曲。
ドラムスのリズムの跳ね具合がそう感じさせるのかも。
いや、違うな(笑)、全体的に祈りのような感じの曲。
サウンド的にもこの中ではいちばん凝った作りです。
Tr9:Susan
すっとボケたようなユーモラスな響きのギターのイントロが面白い。
エイミーがあの声で歌い始めると、やはりすっとぼけた雰囲気。
声の「鼻から抜け具合」も、これは目立ちますね(笑)。
優しく語りかけてくる、ほっこりと笑顔で温まる曲ですね。
Tr10:Backfire
イントロはアコースティックギターで始まりますが、そういえば
このアルバムはエレクトリックとアコースティックのギターの音が
あまり変わらない響きで聴こえてくるのが面白いところ。
でもそれは、アコの響きが好きな人にはマイナス面かも。
とにかく頭に浮かんだことを次々と歌い続けるような元気な曲。
Tr11:It Takes All Kinds
曲全体はほの暗くじわっと迫ってくる雰囲気のバラード。
この中ではいちばんしみてくる感傷的な曲ですね。
コーラスがまたユニークで雰囲気盛り上げます。
この曲はエイミーの不思議な響きのヴォーカルの味が
最大限に引き出されている感じです。
Tr12:Save Me
ベースがもこもこと動き出し、ちょっと雰囲気が変わってスタート。
ノスタルジックな気分に浸るほの暗い印象の曲。
カーペンターズのSuperstarの旋律が
間奏にちょっとだけ織り込まれています。
これもサントラからで、そういえば映画も「心の救済」がテーマでした。
Tr13:Just Like Anyone
ここまで語ってきた物語をさらりとまとめて、
ひとつの境地に達したかのようなすがすがしさがあるフォークバラード。
諦めでもないし、楽観でもないし、
何かがダメになっても、何かは確実に将来につながって伸びている
そんな感じを受けます。
Tr14:You Do
映画の裏テーマ曲でもあったこの曲を最後に置いて、
すっかり落ち着いた雰囲気で終わるのは、ほっとします。
ほんと、救済されたような心休まる、そして癒しの感覚の曲。
そして、この充実したアルバムが平和のうちに終わります。
これ、1990年代の好きなアルバムを10枚挙げろ
と言われれば、間違いなく入ります。
試しに思いついたものを並べてゆくと、
R.E.M. AUTOMATIC FOR THE PEOPLE
(これはリアルタイムのオールタイムで1位ですから)
シェリル・クロウ SHERYL CROW
ポール・マッカートニー FLAMING PIE
アイアン・メイデン FEAR OF THE DARK
といったアルバムが来てますが、それらはみな
独立したカテゴリが出来るほど好きなアーティストなだけ余計に、
僕がこのアルバムがいかに好きかがお分かりいただけるかと。
このアルバムを記事にしたのは、もうひとつ、きっかけがありました。
ひと月ほど前に、近くのブックオフで、
これが750円で売られているのを見つけました。
もちろん持っているものなので買いませんでしたが、しかし、
僕はこのアルバムがほんとうに大好きで、店を出て少ししてから、
なんだかとりつかれたように、ああ、買っておけばよかった、
買うべきだ、と思い始めたんです。
僕は意外と一途な人間のようで(笑)、そう思い始めると
もう買うしか手がない、と、寝るまでには決めていました。
エイミー・マンは一般の知名度も高くないし、
どうせ(マニアが多くないはずのブックオフでなら)売れないだろ、
と、おまじないのように頭の中で唱えていました。
翌日、店に行くと・・・ない、売れてしまった!
それが昨日あった棚、他の棚(洋楽だけですが)すべて
3回くらい舐めるように見直しましたが、どこにもありませんでした。
がっかり。
へえ、売れることがあるんだ、とちょっと驚く一方で、
これはジャケットがほんとに素敵なので、
ジャケット買いした人がいたのかな、とも思いました。
だけど、店を出ることに、ふと思いました。
そうか!
このアルバムの素晴らしさに新たに触れた人が1人現れたんだ、
それは音楽聴きとしてうれしいことじゃないか!
その人は気にいってくれたかなぁ・・・
そう思うと、なんだかとてもいいことをしたようで、うれしくなりました。
完全な勘違いですが(笑)。
そしてその時からまたこのアルバムを
CDプレイヤーの横に出してきて時々聴き、それで記事を読み返し、
いろいろ考えて、ついに新たな記事にした、というわけです。
そしてそして、
僕がこのアルバムをいかに好きかというのもあらためて思い、
また新たなかたちで、このアルバムの良さを語りたかったのでした!
まあ、個人のBLOGだから、
好きなアルバムは何度取り上げても構わないとは思いますが(笑)。
最後に、今年の「さっぽろ雪まつり」の雪像から1枚
07

「北の動物家族」
この生き物たちは、決してドードーにはなりませんように。
Posted by guitarbird at 23:29
│ロックA-B