2017年03月28日
洋楽における「マイフレンド」問題
01
本を読みました。
『実践 日本人の英語』
マーク・ピーターゼン著
岩波新書
今回はこの本を読んで思ったこと。
大学の授業で日本語英訳文の添削指導をしていた著者が、
日本人にありがちな英語の問題点を指摘し正しい用法を
説明するというもので、とても面白くて興味深い1冊でした。
中でも印象的だったのが「マイ問題」という章。
"my friend"の使い方について
次の文章を英訳せよというお題が出されます。
ただし、ここの"Okinawa"は本書では別の土地になっていますが、
そこは変えても問題ないので変えさせていただきました。
■
春休みに私は友だちと沖縄に行きました。
それを
△
In the spring vacation I went to Okinawa with my friend.
と書く大学生が多かった。
この文章が英語ネイティヴの人にはおかしいと感じられる、
といわれても、日本人としてはピンとこない。
正しくはこうなります。
◎
In the spring vacation I went to Okinawa
with a friend of mine.
(もしくは with one of my friends.)
△の文のどこがおかしいかというと、"my friend"といきなり書くと、
「私には友だちがひとりしかいない」と解釈されてしまうところ。
寂しい人なんだなあと思われる。
そういう人もいるかもしれないですが、ほとんどいないでしょう。
だから◎が正解となるわけです。
ただし、"my friend"と書けないわけではなく、
こういう場合、▲の2文目のようにであれば使えます。
▲
In the spring vacation I went to Okinawa
with a friend of mine.
My friend said it was warm.
ひとつの文章に出てくる2回目以降は、その話の中では
一緒に行った友だちがひとりしかいないことが提示され
読者もそう理解するので"my friend"が使えるというわけ。
なるほどね。
ちなみに僕はこの例題を英文で書けと出題されて、
"my friend"ではなく"a friend of mine"と書けましたが、
でもどうしてそうなのかは分からなかった。
なんとなくそうに違いない、と曖昧な判断に基づいていましたが、
しかし、その理由を論理的に説明されてよく分かりました。
さて、何でも洋楽に結びつけて考えてしまう僕。
その文を読んで頭に流れてきたのはもちろん。
You're My Best Friend クイーン
☆
You're My Best Friend
Queen
この場合、字義どおりに受け取ると
「貴方は僕のたったひとりで最高の友だちだ」
という意味になる、ということがこの本で分かりました。
最上級の褒め言葉だけど友だちがひとりしかいない。
(ひとりしかいないので「ベスト」フレンドに決まっている)。
でもこの場合、この歌がある前に友だちが複数(たくさん)いる
という前提があってこうなると捉えれば、普通に
「貴方は僕のたくさんの友だちの中でも最高だ」
という意味にとれるでしょう。
僕も後者の意味でずっと捉えてきましたし、
そういう人は多いのではないかと思います。
というか、前者のような想定は考えも及びませんでした。
歌は文章ではなく断片であり、
一般常識に基づいて省略される部分もあるという前提条件、
または暗黙の了解のようなものがあるのではないか。
おそらく英米その他英語ネイティヴの人も多くは、
後者の意味で解釈しているのではと想像します。
しかし、この本を読んでもうひとつの可能性に考えが及びました。
"best"といっているのだから当然「ひとり」しかいない。
それほどまでに大切な存在であることを強調したい。
日本では「ベストテン」などと"best"の誤用が多く見られるし、
僕自身も「ベスト」といいながら2つ3つ選ぶこともあるので、
「ベスト」についての解釈の幅が広い(緩い)ということかな。
あ、「誤用」と書きましたが、「外来語としての日本語」と捉えれば、
僕は納得できる部分があり、だから僕自身も使っている。
というのは多分に自己弁護的ではありますが、最近僕は
「外来語」は「日本語」であるという意識が強くなっていて
そのように考えています。
【2017年4月5日 追加補足】
この記事を上げたところ、この曲に対して、別BLOGの方に
やまももさんから書き込みをいただきました。
この曲は作曲者であるジョン・ディーコンが最愛の妻に宛てて
書いたものだそうです。
そうであれば「ひとりしかいない」のは当たり前であり、
"my friend"といきなり書いても構わないわけですね。
納得しました。
やまももさん、情報ありがとうございます。
02 ハシブトガラも友だちなの?!
あまりにも有名な「マイ・フレンド」、もう1曲ありますよね。
With A Little Help From My Friends ザ・ビートルズ
実はこっちはもっとすごいことになってしまうことが
この本を読んで分かりました。
ビートルズがオリジナルですが、ここはジョー・コッカーでいきます。
なぜって、その方がよりすごいことになっているから。
☆
With A Little Help From My Friends
Joe Cocker
これですが、
「僕の友だち何人かに少し助けてもらいながら」
という意味であると僕も解釈していたし、
そういう方は少なからずいらっしゃるかと思います。
しかし、字義通りに英語ネイティヴの人が解釈すると実は
「僕のすべての友だちに少し助けてもらいながら」
と、まさにえらいこっちゃとなるわけなんです。
友だちが10人いたら10人、100人なら100人の少しの助け。
前者の意味だと
"With a little help from some of my friends"
となるでしょうけれど、そうなるとただでさえ長いのにさらに
長くなってリズム感も悪くなり、歌として歌いにくくなりますね。
この曲の場合も、英米等英語ネイティヴの人も
クイーンのところで説明した「前提条件」「暗黙の了解」があって
「僕の友だち何人かに少し助けてもらいながら」
と解釈する人は少なくないのではないかと想像します。
ただこれ、逆にいえば
「助けてくれる人は友だちでそれ以外は友だちではなくただの知人」
という意味にもとれるわけで、そうなると解釈の幅が広がります。
03 猫は友だち
さて、"a friend of mine"といえばそのもの
You're A Friend Of Mineという曲がありますね。
ジャクソン・ブラウンとクラレンス・クレモンズが共演した曲。
当時ジャクソン・ブラウンが大嫌いだった僕ですが、
これは素直にいい歌だなあと思いました。
僕が、理由は分からないけれど最初の例題に正解したのは、
この歌のこの文句が頭にあったからでしょうね、きっと。
☆
You're A Friend Of Mine
Clarence Clemons & Jackson Browne
この曲の「僕の友だちのひとり」にリアリティがあるのは、
ブルース・スプリングスティーンのE.ストリート・バンドの
クラレンス・クレモンズとジャクソン・ブラウンという
別の流れのミュージシャンが一緒に歌うことで
ミュージシャンの交流を想起させるところでしょう。
04 猫ふたたび
最後に派生してもう1曲。
☆
My Love
Paul McCartney & Wings
ポール・マッカートニー&ウィングスのMy Love。
"love"は男性から見た女性の恋人で逆は"lover"。
恋人は普通、というか重婚が認められていない地域では
社会通念上ひとりしかいないものだから、この場合は
いきなりMy Loveで文法的にもいいのでしょう。
逆に"A Love Of Mine"なんて平気で歌う人がいたら
そりゃあ恐いから(笑)。
ちなみに、イーグルスや同名異曲エモーションズの
(The) Best Of My Loveの"love"は「愛情」であって、
「恋人の中でベスト」ということでは決してない。
ついでのついで、My Lifeも人生はひとつしかないので
いきなり出てきてもいいのでしょう。
もちろん洋楽に関わる部分以外も面白くためになる本ですが、
やっぱり僕は音楽のことを先ず考えてしまうようですね(笑)。
05
本を読みました。
『実践 日本人の英語』
マーク・ピーターゼン著
岩波新書
今回はこの本を読んで思ったこと。
大学の授業で日本語英訳文の添削指導をしていた著者が、
日本人にありがちな英語の問題点を指摘し正しい用法を
説明するというもので、とても面白くて興味深い1冊でした。
中でも印象的だったのが「マイ問題」という章。
"my friend"の使い方について
次の文章を英訳せよというお題が出されます。
ただし、ここの"Okinawa"は本書では別の土地になっていますが、
そこは変えても問題ないので変えさせていただきました。
■
春休みに私は友だちと沖縄に行きました。
それを
△
In the spring vacation I went to Okinawa with my friend.
と書く大学生が多かった。
この文章が英語ネイティヴの人にはおかしいと感じられる、
といわれても、日本人としてはピンとこない。
正しくはこうなります。
◎
In the spring vacation I went to Okinawa
with a friend of mine.
(もしくは with one of my friends.)
△の文のどこがおかしいかというと、"my friend"といきなり書くと、
「私には友だちがひとりしかいない」と解釈されてしまうところ。
寂しい人なんだなあと思われる。
そういう人もいるかもしれないですが、ほとんどいないでしょう。
だから◎が正解となるわけです。
ただし、"my friend"と書けないわけではなく、
こういう場合、▲の2文目のようにであれば使えます。
▲
In the spring vacation I went to Okinawa
with a friend of mine.
My friend said it was warm.
ひとつの文章に出てくる2回目以降は、その話の中では
一緒に行った友だちがひとりしかいないことが提示され
読者もそう理解するので"my friend"が使えるというわけ。
なるほどね。
ちなみに僕はこの例題を英文で書けと出題されて、
"my friend"ではなく"a friend of mine"と書けましたが、
でもどうしてそうなのかは分からなかった。
なんとなくそうに違いない、と曖昧な判断に基づいていましたが、
しかし、その理由を論理的に説明されてよく分かりました。
さて、何でも洋楽に結びつけて考えてしまう僕。
その文を読んで頭に流れてきたのはもちろん。
You're My Best Friend クイーン
☆
You're My Best Friend
Queen
この場合、字義どおりに受け取ると
「貴方は僕のたったひとりで最高の友だちだ」
という意味になる、ということがこの本で分かりました。
最上級の褒め言葉だけど友だちがひとりしかいない。
(ひとりしかいないので「ベスト」フレンドに決まっている)。
でもこの場合、この歌がある前に友だちが複数(たくさん)いる
という前提があってこうなると捉えれば、普通に
「貴方は僕のたくさんの友だちの中でも最高だ」
という意味にとれるでしょう。
僕も後者の意味でずっと捉えてきましたし、
そういう人は多いのではないかと思います。
というか、前者のような想定は考えも及びませんでした。
歌は文章ではなく断片であり、
一般常識に基づいて省略される部分もあるという前提条件、
または暗黙の了解のようなものがあるのではないか。
おそらく英米その他英語ネイティヴの人も多くは、
後者の意味で解釈しているのではと想像します。
しかし、この本を読んでもうひとつの可能性に考えが及びました。
"best"といっているのだから当然「ひとり」しかいない。
それほどまでに大切な存在であることを強調したい。
日本では「ベストテン」などと"best"の誤用が多く見られるし、
僕自身も「ベスト」といいながら2つ3つ選ぶこともあるので、
「ベスト」についての解釈の幅が広い(緩い)ということかな。
あ、「誤用」と書きましたが、「外来語としての日本語」と捉えれば、
僕は納得できる部分があり、だから僕自身も使っている。
というのは多分に自己弁護的ではありますが、最近僕は
「外来語」は「日本語」であるという意識が強くなっていて
そのように考えています。
【2017年4月5日 追加補足】
この記事を上げたところ、この曲に対して、別BLOGの方に
やまももさんから書き込みをいただきました。
この曲は作曲者であるジョン・ディーコンが最愛の妻に宛てて
書いたものだそうです。
そうであれば「ひとりしかいない」のは当たり前であり、
"my friend"といきなり書いても構わないわけですね。
納得しました。
やまももさん、情報ありがとうございます。
02 ハシブトガラも友だちなの?!
あまりにも有名な「マイ・フレンド」、もう1曲ありますよね。
With A Little Help From My Friends ザ・ビートルズ
実はこっちはもっとすごいことになってしまうことが
この本を読んで分かりました。
ビートルズがオリジナルですが、ここはジョー・コッカーでいきます。
なぜって、その方がよりすごいことになっているから。
☆
With A Little Help From My Friends
Joe Cocker
これですが、
「僕の友だち何人かに少し助けてもらいながら」
という意味であると僕も解釈していたし、
そういう方は少なからずいらっしゃるかと思います。
しかし、字義通りに英語ネイティヴの人が解釈すると実は
「僕のすべての友だちに少し助けてもらいながら」
と、まさにえらいこっちゃとなるわけなんです。
友だちが10人いたら10人、100人なら100人の少しの助け。
前者の意味だと
"With a little help from some of my friends"
となるでしょうけれど、そうなるとただでさえ長いのにさらに
長くなってリズム感も悪くなり、歌として歌いにくくなりますね。
この曲の場合も、英米等英語ネイティヴの人も
クイーンのところで説明した「前提条件」「暗黙の了解」があって
「僕の友だち何人かに少し助けてもらいながら」
と解釈する人は少なくないのではないかと想像します。
ただこれ、逆にいえば
「助けてくれる人は友だちでそれ以外は友だちではなくただの知人」
という意味にもとれるわけで、そうなると解釈の幅が広がります。
03 猫は友だち
さて、"a friend of mine"といえばそのもの
You're A Friend Of Mineという曲がありますね。
ジャクソン・ブラウンとクラレンス・クレモンズが共演した曲。
当時ジャクソン・ブラウンが大嫌いだった僕ですが、
これは素直にいい歌だなあと思いました。
僕が、理由は分からないけれど最初の例題に正解したのは、
この歌のこの文句が頭にあったからでしょうね、きっと。
☆
You're A Friend Of Mine
Clarence Clemons & Jackson Browne
この曲の「僕の友だちのひとり」にリアリティがあるのは、
ブルース・スプリングスティーンのE.ストリート・バンドの
クラレンス・クレモンズとジャクソン・ブラウンという
別の流れのミュージシャンが一緒に歌うことで
ミュージシャンの交流を想起させるところでしょう。
04 猫ふたたび
最後に派生してもう1曲。
☆
My Love
Paul McCartney & Wings
ポール・マッカートニー&ウィングスのMy Love。
"love"は男性から見た女性の恋人で逆は"lover"。
恋人は普通、というか重婚が認められていない地域では
社会通念上ひとりしかいないものだから、この場合は
いきなりMy Loveで文法的にもいいのでしょう。
逆に"A Love Of Mine"なんて平気で歌う人がいたら
そりゃあ恐いから(笑)。
ちなみに、イーグルスや同名異曲エモーションズの
(The) Best Of My Loveの"love"は「愛情」であって、
「恋人の中でベスト」ということでは決してない。
ついでのついで、My Lifeも人生はひとつしかないので
いきなり出てきてもいいのでしょう。
もちろん洋楽に関わる部分以外も面白くためになる本ですが、
やっぱり僕は音楽のことを先ず考えてしまうようですね(笑)。
05