2013年02月07日
KISSES ON THE BOTTOM
01
KISSES ON THE BOTTOM Paul McCartney
キス・オン・ザ・ボトム ポール・マッカートニー (2012)
ポール・マッカートニーの新譜が出ました!
より正確にいえばこの記事が上がる時点では国内盤は
まだ出ていなくて、2月8日が正式な発売日です。
まあでも、普通は前日に売ってますよね。
輸入盤は2月7日が発売日で今日ですね。
ちなみに輸入盤はだいたい向こうでの発売日には
札幌のタワー・レコードやHMVにも並びます。
日本一早いポールの新譜の一般人のBLOG記事を目指し、
今日はいきなり記事を上げることにしました。
ほんとにいちばん早ければいいなあ(笑)。
ポール・マッカートニーは今年で70歳を迎えます。
そしてビートルズがレコードデビューして50年。
このアルバムは、そんな音楽人生を振り返るかのように、
2曲の自作を除き、いわゆるアメリカン・スタンダードを
歌ったカバー曲集となっています。
音楽はやっぱり、年相応というものがあるのかなって。
日本では年をとると演歌を好きになると昔から言われるけど、
そうした考えは国は関係なく人としてむしろ当たり前なのかな、と。
もちろん若い頃からジャズやクラシックを聴く人もたくさんいるけど、
僕自身も20代の頃よりはハード・ロック/ヘヴィ・メタル系を
聴く頻度がうんと減り、一方でソウルが増えてきたことだし、
傾向としてはおそらく逆の例の人は珍しいのではないかな。
(若い頃からヘヴィメタルが嫌いな人は多そうだけど・・・)
若い頃はへルター・スケルターだのロック・ショーだのと
力任せに歌っていたポールだって人間だからやはり、古い時代の
落ち着いた音楽に戻るというか進みたかったのかもしれません。
ポールはしかし、曲単体ではほとんど初めから
アメリカン・スタンダード的なものをやってきていました。
ビートルズの1stでA Taste Of Honeyを歌っていますが、
ミュージカルの曲であるそのような曲をロックの人間が取り上げた
というのは当時は驚きと興味を持って迎えられたのだとか。
2ndのTil There Was Youはもはやこれぞポールという味わいだし、
64歳や銀のハンマーなどディキシーランド・スタイルの曲が得意だし、
アメリカン・スタンダード風の曲だって既に作ったことがあります。
だから、ポールのアメリカン・スタンダードというのは、
意外ではまったくなくって、むしろ漸くという感じがしますね。
ただし、カバー曲集を出したことで、不安があります。
曲を作れなくなったのではないか、あるいは意欲がなくなったのでは。
ボブ・ディランが60歳を超えて才能が枯れたと自ら告白したように、
長くやって来ている人であれば大なり小なりそれは感じるのかな、
といいつつ凡人の僕には彼ら天才の頭の中は分からないけど、
一般論としてはそういうことはあるかもしれない。
でも僕はこのアルバムを聴いて、もっと前向きにとらえました。
ポールはこの先、こういうスタイルのオリジナルをやりたいのではないか、
今回は肩慣らし的に一度古い曲をやってみて感触をつかみ、
次のアルバムでオリジナルで勝負しよう、というのであればいいなあ。
なんて根拠も何もないただの願望だけど、そう思いました。
もうひとつ、ファンの人には申し訳ないけど、といいつつ僕こそが
ファンだから、現実から目をそむけずに受け入れるとして言えば、
ポールも60歳を過ぎてからとみに、力強く歌おうとしても
声の衰えが隠せず、ちょっと悲しい思いをしていました。
でも、このアルバムのようにあまり力を入れずにさらっと歌うのも
なかなかいいし、この歌い方なら声の衰えは気にならないし、
もちろんまだまだ魅力的な声だなと思ってほっとしました。
なんせ100人の歌手の11位の人ですからね(笑)、
歌で伝えることがそもそも好きな人なのだと納得できるし、
こちらとしても身を委ねて聴くことができます。
ダイアナ・クラールのバンドを迎えているのは、
90年代後半からジャズ的な要素の強い音楽が増えてきて
すっかり定着したという時流に乗りたいのでしょね。
ポールは昔から周りで行われていることをひとまずは自分も
やってみないと気が済まない人だったので(笑)、その点では
気持ちはまだまだ若くてほっとするものがあります。
またそれがダイアナ・クラールであるのは、彼女の夫君である
エルヴィス・コステロとまだつながりがあるのかなと、
それもうれしくなる部分ですね。
ただし僕はいまだにコステロは苦手ですが・・・(笑)・・・
それはともかく、ダイアナ・クラールのピアノがいいですね。
僕は彼女は聴いたことがないのでこれが初めてだけど、
ダイアナ・クラールも聴いてみたいと思いました。
音楽的なことをみると、アメリカン・スタンダードについて
いまさら斬新な解釈の演奏というのもないと思う、イメージ通り。
それがその人に合っているかどうかという問題だけで、
ポールの場合は、やっぱりこういうことも自然にできるんだ
と何かほっとする、そんな全体像ですね。
録音はニューヨークとロサンゼルスで行われていますが、
曲によってはストリングスのアレンジが施されていて、
そのストリングスはロンドン交響楽団が担当しています。
もちろんというかストリングスのみ英国で録音されているわけですが、
かのアビィ・ロード・スタジオで録音されていると明記されているのは
やっぱり無条件でうれしくなりますね。
僕は今日、国内盤SHM-CD盤と海外盤限定盤を買いましたが、
後者には2曲のボーナストラックが収録されて16曲入りです。
ひとまず通常の14曲で話すと、僕が知っていた曲は
たった1曲しかありませんでした。
そうですね、アメリカン・スタンダードはロッドなどで時々聴くけど、
親しんできたというわけではないので当たり前でしょうけど、
それにしても有名な曲は敢えて外している感じがします。
だから今回は、とにかく早く記事を上げたかったこともあって、
1曲ずつについてあまり話すことが浮かばないので、
かいつまんで何曲かについて触れます。
02 タワレコで国内盤を買うと特典でしおりがもらえた!
このアルバムのタイトルを最初に聞いて僕は、
なんてタイトルをつけたんだろうと・・・
ポールは時々下ネタ系のことを平気でいいますね。
このタイトルはアルバム冒頭1曲目の
I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter
の歌詞から取られていることが聴いてみて分かったのですが、
国内盤のライナーでは、そこが以下のように訳されています。
「下の方にはキッスを」
あまり直接的に書かないものですからね、日本人は。
「お尻」ですよね、多分、足の裏ではなく・・・
いや違う、それは「心の底」という意味の"bottom"だなきっと(笑)。
それはともかく、僕くらいの世代なら、手紙を書くという
このタイトルは想像よりは経験で思うことが多いのだろうけど、
今の若い人にはもはやあまり実感がないのかな、どうだろう。
3曲目It's Only A Paper Moon、これが唯一知っている曲で、
逆にこれだけ有名すぎる曲なのもいかにもポールらしいなあと。
僕にとって最初のアメリカン・スタンダードを歌ったアルバムが
ナタリー・コールのUNFORGETTABLEでしたが、
その中でもこの曲は特に好きでしたね。
この曲はそれ以前から知っていて、ナタリー・コールのそれで
初めてその曲のCDを買って聴けたのがうれしかったのでした。
余談ですがUNFORGETTABLEではポールがカバーしていた
Don't Get Around Much Any Moreが入っていたのもうれしくて、
そうか久しぶりにナタリー・コールも聴いてみたくなりました。
8曲目My Valentineは2曲のオリジナルの1曲ですが、
エリック・クラプトンがギターで参加しています。
そのせいかイントロのギターでLaylaを彷彿とさせる旋律が入って、
これは偶然かな、いやきっと違う、ポールの発案かな、エリックかな、
とにかく昔からのファンには思わず笑みが漏れてしまう。
AメロがメランコリックでBメロで少し明るくなるこの曲は、
どう聴いてもアメリカン・スタンダードの世界という曲。
エリックのギターはやっぱりいいですね。
昔はポールとエリックは仲が良くなかったのかなと思っていたけど、
ジョージ・ハリスンの追悼コンサートで一緒に演奏してから
共演するようになったのはうれしいし、ジョージ絡みでいえば
感慨深いものがありますね。
エリック・クラプトンはもう1曲、12曲目の
Get Around Another Foolにもギターで参加しています。
こちらはエレクトリック・ギターで、ブックレットを見る前から
ギターの音でエリックだと一発で分かりました。
この曲で面白いのは、歌い出しのポールの声がエリックに似ていて、
それもポールが茶目っ気を出してわざとそうしたのかなって。
またそこから考えたのは、エリックは声域が狭いと言われていたけど、
ポールの声域がエリックのそれに近づいたのかな、ということでした。
歌い出しだけではなく全体的にエリックの声に似てますね。
またこの曲名は、エリックと一緒にこれからこういう音楽をやって
楽しんでいこうという意思表明、というのはうがち過ぎかな(笑)、
でもポールとエリックがやるにはいい曲だと思いました。
ポールは今回、ほとんどヴォーカルだけに専念していますが、
エリックとの12曲目と次の13曲目The Inch Wormの2曲のみ
アコースティック・ギターも弾いています。
12でエリックにミュージシャン魂を刺激されたのかな。
この曲はミミズの歌でしょうかね、曲はそんな感じはしないけど、
ミミズを研究していたチャールズ・ダーウィンを思い出しました。
この曲は子どものコーラスがアクセントとして効いています。
面白いのは11曲目Bye Bye Blackbird。
先ほど知っていたのは1曲と書いたけど、これも曲は知っていました。
ジョー・コッカーが1stで歌っていますが、でもジョーのそれとは
あまりにも違うので気づきませんでした。
もちろんビートルズ時代の自身の曲Blackbirdを想起させ、
ポールの茶目っ気もかなりのものでそれは幾つになっても変わらない、
そこが思わずほほえんでほっとする部分ですね。
もう1曲、知らない曲だけど興味深いと思ったのは
6曲目We Three (My Echo, My Shadow And Me)。
歌詞の中に"moonlight"を繰り返す部分があるんだけど、それは
ビートルズとしては未発表曲だったけどBBCで世の中に出た曲で
ポールが作ったI'll Be On My Wayを想起させられたからです。
歌詞の作り方などをポールは古い曲から学んだんだろうなって。
知らなかった中で9曲目Alwaysは、かのWhite Christmasを
書いたアーヴィン・バーリンの作曲ですね。
もっといい曲をたくさん書いた人なのでしょうね。
ポール自作のもう1曲は本編最後のOnly Our Hearts、
こちらはスティーヴィー・ワンダーがハーモニカで客演。
もちろんこれも一発で分かりましたが、自作曲に豪華なゲストを
わざわざ迎えるのもポールらしいはったりがあっていいなあ。
あ、もちろんほめてますからね。
スティーヴィー・ワンダーのハーモニカは音色が艶やかで、
人間性を深く感じる深い響きが特徴ですね。
曲も最後らしくまたポールらしくじわっと盛り上がって、暖かく
家庭的な雰囲気に包まれてアルバムが終わります、よかったあ。
03 こちらは輸入盤限定盤16曲入り
輸入盤限定盤のボーナストラックにも触れます。
僕は実は、それこそがめあてだったのです。
15曲目Baby's Requestはポールのペンになる曲で、
ウィングス時代のBACK TO THE EGGの最後の曲として
収録されていた曲で、セルフカバーということになります。
僕はこの曲がずっと大好きでもっと聴かれてほしかったので
この曲を再演したのはもうほんとうにうれしい。
だけどそれがボーナストラックというのがちょっと残念だな。
ポールならスタンダードの中にねじ込むくらいはしそうだけど、
でもやっぱりそこは最初ということで遠慮したのでしょうね。
なにもそこで遠慮しなくても、と僕は思うのですが(笑)。
それはともかくノスタルジックで家庭的なこの曲は、
オリジナルより少し速いテンポで演奏されていますが、
おおよそオリジナルのイメージ通りなのは、ポールの
作曲家としての自信のほどを感じます。
ただし最後はジャズ的なパッセージで終わっていますが。
16曲目、My One And Only Loveを見てやっぱりポール、と。
だって、最初と最後の単語だけをみるとMy Loveですからね。
ポールやるなあ、いたずら心と自信はいつまでも忘れない。
この曲を選んだのは再婚したことと関係あるのかな。
今はそういう気持ち、これからもそうであってほしい、ファンとしても。
ここで全曲、曲名を書き出してみます。
I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter
Home (When Shadows Fall)
It's Only A Paper Moon
More I Cannot Wish You
The Glory Of Love
We Three (My Echo, My Shadow And Me)
Ac-Cent-Tchu-Ate The Positive
My Valentine
Always
My Very Good Friend The Milkman
Bye Bye Blackbird
Get Yourself Another Fool
The Inch Worm
Only Our Hearts
Baby's Request
My One And Only Love
ざっと曲名をみると、昔の曲はほんとに身近なモチーフで、
小さな心の変化に感動して書いていることが分かりますね。
まさに日常の視点。
リンクは左が国内盤SHM-CD盤、右が輸入限定盤。
僕としてはやはりBaby's Requestが入っているので、
右をおすすめしたいのですが。
ロックの世界では、ロッド・スチュワートが2002年に、
アメリカン・スタンダードを集めたアルバムを発表して
ビルボードでNo.1になる大ヒットを記録し、結局は4枚目まで作られ
今やロッドはアメリカン・スタンダードの人として定着しました。
ただし4枚目の後でベスト盤を出してもう辞めると言ったのだとか。
ポールは、そんなロッドをどう見ていたのだろう。
僕としては中学時代からずっと大好きなポールとロッドが
結局はそこに行きついたのかというのが、繰り返し、
音楽は年齢と関係があるんだなって思います。
正直言えば、僕でも知っているような超有名な曲があと2曲くらい
あるといいなというのが買って何度か聴いて思ったことです。
ただ、ポールとしては、そんな身勝手なファンなぞどうでもよくて
音楽が好きなすべての人に、もっといい音楽、自分が好きな音楽を
知ってもらいたいという思いを込めて作ったのでしょうね。
僕もそこに気づいて反省しているところです。
僕の親戚が寿司屋さんをやっていて時々食べに行きますが、
そこは有線でアメリカン・スタンダードやそれっぽい曲を流していて、
だからポールのこれを聴くとなんだかおいしそうと思いました(笑)。
もちろん、ゆっくりと音楽と向き合って聴き込むのもいいんだけど、
空気のようにそこに流れていると気持ちいい、そんな音楽でもあります。
ただ、これもまたただ、ですが、ポールはそもそもは
もっと真剣に音楽を聴いてもらいたいという思いを持って、
ビートルズの数々の傑作をものにしてきた人だから、そんなポールが
こうした音楽をやるようになったのは、つくづく、
音楽と年齢の関係を感じざるを得ないですね。
まあでも、無理して若くする必要もないし、逆にいえば、
これからはむしろ若い人がこういう音楽に夢中になるかもしれない。
あ、そうか、ポールはそれをもくろんでいるのかな(笑)。
ともあれ、ポールが新作を届けてくれたのはうれしいですね。
全体として予想していたより少し良かったです。
暫く聴くことができる、かけることができる、そんなCDです。
音楽はタテにも横にもつながって広がっていく、
そんなことも聴きながら思いました。
04
最後は「さっぽろ雪まつり」のセイウチ君。
ひげは残念ながら雪や氷じゃないようですね(笑)。
ジョン・レノン曰く「セイウチはポールだ」
でも、セイウチはジョン自身だった・・・
なんて最後にマニア的なジョークをさらりと(笑)。
KISSES ON THE BOTTOM Paul McCartney
キス・オン・ザ・ボトム ポール・マッカートニー (2012)
ポール・マッカートニーの新譜が出ました!
より正確にいえばこの記事が上がる時点では国内盤は
まだ出ていなくて、2月8日が正式な発売日です。
まあでも、普通は前日に売ってますよね。
輸入盤は2月7日が発売日で今日ですね。
ちなみに輸入盤はだいたい向こうでの発売日には
札幌のタワー・レコードやHMVにも並びます。
日本一早いポールの新譜の一般人のBLOG記事を目指し、
今日はいきなり記事を上げることにしました。
ほんとにいちばん早ければいいなあ(笑)。
ポール・マッカートニーは今年で70歳を迎えます。
そしてビートルズがレコードデビューして50年。
このアルバムは、そんな音楽人生を振り返るかのように、
2曲の自作を除き、いわゆるアメリカン・スタンダードを
歌ったカバー曲集となっています。
音楽はやっぱり、年相応というものがあるのかなって。
日本では年をとると演歌を好きになると昔から言われるけど、
そうした考えは国は関係なく人としてむしろ当たり前なのかな、と。
もちろん若い頃からジャズやクラシックを聴く人もたくさんいるけど、
僕自身も20代の頃よりはハード・ロック/ヘヴィ・メタル系を
聴く頻度がうんと減り、一方でソウルが増えてきたことだし、
傾向としてはおそらく逆の例の人は珍しいのではないかな。
(若い頃からヘヴィメタルが嫌いな人は多そうだけど・・・)
若い頃はへルター・スケルターだのロック・ショーだのと
力任せに歌っていたポールだって人間だからやはり、古い時代の
落ち着いた音楽に戻るというか進みたかったのかもしれません。
ポールはしかし、曲単体ではほとんど初めから
アメリカン・スタンダード的なものをやってきていました。
ビートルズの1stでA Taste Of Honeyを歌っていますが、
ミュージカルの曲であるそのような曲をロックの人間が取り上げた
というのは当時は驚きと興味を持って迎えられたのだとか。
2ndのTil There Was Youはもはやこれぞポールという味わいだし、
64歳や銀のハンマーなどディキシーランド・スタイルの曲が得意だし、
アメリカン・スタンダード風の曲だって既に作ったことがあります。
だから、ポールのアメリカン・スタンダードというのは、
意外ではまったくなくって、むしろ漸くという感じがしますね。
ただし、カバー曲集を出したことで、不安があります。
曲を作れなくなったのではないか、あるいは意欲がなくなったのでは。
ボブ・ディランが60歳を超えて才能が枯れたと自ら告白したように、
長くやって来ている人であれば大なり小なりそれは感じるのかな、
といいつつ凡人の僕には彼ら天才の頭の中は分からないけど、
一般論としてはそういうことはあるかもしれない。
でも僕はこのアルバムを聴いて、もっと前向きにとらえました。
ポールはこの先、こういうスタイルのオリジナルをやりたいのではないか、
今回は肩慣らし的に一度古い曲をやってみて感触をつかみ、
次のアルバムでオリジナルで勝負しよう、というのであればいいなあ。
なんて根拠も何もないただの願望だけど、そう思いました。
もうひとつ、ファンの人には申し訳ないけど、といいつつ僕こそが
ファンだから、現実から目をそむけずに受け入れるとして言えば、
ポールも60歳を過ぎてからとみに、力強く歌おうとしても
声の衰えが隠せず、ちょっと悲しい思いをしていました。
でも、このアルバムのようにあまり力を入れずにさらっと歌うのも
なかなかいいし、この歌い方なら声の衰えは気にならないし、
もちろんまだまだ魅力的な声だなと思ってほっとしました。
なんせ100人の歌手の11位の人ですからね(笑)、
歌で伝えることがそもそも好きな人なのだと納得できるし、
こちらとしても身を委ねて聴くことができます。
ダイアナ・クラールのバンドを迎えているのは、
90年代後半からジャズ的な要素の強い音楽が増えてきて
すっかり定着したという時流に乗りたいのでしょね。
ポールは昔から周りで行われていることをひとまずは自分も
やってみないと気が済まない人だったので(笑)、その点では
気持ちはまだまだ若くてほっとするものがあります。
またそれがダイアナ・クラールであるのは、彼女の夫君である
エルヴィス・コステロとまだつながりがあるのかなと、
それもうれしくなる部分ですね。
ただし僕はいまだにコステロは苦手ですが・・・(笑)・・・
それはともかく、ダイアナ・クラールのピアノがいいですね。
僕は彼女は聴いたことがないのでこれが初めてだけど、
ダイアナ・クラールも聴いてみたいと思いました。
音楽的なことをみると、アメリカン・スタンダードについて
いまさら斬新な解釈の演奏というのもないと思う、イメージ通り。
それがその人に合っているかどうかという問題だけで、
ポールの場合は、やっぱりこういうことも自然にできるんだ
と何かほっとする、そんな全体像ですね。
録音はニューヨークとロサンゼルスで行われていますが、
曲によってはストリングスのアレンジが施されていて、
そのストリングスはロンドン交響楽団が担当しています。
もちろんというかストリングスのみ英国で録音されているわけですが、
かのアビィ・ロード・スタジオで録音されていると明記されているのは
やっぱり無条件でうれしくなりますね。
僕は今日、国内盤SHM-CD盤と海外盤限定盤を買いましたが、
後者には2曲のボーナストラックが収録されて16曲入りです。
ひとまず通常の14曲で話すと、僕が知っていた曲は
たった1曲しかありませんでした。
そうですね、アメリカン・スタンダードはロッドなどで時々聴くけど、
親しんできたというわけではないので当たり前でしょうけど、
それにしても有名な曲は敢えて外している感じがします。
だから今回は、とにかく早く記事を上げたかったこともあって、
1曲ずつについてあまり話すことが浮かばないので、
かいつまんで何曲かについて触れます。
02 タワレコで国内盤を買うと特典でしおりがもらえた!
このアルバムのタイトルを最初に聞いて僕は、
なんてタイトルをつけたんだろうと・・・
ポールは時々下ネタ系のことを平気でいいますね。
このタイトルはアルバム冒頭1曲目の
I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter
の歌詞から取られていることが聴いてみて分かったのですが、
国内盤のライナーでは、そこが以下のように訳されています。
「下の方にはキッスを」
あまり直接的に書かないものですからね、日本人は。
「お尻」ですよね、多分、足の裏ではなく・・・
いや違う、それは「心の底」という意味の"bottom"だなきっと(笑)。
それはともかく、僕くらいの世代なら、手紙を書くという
このタイトルは想像よりは経験で思うことが多いのだろうけど、
今の若い人にはもはやあまり実感がないのかな、どうだろう。
3曲目It's Only A Paper Moon、これが唯一知っている曲で、
逆にこれだけ有名すぎる曲なのもいかにもポールらしいなあと。
僕にとって最初のアメリカン・スタンダードを歌ったアルバムが
ナタリー・コールのUNFORGETTABLEでしたが、
その中でもこの曲は特に好きでしたね。
この曲はそれ以前から知っていて、ナタリー・コールのそれで
初めてその曲のCDを買って聴けたのがうれしかったのでした。
余談ですがUNFORGETTABLEではポールがカバーしていた
Don't Get Around Much Any Moreが入っていたのもうれしくて、
そうか久しぶりにナタリー・コールも聴いてみたくなりました。
8曲目My Valentineは2曲のオリジナルの1曲ですが、
エリック・クラプトンがギターで参加しています。
そのせいかイントロのギターでLaylaを彷彿とさせる旋律が入って、
これは偶然かな、いやきっと違う、ポールの発案かな、エリックかな、
とにかく昔からのファンには思わず笑みが漏れてしまう。
AメロがメランコリックでBメロで少し明るくなるこの曲は、
どう聴いてもアメリカン・スタンダードの世界という曲。
エリックのギターはやっぱりいいですね。
昔はポールとエリックは仲が良くなかったのかなと思っていたけど、
ジョージ・ハリスンの追悼コンサートで一緒に演奏してから
共演するようになったのはうれしいし、ジョージ絡みでいえば
感慨深いものがありますね。
エリック・クラプトンはもう1曲、12曲目の
Get Around Another Foolにもギターで参加しています。
こちらはエレクトリック・ギターで、ブックレットを見る前から
ギターの音でエリックだと一発で分かりました。
この曲で面白いのは、歌い出しのポールの声がエリックに似ていて、
それもポールが茶目っ気を出してわざとそうしたのかなって。
またそこから考えたのは、エリックは声域が狭いと言われていたけど、
ポールの声域がエリックのそれに近づいたのかな、ということでした。
歌い出しだけではなく全体的にエリックの声に似てますね。
またこの曲名は、エリックと一緒にこれからこういう音楽をやって
楽しんでいこうという意思表明、というのはうがち過ぎかな(笑)、
でもポールとエリックがやるにはいい曲だと思いました。
ポールは今回、ほとんどヴォーカルだけに専念していますが、
エリックとの12曲目と次の13曲目The Inch Wormの2曲のみ
アコースティック・ギターも弾いています。
12でエリックにミュージシャン魂を刺激されたのかな。
この曲はミミズの歌でしょうかね、曲はそんな感じはしないけど、
ミミズを研究していたチャールズ・ダーウィンを思い出しました。
この曲は子どものコーラスがアクセントとして効いています。
面白いのは11曲目Bye Bye Blackbird。
先ほど知っていたのは1曲と書いたけど、これも曲は知っていました。
ジョー・コッカーが1stで歌っていますが、でもジョーのそれとは
あまりにも違うので気づきませんでした。
もちろんビートルズ時代の自身の曲Blackbirdを想起させ、
ポールの茶目っ気もかなりのものでそれは幾つになっても変わらない、
そこが思わずほほえんでほっとする部分ですね。
もう1曲、知らない曲だけど興味深いと思ったのは
6曲目We Three (My Echo, My Shadow And Me)。
歌詞の中に"moonlight"を繰り返す部分があるんだけど、それは
ビートルズとしては未発表曲だったけどBBCで世の中に出た曲で
ポールが作ったI'll Be On My Wayを想起させられたからです。
歌詞の作り方などをポールは古い曲から学んだんだろうなって。
知らなかった中で9曲目Alwaysは、かのWhite Christmasを
書いたアーヴィン・バーリンの作曲ですね。
もっといい曲をたくさん書いた人なのでしょうね。
ポール自作のもう1曲は本編最後のOnly Our Hearts、
こちらはスティーヴィー・ワンダーがハーモニカで客演。
もちろんこれも一発で分かりましたが、自作曲に豪華なゲストを
わざわざ迎えるのもポールらしいはったりがあっていいなあ。
あ、もちろんほめてますからね。
スティーヴィー・ワンダーのハーモニカは音色が艶やかで、
人間性を深く感じる深い響きが特徴ですね。
曲も最後らしくまたポールらしくじわっと盛り上がって、暖かく
家庭的な雰囲気に包まれてアルバムが終わります、よかったあ。
03 こちらは輸入盤限定盤16曲入り
輸入盤限定盤のボーナストラックにも触れます。
僕は実は、それこそがめあてだったのです。
15曲目Baby's Requestはポールのペンになる曲で、
ウィングス時代のBACK TO THE EGGの最後の曲として
収録されていた曲で、セルフカバーということになります。
僕はこの曲がずっと大好きでもっと聴かれてほしかったので
この曲を再演したのはもうほんとうにうれしい。
だけどそれがボーナストラックというのがちょっと残念だな。
ポールならスタンダードの中にねじ込むくらいはしそうだけど、
でもやっぱりそこは最初ということで遠慮したのでしょうね。
なにもそこで遠慮しなくても、と僕は思うのですが(笑)。
それはともかくノスタルジックで家庭的なこの曲は、
オリジナルより少し速いテンポで演奏されていますが、
おおよそオリジナルのイメージ通りなのは、ポールの
作曲家としての自信のほどを感じます。
ただし最後はジャズ的なパッセージで終わっていますが。
16曲目、My One And Only Loveを見てやっぱりポール、と。
だって、最初と最後の単語だけをみるとMy Loveですからね。
ポールやるなあ、いたずら心と自信はいつまでも忘れない。
この曲を選んだのは再婚したことと関係あるのかな。
今はそういう気持ち、これからもそうであってほしい、ファンとしても。
ここで全曲、曲名を書き出してみます。
I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter
Home (When Shadows Fall)
It's Only A Paper Moon
More I Cannot Wish You
The Glory Of Love
We Three (My Echo, My Shadow And Me)
Ac-Cent-Tchu-Ate The Positive
My Valentine
Always
My Very Good Friend The Milkman
Bye Bye Blackbird
Get Yourself Another Fool
The Inch Worm
Only Our Hearts
Baby's Request
My One And Only Love
ざっと曲名をみると、昔の曲はほんとに身近なモチーフで、
小さな心の変化に感動して書いていることが分かりますね。
まさに日常の視点。
リンクは左が国内盤SHM-CD盤、右が輸入限定盤。
僕としてはやはりBaby's Requestが入っているので、
右をおすすめしたいのですが。
ロックの世界では、ロッド・スチュワートが2002年に、
アメリカン・スタンダードを集めたアルバムを発表して
ビルボードでNo.1になる大ヒットを記録し、結局は4枚目まで作られ
今やロッドはアメリカン・スタンダードの人として定着しました。
ただし4枚目の後でベスト盤を出してもう辞めると言ったのだとか。
ポールは、そんなロッドをどう見ていたのだろう。
僕としては中学時代からずっと大好きなポールとロッドが
結局はそこに行きついたのかというのが、繰り返し、
音楽は年齢と関係があるんだなって思います。
正直言えば、僕でも知っているような超有名な曲があと2曲くらい
あるといいなというのが買って何度か聴いて思ったことです。
ただ、ポールとしては、そんな身勝手なファンなぞどうでもよくて
音楽が好きなすべての人に、もっといい音楽、自分が好きな音楽を
知ってもらいたいという思いを込めて作ったのでしょうね。
僕もそこに気づいて反省しているところです。
僕の親戚が寿司屋さんをやっていて時々食べに行きますが、
そこは有線でアメリカン・スタンダードやそれっぽい曲を流していて、
だからポールのこれを聴くとなんだかおいしそうと思いました(笑)。
もちろん、ゆっくりと音楽と向き合って聴き込むのもいいんだけど、
空気のようにそこに流れていると気持ちいい、そんな音楽でもあります。
ただ、これもまたただ、ですが、ポールはそもそもは
もっと真剣に音楽を聴いてもらいたいという思いを持って、
ビートルズの数々の傑作をものにしてきた人だから、そんなポールが
こうした音楽をやるようになったのは、つくづく、
音楽と年齢の関係を感じざるを得ないですね。
まあでも、無理して若くする必要もないし、逆にいえば、
これからはむしろ若い人がこういう音楽に夢中になるかもしれない。
あ、そうか、ポールはそれをもくろんでいるのかな(笑)。
ともあれ、ポールが新作を届けてくれたのはうれしいですね。
全体として予想していたより少し良かったです。
暫く聴くことができる、かけることができる、そんなCDです。
音楽はタテにも横にもつながって広がっていく、
そんなことも聴きながら思いました。
04
最後は「さっぽろ雪まつり」のセイウチ君。
ひげは残念ながら雪や氷じゃないようですね(笑)。
ジョン・レノン曰く「セイウチはポールだ」
でも、セイウチはジョン自身だった・・・
なんて最後にマニア的なジョークをさらりと(笑)。
Posted by guitarbird at 19:54
│Paul