2014年03月18日
YOU SHOULD BE SO LUCKY ベンモント・テンチ
01

YOU SHOULD BE SO LUCKY Benmont Tench
ユー・シュッド・ビー・ソー・ラッキー ベンモント・テンチ (2014)
ベンモント・テンチ。
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのキーボード奏者。
ソロアルバムが出るという情報を昨秋にFacebookで知り、
2月のリリースを心待ちにしていました。
今回はそのアルバムの話です。
ベンモント・テンチの本名は
Benjamin Montgomery "Benmont" Tench
なるほど、"Benmont"という変わった名前は、ファーストネームと
ミドルネームの頭をとってくっつけた造語なのですね。
1953年9月7日、マイアミ州ゲインズヴィル生まれ。
幼少時代からクラシックピアノを弾き人前で演奏していましたが、
ビートルズを聴いて心変わり、同じようにロックキッズだった
トム・ペティと地元で知り合ったのが11歳の頃。
つまり2人は幼なじみというわけだ、とこれはWikipediaから。
彼について語らなければならないのは、ほぼ毎年
誰かのアルバムに呼ばれて演奏していること。
ワーカホリックじゃないかと心配になるほど
僕が買うCDではほんとうによく名前を見ますが、
彼はミュージシャンの間で人気が高いのでしょう。
実際、ピアノもハモンドオルガンも聴かせる人です。
アルバムを聴いて感じたこと。
音楽の「楽」の部分をよく知っている人だなあ。
とにかく楽しい音。
それはきっと、まず自分自身が楽しんだ上でないと、
聴く人も楽しくさせられない、という姿勢があるのではないかと。
他のアーティストに引く手数多なのは、呼ぶ側も彼と演奏すると
音楽の本来の楽しさを再発見できるからではないか。
エンターティメント性とはまた違う、もっと根源的な、人付き合いの
中での人に楽しんでもらおうという姿勢が伝わってきます。
彼は、実際に話してみると、多少斜に構え、皮肉交じりの
ユーモアを連発しながら話を進めそうな人に見えます。
でも根っこの部分は暖かく、話が面白い人。
まあ、話す機会はないでしょうけど。
ベンモントはトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズでは
基本的には歌わないですが、ここでは歌っています。
正直、歌手としてお金を取れるかというと、そうでもないかな。
上手い下手ではなく、声がいいかどうかともまた違う、
「商品」としての声の強さがない、という意味で、
あくまでも商売としてどうかという観点で言っています、念のため。
ごく身近にそのいい例がいますよね、トム・ペティ。
あのつまようじを歯に挟んだまま歌うような歌い方、
だみ声できれいな声ではないけれど、でも歌手として
トップクラスの人気があります(少なくともアメリカでは)。
ただ、全体的に落ち着いた、インパクトよりは
じっくりと何度も聴いてこそというこの音楽では、むしろ
ベンモントのおとなしい声が飽きないし合っていると思います。
ところで声について余談、僕がこれを聴いていたところに
帰宅した弟が、誰を聴いているのだと聞いてきました。
ベンモント・テンチだと答えると、弟は、そうか
どうりでトム・ペティに似ていると思った、と言いました。
そうですね、トムのソフトな歌い方がずっと続いている感じかな。
その後弟は、同じバンドの人はどうして声も似るのだろう、と。
なるほど、そういえばキース・リチャーズとロン・ウッドも似ているし、
ピーター・ガブリエルとフィル・コリンズもそうだな。
もちろんすべてじゃないけれど、とまあ余談でした。
このアルバムはブルーノートから出ています。
言わずと知れたジャズ系のレーベルで、ノラ・ジョーンズはデビューから
そうですが、他にもヴァン・モリソンやブライアン・ウィルソンなど、
ポップス・ロック系の人の作品も時々出しています。
現在のブルーノートの社長はドン・ウォズ、僕も最近知ったのですが。
ドン・ウォズは1980年代後半から90年代にかけて時代に合った
華やかでしっかりと響く音で人気を博したプロデューサーであり、
自身もウォズ(・ノット・ウォズ)というプロジェクトで
Walk The Dinasaurなどのヒットを飛ばしました。
ベンモント・テンチのこのアルバムはそれほどジャズっぽい響きでは
ないのですが、でも、ロックから飛び出してR&Bの良さを伝える
アコースティックな響きの音楽という解釈で聴くと、
ブルーノートであることが納得です。
さすがは社長、うまいところに目をつけた。
僕自身、ブルーノート・レーベルが大好きなので、
家に届いたCDを見た瞬間、付加価値が増大しました。
ジャケット写真がいかにもブルーノートという雰囲気ですよね。
そのドン・ウォズは過半の曲でベースを弾いて彼を支えています。
曲は、カヴァー2曲以外すべてベンモント・テンチがひとりで書いています。
02 今朝のA公園

1曲目 Today I Took Your Picture Down
窓の外の屋根から滴り落ちる雨のようなピアノの音で
静かにアルバムが幕を開ける。
いきなり別れる曲か、やはり一筋縄ではいかない人なのだ、と。
この曲では彼の声の「弱さ」があるからこその抒情性だと感じます。
曲の流れも70年代から80年代によくあったポップなスタイルで、
最初から安心して気持ちが入ってゆくのを感じました。
2曲目 Veronica Said
「ジャーン」とギターが派手になって2曲目で元気になる。
「ジャッジャジャラララ」というギターのバッキングのリフには
胸が小躍りする。
雨が上がり、傘を持たずに少々胸を張りながらどこかに向かう、
そんな響きかな。
でも、張り切り過ぎないようにしないと(笑)。
サビでふわっと盛り上がる歌メロも含め、やはり
古臭い響きのロックはほっとします、そしてうれしい。
3曲目 Ecor Rouge
いかにもブルーノートから出ている音楽らしい、
つまりはジャズの雰囲気があるインストゥロメンタル曲。
ベンモントのピアノが風に揺られています。
4曲目 Hannah
おお、女性は2人目だ・・・
ぼそっとささやくように歌う静かな曲。
2人寄り添って歩いているのだから、
大きな声で歌う必要もないでしょう。
この先どうなるか、明るくも暗くもとれるのが興味深いところ。
オルガンの間奏で少し丘が来るけれど、大きなことが
起こらないうちにすぱっと終わる。
5曲目 Blonde Girl, Blue Dress
この曲のゲストはトム・ペティとリンゴ・スター。
いや、うれしい、やっぱり参加していたか。
トムは幼なじみだから言うに及ばず、リンゴも1980年代後半以降
トムたちと親交を深めていますからね。
曲自体がトム・ペティらしいと感じます。
それにしても、もしかして歩いている間に他の女性を見たのかな。
その女性が背が高くて清楚でりりしい人だったことを想像させる
おとなしい音。
6曲目 You Should Be So Lucky
アップテンポのファンキーなリズムでぐいぐいと引っ張ってゆく
表題曲、クライマックスといえるでしょう。
曲のイメージはナット・アダレイのWork Songに
歌詞がついたものですね。
ゲストはライアン・アダムス、シェリル・クロウなどいろんなところで
客演しているのを聴いているけれど、実はまだ
その人自身を聴いたことはない。
だから彼がいるからどうというのは分からないけれど、
アルバムでいちばん元気な曲であるのは若さゆえかな。
でもコーラスのつけかたがやはりいかにもトム・ペティと感じてしまう。
思わず体が動いてしまう曲。
03 ポーラもちろんいます、ちょっと斜に構えているけれど

7曲目 Corrina, Corrina
トラディショナルをボブ・ディランがアレンジした曲で、
ブックレットにそう記されているのでディランの曲といっていいでしょう。
FREEWHEELIN' BOB DYLAN収録。
ボズ・スキャッグスもロッド・スチュワートも昨年のアルバムで
歌っていたけれど(ロッドはボーナストラック扱い)、
何かこの曲が注目されるようなことがあったのかな。
偶然だとすれば、お互いに知って驚いたでしょうね。
いや、知らないかも・・・なんて寂しいことは言わない。
ギターの音色が、秋、黄色い落ち葉が風で舞い落ちてくるイメージ。
黄色い葉というとイチョウになるのでしょうか、
でも僕はイタヤカエデを思い浮かべました。
そう、このアルバムは全体的に秋のイメージかもしれない。
春先に聴くと想像や思い出の世界になりますが、春先に聴き込んで、
夏の間はお休みして、秋にまた聴くとぐっとよく響いてくるでしょう。
8曲目 Dogwood
犬も木もベンモントも大好きな僕にはうれしい曲名。
"Dogwood"とは「ミズキ」「ハナミズキ」。
ハナミズキは僕の周りにはないけれど、ミズキは
枝が赤くて上向きに伸びる縁起のいいあれですね。
ボサノヴァ風の洒落た曲で、Bメロの女声コーラスが効いています。
気持ちが自然と楽しくなりますね。
9曲目 Like The Sun (Michoacan)
12弦ギターが軽やかに鳴る、これぞバーズ直系トム・ペティの音。
聴いた瞬間、頬の筋肉が緩んで、涙腺も緩みそうな
自分に気づきました。
でも、ほんとうに声をトムに変えると100%
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズといった曲で
うれしいことこの上ない。
ベンモントはもちろん、トムのコンサートでやると盛り上がりそう。
僕が選ぶこのアルバムのベストチューンはこれですね。
10曲目 Wobbles
"wobble"は「よろめく」という意味で、なるほど、
立っているけれどどことなく頼りない、そんな響き。
インストゥロメンタル曲が3曲目とここ10曲目に配置されていますが、
おそらく彼は、12曲を6曲6曲のLPA面B面と分けて
流れを組み立てていると、これがここにあることで想像しました。
いい流れです。
これはラテンっぽい雰囲気。
11曲目 Why Don't You Quit Leavin' Me Alone
独白調の曲においては、彼のあまり強くない声が
ほんとうに歌に寄り添っていますね。
老人が過去を振り返る映画のシーンにとてもよく合いそう。
でも、「一人にするのをやめて」と訴えるこの曲、
そういう状況では深刻すぎるかも。
ということを、少し強く歌ったところで声が揺らぐことから感じました。
懇願するのでもなく、祈るでもない、不安だけどなるべく
それを表したくない、心にしみる曲ですね。
12曲目Duquesne Whistle
最後にこの曲が聴こえてきた時の僕のうれしさといったら。
少し前に記事(こちら) を上げたボブ・ディランの好きな12曲の中に
これを選んでいましたが、そうかやはりこの曲が大好きな人が
いたんだ、しかも尊敬するミュージシャンが。
ラグタイム風の軽くて洒落た雰囲気、このスウィング感、
映画『スティング』を思い出します。
ディランもこのアレンジは気に入ると思う、コンサートで
このアレンジで歌ってくれないかな(笑)。
前の曲が重たすぎ、このまま終わらせてはいけないという思いからか、
弾けた曲がアルバムの最後にあるのはほっとします。
国内盤は今のところリリースの予定がないようです。
やはり、と付け加えるべきかもですが・・・
最初は敢えて書かなかったのですが、言ってしまえば
これは、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの音なのです。
同じ人がやっているのだから当たり前かもしれないけれど、
これを聴いて、バンドの中で彼が作った曲は結構多く、
重要な役割を果たしてきていたことがあらためて分かりました。
歌メロが意外といい、ということも感じました。
もう少し趣味性が出たものを想像していたのですが、
歌として普通の曲が多い。
ベンモントの声は、「歌う」というよりは「口ずさむ」のによく合います。
僕の場合は人前でもカラオケでも歌わないので、
そのことでかえって親しみを覚えます。
音楽としてのインパクトの大きさよりも、2回、3回と聴き進めるうちに
良さが分かる、その典型的なアルバムかな。
まあ、本人も大ヒットは狙っていないでしょうから、
そこは安心して聴くことができます。
好きな人なら、赤ワインでもあけながら、
珈琲であればモカのブラック、そんな雰囲気の音楽かな。
僕は悲しいことに普通に聴いていますが、でも、
車よりは家、そんな響きの音楽です。
いずれにせよ、いい音楽を聴いているんだなあ、
という実感にひたれる1枚ですね。
僕は、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの来日公演を
願ってやまない人間ですが、その前に、
ベンモント・テンチが小さな会場でコンサートもいいなあ。
札幌には絶対に来ないだろうから、それはぜひ東京で行きたい。
そこでTP&HBsの曲もたくさん歌ってほしい。
と、結局はコンサートの妄想につながるのでした(笑)。
最後はCDと犬たちをもう1枚。
CDの記事だから先に撮ったこちらではCDがまっすぐですが、
たまにはCDが斜めも面白いかなと01を撮り直しました。
05


YOU SHOULD BE SO LUCKY Benmont Tench
ユー・シュッド・ビー・ソー・ラッキー ベンモント・テンチ (2014)
ベンモント・テンチ。
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのキーボード奏者。
ソロアルバムが出るという情報を昨秋にFacebookで知り、
2月のリリースを心待ちにしていました。
今回はそのアルバムの話です。
ベンモント・テンチの本名は
Benjamin Montgomery "Benmont" Tench
なるほど、"Benmont"という変わった名前は、ファーストネームと
ミドルネームの頭をとってくっつけた造語なのですね。
1953年9月7日、マイアミ州ゲインズヴィル生まれ。
幼少時代からクラシックピアノを弾き人前で演奏していましたが、
ビートルズを聴いて心変わり、同じようにロックキッズだった
トム・ペティと地元で知り合ったのが11歳の頃。
つまり2人は幼なじみというわけだ、とこれはWikipediaから。
彼について語らなければならないのは、ほぼ毎年
誰かのアルバムに呼ばれて演奏していること。
ワーカホリックじゃないかと心配になるほど
僕が買うCDではほんとうによく名前を見ますが、
彼はミュージシャンの間で人気が高いのでしょう。
実際、ピアノもハモンドオルガンも聴かせる人です。
アルバムを聴いて感じたこと。
音楽の「楽」の部分をよく知っている人だなあ。
とにかく楽しい音。
それはきっと、まず自分自身が楽しんだ上でないと、
聴く人も楽しくさせられない、という姿勢があるのではないかと。
他のアーティストに引く手数多なのは、呼ぶ側も彼と演奏すると
音楽の本来の楽しさを再発見できるからではないか。
エンターティメント性とはまた違う、もっと根源的な、人付き合いの
中での人に楽しんでもらおうという姿勢が伝わってきます。
彼は、実際に話してみると、多少斜に構え、皮肉交じりの
ユーモアを連発しながら話を進めそうな人に見えます。
でも根っこの部分は暖かく、話が面白い人。
まあ、話す機会はないでしょうけど。
ベンモントはトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズでは
基本的には歌わないですが、ここでは歌っています。
正直、歌手としてお金を取れるかというと、そうでもないかな。
上手い下手ではなく、声がいいかどうかともまた違う、
「商品」としての声の強さがない、という意味で、
あくまでも商売としてどうかという観点で言っています、念のため。
ごく身近にそのいい例がいますよね、トム・ペティ。
あのつまようじを歯に挟んだまま歌うような歌い方、
だみ声できれいな声ではないけれど、でも歌手として
トップクラスの人気があります(少なくともアメリカでは)。
ただ、全体的に落ち着いた、インパクトよりは
じっくりと何度も聴いてこそというこの音楽では、むしろ
ベンモントのおとなしい声が飽きないし合っていると思います。
ところで声について余談、僕がこれを聴いていたところに
帰宅した弟が、誰を聴いているのだと聞いてきました。
ベンモント・テンチだと答えると、弟は、そうか
どうりでトム・ペティに似ていると思った、と言いました。
そうですね、トムのソフトな歌い方がずっと続いている感じかな。
その後弟は、同じバンドの人はどうして声も似るのだろう、と。
なるほど、そういえばキース・リチャーズとロン・ウッドも似ているし、
ピーター・ガブリエルとフィル・コリンズもそうだな。
もちろんすべてじゃないけれど、とまあ余談でした。
このアルバムはブルーノートから出ています。
言わずと知れたジャズ系のレーベルで、ノラ・ジョーンズはデビューから
そうですが、他にもヴァン・モリソンやブライアン・ウィルソンなど、
ポップス・ロック系の人の作品も時々出しています。
現在のブルーノートの社長はドン・ウォズ、僕も最近知ったのですが。
ドン・ウォズは1980年代後半から90年代にかけて時代に合った
華やかでしっかりと響く音で人気を博したプロデューサーであり、
自身もウォズ(・ノット・ウォズ)というプロジェクトで
Walk The Dinasaurなどのヒットを飛ばしました。
ベンモント・テンチのこのアルバムはそれほどジャズっぽい響きでは
ないのですが、でも、ロックから飛び出してR&Bの良さを伝える
アコースティックな響きの音楽という解釈で聴くと、
ブルーノートであることが納得です。
さすがは社長、うまいところに目をつけた。
僕自身、ブルーノート・レーベルが大好きなので、
家に届いたCDを見た瞬間、付加価値が増大しました。
ジャケット写真がいかにもブルーノートという雰囲気ですよね。
そのドン・ウォズは過半の曲でベースを弾いて彼を支えています。
曲は、カヴァー2曲以外すべてベンモント・テンチがひとりで書いています。
02 今朝のA公園

1曲目 Today I Took Your Picture Down
窓の外の屋根から滴り落ちる雨のようなピアノの音で
静かにアルバムが幕を開ける。
いきなり別れる曲か、やはり一筋縄ではいかない人なのだ、と。
この曲では彼の声の「弱さ」があるからこその抒情性だと感じます。
曲の流れも70年代から80年代によくあったポップなスタイルで、
最初から安心して気持ちが入ってゆくのを感じました。
2曲目 Veronica Said
「ジャーン」とギターが派手になって2曲目で元気になる。
「ジャッジャジャラララ」というギターのバッキングのリフには
胸が小躍りする。
雨が上がり、傘を持たずに少々胸を張りながらどこかに向かう、
そんな響きかな。
でも、張り切り過ぎないようにしないと(笑)。
サビでふわっと盛り上がる歌メロも含め、やはり
古臭い響きのロックはほっとします、そしてうれしい。
3曲目 Ecor Rouge
いかにもブルーノートから出ている音楽らしい、
つまりはジャズの雰囲気があるインストゥロメンタル曲。
ベンモントのピアノが風に揺られています。
4曲目 Hannah
おお、女性は2人目だ・・・
ぼそっとささやくように歌う静かな曲。
2人寄り添って歩いているのだから、
大きな声で歌う必要もないでしょう。
この先どうなるか、明るくも暗くもとれるのが興味深いところ。
オルガンの間奏で少し丘が来るけれど、大きなことが
起こらないうちにすぱっと終わる。
5曲目 Blonde Girl, Blue Dress
この曲のゲストはトム・ペティとリンゴ・スター。
いや、うれしい、やっぱり参加していたか。
トムは幼なじみだから言うに及ばず、リンゴも1980年代後半以降
トムたちと親交を深めていますからね。
曲自体がトム・ペティらしいと感じます。
それにしても、もしかして歩いている間に他の女性を見たのかな。
その女性が背が高くて清楚でりりしい人だったことを想像させる
おとなしい音。
6曲目 You Should Be So Lucky
アップテンポのファンキーなリズムでぐいぐいと引っ張ってゆく
表題曲、クライマックスといえるでしょう。
曲のイメージはナット・アダレイのWork Songに
歌詞がついたものですね。
ゲストはライアン・アダムス、シェリル・クロウなどいろんなところで
客演しているのを聴いているけれど、実はまだ
その人自身を聴いたことはない。
だから彼がいるからどうというのは分からないけれど、
アルバムでいちばん元気な曲であるのは若さゆえかな。
でもコーラスのつけかたがやはりいかにもトム・ペティと感じてしまう。
思わず体が動いてしまう曲。
03 ポーラもちろんいます、ちょっと斜に構えているけれど

7曲目 Corrina, Corrina
トラディショナルをボブ・ディランがアレンジした曲で、
ブックレットにそう記されているのでディランの曲といっていいでしょう。
FREEWHEELIN' BOB DYLAN収録。
ボズ・スキャッグスもロッド・スチュワートも昨年のアルバムで
歌っていたけれど(ロッドはボーナストラック扱い)、
何かこの曲が注目されるようなことがあったのかな。
偶然だとすれば、お互いに知って驚いたでしょうね。
いや、知らないかも・・・なんて寂しいことは言わない。
ギターの音色が、秋、黄色い落ち葉が風で舞い落ちてくるイメージ。
黄色い葉というとイチョウになるのでしょうか、
でも僕はイタヤカエデを思い浮かべました。
そう、このアルバムは全体的に秋のイメージかもしれない。
春先に聴くと想像や思い出の世界になりますが、春先に聴き込んで、
夏の間はお休みして、秋にまた聴くとぐっとよく響いてくるでしょう。
8曲目 Dogwood
犬も木もベンモントも大好きな僕にはうれしい曲名。
"Dogwood"とは「ミズキ」「ハナミズキ」。
ハナミズキは僕の周りにはないけれど、ミズキは
枝が赤くて上向きに伸びる縁起のいいあれですね。
ボサノヴァ風の洒落た曲で、Bメロの女声コーラスが効いています。
気持ちが自然と楽しくなりますね。
9曲目 Like The Sun (Michoacan)
12弦ギターが軽やかに鳴る、これぞバーズ直系トム・ペティの音。
聴いた瞬間、頬の筋肉が緩んで、涙腺も緩みそうな
自分に気づきました。
でも、ほんとうに声をトムに変えると100%
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズといった曲で
うれしいことこの上ない。
ベンモントはもちろん、トムのコンサートでやると盛り上がりそう。
僕が選ぶこのアルバムのベストチューンはこれですね。
10曲目 Wobbles
"wobble"は「よろめく」という意味で、なるほど、
立っているけれどどことなく頼りない、そんな響き。
インストゥロメンタル曲が3曲目とここ10曲目に配置されていますが、
おそらく彼は、12曲を6曲6曲のLPA面B面と分けて
流れを組み立てていると、これがここにあることで想像しました。
いい流れです。
これはラテンっぽい雰囲気。
11曲目 Why Don't You Quit Leavin' Me Alone
独白調の曲においては、彼のあまり強くない声が
ほんとうに歌に寄り添っていますね。
老人が過去を振り返る映画のシーンにとてもよく合いそう。
でも、「一人にするのをやめて」と訴えるこの曲、
そういう状況では深刻すぎるかも。
ということを、少し強く歌ったところで声が揺らぐことから感じました。
懇願するのでもなく、祈るでもない、不安だけどなるべく
それを表したくない、心にしみる曲ですね。
12曲目Duquesne Whistle
最後にこの曲が聴こえてきた時の僕のうれしさといったら。
少し前に記事(こちら) を上げたボブ・ディランの好きな12曲の中に
これを選んでいましたが、そうかやはりこの曲が大好きな人が
いたんだ、しかも尊敬するミュージシャンが。
ラグタイム風の軽くて洒落た雰囲気、このスウィング感、
映画『スティング』を思い出します。
ディランもこのアレンジは気に入ると思う、コンサートで
このアレンジで歌ってくれないかな(笑)。
前の曲が重たすぎ、このまま終わらせてはいけないという思いからか、
弾けた曲がアルバムの最後にあるのはほっとします。
国内盤は今のところリリースの予定がないようです。
やはり、と付け加えるべきかもですが・・・
最初は敢えて書かなかったのですが、言ってしまえば
これは、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの音なのです。
同じ人がやっているのだから当たり前かもしれないけれど、
これを聴いて、バンドの中で彼が作った曲は結構多く、
重要な役割を果たしてきていたことがあらためて分かりました。
歌メロが意外といい、ということも感じました。
もう少し趣味性が出たものを想像していたのですが、
歌として普通の曲が多い。
ベンモントの声は、「歌う」というよりは「口ずさむ」のによく合います。
僕の場合は人前でもカラオケでも歌わないので、
そのことでかえって親しみを覚えます。
音楽としてのインパクトの大きさよりも、2回、3回と聴き進めるうちに
良さが分かる、その典型的なアルバムかな。
まあ、本人も大ヒットは狙っていないでしょうから、
そこは安心して聴くことができます。
好きな人なら、赤ワインでもあけながら、
珈琲であればモカのブラック、そんな雰囲気の音楽かな。
僕は悲しいことに普通に聴いていますが、でも、
車よりは家、そんな響きの音楽です。
いずれにせよ、いい音楽を聴いているんだなあ、
という実感にひたれる1枚ですね。
僕は、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの来日公演を
願ってやまない人間ですが、その前に、
ベンモント・テンチが小さな会場でコンサートもいいなあ。
札幌には絶対に来ないだろうから、それはぜひ東京で行きたい。
そこでTP&HBsの曲もたくさん歌ってほしい。
と、結局はコンサートの妄想につながるのでした(笑)。
最後はCDと犬たちをもう1枚。
CDの記事だから先に撮ったこちらではCDがまっすぐですが、
たまにはCDが斜めも面白いかなと01を撮り直しました。
05

Posted by guitarbird at 21:29
│Tom Petty
この記事へのコメント
この話、記事にしてくれて、ありがとうございます。
ベンモント・テンチなんて、裏方の有名人なだけと思ったら、ソロも行けるんですか。
助っ人たちも豪華みたいですね。
助っ人ではない主役の彼が実現できるというのは、アメリカというのは懐が深いと思います。
ベンモント・テンチなんて、裏方の有名人なだけと思ったら、ソロも行けるんですか。
助っ人たちも豪華みたいですね。
助っ人ではない主役の彼が実現できるというのは、アメリカというのは懐が深いと思います。
Posted by enneagram at 2014年03月19日 17:13
enneagramさん、こんばんわ
アメリカでは昔からスタジオミュージシャンがソロアルバムを
出す、それをその筋の人が聴く、というのがありますね。
(ベンモントは厳密にはスタジオミュージシャンではないですが)。
大ヒットになる例はほとんどないけれど、確かに音楽の
懐が深いなと思いますね。
アメリカでは昔からスタジオミュージシャンがソロアルバムを
出す、それをその筋の人が聴く、というのがありますね。
(ベンモントは厳密にはスタジオミュージシャンではないですが)。
大ヒットになる例はほとんどないけれど、確かに音楽の
懐が深いなと思いますね。
Posted by guitarbird
at 2014年03月19日 18:53

聴いてみました。
確かにおとなしい声で、まぁボーカリストではないので余り多くを望むは酷ですよね。プロに好かれるキーボードだけでもたいしたものだから。ただ人柄の良さを感じました。
トム・ぺティ 来日はやはり無理かな。
ファンは結構居るとは思いますが。
確かにおとなしい声で、まぁボーカリストではないので余り多くを望むは酷ですよね。プロに好かれるキーボードだけでもたいしたものだから。ただ人柄の良さを感じました。
トム・ぺティ 来日はやはり無理かな。
ファンは結構居るとは思いますが。
Posted by matsu at 2014年03月19日 21:20
matsuさん、こんばんわ
聴いていただけたのですが、ありがとうございます。
私は音楽記事を書きながら、このCDはmatsuさんは気に入るかな
と考えることがよくあるのですが、正直これは、あまり強い
手応えは感じられないだろうなと思いました。
いつもご意見をありがとうございました。
聴いていただけたのですが、ありがとうございます。
私は音楽記事を書きながら、このCDはmatsuさんは気に入るかな
と考えることがよくあるのですが、正直これは、あまり強い
手応えは感じられないだろうなと思いました。
いつもご意見をありがとうございました。
Posted by guitarbird
at 2014年03月20日 19:40
