2013年01月30日
口パク問題
01

2月3日、日本時間でいえば2月4日月曜日の朝、
アメリカ最大のスポーツイベント、NFLスーパーボウルが行われます。
毎年誰がハーフタイムショーをやるかは、洋楽好きの僕としては
ともすれば試合の結果以上に興味があるところ。
今年はビヨンセがハーフタイムショーを行います、楽しみ。
そのビヨンセは、先日行われたオバマ大統領就任式典において、
アメリカ国歌を歌いましたが、それが口パクだったのではないかと
アメリカでは話題になっているそうです(以下は記事のリンク)。
ビヨンセの国歌斉唱は口パクか?
この話題を知った弟がこう呟きました(もちろん実際の音声言語で)。
「口パクがそんなに悪いことなのか?」
ここ数日ずっとそのことが頭にあり、すっきりしなくて(笑)、今回は
逸話を混じえながら、僕なりの考えとして記事にまとめてみました。
◇
本題の前に、口パクを英語では"lip sync"といいます。
"sync"はおそらく、シンクロナイズドスイミングや
ポリスのSYNCHRONICITYのように「動きを同期・同調させる」、
つまりこれは「唇の動きを合わせる」という意味でしょう。
日本語の「パク」は「ぱくぱくさせる」から来ているようです。
とまあ、基本の確認から。
◇
先ずは、お金を払って見に来るコンサートでの口パクは
言語道断、絶対にといっていいくらいにいけないこと。
その人を目当てにくるのだから、演奏に自信がなくてもそれは
その人の真の姿であり、騙すのは詐欺に近い行為ではないかと。
騙されるなら、へたくそだったなあと思う方がファンも納得するでしょう。
いや、納得はしない、金返せ、となるかもしれないけれど(笑)、
それでも騙されるよりはましだと思う。
いっそのことコンサートを中止したほうがいいとも思うし、
その上で握手会などをすればいいのかもしれない。
まあ、向こうの大スターがそれというのは想像しにくいけれど。
ピンク・フロイドがTHE WALLのツアーを行った際の逸話。
ステージには最初は高い壁が築かれていて(もちろんはりぼて)、
客からは壁しか見えない中で演奏が始まり、曲が進むにつれ、
壁が少しずつ壊れ、やがて演奏者が見えてくるという大仕掛け。
ところが、壁に覆われている間は、ピンク・フロイドの4人は演奏を
しておらず、会場にはテープが流れ、4人は壁の向こうでポーカーを
していた、という噂が当時まことしやかに流れたそうで。
もちろん(多分)作り話だと思うけれど、でももしかして本当かも、
と思わせる辺りがピンク・フロイドらしさであり、ハクがつくというか、
今となっては伝説とも呼べるものではあるでしょう。
繰り返し、コンサートの口パクは言語道断。
許されるのは、クイーンのBohemian Rhapsodyの
「ままみやままみや」のところをテープで流すことくらいか。
02 ポーラに亀襲来

口パクは、大統領就任式やスポーツイベントなどの余興と
テレビの場合があるので2つに分けることができます。
先ずは後者、テレビに関する話題から。
◇
日本でも年末のテレビで口パク疑惑が話題になったそうですが、
テレビの場合は、口パクがいけないということもないと思います。
ひとつ、放送ではレコード音源が流された結果、
視聴者からみれば口パクだけど、会場にいる人にとっては
生の歌を聴けている可能性が考えられます。
放送の場合は、音響の不調など不測の事態を避けるために
ある程度仕方ないのではないでしょうか。
人によっては突然放送禁止用語を言うかもしれないし(笑)。
僕はそういう会場には行ったことがないけれど、小さなスタジオや
ホールでは、実際に演奏するけれどテレビから出る音は録音したもの
という場合、会場にいる人とテレビの人は違う音を聴いていることも
考えられ、その場合逆に、会場にいる人にはありがたいかも。
また、演奏者によっては、ほんとうに演奏しない方がかえって難しい
という人もいるかもしれないし。
小さな会場の場合、電気を使う楽器については実際に音を出さず
演奏している振りはできるけれど、ドラムスだけは、本物を使うなら
音を消すことが難しそう、だからドラマーはいつも本気かもしれない。
スーパーボウルなどの大きな会場ではその心配はないでしょうけど。
テレビの口パクといえば思い出すのが、その昔フジテレビで
放送されていた歌謡番組、「夜のヒットスタジオ」です。
僕が物心ついた頃には両親が見ていて僕もなんとなく見ていましたが、
時々、いわゆる「外タレ」がゲストに出ることがありました。
僕は洋楽を聴くようになってからは番組は見なくなったけれど、
「外タレ」が出た時だけ両親に呼んでもらって見ていました。
ここではその番組で自分が見た放送について話を幾つか。
カジャグーグーのリマールが出演し、
「ネヴァー・エンディング・ストーリー」を歌った時、おそらく
彼は口パクではなく本当に歌っていた、と感じました。
明らかにレコードとは違う節回しだったし、
声がレコードほどよく出ていなかったからです。
僕はカジャグーグーは特に好きでもなかったけれど、
それを見て、この人はいい人だ、と思ったものです。
一方でレイ・パーカー・ジュニアの「ゴーストバスターズ」の時は、
曲の前のインタビューでレイが喉の調子が悪いと話して
「演奏」場所に向かった後、司会の井上順が手を口元にあてて
開いたり閉じたりしながら、「口パク」と呟いたのを覚えています。
ああ、それ言っちゃうの、と思いつつ、やっぱり口パクなのは
残念といえば残念でした。
ただ、そうだと分かって聴くと、当たり前のことですが、
レコードと寸分たがわぬ音にちゃんと聞こえました(笑)。
ただ、これ、口パクだと分かったので、気持ちは入らなかったけれど、
ああそういうものなんだ、と、10代の僕は受け止められました。
ポール・マッカートニーが「初来日」する直前、海外からの
衛星中継というかたちで出演しました。
確かMy Brave Face(Figure Of Eightだったかもしれない)と
This Oneを演奏しましたが、そうですね、口パクだった、と、思う。
ものすごく期待をして録画したのですが、でもまあ仕方ない。
喋りは本物だったし、何より観たことがないポールの姿を
観られただけでもそれなりに満足でした。
(録画したビデオテープ、βだけど、まだあるのかな・・・)
ところで、それは1989年か90年のことですが、あの番組って、
そんなに長くやっていたんだと思って今調べると、
1985年からは「夜のヒットスタジオDELUXE」、さらには
1989年から90年は「同SUPER」として続いていたようです。
いずれにせよポールが出たのは最後の頃ですね。
昔の音楽番組でもうひとつ大好きだったのが、
テレビ東京系で放送していた「タモリの音楽は世界だ」。
この番組は再放送してくれないかな、著作権の関係で無理かな、
今みてもすごく興味深くてためになる番組だと思いますが、
或る時、デフ・レパードがゲストで出ていました。
歌ったのがTwo Steps Behind、映画「ラスト・アクション・ヒーロー」
だから1993年のことでしょう、彼らはアコースティックライヴを
スタジオで披露してくれて、当時すごく感動し、その曲は今でも
僕が最も好きなデフレパの曲です。
◇
ところで、僕が中高生にテレビでよく見たロックの歴史の番組では、
1960年代から70年代には、ドアーズやディープ・パープルなど、
テレビでもそれ用に演奏していた映像を見たことがあります。
当時は逆で「口パク」のほうが技術的に難しかったのかな。
それとも、60年代はそういうミュージシャンでなければ
這い上がれなかった本物の時代だったのかもしれない。
まあ、そういう人だから語り継がれてきているのでしょうけど。
03 今年のファイターズのスローガンは「純」

テレビの話の派生で、ビデオクリップの話。
ライヴのシーンを使ったビデオクリップは多いけれど、音源も
ライヴである例はほとんどないですね。
でもこれもあくまでもテレビ用であって、ライヴ会場では
ほんとうにコンサートをしているのだからなんら問題はない。
ただ、たまたまクリップの撮影をした会場にいた人は、音源が
その時のものではないのはがっかりするかもしれないけれど。
でも、だから、ヴァン・ヘイレンのWhy Can't This Be Loveは
演奏も生だっただけに衝撃が大きかったのでしょう。
クリップのライヴシーンは、実際のコンサートから映像をとるものと、
そのために撮影するものがあり、後者の場合、会場でレコードを
流し、演奏者もファンもそれに合わせてアクションをするそうです。
だからその場合、演奏も振りだけの可能性はありますね。
というか、演奏しながら演技するのも大変かもしれないし。
ただ、クイーンは、それではせっかく来てくれた人に悪いというので、
何曲かほんとうに演奏して聴かせてあげたという話も聞きました。
クイーンはさすが、人とのつながりを大切にしていたんですね。
印象深いのは、フィリップ・ベイリーとフィル・コリンズの
大ヒット曲Easy Loverのビデオクリップ。
2人が会してビデオクリップを作るまでがビデオクリップになっていて
いわば二重構造ですが、2番のフィリップが歌っている部分の音は
おそらく、レコードではなくそこで歌った生の声だと思われます。
歌い方の節があきらかに違ったし(すごく聴き込んでよく覚えていた)、
音の出どころもそれまでとは違い、雑然とした中から出ていたし、
レコードにはないフィリップがハンドクラップする音も入っていたから。
曲すべてではなく一部分だけのちょっとしたサービスだけど、
高校時代にはすごく感動したものです。
04 雪像のようなハウ

催事における余興の場合。
これは、中にはその人がめあてというファンもいるでしょうけど、
あくまでもおまけだから、聴けただけ、もっというと
その場にいられただけで運が良かった、というものでしょう。
僕は、ファイターズの試合で天海祐希が始球式をすると聞いて
試合を見に行ったことがありますが、でもそれは
もちろん野球のほうが主でしたから、あくまでも(笑)。
ちなみにその試合の先発はダルビッシュ投手で、天海祐希が
来るとマウンドの横でじっと見ていたのも印象的でした。
そうそう、西城秀樹の「ヤング・マン」は見に行きたかったなあ、
あれは口パクじゃなかったのかな、分からないけれど・・・
失礼、話が逸れました。
催事におけるショーの場合は、そのために新たに録音した上で、
当日はそのテープを会場とテレビに流すということもあるようです。
この場合は少し複雑で、その瞬間については口パクだけど、
そのためにわざわざ録音するという心構えに対しては、
敬意を払うべきではないかとも思います。
音楽好きからいえば、新たな音源に接するわけだし。
スポーツ会場などでは、レコードをそのまま流すというのは、
考えてみればかえって少ない例のような気もします。
レニー・クラヴィッツが昨年のサンクスギヴィングデイの日に、
ニューヨーク・ジェッツ対ニューイングランド・ペイトリオッツの
試合でハーフタイムショーをしていましたが、それは少なくとも
レコードとは違う音だったから、本当にライヴか、そうではなくても
事前に新たに録音していたものを流したものでしょう。
まあ、後者であったとしてもあくまでも余興だから、これもやはり
あまり目くじら立てるものでもない、と、僕は思います。
実際、テレビで観ていてカッコよかったし、昨年東京で行った
コンサートを思い出させてくれたのもよかったから。
ただしもちろん、事前に録音するにしても、
本人たちが演奏したものであるのは当たり前の話ですね。
別の人が演奏した録音テープで口パクするなんて、
もうこれは詐欺に片足を踏み入れているようなものだから。
◇
さて、ビヨンセの場合。
もしほんとうに事前に録音したものを会場で流したのであっても、
少なくとも事前準備をしていたわけで、情状酌量の余地はあります。
ただ、今回のビヨンセの場合は特殊で、
アメリカ大統領の前で口パクしたのか、という部分が、おそらく
アメリカ人にしか分からない感情の部分で許せないのでしょう。
これが、サンフランシスコ・ジャイアンツとテキサス・レンジャーズの
ワールドシリーズ開幕戦であれば、そうはならなかったかもしれない。
ニューヨーク・ヤンキースとワシントン・ナショナルズなら、
もう少し問題になったかもしれないけれど。
ただ、オバマ大統領は若いし、特に気にしなそうな人には見えますが、
この場合は事情が違う特殊な例と捉える必要はありますね。
他のスポーツなどのショーについては、大目に見たいです。
少なくとも事前に自分たちで録音したものを使うのであれば。
ビヨンセは、上記のリンクの記事によれば、スーパーボウルの
ハーフタイムショーの準備が忙しくて、大統領就任式では、
演奏者との音合わせもほとんどできなかったということ。
逆にいえば、スーパーボウルは生でやるということだろうから、
これは期待できますね、今から楽しみ。
もっとも、オバマ大統領には申し訳ない話ですね。
その上、地元のシカゴ・ベアーズが出るわけでもないし・・・
◇
ちなみに、まだ記憶に新しい昨年のロンドン五輪開会式の
ポール・マッカートニーは、口パクでやらないかと言われたのを
かたくなに拒否して実際に歌ったそうですね、さすがというか。
◇
口パクかどうかについて、事前に知らされていればまだ、
納得はできなくても理解はできる部分はあるでしょうね。
コンサートは言語道断といったのでここでは排除するけれど、
テレビ番組やビデオクリップの収録やイベントの場合は、
音楽を聴くこと以前(以上)にそれ自体が体験であって、
動く本人が見られることにも意味や価値があるのだから、
口パクが嫌だったら行かなければいいのだと思います。
しかし、スポーツ催事などで口パクを見せられてしまう人はどうなのか。
余興なのだから、そこは大目にみてあげたいですね、僕は。
後で「口パクだったよ」とからかうのは構わないけれど、
本気で批判するのは、僕にはできないですね、少なくとも。
◇
まとめとして、僕は口パク全否定派じゃないけれど、
やっぱりテレビでも口パクは多少がっかりするし、
そうじゃない場合は予想以上に感動したりもします。
たとえ口パクで流れる元の音楽はその人たちが作ったにしても、
やっぱり、人前に出るなら口パクじゃないほうがいいに決まってます。
ただ、諸事情により仕方ないと僕は納得して接している、ということ。
多分僕は、世間一般の人より多く音楽を聴いているので、
音楽に関する業界の事情などにも慣らされてしまっている、
だから口パクだからといって目くじらたてるほどでもない、
ということなのだと思います、それがいいかどうかは別として。
そもそも、僕が聴く音楽はほぼすべて、商業ベースに乗ることを
前提としたものであって、仕方ない部分も多々あるのは分かりつつ
音楽を聴いて楽しんでいるわけですから。
弟が「そんなに悪いことか」と言ったのは、アイアン・メイデンですら
英国のテレビ番組で口パクをしたのを見たからだと思います。
結論、僕は、口パクだと分かっても
「ああやってるかぁ」くらいにしか思わないです。
でも、口パクはぜったいに嫌だという人の考えも理解できます。
要するに、自分なりに音楽を楽しみましょう、ということです。
【追伸】2013年2月1日付記
ビヨンセが、アメリカ大統領就任式典における
アメリカ国歌の口パクを自ら認めたというニュースを見ました。
ビヨンセ曰く、彼女は完璧主義者であり、大統領就任式典では
オーケストラとの練習をする時間が取れず、また天候なども勘案し
口パクで歌った、とのことでした。
また、アメリカの業界ではよくあることでもある、とも述べています。
なお、その記者会見の場でいきなりアメリカ国歌を歌い、
この話題を切り出したとのことで、肝が据わっているというか、
或いはマスコミの攻撃にうんざりとしていたのでしょうね
僕はその記事を見て、やはり口パクはありだと思い直しました。
05

車の中の犬たち、もうこのショットは飽きてきたかな・・・(笑)。
ところで最後にどうでもいいこと。
歌をアテレコするのは「口パク」といいますが、
演奏をアテレコするのは何というのか。
僕と弟は昔から「指パク」と言っています。
口を指に変えただけのつまらない発想ですが・・・(笑)・・・

2月3日、日本時間でいえば2月4日月曜日の朝、
アメリカ最大のスポーツイベント、NFLスーパーボウルが行われます。
毎年誰がハーフタイムショーをやるかは、洋楽好きの僕としては
ともすれば試合の結果以上に興味があるところ。
今年はビヨンセがハーフタイムショーを行います、楽しみ。
そのビヨンセは、先日行われたオバマ大統領就任式典において、
アメリカ国歌を歌いましたが、それが口パクだったのではないかと
アメリカでは話題になっているそうです(以下は記事のリンク)。
ビヨンセの国歌斉唱は口パクか?
この話題を知った弟がこう呟きました(もちろん実際の音声言語で)。
「口パクがそんなに悪いことなのか?」
ここ数日ずっとそのことが頭にあり、すっきりしなくて(笑)、今回は
逸話を混じえながら、僕なりの考えとして記事にまとめてみました。
◇
本題の前に、口パクを英語では"lip sync"といいます。
"sync"はおそらく、シンクロナイズドスイミングや
ポリスのSYNCHRONICITYのように「動きを同期・同調させる」、
つまりこれは「唇の動きを合わせる」という意味でしょう。
日本語の「パク」は「ぱくぱくさせる」から来ているようです。
とまあ、基本の確認から。
◇
先ずは、お金を払って見に来るコンサートでの口パクは
言語道断、絶対にといっていいくらいにいけないこと。
その人を目当てにくるのだから、演奏に自信がなくてもそれは
その人の真の姿であり、騙すのは詐欺に近い行為ではないかと。
騙されるなら、へたくそだったなあと思う方がファンも納得するでしょう。
いや、納得はしない、金返せ、となるかもしれないけれど(笑)、
それでも騙されるよりはましだと思う。
いっそのことコンサートを中止したほうがいいとも思うし、
その上で握手会などをすればいいのかもしれない。
まあ、向こうの大スターがそれというのは想像しにくいけれど。
ピンク・フロイドがTHE WALLのツアーを行った際の逸話。
ステージには最初は高い壁が築かれていて(もちろんはりぼて)、
客からは壁しか見えない中で演奏が始まり、曲が進むにつれ、
壁が少しずつ壊れ、やがて演奏者が見えてくるという大仕掛け。
ところが、壁に覆われている間は、ピンク・フロイドの4人は演奏を
しておらず、会場にはテープが流れ、4人は壁の向こうでポーカーを
していた、という噂が当時まことしやかに流れたそうで。
もちろん(多分)作り話だと思うけれど、でももしかして本当かも、
と思わせる辺りがピンク・フロイドらしさであり、ハクがつくというか、
今となっては伝説とも呼べるものではあるでしょう。
繰り返し、コンサートの口パクは言語道断。
許されるのは、クイーンのBohemian Rhapsodyの
「ままみやままみや」のところをテープで流すことくらいか。
02 ポーラに亀襲来

口パクは、大統領就任式やスポーツイベントなどの余興と
テレビの場合があるので2つに分けることができます。
先ずは後者、テレビに関する話題から。
◇
日本でも年末のテレビで口パク疑惑が話題になったそうですが、
テレビの場合は、口パクがいけないということもないと思います。
ひとつ、放送ではレコード音源が流された結果、
視聴者からみれば口パクだけど、会場にいる人にとっては
生の歌を聴けている可能性が考えられます。
放送の場合は、音響の不調など不測の事態を避けるために
ある程度仕方ないのではないでしょうか。
人によっては突然放送禁止用語を言うかもしれないし(笑)。
僕はそういう会場には行ったことがないけれど、小さなスタジオや
ホールでは、実際に演奏するけれどテレビから出る音は録音したもの
という場合、会場にいる人とテレビの人は違う音を聴いていることも
考えられ、その場合逆に、会場にいる人にはありがたいかも。
また、演奏者によっては、ほんとうに演奏しない方がかえって難しい
という人もいるかもしれないし。
小さな会場の場合、電気を使う楽器については実際に音を出さず
演奏している振りはできるけれど、ドラムスだけは、本物を使うなら
音を消すことが難しそう、だからドラマーはいつも本気かもしれない。
スーパーボウルなどの大きな会場ではその心配はないでしょうけど。
テレビの口パクといえば思い出すのが、その昔フジテレビで
放送されていた歌謡番組、「夜のヒットスタジオ」です。
僕が物心ついた頃には両親が見ていて僕もなんとなく見ていましたが、
時々、いわゆる「外タレ」がゲストに出ることがありました。
僕は洋楽を聴くようになってからは番組は見なくなったけれど、
「外タレ」が出た時だけ両親に呼んでもらって見ていました。
ここではその番組で自分が見た放送について話を幾つか。
カジャグーグーのリマールが出演し、
「ネヴァー・エンディング・ストーリー」を歌った時、おそらく
彼は口パクではなく本当に歌っていた、と感じました。
明らかにレコードとは違う節回しだったし、
声がレコードほどよく出ていなかったからです。
僕はカジャグーグーは特に好きでもなかったけれど、
それを見て、この人はいい人だ、と思ったものです。
一方でレイ・パーカー・ジュニアの「ゴーストバスターズ」の時は、
曲の前のインタビューでレイが喉の調子が悪いと話して
「演奏」場所に向かった後、司会の井上順が手を口元にあてて
開いたり閉じたりしながら、「口パク」と呟いたのを覚えています。
ああ、それ言っちゃうの、と思いつつ、やっぱり口パクなのは
残念といえば残念でした。
ただ、そうだと分かって聴くと、当たり前のことですが、
レコードと寸分たがわぬ音にちゃんと聞こえました(笑)。
ただ、これ、口パクだと分かったので、気持ちは入らなかったけれど、
ああそういうものなんだ、と、10代の僕は受け止められました。
ポール・マッカートニーが「初来日」する直前、海外からの
衛星中継というかたちで出演しました。
確かMy Brave Face(Figure Of Eightだったかもしれない)と
This Oneを演奏しましたが、そうですね、口パクだった、と、思う。
ものすごく期待をして録画したのですが、でもまあ仕方ない。
喋りは本物だったし、何より観たことがないポールの姿を
観られただけでもそれなりに満足でした。
(録画したビデオテープ、βだけど、まだあるのかな・・・)
ところで、それは1989年か90年のことですが、あの番組って、
そんなに長くやっていたんだと思って今調べると、
1985年からは「夜のヒットスタジオDELUXE」、さらには
1989年から90年は「同SUPER」として続いていたようです。
いずれにせよポールが出たのは最後の頃ですね。
昔の音楽番組でもうひとつ大好きだったのが、
テレビ東京系で放送していた「タモリの音楽は世界だ」。
この番組は再放送してくれないかな、著作権の関係で無理かな、
今みてもすごく興味深くてためになる番組だと思いますが、
或る時、デフ・レパードがゲストで出ていました。
歌ったのがTwo Steps Behind、映画「ラスト・アクション・ヒーロー」
だから1993年のことでしょう、彼らはアコースティックライヴを
スタジオで披露してくれて、当時すごく感動し、その曲は今でも
僕が最も好きなデフレパの曲です。
◇
ところで、僕が中高生にテレビでよく見たロックの歴史の番組では、
1960年代から70年代には、ドアーズやディープ・パープルなど、
テレビでもそれ用に演奏していた映像を見たことがあります。
当時は逆で「口パク」のほうが技術的に難しかったのかな。
それとも、60年代はそういうミュージシャンでなければ
這い上がれなかった本物の時代だったのかもしれない。
まあ、そういう人だから語り継がれてきているのでしょうけど。
03 今年のファイターズのスローガンは「純」

テレビの話の派生で、ビデオクリップの話。
ライヴのシーンを使ったビデオクリップは多いけれど、音源も
ライヴである例はほとんどないですね。
でもこれもあくまでもテレビ用であって、ライヴ会場では
ほんとうにコンサートをしているのだからなんら問題はない。
ただ、たまたまクリップの撮影をした会場にいた人は、音源が
その時のものではないのはがっかりするかもしれないけれど。
でも、だから、ヴァン・ヘイレンのWhy Can't This Be Loveは
演奏も生だっただけに衝撃が大きかったのでしょう。
クリップのライヴシーンは、実際のコンサートから映像をとるものと、
そのために撮影するものがあり、後者の場合、会場でレコードを
流し、演奏者もファンもそれに合わせてアクションをするそうです。
だからその場合、演奏も振りだけの可能性はありますね。
というか、演奏しながら演技するのも大変かもしれないし。
ただ、クイーンは、それではせっかく来てくれた人に悪いというので、
何曲かほんとうに演奏して聴かせてあげたという話も聞きました。
クイーンはさすが、人とのつながりを大切にしていたんですね。
印象深いのは、フィリップ・ベイリーとフィル・コリンズの
大ヒット曲Easy Loverのビデオクリップ。
2人が会してビデオクリップを作るまでがビデオクリップになっていて
いわば二重構造ですが、2番のフィリップが歌っている部分の音は
おそらく、レコードではなくそこで歌った生の声だと思われます。
歌い方の節があきらかに違ったし(すごく聴き込んでよく覚えていた)、
音の出どころもそれまでとは違い、雑然とした中から出ていたし、
レコードにはないフィリップがハンドクラップする音も入っていたから。
曲すべてではなく一部分だけのちょっとしたサービスだけど、
高校時代にはすごく感動したものです。
04 雪像のようなハウ

催事における余興の場合。
これは、中にはその人がめあてというファンもいるでしょうけど、
あくまでもおまけだから、聴けただけ、もっというと
その場にいられただけで運が良かった、というものでしょう。
僕は、ファイターズの試合で天海祐希が始球式をすると聞いて
試合を見に行ったことがありますが、でもそれは
もちろん野球のほうが主でしたから、あくまでも(笑)。
ちなみにその試合の先発はダルビッシュ投手で、天海祐希が
来るとマウンドの横でじっと見ていたのも印象的でした。
そうそう、西城秀樹の「ヤング・マン」は見に行きたかったなあ、
あれは口パクじゃなかったのかな、分からないけれど・・・
失礼、話が逸れました。
催事におけるショーの場合は、そのために新たに録音した上で、
当日はそのテープを会場とテレビに流すということもあるようです。
この場合は少し複雑で、その瞬間については口パクだけど、
そのためにわざわざ録音するという心構えに対しては、
敬意を払うべきではないかとも思います。
音楽好きからいえば、新たな音源に接するわけだし。
スポーツ会場などでは、レコードをそのまま流すというのは、
考えてみればかえって少ない例のような気もします。
レニー・クラヴィッツが昨年のサンクスギヴィングデイの日に、
ニューヨーク・ジェッツ対ニューイングランド・ペイトリオッツの
試合でハーフタイムショーをしていましたが、それは少なくとも
レコードとは違う音だったから、本当にライヴか、そうではなくても
事前に新たに録音していたものを流したものでしょう。
まあ、後者であったとしてもあくまでも余興だから、これもやはり
あまり目くじら立てるものでもない、と、僕は思います。
実際、テレビで観ていてカッコよかったし、昨年東京で行った
コンサートを思い出させてくれたのもよかったから。
ただしもちろん、事前に録音するにしても、
本人たちが演奏したものであるのは当たり前の話ですね。
別の人が演奏した録音テープで口パクするなんて、
もうこれは詐欺に片足を踏み入れているようなものだから。
◇
さて、ビヨンセの場合。
もしほんとうに事前に録音したものを会場で流したのであっても、
少なくとも事前準備をしていたわけで、情状酌量の余地はあります。
ただ、今回のビヨンセの場合は特殊で、
アメリカ大統領の前で口パクしたのか、という部分が、おそらく
アメリカ人にしか分からない感情の部分で許せないのでしょう。
これが、サンフランシスコ・ジャイアンツとテキサス・レンジャーズの
ワールドシリーズ開幕戦であれば、そうはならなかったかもしれない。
ニューヨーク・ヤンキースとワシントン・ナショナルズなら、
もう少し問題になったかもしれないけれど。
ただ、オバマ大統領は若いし、特に気にしなそうな人には見えますが、
この場合は事情が違う特殊な例と捉える必要はありますね。
他のスポーツなどのショーについては、大目に見たいです。
少なくとも事前に自分たちで録音したものを使うのであれば。
ビヨンセは、上記のリンクの記事によれば、スーパーボウルの
ハーフタイムショーの準備が忙しくて、大統領就任式では、
演奏者との音合わせもほとんどできなかったということ。
逆にいえば、スーパーボウルは生でやるということだろうから、
これは期待できますね、今から楽しみ。
もっとも、オバマ大統領には申し訳ない話ですね。
その上、地元のシカゴ・ベアーズが出るわけでもないし・・・
◇
ちなみに、まだ記憶に新しい昨年のロンドン五輪開会式の
ポール・マッカートニーは、口パクでやらないかと言われたのを
かたくなに拒否して実際に歌ったそうですね、さすがというか。
◇
口パクかどうかについて、事前に知らされていればまだ、
納得はできなくても理解はできる部分はあるでしょうね。
コンサートは言語道断といったのでここでは排除するけれど、
テレビ番組やビデオクリップの収録やイベントの場合は、
音楽を聴くこと以前(以上)にそれ自体が体験であって、
動く本人が見られることにも意味や価値があるのだから、
口パクが嫌だったら行かなければいいのだと思います。
しかし、スポーツ催事などで口パクを見せられてしまう人はどうなのか。
余興なのだから、そこは大目にみてあげたいですね、僕は。
後で「口パクだったよ」とからかうのは構わないけれど、
本気で批判するのは、僕にはできないですね、少なくとも。
◇
まとめとして、僕は口パク全否定派じゃないけれど、
やっぱりテレビでも口パクは多少がっかりするし、
そうじゃない場合は予想以上に感動したりもします。
たとえ口パクで流れる元の音楽はその人たちが作ったにしても、
やっぱり、人前に出るなら口パクじゃないほうがいいに決まってます。
ただ、諸事情により仕方ないと僕は納得して接している、ということ。
多分僕は、世間一般の人より多く音楽を聴いているので、
音楽に関する業界の事情などにも慣らされてしまっている、
だから口パクだからといって目くじらたてるほどでもない、
ということなのだと思います、それがいいかどうかは別として。
そもそも、僕が聴く音楽はほぼすべて、商業ベースに乗ることを
前提としたものであって、仕方ない部分も多々あるのは分かりつつ
音楽を聴いて楽しんでいるわけですから。
弟が「そんなに悪いことか」と言ったのは、アイアン・メイデンですら
英国のテレビ番組で口パクをしたのを見たからだと思います。
結論、僕は、口パクだと分かっても
「ああやってるかぁ」くらいにしか思わないです。
でも、口パクはぜったいに嫌だという人の考えも理解できます。
要するに、自分なりに音楽を楽しみましょう、ということです。
【追伸】2013年2月1日付記
ビヨンセが、アメリカ大統領就任式典における
アメリカ国歌の口パクを自ら認めたというニュースを見ました。
ビヨンセ曰く、彼女は完璧主義者であり、大統領就任式典では
オーケストラとの練習をする時間が取れず、また天候なども勘案し
口パクで歌った、とのことでした。
また、アメリカの業界ではよくあることでもある、とも述べています。
なお、その記者会見の場でいきなりアメリカ国歌を歌い、
この話題を切り出したとのことで、肝が据わっているというか、
或いはマスコミの攻撃にうんざりとしていたのでしょうね
僕はその記事を見て、やはり口パクはありだと思い直しました。
05

車の中の犬たち、もうこのショットは飽きてきたかな・・・(笑)。
ところで最後にどうでもいいこと。
歌をアテレコするのは「口パク」といいますが、
演奏をアテレコするのは何というのか。
僕と弟は昔から「指パク」と言っています。
口を指に変えただけのつまらない発想ですが・・・(笑)・・・
Posted by guitarbird at 20:54
│音楽雑想