2013年06月29日
今月の読書2013年6月号
01

今月の読書です。
毎月29日に固定してゆこうと思います。
今月は6冊、では早速
☆1冊目
東京鉄道遺産
小野田滋
講談社ブルーバックス
本書は、鉄道を切り口にした日本の近代建築技術の解説書。
著者は「ブラタモリ」にも出ていた鉄道総研の人。
何気ない風景の中にドラマが隠されている建造物というものの
魅力を広く知ってほしいという思いを強く感じますが、しかもそれが
世界遺産になるようなものではなく、東京にいる限りはほんとうに
日常的に見ていて特に意識しないものばかりであるのが、
かえってそういう思いを強く感じさせてくれました。
秋葉原の大きな橋は多くの人に印象的ですが、隣りの浅草橋駅の
あの「出っ張り」がそんなに意味があるものなのかって、目から鱗。
そう考えると、ここで紹介されていなくても土木後術の隠された物語が
しみこんだ建造物はまだまだたくさんありそうで、楽しくなってくる。
鉄道に限らずの話として、日本で土木技術が発展したのは、
人口稠密であることと、無駄をなくしたいという思いからだと分かった。
地震が多く地震に耐えなければならないという必要性の他に、
ただ、建築などの専門用語は、ご丁寧にもその都度解説はあっても、
すぐに忘れてしまうのが難点で、専門用語が分かっていれば、
より楽しく読み進められたと思う。
ただ、おかげで、「ラーメン構造」というものが何か、小学生の頃から
名前は知っていたけれど、漸くここで認識し心に刻むことができた。
しかし困った。
こんな本を読んでしまうと、今すぐにでも東京に行きたくなる(笑)。
しかも台東区と神田御茶ノ水周辺が特に多いだけ余計に。
あらためて東京を見直し、魅力が増した、そんな本です。
☆2冊目
女優はB型 本音を申せば5
小林信彦
文春文庫
小林信彦は、映画に凝っていた大学1、2年の頃に
映画のコラムを首っ引きで読んでいました。
しかしなぜかぱたっと読まなくなり、20年が経過。
先日、Amazonのおすすめでこの本の存在を知り即購入。
僕もB型人間ですからね(笑)、小林信彦さんもB型。
そしてこのタイトル、日本にはB型のいい女優が多いというもの。
特に綾瀬はるかと堀北真希を高く買っていますが、そのように
公平に広く見ている著者の姿勢には共感するものがあります。
堀北真希はほとんど追っかけらしくて、気持ちも若い人ですね。
このエッセイ集は「文芸春秋」の連載を本にまとめたもので、
それも丸谷さんと同じだけど、丸谷さんは映画には特に強い
関心がないと自ら書いていて、丸谷さんには足りない部分が
こちらではむしろ主な話題として出てくるのもうれしい。
しかし読むと社会的及び政治的な話題を辛辣に書き綴っており、
そこが僕には予想外でしたが、でもそれが嫌いなわけではなく、
これはこれでやはり頭を活性化させてくれるエッセイでした。
血液型についての話も多く、やはりいろいろ考えさせられました。
半分くらい、僕もあてはまるかな、いやもっとか(笑)。
ではなぜ日本ではそれほど血液型の話がされるのか。
それは、戦時中、爆撃などで怪我をした時のために、防空頭巾に
必ず血液型を記していたことの名残ではないかということです。
そういえば僕が小学生の頃の防災頭巾にも血液型が書いてあった。
そのことにより、日本人は血液型の話が普通になった。
洋楽のアーティストの話を聞くと、血液型を知らない人とかいて
私はそれが信じられませんでしたが、そういう背景ならなるほど。
ただ、そうであるなら、いわば戦争という負の遺産を、今の日本人は
楽しい話題に変えているのは、ある意味救われた部分もあります。
小林信彦は戦争を体験した人だから、空襲など、戦時中から戦後に
かけての東京の描写に説得力があり、胸に詰まるものがありました。
そしてだから、小林信彦が血液型の話にこだわるのは、
戦争の悲惨な体験を風化させたくないという思いからきているの
かもしれず、そう思うと身につまされる部分もありました。
まあでも、平和に血液型の話をすればいいのでしょうけど。
しかしなんといっても映画関係の話は比肩すべき者なし。
この連載中にポール・ニューマンが亡くなっていたのですが、
彼に捧げる一文が簡潔ながらも深くて思いが伝わってきました。
また、昭和40年代までは日本でフランス映画が人気があったのは、
ハリウッド映画にはなかったヌードのシーンがあったからだ、
というのはなるほど、と思いました。
しかし小林信彦はいつもの書店に行って驚いた。
文庫の棚に本が4、5冊しかなかった・・・
最近はほんとうに本の「足が速く」なっていますね。
著名な人の文庫だからもう少し残してほしいものです。
というわけで、丸谷さんに続いて、小林信彦も、
古本で探して読み進める人と決定いたしました。
☆3冊目
はじめてのバラづくり12か月
後藤みどり
家の光協会
ザ・マッカートニー・ローズの記事(こちら)でも触れた
バラの本、読んだといわれれば読んだので取り上げます。
僕は園芸がどちらかといえば苦手で、うちの庭だって、
きれいな花の生育を阻害する草を取り除くくらいしかやらないので、
バラとはこんなにも手をかけるものなのかと驚いたくらい。
驚いてはいけないですね(笑)、やれることはやらないと。
マッカートニーの苗をもう1本ホーマックで見つけて買いましたが、
今はホームセンターに行くと必ず見るようになりました。
もちろん、他の品種もいいのがあれば買うつもりで(笑)。
02

閑話休題
庭で咲く白い野薔薇のような薔薇。
これも品種の名前があるのかな。
さて
☆4冊目
丸の内タニタ食堂
タニタ
大和書房
タニタ食堂シリーズ第3弾。
内容については軽く、今回はお弁当レシピがついていて
より実践的、より生活に近づいた視線で書かれています。
こうなったらまだ続編も望みたいところですね。
ところで枝葉の話を。
最近、レシピ本をたくさん読んでいるので、いつか本で見たあの
レシピを作りたいと思っても、それをどの本で見たのかが、
すぐに思い出せなくなってきました・・・(笑)・・・
いや笑い事ではなく、こうなると逆に買い過ぎは意味がないですね。
というわけで来月はおそらくレシピ本はお休みになります(笑)。
買ったものをまた少しずつ見直しを進めてゆきたいです。
☆5冊目
カラスの常識
柴田佳秀
子どもの未来社 寺子屋新書
カラスが街で引き起こす問題行動について、細かい考察と
豊富な具体的事例の紹介で説明している本。
内容はおそらく多くの方が想像される通りのものですが、
うまくまとめられていてまさに常識を抑えるのにいい本です。
ここで帯に書かれたタタキ文句を書き出してみます。
おい、人間!
神聖な鳥か? 「ゴミの化身」か?
・・・・・・そんなのカラスの勝手でしょ
人のふるまいに翻弄されるカラスの気持ちも聞いてくれ
「カラスの勝手」というのは、ある年代だけに通じるものか、
それとも日本語の慣用句として定着しているのかが気になる
ところですが、著者はカラスの側に立った視点でいるということで、
結局のところカラス問題はマナーの悪い人間が引き起こすもの
という主張が繰り返し織り込まれ、最後10ページでそれを
大々的に強く主張する部分はいろいろと考えさせられました。
ちなみに、半透明袋を使い続ける場合、カラスのゴミあさり対策で
いちばん有効なのは、ゴミにネットをかけることだそうです。
家のところのゴミステーションもそれ+周りを板で囲んでいますが、
ネットの上からでも袋をつついたり、隙間を狙ったりはしますが、
でもやはり有効であることはいつも感じています。
カラスはそもそも死肉などをあさるスカベンジャーであり、
それが都市という環境に適応した結果が今であり、カラスを
排除するのではなく、カラスとのいい関係を築いてゆくのが
都市生活のあるべき姿という主張には頷けるものがあります。
カラスについて知る、情報を抑えておくには手軽でいい1冊です。
ところで、著者はカラスの死体を見たことがないのが意外でした。
僕は年に1、2回は見ているかな、主にロードキルのものだけど。
まあだから、自然死した死体は見たことがないのは同じか。
その話は、カラスはあんなにたくさんいるのに死体を見ないのが、
都市伝説のようになっているというところからきたものですが、
カラスの死体を見ないのは、普通は人が入らない林を塒にして、
多くのものは塒で死ぬため、その後の過程が人目に触れることが
あまりないからだ、というのが著者の結論です、念のため。
余談、僕は「寺子屋新書」という叢書はそれまで知らず、
それはおろか子どもの未来社という出版社も知りませんでしたが、
本好きとしてはいささかのショックを受け、そして恥ずかしい。
またこの本は紀伊国屋で入口近くの棚に平積みになっていて、
新刊かと思い買ったのですが、読み進めてから奥付を見ると、
2007年に出ていた本であることに気づきました。
何を言いたいかというと、最新刊ではなくても内容が良い本であれば
そのように見せ方によってまだまだ売れる可能性が高い
ということを身をもって経験した、ということでした。
別に僕がまた書店員になるわけではないけれど(笑)、でも、
本についていろいろ考えてゆきたい人間であるのは変わりないから。
☆6冊目
青い雨傘
丸谷才一
文春文庫
丸谷さんのエッセイはやっぱり最強だ。
今回は珍しく音楽についてのエッセイが2本あり、どちらも秀逸。
特に指揮者カルロス・クライバーの話、彼はキャリアと人気の割には
レコードの数が極端に少なく、コンサートもあまり多くはこなさない、
カリスマ的人気がある指揮者であったのは僕も知っていました。
ではなぜそうなったかを、きっと本に当たって生い立ちから書き進め、
短いエッセイの枠を超えたカルロス・クライバー評伝に仕立てていた
その手腕には、脱帽を通り越して何も言うことが浮かばないほど感動。
クライバーは数年前に亡くなりましたが、これは存命中に書かれた話で、
もし僕が13年前にこのエッセイを読んでいれば、クライバー信者に
なっていたかもしれない、それほど魅力をよく伝えている文章です。
もうひとつの「ベートーヴェン変人伝」も面白く興味深かった。
先に、珍しくと書いたけど、丸谷さんは、他の話の中でさらりと、音楽は
好きで演奏会によく行くと書いていたので、エッセイを書くとなると、
文学ではない自分の本文ではないので遠慮していたのかもしれない。
ただし聴くのはほとんどクラシックのようですが、だから僕は逆に、
クラシックのほうに少し気持ちが引かれているのを感じています。
他にも思わず笑ってしまうユーモアたっぷりの文章ばかり。
特に、西郷さんと当時の横綱武蔵丸関がよく似ていることについて
驚愕の考察、まさか、と思うけれどこれがまた面白い。
そして今回また丸谷さんを近しく感じてうれしかった点がふたつ。
ひとつ、丸谷さんはいわゆる「スキャトロジー」(糞尿学)が
趣味に合わない、ということで、だから安心して読めるんだ。
もうひとつ、丸谷さんはディック・フランシスが大好きであることも。
艶笑譚も混ぜ、これはもしかして丸谷さんが最も脂の乗り切った頃の
1冊であり丸谷エッセイの最高傑作かもしれない、とすら思いました。
幸いなことにまだ買って読んでいないこのエッセイのシリーズが
数冊あるので、暫くは豊かな気持ちで読書が進められそうです(笑)。
いや、それ以前に、これはまた近いうちに読み返したい1冊です。
03

いかがでしたか!
今月は調子よくて、6冊目を5日ほど前に読了していたのですが、
であればもう1冊は読めたなあ、と、欲が出たり(笑)。
でも、このところファイターズが調子がよくて、試合を見ると、
必然、本を読む時間が減ってきますからね、仕方ない。
来月は、暑くなり、不活発になると、本に手が伸びる、かな(笑)。
いや、さる事情により、読書時間が減ってしまうかも・・・
犬たちの写真、今日の午前中に撮りましたが、日差しが強いですね。

今月の読書です。
毎月29日に固定してゆこうと思います。
今月は6冊、では早速
☆1冊目
東京鉄道遺産
小野田滋
講談社ブルーバックス
本書は、鉄道を切り口にした日本の近代建築技術の解説書。
著者は「ブラタモリ」にも出ていた鉄道総研の人。
何気ない風景の中にドラマが隠されている建造物というものの
魅力を広く知ってほしいという思いを強く感じますが、しかもそれが
世界遺産になるようなものではなく、東京にいる限りはほんとうに
日常的に見ていて特に意識しないものばかりであるのが、
かえってそういう思いを強く感じさせてくれました。
秋葉原の大きな橋は多くの人に印象的ですが、隣りの浅草橋駅の
あの「出っ張り」がそんなに意味があるものなのかって、目から鱗。
そう考えると、ここで紹介されていなくても土木後術の隠された物語が
しみこんだ建造物はまだまだたくさんありそうで、楽しくなってくる。
鉄道に限らずの話として、日本で土木技術が発展したのは、
人口稠密であることと、無駄をなくしたいという思いからだと分かった。
地震が多く地震に耐えなければならないという必要性の他に、
ただ、建築などの専門用語は、ご丁寧にもその都度解説はあっても、
すぐに忘れてしまうのが難点で、専門用語が分かっていれば、
より楽しく読み進められたと思う。
ただ、おかげで、「ラーメン構造」というものが何か、小学生の頃から
名前は知っていたけれど、漸くここで認識し心に刻むことができた。
しかし困った。
こんな本を読んでしまうと、今すぐにでも東京に行きたくなる(笑)。
しかも台東区と神田御茶ノ水周辺が特に多いだけ余計に。
あらためて東京を見直し、魅力が増した、そんな本です。
☆2冊目
女優はB型 本音を申せば5
小林信彦
文春文庫
小林信彦は、映画に凝っていた大学1、2年の頃に
映画のコラムを首っ引きで読んでいました。
しかしなぜかぱたっと読まなくなり、20年が経過。
先日、Amazonのおすすめでこの本の存在を知り即購入。
僕もB型人間ですからね(笑)、小林信彦さんもB型。
そしてこのタイトル、日本にはB型のいい女優が多いというもの。
特に綾瀬はるかと堀北真希を高く買っていますが、そのように
公平に広く見ている著者の姿勢には共感するものがあります。
堀北真希はほとんど追っかけらしくて、気持ちも若い人ですね。
このエッセイ集は「文芸春秋」の連載を本にまとめたもので、
それも丸谷さんと同じだけど、丸谷さんは映画には特に強い
関心がないと自ら書いていて、丸谷さんには足りない部分が
こちらではむしろ主な話題として出てくるのもうれしい。
しかし読むと社会的及び政治的な話題を辛辣に書き綴っており、
そこが僕には予想外でしたが、でもそれが嫌いなわけではなく、
これはこれでやはり頭を活性化させてくれるエッセイでした。
血液型についての話も多く、やはりいろいろ考えさせられました。
半分くらい、僕もあてはまるかな、いやもっとか(笑)。
ではなぜ日本ではそれほど血液型の話がされるのか。
それは、戦時中、爆撃などで怪我をした時のために、防空頭巾に
必ず血液型を記していたことの名残ではないかということです。
そういえば僕が小学生の頃の防災頭巾にも血液型が書いてあった。
そのことにより、日本人は血液型の話が普通になった。
洋楽のアーティストの話を聞くと、血液型を知らない人とかいて
私はそれが信じられませんでしたが、そういう背景ならなるほど。
ただ、そうであるなら、いわば戦争という負の遺産を、今の日本人は
楽しい話題に変えているのは、ある意味救われた部分もあります。
小林信彦は戦争を体験した人だから、空襲など、戦時中から戦後に
かけての東京の描写に説得力があり、胸に詰まるものがありました。
そしてだから、小林信彦が血液型の話にこだわるのは、
戦争の悲惨な体験を風化させたくないという思いからきているの
かもしれず、そう思うと身につまされる部分もありました。
まあでも、平和に血液型の話をすればいいのでしょうけど。
しかしなんといっても映画関係の話は比肩すべき者なし。
この連載中にポール・ニューマンが亡くなっていたのですが、
彼に捧げる一文が簡潔ながらも深くて思いが伝わってきました。
また、昭和40年代までは日本でフランス映画が人気があったのは、
ハリウッド映画にはなかったヌードのシーンがあったからだ、
というのはなるほど、と思いました。
しかし小林信彦はいつもの書店に行って驚いた。
文庫の棚に本が4、5冊しかなかった・・・
最近はほんとうに本の「足が速く」なっていますね。
著名な人の文庫だからもう少し残してほしいものです。
というわけで、丸谷さんに続いて、小林信彦も、
古本で探して読み進める人と決定いたしました。
☆3冊目
はじめてのバラづくり12か月
後藤みどり
家の光協会
ザ・マッカートニー・ローズの記事(こちら)でも触れた
バラの本、読んだといわれれば読んだので取り上げます。
僕は園芸がどちらかといえば苦手で、うちの庭だって、
きれいな花の生育を阻害する草を取り除くくらいしかやらないので、
バラとはこんなにも手をかけるものなのかと驚いたくらい。
驚いてはいけないですね(笑)、やれることはやらないと。
マッカートニーの苗をもう1本ホーマックで見つけて買いましたが、
今はホームセンターに行くと必ず見るようになりました。
もちろん、他の品種もいいのがあれば買うつもりで(笑)。
02

閑話休題
庭で咲く白い野薔薇のような薔薇。
これも品種の名前があるのかな。
さて
☆4冊目
丸の内タニタ食堂
タニタ
大和書房
タニタ食堂シリーズ第3弾。
内容については軽く、今回はお弁当レシピがついていて
より実践的、より生活に近づいた視線で書かれています。
こうなったらまだ続編も望みたいところですね。
ところで枝葉の話を。
最近、レシピ本をたくさん読んでいるので、いつか本で見たあの
レシピを作りたいと思っても、それをどの本で見たのかが、
すぐに思い出せなくなってきました・・・(笑)・・・
いや笑い事ではなく、こうなると逆に買い過ぎは意味がないですね。
というわけで来月はおそらくレシピ本はお休みになります(笑)。
買ったものをまた少しずつ見直しを進めてゆきたいです。
☆5冊目
カラスの常識
柴田佳秀
子どもの未来社 寺子屋新書
カラスが街で引き起こす問題行動について、細かい考察と
豊富な具体的事例の紹介で説明している本。
内容はおそらく多くの方が想像される通りのものですが、
うまくまとめられていてまさに常識を抑えるのにいい本です。
ここで帯に書かれたタタキ文句を書き出してみます。
おい、人間!
神聖な鳥か? 「ゴミの化身」か?
・・・・・・そんなのカラスの勝手でしょ
人のふるまいに翻弄されるカラスの気持ちも聞いてくれ
「カラスの勝手」というのは、ある年代だけに通じるものか、
それとも日本語の慣用句として定着しているのかが気になる
ところですが、著者はカラスの側に立った視点でいるということで、
結局のところカラス問題はマナーの悪い人間が引き起こすもの
という主張が繰り返し織り込まれ、最後10ページでそれを
大々的に強く主張する部分はいろいろと考えさせられました。
ちなみに、半透明袋を使い続ける場合、カラスのゴミあさり対策で
いちばん有効なのは、ゴミにネットをかけることだそうです。
家のところのゴミステーションもそれ+周りを板で囲んでいますが、
ネットの上からでも袋をつついたり、隙間を狙ったりはしますが、
でもやはり有効であることはいつも感じています。
カラスはそもそも死肉などをあさるスカベンジャーであり、
それが都市という環境に適応した結果が今であり、カラスを
排除するのではなく、カラスとのいい関係を築いてゆくのが
都市生活のあるべき姿という主張には頷けるものがあります。
カラスについて知る、情報を抑えておくには手軽でいい1冊です。
ところで、著者はカラスの死体を見たことがないのが意外でした。
僕は年に1、2回は見ているかな、主にロードキルのものだけど。
まあだから、自然死した死体は見たことがないのは同じか。
その話は、カラスはあんなにたくさんいるのに死体を見ないのが、
都市伝説のようになっているというところからきたものですが、
カラスの死体を見ないのは、普通は人が入らない林を塒にして、
多くのものは塒で死ぬため、その後の過程が人目に触れることが
あまりないからだ、というのが著者の結論です、念のため。
余談、僕は「寺子屋新書」という叢書はそれまで知らず、
それはおろか子どもの未来社という出版社も知りませんでしたが、
本好きとしてはいささかのショックを受け、そして恥ずかしい。
またこの本は紀伊国屋で入口近くの棚に平積みになっていて、
新刊かと思い買ったのですが、読み進めてから奥付を見ると、
2007年に出ていた本であることに気づきました。
何を言いたいかというと、最新刊ではなくても内容が良い本であれば
そのように見せ方によってまだまだ売れる可能性が高い
ということを身をもって経験した、ということでした。
別に僕がまた書店員になるわけではないけれど(笑)、でも、
本についていろいろ考えてゆきたい人間であるのは変わりないから。
☆6冊目
青い雨傘
丸谷才一
文春文庫
丸谷さんのエッセイはやっぱり最強だ。
今回は珍しく音楽についてのエッセイが2本あり、どちらも秀逸。
特に指揮者カルロス・クライバーの話、彼はキャリアと人気の割には
レコードの数が極端に少なく、コンサートもあまり多くはこなさない、
カリスマ的人気がある指揮者であったのは僕も知っていました。
ではなぜそうなったかを、きっと本に当たって生い立ちから書き進め、
短いエッセイの枠を超えたカルロス・クライバー評伝に仕立てていた
その手腕には、脱帽を通り越して何も言うことが浮かばないほど感動。
クライバーは数年前に亡くなりましたが、これは存命中に書かれた話で、
もし僕が13年前にこのエッセイを読んでいれば、クライバー信者に
なっていたかもしれない、それほど魅力をよく伝えている文章です。
もうひとつの「ベートーヴェン変人伝」も面白く興味深かった。
先に、珍しくと書いたけど、丸谷さんは、他の話の中でさらりと、音楽は
好きで演奏会によく行くと書いていたので、エッセイを書くとなると、
文学ではない自分の本文ではないので遠慮していたのかもしれない。
ただし聴くのはほとんどクラシックのようですが、だから僕は逆に、
クラシックのほうに少し気持ちが引かれているのを感じています。
他にも思わず笑ってしまうユーモアたっぷりの文章ばかり。
特に、西郷さんと当時の横綱武蔵丸関がよく似ていることについて
驚愕の考察、まさか、と思うけれどこれがまた面白い。
そして今回また丸谷さんを近しく感じてうれしかった点がふたつ。
ひとつ、丸谷さんはいわゆる「スキャトロジー」(糞尿学)が
趣味に合わない、ということで、だから安心して読めるんだ。
もうひとつ、丸谷さんはディック・フランシスが大好きであることも。
艶笑譚も混ぜ、これはもしかして丸谷さんが最も脂の乗り切った頃の
1冊であり丸谷エッセイの最高傑作かもしれない、とすら思いました。
幸いなことにまだ買って読んでいないこのエッセイのシリーズが
数冊あるので、暫くは豊かな気持ちで読書が進められそうです(笑)。
いや、それ以前に、これはまた近いうちに読み返したい1冊です。
03

いかがでしたか!
今月は調子よくて、6冊目を5日ほど前に読了していたのですが、
であればもう1冊は読めたなあ、と、欲が出たり(笑)。
でも、このところファイターズが調子がよくて、試合を見ると、
必然、本を読む時間が減ってきますからね、仕方ない。
来月は、暑くなり、不活発になると、本に手が伸びる、かな(笑)。
いや、さる事情により、読書時間が減ってしまうかも・・・
犬たちの写真、今日の午前中に撮りましたが、日差しが強いですね。
Posted by guitarbird at 18:29
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