2014年01月30日
JAILBREAK シン・リジィ
01

JAILBREAK Thin Lizzy
ジェイルブレイク (脱獄) シン・リジィ
今回はシン・リジィです。
かつて僕が嫌、いや、「苦手」だった・・・
シン・リジィのアルバム3点、スタジオ2点とライヴ1点が、
ボーナス音源(スタジオ)や映像DVD(ライヴ)がついた
デラックス・エディション(DE)としてリリースされました。
僕は、DEが出たのを機会に記事にしているアルバムが結構ありますが、
今回は、彼らのスタジオアルバムの代表作を取り上げつつ、
シン・リジィと僕の微妙なお話をさせていただきます。
僕が大学生の頃、関東ローカルだったと思いますが、
TBSの「ピュア・ロック」という深夜の音楽番組がありました。
日本における「メタル神」伊藤政則氏とメタル好きの和田誠氏が
ヘヴィメタルやハードロックについて熱く語る番組でしたが、
僕は、札幌の弟がメタルに興味が出てきていた頃だったので、
東京で録画して札幌にテープを送り、ついでに観ていました。
その番組について語ると記事が幾つあっても足りないのですが、
そこではシン・リジィの曲がよくかかっていました。
僕は彼らを「ベスト・ヒットUSA」で見た記憶もなく(寝てたかも)、
それまでラジオで意識して聴いたこともなかったはずで、
だからその番組が僕のシン・リジィ初体験でした。
僕は以前、「苦手なアーティスト」の記事を上げました。
僕はかつて、シン・リジィは大嫌いでした。
その記事を書いた時はもう好きになっていたので、
そこでは触れなかったのですが、かつては毛嫌いしていました。
あ、「苦手」ですね、「嫌い」じゃなくって(笑)。
「ピュア・ロック」でやたらとよくかかっていて接する機会が多く、
それでかえって「苦手」が助長されたようでした。
苦手な理由のひとつは、リーダーであるヴォーカルでベースの
フィル・ライノット Phil Lynottが生理的にだめだったから。
彼は黒人の血が入っていて、もちろんそのこと自体には、
嫌いもだめも何もないのですが、しかしこの人の場合、
僕は顔つき恐かったんです。
顔以上に、低くて重く粘つく呪術的な声が輪をかけてだめでした。
ドアーズのジム・モリソンと同系統の声です。
僕は、音楽を聴くにあたり、男性アーティストについては、
外見はほぼまったく気にしないので、ルックスだけなら
それほど毛嫌いはしなかったのだろうけど、声がだめなのは、
やっぱり、受け入れ難いものがありました。
しかし、彼らは僕には合わないと感じたもっと大きな要素は、
誤解を恐れずに言えば、彼らの歌には「歌メロがない」のです。
もちろんこれは多少のレトリック表現ですが、
歌メロへのこだわりが人一倍強い僕にとって彼らの音楽は、
鼻歌で口ずさんで気持ちがよい「歌」ではなかった。
端的に言えば、Aメロの部分は音楽に合わせて言葉をのせるだけ。
かといってラップというほど喋りでもなく、音楽的に流れていて
音符で表せるものではあるけど、僕には「歌」として響いてこない。
思うに、フィル・ライノットは多分、詩は大好きなのではないかな。
歌詞もメッセージ性を強く感じるし、自らが表現したいことを、
「歌う」のではなく、「詩」として音楽にのせて発語してゆく、
そういう姿勢だったのかもしれない。
などと冷静に見れば結構ひどいことを書いているかもですが(笑)、
じゃあ僕はどうして、嫌いだったシン・リジィを聴くようになり、
今では好きとまで言えるようになったのか。
その1
僕は好奇心旺盛な人間であり、興味はあったから。
有名なアーティストは、どうして評価され人気があるのか、
自分の耳で確かめたいという思いがあるからです。
これはもうそれ以上の説明は要らないかと。
その2
僕は、年を経るごとに、歌だけではなく
音楽全体を楽しめるようになったのかもしれない。
僕はプログレも聴けるようになったのはだいぶ遅かった。
そしてクラシックを一時期熱心に聴いてからそう変わりました。
同様に、かつては「面白い音」には鈍感でしたが、最近では
「面白い音」にも自然と耳と心が向くようになりました。
(でもインプロビゼーションはいまだにやや苦手です・・・)
その3
僕は歌が好きで、なるべく多くの歌を覚えたいけど、
年齢とともに歌を覚えようという気力が失せ、時間もなくなり、
歌への執着心が薄れたから。
今は、歌詞カードを見てまで覚えたいほどの新たな曲との出会いは
少なくなり、聴いて適当に口ずさむくらいです。
でも、シン・リジィの場合、実際に聴くようになったのには、
確たるきっかけがあったのです、それはずばり、
リマスター盤CDを中古で見つけたから。
よく言いますが、リマスター盤が出ているアーティストは、
好奇心の手伝いもあって、聴いてみたい、聴いてみようと思うんです。
シン・リジィの場合、同じ頃に違う店に3枚の違うアルバムの
リマスター盤中古CDがあったのです。
片方の店に2枚、もう片方に1枚、同じ日じゃないけど
数日内にそれを見つけ、3枚同時に手に入るなら
リマスター盤が揃うのは早いかもしれないと思い、
その2軒に立て続けに行って3枚を一度に買いました。
そのどちらの店も今はもうないのは寂しい限りですが・・・
3枚のうちの1枚が今回記事にしたこのアルバムでしたが、
だから僕にはこれ、彼らの中でも思い入れが強い1枚です。
それ以外に3枚のリマスター盤が出ていましたが、運がよいことに、
もう1枚のライヴ盤もまた別の店で中古がすぐに見つかり
残り2点は新品で買い、リマスター盤ではないものも買いました。
買って聴いてゆくと、徐々に良いと感じるようになり、
いつしか「好き」と、臆面もなく言えるようなになりました。
つくづく、音楽には、確かに、時宜がありますね。
聴くようになって気づいたこと。
先ほど僕は、Aメロは「歌」ではないと書きましたが、
もちろん、曲として印象に残らなければ音楽ではないわけで、
彼らは、Bメロ=サビの部分には逆に力が入っていて、
サビについてはむしろ強烈ですぐに覚えて口ずさめます。
これは並みじゃないですよ、爆発的とさえいえるくらい。
Aメロの部分はまさに導入部で目立たず、サビの強烈な歌メロまで
流れよく引っ張ってつないでサビを引き立たせるという意味では
むしろ効果的と言えるものだと思い直しました。
演奏は素晴らしい。
ギターリフ作りが巧く、低音弦をダイナミックに展開させて
たたみかけるように大きく響かせるギターワークは一級品。
ソロもギターヒーロー的な響きを存分に醸し出しています。
グルーヴ感もかなりのもので、自然と音楽にのって体が動きます。
彼らの音楽は、歌だけを目立たせるのではなく、全体を聴いて
「感じて」ほしいということなのでしょう、きっと。
ただ、僕はやったことはない、なんとなくの想像だけど、
シン・リジィはバンドでコピーすると、感覚が先走るだけに、
特にサビじゃない部分は再現するのが大変そうだなと思います。
もうひとつ好きなのは、アイルランドのバンドだから。
アイルランドは憧れのようなものがあるし、心の中で
大切にしたいという一方的な思い入れがある国。
だから、今はこれがいちばん大きいかもしれない。
ゲイリー・ムーア Gary Mooreもそうだけど、
憂いを帯びた音には勇気が湧いてくると感じることもあります。
ゲイリー・ムーアはシン・リジィに在籍していたこともありますが、
今回DEが出た3枚にはどれも参加していません。
シン・リジィの話でゲイリーに触れないのはどうかと思いつつ、
またの機会があればにしたいと思います(あるのかな・・・)
このアルバムのメンバーは以下の通り。
フィル・ライノット Phil Lynott (Vo)(Bs)
スコット・ゴーハム Scott Gorham (Gt)
ブライアン・ロバートソン Brian Robertson (Gt)
ブライアン・ダウニー Brian Downey (Ds)
ブックレットの写真ではギター2人ともレス・ポールを持っています。
フィル・ライノットは1986年に亡くなりました。
上述のようにその当時は聴いていなかったのですが、
「ピュア・ロック」でよく放送されていたのは、
亡くなって間もなく、再評価機運が高まっていたのでしょうね。
今は、最初は苦手だったことを申し訳なく思う部分もあります。
さて、良質の心地よい英国流ハードロックを聴いてゆきますか。
作曲者は曲名の下にファミリーネームで記してゆきます。
02 他の2点はJOHNNY THE FOXとLIVE AND DANGEROUS

Tr1:Jailbreak
(Lynott)
じゃ~ん(ちょわ~ん)と始まり、印象的なリフが刻まれてゆく。
Aメロは低音でやはりあまり抑揚がないですが、
サビは高音で力強く弾ける印象的な歌メロになっています。
ギターのバッキング、低音弦の動かし方の勉強になる曲で、特に
2'18"で"break out!"と叫んだ後のスリリングな展開が聴きどころ。
サビは彼らでも特に印象に残りやすい曲のひとつです。
Tr2:Angel From The Coast
(Lynott / Robertson)
書き忘れてましたが、彼らはファンクの影響もありますね。
この曲は顕著で、ちょっと横系ののりが不足意味ですが、
ぽこぽこ鳴るギターにのってフィルが気分よさそうに語っています。
でも、あれ、この曲のサビはどこ・・・!?・・・
Tr3:Running Back
(Lynott)
「G→F♯→E、E...」という優しい響きのギターの旋律が
サビ以外の部分で流れ続けていて印象的。
これもサビが強烈というよりは全体で流れている曲かな。
最後のほうのハミング、やっぱりねっとりしているけど
その向こうに優しい気持ちが透けています。
Tr4:Romeo And The Lonely Girl
(Lynott)
書き漏らしていましたが、フィル・ライノットが苦手だった
もうひとつの理由が、案外ロマンティックなところです。
この曲はアップテンポでまだべったりではないんですが、
映像で見た別の曲ではフィルが一輪のバラを持って歌っていたり、
なんというのか、すいません、当時のことを正直に言うと
「その顔でそれは違うだろ」って思いました。
今はもうそんな偏見のようなものはありません、何に対しても。
でも、若かった頃は僕もそういう人間だったのかもしれない。
まあともかく、ロマンティックな部分は、意外にというか、
彼の魅力のひとつだと思います。
この曲は珍しくAメロも結構印象的で口ずさめます。
まあ、サビはAメロを盛り上げただけで基本的に同じなのですが。
後半の高音中心のギターソロが面白い響きで印象的。
Tr5:Warriors
(Lynott / Gorham)
この曲はワウペダルを使ったギターソロがすごい。
多分、作曲者のひとりであるゴーハムの演奏でしょうけど、
そういえば僕は、ギターは誰がどこを担当し弾いているか、
2人のギタリストの違いが分かっていません、勉強しないと。
とにかくギターワークがタイトルの如くたたみかけてくる。
歌は、これはほとんどラップといっていい感じで、だから逆に
ギターが目立つだけ目立つともいえます。
要はバンドの中のバランス感覚なのでしょうね。
Tr6:The Boys Are Back In Town
(Lynott)
「ヤツらは街へ」、彼らの代表曲にして70年代の名曲。
♪ ざぼぉ~ぃずあばっきんたぁうん
「脱獄」して街に戻ってきたのでしょう。
彼らの音楽は、エネルギーの発散と解放という意味では、
パンクに近い要素も或いはあるのではないかと感じますが、
特にこの曲はそうですね、サビの爆発力がすごい。
この曲はAメロの気持ちの先走り方も突出しています。
このアルバムと同じ年にセックス・ピストルズがデビュー。
シン・リジィは同調はしていなかったのでしょうけど、
時代の息遣いを感じてこの曲をものにしたのかもしれません。
イントロの細かく動くベースのフレーズが印象的ですが、
フィルのベースプレイの基本は、フレーズというよりは
グルーヴ感とそれこそ下支えが中心と言えるかもしれません。
せり上がってくるようなツインギターの旋律は息もぴったり。
この曲は彼らでほぼ唯一アメリカでもヒット、最高位12位を記録。
ボン・ジョヴィもカバーしていましたが、彼らにはとても合います。
Tr7:Fight Or Fall
(Lynott)
もう1曲ロマンティックな響きの優しい曲が。
バラード的な響きを持ったミドルテンポの曲。
よく聴くと声の出し方もロマンティック指向ですね。
ギターソロも、まるでフィギュアスケートのように
心地よく滑っている感じで響いてきます。
Tr8:Cowboy Song
(Downey / Lynott)
タイトルの如く出だしが少しカントリー風。
彼らもやはりアメリカが好きで、意識していたんですね。
曲はAメロも歌として響いてくるし、サビは大仰かつ力強い。
ヴォーカルはダブルトラックのようですが、多分意図的に
まったく同じには歌っていないのが広がりを感じます。
アルバムの最後の前に盛り上げるだけ盛り上げていて、
今回記事にするのに聴いて、その良さに気づいた曲。
Tr9:Emerald
(Downey / Gorham / Robertson / Lynott)
最後のこの曲が心にしみる「哀愁のハードロック」。
まずもってタイトルがエメラルド。
♪ Down from the glenn came the marching men
冒頭のこの歌詞でもう心はアイルランドに飛びます。
ギターリフがあまりにも素晴らしく、心が切り刻まれるかのよう。
後半のギターソロも素晴らしく、ギターの音の歪み具合がきれいで、
この曲はギターワークの素晴らしさを堪能できます。
ほんと、先ほど記事を書くのにCDをかけながら打っていて、
この曲のところで自分の魂が曲に入り込むのを感じました。
余談ですが、アイアン・メイデンのエイドリアン・スミスが、
The Fallen Angelを作った際にこの曲に影響を受けたと、
彼自身が雑誌のインタビューで語っていました。
確かに似ている、でも、決してパクリではなくリスペクトですね。
アイルランドのバンドならではの味わいです。
リンクは左がデラックス・エディション、右が通常盤。
ああ、すいません、アルバムはいいんだけど、
この漫画的なアートワークは僕には微妙です。
デラックス・エディションのDisc2は、リミックス、
デモ、BBCセッションの音源などとなっています。
シン・リジィ、なんだかんだで結局は大好きですよ(笑)。
彼らのアルバムの中でもこれは歌メロが印象に残るほうです。
でも、正直いえば、落ち込んだ時にシン・リジィを聴いて
気持ちを立て直そう、とはならないんです。
そういう時に僕は歌メロがはっきりした音楽を選びます。
一方で僕は、元来がハードロックが体質に合う人間らしいので、
シン・リジィを選ぶのは、普通より気分が少し以上によい時に
聴いてさらに気分をよくしたい、そんな時ですね。
シン・リジィは僕にとってはそんな存在感です。
ともあれ、シン・リジィにはハードロックを聴く醍醐味があり、
流れていると気持ちがいい音楽です。
僕は、声が苦手な人は、最初は聴けないけど、
いつしか聴けるようになることが意外と多いのですが、
それについてもまたいつか別の機会に。
◆◇
最後にどうしてもひとこと。
サッカー日本代表
アジアカップ優勝おめでとう!
未明にはもちろん試合を最後まで見ていました。
とにかく感動ですね。
僕はいつも言いますサッカーは詳しくないのですが、
日本チームは、「なんとか勝つ」ことができるようになった、
粘り強さ、精神面での成長を感じて頼もしくなってきたと感じます。
以前の日本はそれがまったく逆だったのではないかと。
下馬評が低かった昨年のワールドカップで変わりましたかね。
というわけで写真を1枚。
03

サムライブルー・・・ではなく、アズーロ・・・
うれしいので、ハウに、
イタリア代表レプリカジャージを着せて記念撮影(笑)。
うちは、昔からずっとイタリアを応援していて、
弟がW杯デザインのレプリカジャージを買い続けています。
以前であればそれは「非国民」だったかもしれないけど、
イタリア人であるザッケローニ監督が来てくれてからは、
いつかこれを着て日本代表戦の応援に行きたいと
思うようになりました。
大丈夫ですよね、同じ青だし、許されますよね(笑)。
イタリアといえば、決勝点をアシストした
長友選手のあのスタミナといったらなんだろう!!
他の選手もみな素晴らしかった。
こうなったら夏に開催される
南米選手権に参加できるのが楽しみですよ。
日本代表チーム、おめでとう、そしてありがとう!

JAILBREAK Thin Lizzy
ジェイルブレイク (脱獄) シン・リジィ
今回はシン・リジィです。
かつて僕が嫌、いや、「苦手」だった・・・
シン・リジィのアルバム3点、スタジオ2点とライヴ1点が、
ボーナス音源(スタジオ)や映像DVD(ライヴ)がついた
デラックス・エディション(DE)としてリリースされました。
僕は、DEが出たのを機会に記事にしているアルバムが結構ありますが、
今回は、彼らのスタジオアルバムの代表作を取り上げつつ、
シン・リジィと僕の微妙なお話をさせていただきます。
僕が大学生の頃、関東ローカルだったと思いますが、
TBSの「ピュア・ロック」という深夜の音楽番組がありました。
日本における「メタル神」伊藤政則氏とメタル好きの和田誠氏が
ヘヴィメタルやハードロックについて熱く語る番組でしたが、
僕は、札幌の弟がメタルに興味が出てきていた頃だったので、
東京で録画して札幌にテープを送り、ついでに観ていました。
その番組について語ると記事が幾つあっても足りないのですが、
そこではシン・リジィの曲がよくかかっていました。
僕は彼らを「ベスト・ヒットUSA」で見た記憶もなく(寝てたかも)、
それまでラジオで意識して聴いたこともなかったはずで、
だからその番組が僕のシン・リジィ初体験でした。
僕は以前、「苦手なアーティスト」の記事を上げました。
僕はかつて、シン・リジィは大嫌いでした。
その記事を書いた時はもう好きになっていたので、
そこでは触れなかったのですが、かつては毛嫌いしていました。
あ、「苦手」ですね、「嫌い」じゃなくって(笑)。
「ピュア・ロック」でやたらとよくかかっていて接する機会が多く、
それでかえって「苦手」が助長されたようでした。
苦手な理由のひとつは、リーダーであるヴォーカルでベースの
フィル・ライノット Phil Lynottが生理的にだめだったから。
彼は黒人の血が入っていて、もちろんそのこと自体には、
嫌いもだめも何もないのですが、しかしこの人の場合、
僕は顔つき恐かったんです。
顔以上に、低くて重く粘つく呪術的な声が輪をかけてだめでした。
ドアーズのジム・モリソンと同系統の声です。
僕は、音楽を聴くにあたり、男性アーティストについては、
外見はほぼまったく気にしないので、ルックスだけなら
それほど毛嫌いはしなかったのだろうけど、声がだめなのは、
やっぱり、受け入れ難いものがありました。
しかし、彼らは僕には合わないと感じたもっと大きな要素は、
誤解を恐れずに言えば、彼らの歌には「歌メロがない」のです。
もちろんこれは多少のレトリック表現ですが、
歌メロへのこだわりが人一倍強い僕にとって彼らの音楽は、
鼻歌で口ずさんで気持ちがよい「歌」ではなかった。
端的に言えば、Aメロの部分は音楽に合わせて言葉をのせるだけ。
かといってラップというほど喋りでもなく、音楽的に流れていて
音符で表せるものではあるけど、僕には「歌」として響いてこない。
思うに、フィル・ライノットは多分、詩は大好きなのではないかな。
歌詞もメッセージ性を強く感じるし、自らが表現したいことを、
「歌う」のではなく、「詩」として音楽にのせて発語してゆく、
そういう姿勢だったのかもしれない。
などと冷静に見れば結構ひどいことを書いているかもですが(笑)、
じゃあ僕はどうして、嫌いだったシン・リジィを聴くようになり、
今では好きとまで言えるようになったのか。
その1
僕は好奇心旺盛な人間であり、興味はあったから。
有名なアーティストは、どうして評価され人気があるのか、
自分の耳で確かめたいという思いがあるからです。
これはもうそれ以上の説明は要らないかと。
その2
僕は、年を経るごとに、歌だけではなく
音楽全体を楽しめるようになったのかもしれない。
僕はプログレも聴けるようになったのはだいぶ遅かった。
そしてクラシックを一時期熱心に聴いてからそう変わりました。
同様に、かつては「面白い音」には鈍感でしたが、最近では
「面白い音」にも自然と耳と心が向くようになりました。
(でもインプロビゼーションはいまだにやや苦手です・・・)
その3
僕は歌が好きで、なるべく多くの歌を覚えたいけど、
年齢とともに歌を覚えようという気力が失せ、時間もなくなり、
歌への執着心が薄れたから。
今は、歌詞カードを見てまで覚えたいほどの新たな曲との出会いは
少なくなり、聴いて適当に口ずさむくらいです。
でも、シン・リジィの場合、実際に聴くようになったのには、
確たるきっかけがあったのです、それはずばり、
リマスター盤CDを中古で見つけたから。
よく言いますが、リマスター盤が出ているアーティストは、
好奇心の手伝いもあって、聴いてみたい、聴いてみようと思うんです。
シン・リジィの場合、同じ頃に違う店に3枚の違うアルバムの
リマスター盤中古CDがあったのです。
片方の店に2枚、もう片方に1枚、同じ日じゃないけど
数日内にそれを見つけ、3枚同時に手に入るなら
リマスター盤が揃うのは早いかもしれないと思い、
その2軒に立て続けに行って3枚を一度に買いました。
そのどちらの店も今はもうないのは寂しい限りですが・・・
3枚のうちの1枚が今回記事にしたこのアルバムでしたが、
だから僕にはこれ、彼らの中でも思い入れが強い1枚です。
それ以外に3枚のリマスター盤が出ていましたが、運がよいことに、
もう1枚のライヴ盤もまた別の店で中古がすぐに見つかり
残り2点は新品で買い、リマスター盤ではないものも買いました。
買って聴いてゆくと、徐々に良いと感じるようになり、
いつしか「好き」と、臆面もなく言えるようなになりました。
つくづく、音楽には、確かに、時宜がありますね。
聴くようになって気づいたこと。
先ほど僕は、Aメロは「歌」ではないと書きましたが、
もちろん、曲として印象に残らなければ音楽ではないわけで、
彼らは、Bメロ=サビの部分には逆に力が入っていて、
サビについてはむしろ強烈ですぐに覚えて口ずさめます。
これは並みじゃないですよ、爆発的とさえいえるくらい。
Aメロの部分はまさに導入部で目立たず、サビの強烈な歌メロまで
流れよく引っ張ってつないでサビを引き立たせるという意味では
むしろ効果的と言えるものだと思い直しました。
演奏は素晴らしい。
ギターリフ作りが巧く、低音弦をダイナミックに展開させて
たたみかけるように大きく響かせるギターワークは一級品。
ソロもギターヒーロー的な響きを存分に醸し出しています。
グルーヴ感もかなりのもので、自然と音楽にのって体が動きます。
彼らの音楽は、歌だけを目立たせるのではなく、全体を聴いて
「感じて」ほしいということなのでしょう、きっと。
ただ、僕はやったことはない、なんとなくの想像だけど、
シン・リジィはバンドでコピーすると、感覚が先走るだけに、
特にサビじゃない部分は再現するのが大変そうだなと思います。
もうひとつ好きなのは、アイルランドのバンドだから。
アイルランドは憧れのようなものがあるし、心の中で
大切にしたいという一方的な思い入れがある国。
だから、今はこれがいちばん大きいかもしれない。
ゲイリー・ムーア Gary Mooreもそうだけど、
憂いを帯びた音には勇気が湧いてくると感じることもあります。
ゲイリー・ムーアはシン・リジィに在籍していたこともありますが、
今回DEが出た3枚にはどれも参加していません。
シン・リジィの話でゲイリーに触れないのはどうかと思いつつ、
またの機会があればにしたいと思います(あるのかな・・・)
このアルバムのメンバーは以下の通り。
フィル・ライノット Phil Lynott (Vo)(Bs)
スコット・ゴーハム Scott Gorham (Gt)
ブライアン・ロバートソン Brian Robertson (Gt)
ブライアン・ダウニー Brian Downey (Ds)
ブックレットの写真ではギター2人ともレス・ポールを持っています。
フィル・ライノットは1986年に亡くなりました。
上述のようにその当時は聴いていなかったのですが、
「ピュア・ロック」でよく放送されていたのは、
亡くなって間もなく、再評価機運が高まっていたのでしょうね。
今は、最初は苦手だったことを申し訳なく思う部分もあります。
さて、良質の心地よい英国流ハードロックを聴いてゆきますか。
作曲者は曲名の下にファミリーネームで記してゆきます。
02 他の2点はJOHNNY THE FOXとLIVE AND DANGEROUS

Tr1:Jailbreak
(Lynott)
じゃ~ん(ちょわ~ん)と始まり、印象的なリフが刻まれてゆく。
Aメロは低音でやはりあまり抑揚がないですが、
サビは高音で力強く弾ける印象的な歌メロになっています。
ギターのバッキング、低音弦の動かし方の勉強になる曲で、特に
2'18"で"break out!"と叫んだ後のスリリングな展開が聴きどころ。
サビは彼らでも特に印象に残りやすい曲のひとつです。
Tr2:Angel From The Coast
(Lynott / Robertson)
書き忘れてましたが、彼らはファンクの影響もありますね。
この曲は顕著で、ちょっと横系ののりが不足意味ですが、
ぽこぽこ鳴るギターにのってフィルが気分よさそうに語っています。
でも、あれ、この曲のサビはどこ・・・!?・・・
Tr3:Running Back
(Lynott)
「G→F♯→E、E...」という優しい響きのギターの旋律が
サビ以外の部分で流れ続けていて印象的。
これもサビが強烈というよりは全体で流れている曲かな。
最後のほうのハミング、やっぱりねっとりしているけど
その向こうに優しい気持ちが透けています。
Tr4:Romeo And The Lonely Girl
(Lynott)
書き漏らしていましたが、フィル・ライノットが苦手だった
もうひとつの理由が、案外ロマンティックなところです。
この曲はアップテンポでまだべったりではないんですが、
映像で見た別の曲ではフィルが一輪のバラを持って歌っていたり、
なんというのか、すいません、当時のことを正直に言うと
「その顔でそれは違うだろ」って思いました。
今はもうそんな偏見のようなものはありません、何に対しても。
でも、若かった頃は僕もそういう人間だったのかもしれない。
まあともかく、ロマンティックな部分は、意外にというか、
彼の魅力のひとつだと思います。
この曲は珍しくAメロも結構印象的で口ずさめます。
まあ、サビはAメロを盛り上げただけで基本的に同じなのですが。
後半の高音中心のギターソロが面白い響きで印象的。
Tr5:Warriors
(Lynott / Gorham)
この曲はワウペダルを使ったギターソロがすごい。
多分、作曲者のひとりであるゴーハムの演奏でしょうけど、
そういえば僕は、ギターは誰がどこを担当し弾いているか、
2人のギタリストの違いが分かっていません、勉強しないと。
とにかくギターワークがタイトルの如くたたみかけてくる。
歌は、これはほとんどラップといっていい感じで、だから逆に
ギターが目立つだけ目立つともいえます。
要はバンドの中のバランス感覚なのでしょうね。
Tr6:The Boys Are Back In Town
(Lynott)
「ヤツらは街へ」、彼らの代表曲にして70年代の名曲。
♪ ざぼぉ~ぃずあばっきんたぁうん
「脱獄」して街に戻ってきたのでしょう。
彼らの音楽は、エネルギーの発散と解放という意味では、
パンクに近い要素も或いはあるのではないかと感じますが、
特にこの曲はそうですね、サビの爆発力がすごい。
この曲はAメロの気持ちの先走り方も突出しています。
このアルバムと同じ年にセックス・ピストルズがデビュー。
シン・リジィは同調はしていなかったのでしょうけど、
時代の息遣いを感じてこの曲をものにしたのかもしれません。
イントロの細かく動くベースのフレーズが印象的ですが、
フィルのベースプレイの基本は、フレーズというよりは
グルーヴ感とそれこそ下支えが中心と言えるかもしれません。
せり上がってくるようなツインギターの旋律は息もぴったり。
この曲は彼らでほぼ唯一アメリカでもヒット、最高位12位を記録。
ボン・ジョヴィもカバーしていましたが、彼らにはとても合います。
Tr7:Fight Or Fall
(Lynott)
もう1曲ロマンティックな響きの優しい曲が。
バラード的な響きを持ったミドルテンポの曲。
よく聴くと声の出し方もロマンティック指向ですね。
ギターソロも、まるでフィギュアスケートのように
心地よく滑っている感じで響いてきます。
Tr8:Cowboy Song
(Downey / Lynott)
タイトルの如く出だしが少しカントリー風。
彼らもやはりアメリカが好きで、意識していたんですね。
曲はAメロも歌として響いてくるし、サビは大仰かつ力強い。
ヴォーカルはダブルトラックのようですが、多分意図的に
まったく同じには歌っていないのが広がりを感じます。
アルバムの最後の前に盛り上げるだけ盛り上げていて、
今回記事にするのに聴いて、その良さに気づいた曲。
Tr9:Emerald
(Downey / Gorham / Robertson / Lynott)
最後のこの曲が心にしみる「哀愁のハードロック」。
まずもってタイトルがエメラルド。
♪ Down from the glenn came the marching men
冒頭のこの歌詞でもう心はアイルランドに飛びます。
ギターリフがあまりにも素晴らしく、心が切り刻まれるかのよう。
後半のギターソロも素晴らしく、ギターの音の歪み具合がきれいで、
この曲はギターワークの素晴らしさを堪能できます。
ほんと、先ほど記事を書くのにCDをかけながら打っていて、
この曲のところで自分の魂が曲に入り込むのを感じました。
余談ですが、アイアン・メイデンのエイドリアン・スミスが、
The Fallen Angelを作った際にこの曲に影響を受けたと、
彼自身が雑誌のインタビューで語っていました。
確かに似ている、でも、決してパクリではなくリスペクトですね。
アイルランドのバンドならではの味わいです。
リンクは左がデラックス・エディション、右が通常盤。
ああ、すいません、アルバムはいいんだけど、
この漫画的なアートワークは僕には微妙です。
デラックス・エディションのDisc2は、リミックス、
デモ、BBCセッションの音源などとなっています。
シン・リジィ、なんだかんだで結局は大好きですよ(笑)。
彼らのアルバムの中でもこれは歌メロが印象に残るほうです。
でも、正直いえば、落ち込んだ時にシン・リジィを聴いて
気持ちを立て直そう、とはならないんです。
そういう時に僕は歌メロがはっきりした音楽を選びます。
一方で僕は、元来がハードロックが体質に合う人間らしいので、
シン・リジィを選ぶのは、普通より気分が少し以上によい時に
聴いてさらに気分をよくしたい、そんな時ですね。
シン・リジィは僕にとってはそんな存在感です。
ともあれ、シン・リジィにはハードロックを聴く醍醐味があり、
流れていると気持ちがいい音楽です。
僕は、声が苦手な人は、最初は聴けないけど、
いつしか聴けるようになることが意外と多いのですが、
それについてもまたいつか別の機会に。
◆◇
最後にどうしてもひとこと。
サッカー日本代表
アジアカップ優勝おめでとう!
未明にはもちろん試合を最後まで見ていました。
とにかく感動ですね。
僕はいつも言いますサッカーは詳しくないのですが、
日本チームは、「なんとか勝つ」ことができるようになった、
粘り強さ、精神面での成長を感じて頼もしくなってきたと感じます。
以前の日本はそれがまったく逆だったのではないかと。
下馬評が低かった昨年のワールドカップで変わりましたかね。
というわけで写真を1枚。
03

サムライブルー・・・ではなく、アズーロ・・・
うれしいので、ハウに、
イタリア代表レプリカジャージを着せて記念撮影(笑)。
うちは、昔からずっとイタリアを応援していて、
弟がW杯デザインのレプリカジャージを買い続けています。
以前であればそれは「非国民」だったかもしれないけど、
イタリア人であるザッケローニ監督が来てくれてからは、
いつかこれを着て日本代表戦の応援に行きたいと
思うようになりました。
大丈夫ですよね、同じ青だし、許されますよね(笑)。
イタリアといえば、決勝点をアシストした
長友選手のあのスタミナといったらなんだろう!!
他の選手もみな素晴らしかった。
こうなったら夏に開催される
南米選手権に参加できるのが楽しみですよ。
日本代表チーム、おめでとう、そしてありがとう!
Posted by guitarbird at 10:48
│ロックQ-Z