2013年07月25日
ドン・ヘンリーのベスト盤が出た
01 曇りモードのまま撮ったら写真が黄色っぽくなった・・・

THE VERY BEST OF DON HENLEY
ドン・ヘンリーのベスト盤が出ました。
といって、彼のソロアルバムは4枚しか出ておらず、
しかも3rdの後に一度、1995年にベスト盤が出ていたので、
目新しさもなく、あまり話題になっていないようですね。
ただし今回のベスト盤には、最近の一種の流行りである、
ビデオクリップなどを収めたDVDが付きもあります。
まあ、時代に合わせて出し直した、という感じでしょうか。
そうはいいながら、ドン・ヘンリーは、
ロック界でも僕が特に声が好きなヴォーカリストなので、
もちろん買い求めて、へヴィにではないけど聴いています。
ただ、最初は、記事にするつもりはまったくありませんでした。
しかし、です、話が二転三転しますが(笑)、
DVDのある曲のビデオクリップを観てながら弟と話していて、
ちょっと面白いなと「ひらめいて」、急きょ、記事にすることにしました。
そのビデオクリップを観ていたのが、つい先ほど、
オールスター第1戦が終わった後だったのですが、
だからこの記事は、guitarbirdのBLOG史上、音楽記事として、
思いついてから上げるまでが最速のものではないかと思います(笑)。
ちなみに、ジョージ・ハリスンのベスト盤もかなり早かったのですが。
◇
ビデオクリップを見て語っていたその曲は、
Tr3:All She Wants To Do Is Dance
1984年の、ドンの2ndアルバムからの2ndシングル。
当時は、我が家で初めてビデオデッキを買い、
小林克也さんをはじめ音楽のビデオクリップを録画するようになり、
熱中していた頃でした。
そんな中で観たこの曲のビデオ、そしてこの曲がとても気に入り、
録画したビデオをそれこそ毎日観て聴いていました。
ドンのソロでも1、2というくらいに大好きな曲です。
この曲のビデオクリップは、SFチックで、
核戦争の後の荒廃した世界に、ひとりの若い女性がいて、
彼女はとにかくダンスがしたくて、周りにいる
生き延びようとする人たちや詰め寄ってくる敗残兵などには
目もくれずにただ踊り続ける、そして最後は地下室に降り、
そこではかつてディスコだった場所、レコードが回り続け、
彼女は晴れて、ひとりで踊り続けることができるようになった・・・
こんな粗筋です。
そしてドンたちは、崩れ落ちた建物の中で演奏していますが、
基本的には劇中の女性には彼らが見えないようで、
いわば別次元で演奏していりょうな感じです。
実際に歌詞も
戦時下の状況を読み込んでいる物語風のもので、
このビデオクリップはだから、イメージビデオというよりは、
曲を映像化したものといえるのでしょう。
しかし、です。
このビデオクリップを観ていた弟が、
「どうしてこの曲でこんな映画みたいなビデオなんだ」
と、笑いながら言いました。
僕と弟は6歳離れていますが、当時、弟は小学生で、
僕が聴いていた洋楽を耳にしてはいたでしょうけど、
まだ自分の意志で洋楽を聴いてはいませんでした。
だから、このビデオクリップを知らないに等しかったのです。
一方僕はこの曲、ビデオ録画を始めたばかりの頃に出会ったし、
このビデオはこういうもんだという頭があったので、
弟のその疑問が逆に新鮮に映りました。
当時は、映画のようなビデオクリップが流行っていたんですね。
映画のようなコンセプトやセットで、
実際の映画のシーンを模したものもあったり、
アーティストが演技する(ちょっと恥ずかしい)ビデオもあって、
中には映画監督が撮ったものなどもあり、かなり本格的でした。
その流れを作ったのは、他でもない、
マイケル・ジャクソンの影響が大きかったのでしょうけど、
この「映画もの」のビデオクリップ、今ぱっと思いつくだけでも、
Wild Boys デュラン・デュラン(監督はラッセル・マルケイ)、
Don't Cry エイジア、Pipes Of Peace ポール・マッカートニー
Loverboy ビリー・オーシャン、
Along Comes A Woman シカゴ、などなどあります。
1980年代中頃の、ビデオクリップ拡大期のことですね。
この後、ピーター・ガブリエルのSledgehammer辺りから、
物語よりもイメージへと流れの中心が移ったように思います。
もちろん、流れなので、すべてではないですが。
◇
弟の言葉を聞いて思ったのは、
10代の6年というのは大きな違いなんだな、ということです。
しかし、家族で一緒に住んでいたので、
そのことに僕が気づいていなかったようですね。
しかし、そう言われて今このビデオクリップを見ると・・・
やっぱりちょっと変だわ(笑)
観ていると、強烈に時代を感じますし、
ちょっと照れくさい笑みが漏れますね。
ドン・ヘンリーの「演技」も真顔だけど真剣じゃないし、
なにかこう、画面に焼きつけられた空気感が、いかにも80年代。
でも、それが時代というものなのでしょうね。
当時は、それが凄かったんです、クールだったんです。
僕は1980年代の洋楽を聴いて育ったから、
それを否定するつもりはないし、むしろ大好きですし、
そしてもちろん懐かしいですね。
といって、ドンはその後もずっと聴き続けているので、
曲ではなく、若かった自分が懐かしい、です・・・
02 ドンの4枚のアルバム

ビデオクリップのみならず、曲自体にも「再発見」がありました。
この曲、ソウルじゃん!
僕はこの曲、当時は一発で大好きになりました。
たまたま同じ頃、エリック・クラプトンのForever Manも録画し、
この2曲をセットで毎日観て聴いていましたが、この2曲はほんと、
ビデオクリップを録画するという新しい体験とともに、
自分の中でもかなり強烈な出会いの曲でした。
また僕は、昨年からソウル系を傾聴するようになりましたが、
そうか、やっぱり、僕はもともとそういう響きが好きで合うんだ、
ということを、またもや今回再認識しました。
マスル・ショールズっぽいブラスの使い方が素晴らしく、
Bメロのシンコペーションで入る女声コーラスがカッコいい!
というのは、今思い出しても、当時から感じていたことで、
もちろんマスル・ショールズは最近の後付けの知識ですが、
ドン・ヘンリーはブルー・アイド・ソウルとは言われていないけど、
うん、これは素晴らしいブルー・アイド・ソウルと言いたいです。
そんなことを思いながらブックレットを見ていあることに気づき、
僕は、実は、ほんとに「あーっっ」と声を上げてしまいました。
この曲を作ったのは
ダニー・「クーチ」・コーチマー
だったのか!
そう思って2ndアルバムを引っ張りだすと、
プロデュースも「クーチ」で、彼は多くの曲を手掛け(共作)、
さらにいえば1stと3rdも「クーチ」の仕事だったなんて!
知らなかった・・・
言い訳をすれば(笑)、先ほどからこの曲は、
ビデオを観て聴いていたと書いていますが、そうです、
当時はレコードは買わなくて、CDの時代になって暫くして、
初めてアルバムを買ったのです。
しかしそのCDを買った頃は、少し音楽熱が低かった頃で、
具にブックレットを見ていなかったようで・・・
というわけで、不勉強だったおかげで(笑)、
思わぬところでクーチとうれしい対面をしたのですが、
それは「怪我の功名」(笑)とも言えるでしょう。
だって、20年前にそれがクーチだと知っていても、
それほど強く何かを思わなかったかもしれないですし。
クーチだと分かってあらためてこの曲を聴くと、そうか、
このソウル趣味はクーチなんだな、そういえばこの曲も、
強烈な歌メロ一発を核にして組み立てるというよりは、
重たいフックを幾つも重ねて攻めてくる、それもクーチっぽいし、
あまり黒っぽくないフィーリングの人にソウルをやらせると
いい味を引き出すんだな、
いかにも80年代っぽい不思議なギターの音も気を引くし、
こんなにもアレンジでじっくりと聴かせる曲というのも
あまりないのではないか、さすがはクーチのセンス・・・
などなど、いろんなことが次々と頭を駆け巡りました。
◇
ドン・ヘンリーといえばやはり、
Tr2:The Boys Of Summerですね。
もちろんこのベスト盤にも、曲もビデオクリップも収められています。
もうこの曲は、すっかりロックの名曲ですね、輝かしい名曲。
今回聴いても、やっぱり素晴らしいですね。
頼むから黙って聴いて!
とみんなに言って回りたいくらいの名曲(笑)。
この曲のビデオクリップはモノクロのイメージ映像ですが、これは
第2回MTVビデオ・ミュージック・アウォードを獲得しているはず。
そしてこの曲は、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの
マイク・キャンベルと共作していますが、やっぱり自分は、
10代の頃からそういうつながりで音楽を聴いてきたんだなぁ。
なお、HBsのメンバーのマイクとベンモント・テンチは
4枚のアルバムに参加し、またスタン・リンチは、
4枚目をドンと共同でプロデュースしています。
それにしても、もう四半世紀かぁ・・・
◇
ベスト盤で他に聴きどころは、
Tr1:Dirty Laundry
1stからのシングルで、僕が最初に知ったドンのソロ曲。
当時、「ベスト・ヒットUSA」では、ビデオクリップがないので、
アルバムジャケットの静止画像にこの曲が流れてました(笑)。
パワフルに押し通す曲。
Tr6:The End Of The Innocence
ブルース・ホーンズビーとの共作そしてピアノで参加、
それは当時話題になったので知っていましたが、
サックスがウェイン・ショーターだったのは、
今回ブックレットを見て(初めて)知りました。
余談ですが、ドンのソロは参加ミュージシャンが豪華で、
上げるとキリがなくなるので、あえてやめておきます・・・
Tr7:The Last Worthless Evening
この2曲は、Boysのノスタルジー路線の延長で、
こちらは心がとろけるようにしみてくる曲。
ドンのヴォーカルもBoysかこれがベストじゃないかな。
Tr8:New York Minute
これも3枚目の曲、この落ち着いた雰囲気、
大都会の朝の、都会なりのすがすがしい空気感にあふれる
「隠れた名曲」、当時から大好きです。
Tr12:For My Wedding
4枚目からの曲、
ロック界屈指の「偏屈者」(失礼!)のドンが、
こんなモチーフの曲を歌うなんて・・・
アコースティックの素朴な響きの、きれいな曲です。
DVDなしのCDのみの盤もありますが、
ビデオクリップが話題になったので、ここでは、
DVD付きのものだけのリンクを施しました。
ちょっと胸を締めつけられるような懐かしさ。
それは、当時のことを思い出して懐かしむ、というよりは、
ドンの音楽がそもそも持っている要素でしょう。
ドンの声にはほんと聴き惚れます。
じっくりと、ゆったりと聴き込める音楽ですね。
サビの歌メロはとにかく印象に残るものばかりです。
そして、確固たる自分の音世界がある人ですね。
そうだ、アルバムもまた聴き直すか。
シェリル・クロウもいることだし・・・(笑)・・・
◆
というわけで、突然思いついた「急仕上げ」の記事でしたが、
たまにはこうした感想文っぽい記事もいいかな、と・・・
あ、よくないですか、そうですか・・・

THE VERY BEST OF DON HENLEY
ドン・ヘンリーのベスト盤が出ました。
といって、彼のソロアルバムは4枚しか出ておらず、
しかも3rdの後に一度、1995年にベスト盤が出ていたので、
目新しさもなく、あまり話題になっていないようですね。
ただし今回のベスト盤には、最近の一種の流行りである、
ビデオクリップなどを収めたDVDが付きもあります。
まあ、時代に合わせて出し直した、という感じでしょうか。
そうはいいながら、ドン・ヘンリーは、
ロック界でも僕が特に声が好きなヴォーカリストなので、
もちろん買い求めて、へヴィにではないけど聴いています。
ただ、最初は、記事にするつもりはまったくありませんでした。
しかし、です、話が二転三転しますが(笑)、
DVDのある曲のビデオクリップを観てながら弟と話していて、
ちょっと面白いなと「ひらめいて」、急きょ、記事にすることにしました。
そのビデオクリップを観ていたのが、つい先ほど、
オールスター第1戦が終わった後だったのですが、
だからこの記事は、guitarbirdのBLOG史上、音楽記事として、
思いついてから上げるまでが最速のものではないかと思います(笑)。
ちなみに、ジョージ・ハリスンのベスト盤もかなり早かったのですが。
◇
ビデオクリップを見て語っていたその曲は、
Tr3:All She Wants To Do Is Dance
1984年の、ドンの2ndアルバムからの2ndシングル。
当時は、我が家で初めてビデオデッキを買い、
小林克也さんをはじめ音楽のビデオクリップを録画するようになり、
熱中していた頃でした。
そんな中で観たこの曲のビデオ、そしてこの曲がとても気に入り、
録画したビデオをそれこそ毎日観て聴いていました。
ドンのソロでも1、2というくらいに大好きな曲です。
この曲のビデオクリップは、SFチックで、
核戦争の後の荒廃した世界に、ひとりの若い女性がいて、
彼女はとにかくダンスがしたくて、周りにいる
生き延びようとする人たちや詰め寄ってくる敗残兵などには
目もくれずにただ踊り続ける、そして最後は地下室に降り、
そこではかつてディスコだった場所、レコードが回り続け、
彼女は晴れて、ひとりで踊り続けることができるようになった・・・
こんな粗筋です。
そしてドンたちは、崩れ落ちた建物の中で演奏していますが、
基本的には劇中の女性には彼らが見えないようで、
いわば別次元で演奏していりょうな感じです。
実際に歌詞も
戦時下の状況を読み込んでいる物語風のもので、
このビデオクリップはだから、イメージビデオというよりは、
曲を映像化したものといえるのでしょう。
しかし、です。
このビデオクリップを観ていた弟が、
「どうしてこの曲でこんな映画みたいなビデオなんだ」
と、笑いながら言いました。
僕と弟は6歳離れていますが、当時、弟は小学生で、
僕が聴いていた洋楽を耳にしてはいたでしょうけど、
まだ自分の意志で洋楽を聴いてはいませんでした。
だから、このビデオクリップを知らないに等しかったのです。
一方僕はこの曲、ビデオ録画を始めたばかりの頃に出会ったし、
このビデオはこういうもんだという頭があったので、
弟のその疑問が逆に新鮮に映りました。
当時は、映画のようなビデオクリップが流行っていたんですね。
映画のようなコンセプトやセットで、
実際の映画のシーンを模したものもあったり、
アーティストが演技する(ちょっと恥ずかしい)ビデオもあって、
中には映画監督が撮ったものなどもあり、かなり本格的でした。
その流れを作ったのは、他でもない、
マイケル・ジャクソンの影響が大きかったのでしょうけど、
この「映画もの」のビデオクリップ、今ぱっと思いつくだけでも、
Wild Boys デュラン・デュラン(監督はラッセル・マルケイ)、
Don't Cry エイジア、Pipes Of Peace ポール・マッカートニー
Loverboy ビリー・オーシャン、
Along Comes A Woman シカゴ、などなどあります。
1980年代中頃の、ビデオクリップ拡大期のことですね。
この後、ピーター・ガブリエルのSledgehammer辺りから、
物語よりもイメージへと流れの中心が移ったように思います。
もちろん、流れなので、すべてではないですが。
◇
弟の言葉を聞いて思ったのは、
10代の6年というのは大きな違いなんだな、ということです。
しかし、家族で一緒に住んでいたので、
そのことに僕が気づいていなかったようですね。
しかし、そう言われて今このビデオクリップを見ると・・・
やっぱりちょっと変だわ(笑)
観ていると、強烈に時代を感じますし、
ちょっと照れくさい笑みが漏れますね。
ドン・ヘンリーの「演技」も真顔だけど真剣じゃないし、
なにかこう、画面に焼きつけられた空気感が、いかにも80年代。
でも、それが時代というものなのでしょうね。
当時は、それが凄かったんです、クールだったんです。
僕は1980年代の洋楽を聴いて育ったから、
それを否定するつもりはないし、むしろ大好きですし、
そしてもちろん懐かしいですね。
といって、ドンはその後もずっと聴き続けているので、
曲ではなく、若かった自分が懐かしい、です・・・
02 ドンの4枚のアルバム

ビデオクリップのみならず、曲自体にも「再発見」がありました。
この曲、ソウルじゃん!
僕はこの曲、当時は一発で大好きになりました。
たまたま同じ頃、エリック・クラプトンのForever Manも録画し、
この2曲をセットで毎日観て聴いていましたが、この2曲はほんと、
ビデオクリップを録画するという新しい体験とともに、
自分の中でもかなり強烈な出会いの曲でした。
また僕は、昨年からソウル系を傾聴するようになりましたが、
そうか、やっぱり、僕はもともとそういう響きが好きで合うんだ、
ということを、またもや今回再認識しました。
マスル・ショールズっぽいブラスの使い方が素晴らしく、
Bメロのシンコペーションで入る女声コーラスがカッコいい!
というのは、今思い出しても、当時から感じていたことで、
もちろんマスル・ショールズは最近の後付けの知識ですが、
ドン・ヘンリーはブルー・アイド・ソウルとは言われていないけど、
うん、これは素晴らしいブルー・アイド・ソウルと言いたいです。
そんなことを思いながらブックレットを見ていあることに気づき、
僕は、実は、ほんとに「あーっっ」と声を上げてしまいました。
この曲を作ったのは
ダニー・「クーチ」・コーチマー
だったのか!
そう思って2ndアルバムを引っ張りだすと、
プロデュースも「クーチ」で、彼は多くの曲を手掛け(共作)、
さらにいえば1stと3rdも「クーチ」の仕事だったなんて!
知らなかった・・・
言い訳をすれば(笑)、先ほどからこの曲は、
ビデオを観て聴いていたと書いていますが、そうです、
当時はレコードは買わなくて、CDの時代になって暫くして、
初めてアルバムを買ったのです。
しかしそのCDを買った頃は、少し音楽熱が低かった頃で、
具にブックレットを見ていなかったようで・・・
というわけで、不勉強だったおかげで(笑)、
思わぬところでクーチとうれしい対面をしたのですが、
それは「怪我の功名」(笑)とも言えるでしょう。
だって、20年前にそれがクーチだと知っていても、
それほど強く何かを思わなかったかもしれないですし。
クーチだと分かってあらためてこの曲を聴くと、そうか、
このソウル趣味はクーチなんだな、そういえばこの曲も、
強烈な歌メロ一発を核にして組み立てるというよりは、
重たいフックを幾つも重ねて攻めてくる、それもクーチっぽいし、
あまり黒っぽくないフィーリングの人にソウルをやらせると
いい味を引き出すんだな、
いかにも80年代っぽい不思議なギターの音も気を引くし、
こんなにもアレンジでじっくりと聴かせる曲というのも
あまりないのではないか、さすがはクーチのセンス・・・
などなど、いろんなことが次々と頭を駆け巡りました。
◇
ドン・ヘンリーといえばやはり、
Tr2:The Boys Of Summerですね。
もちろんこのベスト盤にも、曲もビデオクリップも収められています。
もうこの曲は、すっかりロックの名曲ですね、輝かしい名曲。
今回聴いても、やっぱり素晴らしいですね。
頼むから黙って聴いて!
とみんなに言って回りたいくらいの名曲(笑)。
この曲のビデオクリップはモノクロのイメージ映像ですが、これは
第2回MTVビデオ・ミュージック・アウォードを獲得しているはず。
そしてこの曲は、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの
マイク・キャンベルと共作していますが、やっぱり自分は、
10代の頃からそういうつながりで音楽を聴いてきたんだなぁ。
なお、HBsのメンバーのマイクとベンモント・テンチは
4枚のアルバムに参加し、またスタン・リンチは、
4枚目をドンと共同でプロデュースしています。
それにしても、もう四半世紀かぁ・・・
◇
ベスト盤で他に聴きどころは、
Tr1:Dirty Laundry
1stからのシングルで、僕が最初に知ったドンのソロ曲。
当時、「ベスト・ヒットUSA」では、ビデオクリップがないので、
アルバムジャケットの静止画像にこの曲が流れてました(笑)。
パワフルに押し通す曲。
Tr6:The End Of The Innocence
ブルース・ホーンズビーとの共作そしてピアノで参加、
それは当時話題になったので知っていましたが、
サックスがウェイン・ショーターだったのは、
今回ブックレットを見て(初めて)知りました。
余談ですが、ドンのソロは参加ミュージシャンが豪華で、
上げるとキリがなくなるので、あえてやめておきます・・・
Tr7:The Last Worthless Evening
この2曲は、Boysのノスタルジー路線の延長で、
こちらは心がとろけるようにしみてくる曲。
ドンのヴォーカルもBoysかこれがベストじゃないかな。
Tr8:New York Minute
これも3枚目の曲、この落ち着いた雰囲気、
大都会の朝の、都会なりのすがすがしい空気感にあふれる
「隠れた名曲」、当時から大好きです。
Tr12:For My Wedding
4枚目からの曲、
ロック界屈指の「偏屈者」(失礼!)のドンが、
こんなモチーフの曲を歌うなんて・・・
アコースティックの素朴な響きの、きれいな曲です。
DVDなしのCDのみの盤もありますが、
ビデオクリップが話題になったので、ここでは、
DVD付きのものだけのリンクを施しました。
ちょっと胸を締めつけられるような懐かしさ。
それは、当時のことを思い出して懐かしむ、というよりは、
ドンの音楽がそもそも持っている要素でしょう。
ドンの声にはほんと聴き惚れます。
じっくりと、ゆったりと聴き込める音楽ですね。
サビの歌メロはとにかく印象に残るものばかりです。
そして、確固たる自分の音世界がある人ですね。
そうだ、アルバムもまた聴き直すか。
シェリル・クロウもいることだし・・・(笑)・・・
◆
というわけで、突然思いついた「急仕上げ」の記事でしたが、
たまにはこうした感想文っぽい記事もいいかな、と・・・
あ、よくないですか、そうですか・・・
2013年05月21日
SPORTS ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース
01

SPORTS Huey Lewis & The News
スポーツ ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース (1983)
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのNo.1ヒット作であり
1980年代を代表するロックアルバムの1枚である
SPORTSの30周年記念盤が出ました。
本題の前に、最近、「○○周年記念盤」が大流行りですね。
商売っ気があるというか、でも僕は、それに乗せられてしまうのは
悪くない、うれしいというのだから困ったもの(笑)。
CD2枚組
Disc1は通常のアルバムのリマスターでボーナストラックなし。
Disc2は、アルバムと同じ曲を同じ順番で並べたライヴテイク集。
まずはアルバム本編の話から。
このアルバムは、僕が高校生の頃に大ヒット。
僕は輸入盤LPを買うようになっていましたが、輸入盤には
歌詞カードがないものがあり、買うとがっかりすることも多かった。
当時、狸小路のエイトビルにあった小さなレコード店の店長さん、
当時おそらく40歳前後のお兄さんと仲良くなりました。
或る日、このLPが欲しいけれど歌詞カードがあるかどうか分からず
買うのを悩んでいると話したところ、店長さんはビニールの封を切り、
中のレコードが入った紙を引っ張り出し、
「ほら、あった」と僕に見せてくれました。
もちろん僕はその場で買いましたよ、わざわざそこまでしてもらって。
今思うと、店長さんはあることを知っていたのでしょうけど(笑)。
思い出がいっぱいの懐かしい店、店長さん、今はどうしているのかな。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの音楽は、
批判的な意味を込めずに言うつもりですが、
まったくもって普通のロックですよね。
今の若い人が耳にすると、なんでこれが売れたんだろう
と思うかもしれない。
ソウルやR&Bの影響は濃いですね。
タワー・オヴ・パワーも参加していることからも分かるように。
でもやっぱり、ロックの中のロックという感じ。
このアルバムは、なぜか、と現段階では言っておくけど、
音楽通というか玄人筋にも受けがいいですよね。
大ヒットした売れ線アルバムなのに、どうしてだろう。
渋谷陽一氏は自著である新潮文庫のロックガイド本の中で、
「ライヴで鍛え上げた本物のロック」という趣旨のことを書き、
ロック音楽のひとつの理想形であると説いています。
一般的に言えば辛口と目されるピーター・バラカン氏も、
これは好きだと自著で書いています。
なぜだろう。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースは、もはや
産業としかいえないほどに肥大化したロックに抵抗して現れた
パンクが取り戻そうとしていた、ロックの原初の力を、
別のかたちで取り戻した、とみることはできないだろうか。
ロックの原初の力を、パンクという過激で聴く人を選ぶ音楽ではなく、
誰もが聴ける普通のロックで表現して、より広く受け入れられた。
つまり、パンクの心意気を持って普通のロックをやった、
その上売れた、そこに意味があるのではないかと。
実際彼らは、全員ではないけれど、アメリカでデビューする前に
英国に渡り、パンクの動きも肌で感じていた上に、
エルヴィス・コステロのアルバムに参加したのはもはや有名な話。
シン・リジィとも交流があり、フィル・ライノットが亡くなった時に
ヒューイが哀悼の意を表していたりもしました。
しかし、それだけでは通の人には認められないのではないか。
あ、別に僕は、通の人に認められることだけが
いいアルバムだと言いたいわけではないけれど・・・
そもそも僕自身が通の音楽聴きではないし。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースには、
ソウルやブルーズ、R&Bへの確かなリスペクトを感じる。
これでしょう。
つまりそれは、ロックの基本であるということであり、
普通なことをやっていて売れたのだから、このアルバムは
いわば理想的なかたちということなのでしょう。
それは、聴き手にとっても演奏者にとっても。
しかも、そういう音楽はありそうでなかった上に、
そういう音楽が待ち望まれていた、そういう時代だった。
ロックは時代とは切っても切り離せない音楽であることは
今更言うまでもないけれど、これもまさにそう。
そしてもちろん曲がとてもいい、これ大切な要因。
トム・ペティもパンクの後に出てきた人ですが、
一見すると旧来のアメリカ的なロックをやっているようでいて、
気持ちの面ではパンク的な斬新さや前向きさを取り入れた
という点が共通して評価を得ている部分だと思います。
02 今朝の桜その1

Tr1:The Heart Of Rock And Roll
パンクが忘れていたR&Bへのリスペクトを
言葉と音で表し切った名曲。
ただし、僕が初めてこの曲を聴いた時、、
「ちょっと変わった古臭いロックンロールだなあ」
との感想を抱きました。
いわゆる3コードの「ジャーン」というR&Rとは少し違う、
R&Bを速くした結果がロックンロールといった響き。
最後のサビの前に"thi-thi-thi-thi"と詰まりながら言うのは、
レコードの針が飛んだのかと思った(笑)。
Tr2:Heart And Soul
これは彼らの数年前に他のバンドで世に出ていた曲で、
厳密にはカヴァーだけど、それらはあまり有名ではないので、
結果として彼らの曲として認識されているでしょう。
『アメリカン・グラフィティ』風のいかにもアメリカ的なビデオクリップが
印象的だけど、そうだひとつ大事なこと忘れていた、彼らの大ヒットは、
ユーモア感覚あふれるビデオクリップの力も大きいでしょうね。
その点でもやはり時代との幸福な関係を築けたアルバムといえる。
Tr3:Bad Is Bad
この曲もビデオクリップがあることをだいぶ後に知りましたが、
ほんと、何曲作ったんだって(笑)、でもそれが時代でしたね。
古くさいR&Bで、高校生の僕は、こういう曲をやるのはやっぱり
この人たちは本格派と思ったものです。
歌詞の中で"I love you Huey"というのが印象的ですが、
最初は何かの空耳かと思いました。
Tr4:I Want A New Drug
「新しいクスリが欲しい」というけれど、ヒューイはいかにも
クスリをやらないクリーンなイメージにしか見えなくて、
そこに彼らの大きなユーモアを感じる。
しかし同時に、そんな普通の人でもクスリが近くにあり、
クスリが根深く広がるアメリカ社会の病巣を見た気がしました。
彼らにはクスリのイメージがほとんどないのも、
受けがいい部分だったのかな、実際に僕もそこに引かれたし。
初めてMTV番組で観て聴いてノックアウトされ、LPを買う前に、
この曲の12インチピクチャーシングルレコードを買っていたのです。
LPより高かったのに買ったのは、レコードを集めることも
楽しくなった頃だっだし、なによりこの曲がほんとうに好きだから。
後に詳述する後楽園球場のコンサートでは、この曲が始まる前に
クリス・ヘイズのギターソロが入っていましたが、テクニック的に
上手いというよりは(上手いのだろうけど)、音楽の流れとして
素晴らしかったのもいい思い出。
当時のライヴ映像はDVDなどで出てないのかな。
なお、後に、映画のテーマ曲としてNo.1ヒットとなった
Ghostbustersがこの曲のぱくりだとして裁判沙汰になり、
その作者であるレイ・パーカー・ジュニアは負けました。
曲は、サウンドが斬新で、ぱくったと言われたのは主に
ベースラインだと思うけれど(曲自体はそれほど似ていない)、
実は、映画製作者がこの曲を最初はテーマにしたかったのが、
ヒューイ側に断られたため、これに似た曲を作ってほしいと
レイに持ちかけて曲が出来上がったという経緯があるそうです。
ところが、その事実は公表しないという約束を破ったとして、
また別の裁判沙汰にもなったということを最近知りました。
ブラスとの絡みも最高、クールなロックンロールという言葉が
最もよく似合う曲でもあります。
サウンドのスマートさは、アメリカ人でありながらやはり
英国を経験したことが生きている、そんな気もします。
僕の中では80年代を代表する1曲、彼らの最も好きな曲。
03 今朝の桜その2

Tr5:Walking On A Thin Line
ここからLPのB面。
当時はLPをカセットテープに録音して寝る前に聴いていましたが、
途中で寝てしまうことが多かった。
でもこのアルバムは途中で寝たことがあまりなかった記憶があり、
それだけ楽しくて飽きなかったということでしょう。
この曲もシングルカットしましたが、シングルカットした曲は
LPの中で聴いていた時よりもシングルで出た後のほうが
よく聴こえることが多かったけれど、この曲は逆で、
アルバムの中で聴く方が好きでした。
「歩く」と言いつつスキップするような足取りが目に見える、でもそれは
焦っているということかな、とにかくユーモアいっぱいの曲で、
やはり彼らの魅力はユーモアも大きな要素を占めますね。
Tr6:Finally Found A Home
アルバムの中の1曲でもAメロもBメロも歌いやすくて
印象的というのは、いかにいいアルバムであるかの証。
アメリカ人はつくづく"Home"が好きなんだなあ、と。
まあ、僕も大好きですが(笑)、そういう点で気持ちが入りやすい。
Tr7:If This Is It
LPを買うことに決めたのは、この曲がシングルカットされ
ヒットチャートを上がってきたことが直接的なきっかけでした。
それを証拠に、01のLPに"5 Hit Songs"とシールが貼られています。
当時は、日本の帯にあたるシールが貼られた輸入盤LPは、
ビニールを外さずにレコードを出す口だけ切って出していました。
開放的で陽気な夏の海辺でひとり彼女に振られて寂しい男。
ヒューイの演技は演技じゃないけど(笑)、そこが逆に
哀愁を、そしてリアリティを感じてよかったところ。
メンバーが砂浜で顔だけ出して歌っていたり、ジョーズが来たりと
細かな仕掛けがあほらしいけど面白くて、この曲のクリップは
曲のイメージを上手く表しているでしょう。
クリップが「ベストヒットUSA」で流れた翌日の朝のクラスでは
その話で持ちきりで、クリップが面白いのはもちろんだけど
曲がとてもよかったとみんな言っていました。
そうそう今思えば、クラスの中でもコステロが大好きで
売れ線が嫌いだった人ですら、これはいいと言っていたっけ。
歌詞が高校生にも聴き取りやすかったのも親しみを持てた部分。
僕が当時使っていたラジカセはテープのスピードを変えられたのですが、
この曲のイントロのギターは、スピードを少し落として音を拾い、
元に戻して少し音を上げて練習したのもいい思い出。
懐かしいという気持ちを最大限に刺激してくれる曲で、僕の経験では、
この曲をいいと言わなかった人はいない、誰にも愛される名曲。
Tr8:You Crack Me Up
彼らの曲は、オーソドックスなようでひねりがあるようで、
新しい感覚だけどよく聴くと古い、いわば相反する要素を
大きな器で包み込んで自然に聴かせてしまう、というのも魅力。
彼らの曲作りは、ヒューイは歌詞は書くけど曲は書かないという
スタイルで、ということは作曲能力に恵まれたメンバーが
揃っていたということでしょうね。
Tr9:Honky Tonk Blues
最後はハンク・ウィリアムスの曲、とは、かなり後になって知ったこと。
ホンキートンクという言葉を僕が知ったのは、Ob-La-Di, Ob-La-Daの
ピアノがホンキートンクのチューニングだと本で読んだことでしたが、
それは曲自体がホンキートンクではないと思われ。
ローリング・ストーンズにHonky Tonk Womanという曲があることは
当時は文字情報としては知っていたけれど、当時はまだ
ストーンズは過去のアルバムは聴いていなかった。
だから、僕が初めて聴いたホンキートンクはこの曲でした。
まあ、1曲聴いただけで分かったとは言わないけれど、
なるほどこういう感じなのかとは思ったものです。
カントリーですね、そしてこれは。
ソウルやブルーズとともに、カントリーの心も忘れていないのも、
広く受け入れられたところでしょうね。
サビで2回ほど1小節が6拍になる変拍子が印象的だけど、
それをさらりと演奏してしまうのはやっぱりいいバンドなのでしょう。
アルバムは楽しい雰囲気で終わります。
04 ハウと桜

さて、後半は30周年記念盤のDisc2について。
Disc2は、先述の通り、オリジナルアルバムと同じ曲を
同じ順番で並べたライヴテイクを集めたもの。
音源は、この前後の1983年から1曲、
次のアルバム前後のツアーと思われる1986年から1988年が5曲、
さらにその次のアルバムのツアーからの1989年が1曲、
そして最後の2曲は昨年録音されていて、つまり、実際には
このアルバムより後のツアーから音源が多くとられています。
何曲かについて順不同で触れます。
Tr3:Bad Is Bad
これが1987年の音源であるのが僕にとっては特別な思い。
大学1年で東京に出た年、初めて行った洋楽のコンサートが、
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースが、前座に
ブルース・ホーンズビー&ザ・レインジを従えたコンサートでした。
これに続いて大ヒットしたアルバムFORE!に伴うツアー、
場所は後楽園球場。
3塁側のかなり上の方の席でしたが、初めてのコンサートで
感慨深いものがあり、今でも大切な思い出として残っています。
この曲も演奏した記憶がありますが、ああ、アメリカだなあ、と、
まだ二十歳だった僕はよく分からない感想を抱きました(笑)。
他も、86年から88年の音源は同じ時代のツアーでしょうね。
バンドとして最も勢いがあり、演奏にも脂がのり切っていた時期、
音楽として素晴らしい上に、思い出にも華を添えてくれました。
しかしそれにしても、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースでよく
後楽園に客が集まったなあと(確か8割以上は入っていたと思う)、
今にして思わなくもないですね。
Tr1:The Heart Of Rock & Roll
これは1988年に録音されたものですが、
クリーヴランドで録音されたテイクを使っているのはわざとかな。
というのも、歌詞の"in Cleeveland"というくだりが印象的だから。
まあでもそれを言うなら、これはアメリカの地名を羅列して
歌っているのでどこでもいいのかもしれないけれど、でもやっぱり、
"in Cleeveland"のところは羅列ではないので印象に残りやすい。
後楽園球場のコンサートでは、"Detroit!"とシャウトするところを
"Tokio!"に変えていて会場が盛り上がり、僕もうれしかった。
このライヴテイクでもうひとつ時代を感じて興味深いのが、
2ndのヴァースでオリジナルでは"hard rock music"というところを
"heavy metal music"と歌詞を変えて歌っていること。
このライヴが録音された1988年は、ヘヴィメタルが大ブームで
チャート上でも席巻していた頃でしたからね。
Tr4:I Want A New Drug
これは1989年だから、SMALL WORLDのツアーからでしょうか。
イントロが長くなり、Purple Hazeのギターイントロを織り込んだりと、
レコードとはいちばん印象が違うテイクですが、コンサートでも
前述のように前も後ろも長くて、ライヴで映える曲ということでしょう。
Tr9:Honky Tonk Blues
レコードよりもカントリーっぽさが増しています。
今回のライヴを聴いて強く思ったこと。
僕は、ライヴ盤として聴くものの場合、できるなら
オリジナルレコードと同じ音を出してほしいと思う人間です。
ボブ・ディランみたいに毎回アレンジが違うというのは、
コンサートの「体験」としては楽しいけれど、レコードとして聴く場合は、
自分の好きなツボにはなかなかはまりにくいものがあります。
ポール・マッカートニー&ウィングスのMy Loveのように、
ごくたまに、ライヴのほうが好きな曲もありますが。
ただし最近は、そういうライヴ盤も面白いと思うことは増えました。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースは、コンサートに行った時も、
ギターソロや歌詞の細かい部分を除いては、レコードになるべく
忠実に演奏していて、コンサートが初めてだった僕は、
だから余計に感動した覚えがあります。
確かヒューイ自身も、コンサートに来る人はレコードの音を
期待するだろうからなるべく同じに演奏したいと考えていると、
何かのインタビューで読んだこともあります。
彼らの音楽は、数多のライヴで鍛えながら得られたことを
レコードにしている「だけ」なので、レコードとライヴが同じなのは
当たり前といえば当たり前のことでしょう。
でもやっぱり、30周年記念盤のライヴを聴いて
その姿勢がありがたいと思いました。
元々好きなアルバムだけど、このDisc2のライヴで
新たな魅力を発見したようで、暫くは聴いてゆくことになるかな。
国内盤も出るんですね。
そうだよ出るはずだよ。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース、今秋来日公演決定!
まさにこのSPORTS30周年を記念して、
東京と大阪で各1夜限りのコンサートが決まりました。
■ 東京公演
2013年10月7日(月) 渋谷公会堂 19:00
■ 大阪公演
2013年10月10日(木) メルパルクホール大阪 19:00
行きたい、これは行きたい!
でも、10月は忙しいからなあ、平日だし・・・
もし近くになってまだチケットがあり、予定がなんとかなれば行くぞ、
と、諦めずに希望を持って生きてゆくことに決めました(笑)。
これは1980年代を代表するロックアルバムの1枚ですね。
当時、あのTHRILLERの頃に、本格的ロック側の代表として
応援されていたこともあり、パンクの後の動きも落ち着いた頃、
時代に恵まれた、時代ならではの幸せな大ヒット作といえるでしょう。
実際、聴いていると、ついついどこか楽しい気分にさせられていまう、
楽観的、前向きというか。
しかも、リリースからそろそろ30年という今聴いても色あせていない。
それはきっと、逆に80年代軽薄サウンドにこびなかったからでしょうね。
懐かしさとともに、心がますます前に向かって行く、
そんな気分にさせられる大切なアルバムです。
05

今日はポーラもいます、ご安心ください(笑)。

SPORTS Huey Lewis & The News
スポーツ ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース (1983)
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのNo.1ヒット作であり
1980年代を代表するロックアルバムの1枚である
SPORTSの30周年記念盤が出ました。
本題の前に、最近、「○○周年記念盤」が大流行りですね。
商売っ気があるというか、でも僕は、それに乗せられてしまうのは
悪くない、うれしいというのだから困ったもの(笑)。
CD2枚組
Disc1は通常のアルバムのリマスターでボーナストラックなし。
Disc2は、アルバムと同じ曲を同じ順番で並べたライヴテイク集。
まずはアルバム本編の話から。
このアルバムは、僕が高校生の頃に大ヒット。
僕は輸入盤LPを買うようになっていましたが、輸入盤には
歌詞カードがないものがあり、買うとがっかりすることも多かった。
当時、狸小路のエイトビルにあった小さなレコード店の店長さん、
当時おそらく40歳前後のお兄さんと仲良くなりました。
或る日、このLPが欲しいけれど歌詞カードがあるかどうか分からず
買うのを悩んでいると話したところ、店長さんはビニールの封を切り、
中のレコードが入った紙を引っ張り出し、
「ほら、あった」と僕に見せてくれました。
もちろん僕はその場で買いましたよ、わざわざそこまでしてもらって。
今思うと、店長さんはあることを知っていたのでしょうけど(笑)。
思い出がいっぱいの懐かしい店、店長さん、今はどうしているのかな。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの音楽は、
批判的な意味を込めずに言うつもりですが、
まったくもって普通のロックですよね。
今の若い人が耳にすると、なんでこれが売れたんだろう
と思うかもしれない。
ソウルやR&Bの影響は濃いですね。
タワー・オヴ・パワーも参加していることからも分かるように。
でもやっぱり、ロックの中のロックという感じ。
このアルバムは、なぜか、と現段階では言っておくけど、
音楽通というか玄人筋にも受けがいいですよね。
大ヒットした売れ線アルバムなのに、どうしてだろう。
渋谷陽一氏は自著である新潮文庫のロックガイド本の中で、
「ライヴで鍛え上げた本物のロック」という趣旨のことを書き、
ロック音楽のひとつの理想形であると説いています。
一般的に言えば辛口と目されるピーター・バラカン氏も、
これは好きだと自著で書いています。
なぜだろう。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースは、もはや
産業としかいえないほどに肥大化したロックに抵抗して現れた
パンクが取り戻そうとしていた、ロックの原初の力を、
別のかたちで取り戻した、とみることはできないだろうか。
ロックの原初の力を、パンクという過激で聴く人を選ぶ音楽ではなく、
誰もが聴ける普通のロックで表現して、より広く受け入れられた。
つまり、パンクの心意気を持って普通のロックをやった、
その上売れた、そこに意味があるのではないかと。
実際彼らは、全員ではないけれど、アメリカでデビューする前に
英国に渡り、パンクの動きも肌で感じていた上に、
エルヴィス・コステロのアルバムに参加したのはもはや有名な話。
シン・リジィとも交流があり、フィル・ライノットが亡くなった時に
ヒューイが哀悼の意を表していたりもしました。
しかし、それだけでは通の人には認められないのではないか。
あ、別に僕は、通の人に認められることだけが
いいアルバムだと言いたいわけではないけれど・・・
そもそも僕自身が通の音楽聴きではないし。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースには、
ソウルやブルーズ、R&Bへの確かなリスペクトを感じる。
これでしょう。
つまりそれは、ロックの基本であるということであり、
普通なことをやっていて売れたのだから、このアルバムは
いわば理想的なかたちということなのでしょう。
それは、聴き手にとっても演奏者にとっても。
しかも、そういう音楽はありそうでなかった上に、
そういう音楽が待ち望まれていた、そういう時代だった。
ロックは時代とは切っても切り離せない音楽であることは
今更言うまでもないけれど、これもまさにそう。
そしてもちろん曲がとてもいい、これ大切な要因。
トム・ペティもパンクの後に出てきた人ですが、
一見すると旧来のアメリカ的なロックをやっているようでいて、
気持ちの面ではパンク的な斬新さや前向きさを取り入れた
という点が共通して評価を得ている部分だと思います。
02 今朝の桜その1

Tr1:The Heart Of Rock And Roll
パンクが忘れていたR&Bへのリスペクトを
言葉と音で表し切った名曲。
ただし、僕が初めてこの曲を聴いた時、、
「ちょっと変わった古臭いロックンロールだなあ」
との感想を抱きました。
いわゆる3コードの「ジャーン」というR&Rとは少し違う、
R&Bを速くした結果がロックンロールといった響き。
最後のサビの前に"thi-thi-thi-thi"と詰まりながら言うのは、
レコードの針が飛んだのかと思った(笑)。
Tr2:Heart And Soul
これは彼らの数年前に他のバンドで世に出ていた曲で、
厳密にはカヴァーだけど、それらはあまり有名ではないので、
結果として彼らの曲として認識されているでしょう。
『アメリカン・グラフィティ』風のいかにもアメリカ的なビデオクリップが
印象的だけど、そうだひとつ大事なこと忘れていた、彼らの大ヒットは、
ユーモア感覚あふれるビデオクリップの力も大きいでしょうね。
その点でもやはり時代との幸福な関係を築けたアルバムといえる。
Tr3:Bad Is Bad
この曲もビデオクリップがあることをだいぶ後に知りましたが、
ほんと、何曲作ったんだって(笑)、でもそれが時代でしたね。
古くさいR&Bで、高校生の僕は、こういう曲をやるのはやっぱり
この人たちは本格派と思ったものです。
歌詞の中で"I love you Huey"というのが印象的ですが、
最初は何かの空耳かと思いました。
Tr4:I Want A New Drug
「新しいクスリが欲しい」というけれど、ヒューイはいかにも
クスリをやらないクリーンなイメージにしか見えなくて、
そこに彼らの大きなユーモアを感じる。
しかし同時に、そんな普通の人でもクスリが近くにあり、
クスリが根深く広がるアメリカ社会の病巣を見た気がしました。
彼らにはクスリのイメージがほとんどないのも、
受けがいい部分だったのかな、実際に僕もそこに引かれたし。
初めてMTV番組で観て聴いてノックアウトされ、LPを買う前に、
この曲の12インチピクチャーシングルレコードを買っていたのです。
LPより高かったのに買ったのは、レコードを集めることも
楽しくなった頃だっだし、なによりこの曲がほんとうに好きだから。
後に詳述する後楽園球場のコンサートでは、この曲が始まる前に
クリス・ヘイズのギターソロが入っていましたが、テクニック的に
上手いというよりは(上手いのだろうけど)、音楽の流れとして
素晴らしかったのもいい思い出。
当時のライヴ映像はDVDなどで出てないのかな。
なお、後に、映画のテーマ曲としてNo.1ヒットとなった
Ghostbustersがこの曲のぱくりだとして裁判沙汰になり、
その作者であるレイ・パーカー・ジュニアは負けました。
曲は、サウンドが斬新で、ぱくったと言われたのは主に
ベースラインだと思うけれど(曲自体はそれほど似ていない)、
実は、映画製作者がこの曲を最初はテーマにしたかったのが、
ヒューイ側に断られたため、これに似た曲を作ってほしいと
レイに持ちかけて曲が出来上がったという経緯があるそうです。
ところが、その事実は公表しないという約束を破ったとして、
また別の裁判沙汰にもなったということを最近知りました。
ブラスとの絡みも最高、クールなロックンロールという言葉が
最もよく似合う曲でもあります。
サウンドのスマートさは、アメリカ人でありながらやはり
英国を経験したことが生きている、そんな気もします。
僕の中では80年代を代表する1曲、彼らの最も好きな曲。
03 今朝の桜その2

Tr5:Walking On A Thin Line
ここからLPのB面。
当時はLPをカセットテープに録音して寝る前に聴いていましたが、
途中で寝てしまうことが多かった。
でもこのアルバムは途中で寝たことがあまりなかった記憶があり、
それだけ楽しくて飽きなかったということでしょう。
この曲もシングルカットしましたが、シングルカットした曲は
LPの中で聴いていた時よりもシングルで出た後のほうが
よく聴こえることが多かったけれど、この曲は逆で、
アルバムの中で聴く方が好きでした。
「歩く」と言いつつスキップするような足取りが目に見える、でもそれは
焦っているということかな、とにかくユーモアいっぱいの曲で、
やはり彼らの魅力はユーモアも大きな要素を占めますね。
Tr6:Finally Found A Home
アルバムの中の1曲でもAメロもBメロも歌いやすくて
印象的というのは、いかにいいアルバムであるかの証。
アメリカ人はつくづく"Home"が好きなんだなあ、と。
まあ、僕も大好きですが(笑)、そういう点で気持ちが入りやすい。
Tr7:If This Is It
LPを買うことに決めたのは、この曲がシングルカットされ
ヒットチャートを上がってきたことが直接的なきっかけでした。
それを証拠に、01のLPに"5 Hit Songs"とシールが貼られています。
当時は、日本の帯にあたるシールが貼られた輸入盤LPは、
ビニールを外さずにレコードを出す口だけ切って出していました。
開放的で陽気な夏の海辺でひとり彼女に振られて寂しい男。
ヒューイの演技は演技じゃないけど(笑)、そこが逆に
哀愁を、そしてリアリティを感じてよかったところ。
メンバーが砂浜で顔だけ出して歌っていたり、ジョーズが来たりと
細かな仕掛けがあほらしいけど面白くて、この曲のクリップは
曲のイメージを上手く表しているでしょう。
クリップが「ベストヒットUSA」で流れた翌日の朝のクラスでは
その話で持ちきりで、クリップが面白いのはもちろんだけど
曲がとてもよかったとみんな言っていました。
そうそう今思えば、クラスの中でもコステロが大好きで
売れ線が嫌いだった人ですら、これはいいと言っていたっけ。
歌詞が高校生にも聴き取りやすかったのも親しみを持てた部分。
僕が当時使っていたラジカセはテープのスピードを変えられたのですが、
この曲のイントロのギターは、スピードを少し落として音を拾い、
元に戻して少し音を上げて練習したのもいい思い出。
懐かしいという気持ちを最大限に刺激してくれる曲で、僕の経験では、
この曲をいいと言わなかった人はいない、誰にも愛される名曲。
Tr8:You Crack Me Up
彼らの曲は、オーソドックスなようでひねりがあるようで、
新しい感覚だけどよく聴くと古い、いわば相反する要素を
大きな器で包み込んで自然に聴かせてしまう、というのも魅力。
彼らの曲作りは、ヒューイは歌詞は書くけど曲は書かないという
スタイルで、ということは作曲能力に恵まれたメンバーが
揃っていたということでしょうね。
Tr9:Honky Tonk Blues
最後はハンク・ウィリアムスの曲、とは、かなり後になって知ったこと。
ホンキートンクという言葉を僕が知ったのは、Ob-La-Di, Ob-La-Daの
ピアノがホンキートンクのチューニングだと本で読んだことでしたが、
それは曲自体がホンキートンクではないと思われ。
ローリング・ストーンズにHonky Tonk Womanという曲があることは
当時は文字情報としては知っていたけれど、当時はまだ
ストーンズは過去のアルバムは聴いていなかった。
だから、僕が初めて聴いたホンキートンクはこの曲でした。
まあ、1曲聴いただけで分かったとは言わないけれど、
なるほどこういう感じなのかとは思ったものです。
カントリーですね、そしてこれは。
ソウルやブルーズとともに、カントリーの心も忘れていないのも、
広く受け入れられたところでしょうね。
サビで2回ほど1小節が6拍になる変拍子が印象的だけど、
それをさらりと演奏してしまうのはやっぱりいいバンドなのでしょう。
アルバムは楽しい雰囲気で終わります。
04 ハウと桜

さて、後半は30周年記念盤のDisc2について。
Disc2は、先述の通り、オリジナルアルバムと同じ曲を
同じ順番で並べたライヴテイクを集めたもの。
音源は、この前後の1983年から1曲、
次のアルバム前後のツアーと思われる1986年から1988年が5曲、
さらにその次のアルバムのツアーからの1989年が1曲、
そして最後の2曲は昨年録音されていて、つまり、実際には
このアルバムより後のツアーから音源が多くとられています。
何曲かについて順不同で触れます。
Tr3:Bad Is Bad
これが1987年の音源であるのが僕にとっては特別な思い。
大学1年で東京に出た年、初めて行った洋楽のコンサートが、
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースが、前座に
ブルース・ホーンズビー&ザ・レインジを従えたコンサートでした。
これに続いて大ヒットしたアルバムFORE!に伴うツアー、
場所は後楽園球場。
3塁側のかなり上の方の席でしたが、初めてのコンサートで
感慨深いものがあり、今でも大切な思い出として残っています。
この曲も演奏した記憶がありますが、ああ、アメリカだなあ、と、
まだ二十歳だった僕はよく分からない感想を抱きました(笑)。
他も、86年から88年の音源は同じ時代のツアーでしょうね。
バンドとして最も勢いがあり、演奏にも脂がのり切っていた時期、
音楽として素晴らしい上に、思い出にも華を添えてくれました。
しかしそれにしても、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースでよく
後楽園に客が集まったなあと(確か8割以上は入っていたと思う)、
今にして思わなくもないですね。
Tr1:The Heart Of Rock & Roll
これは1988年に録音されたものですが、
クリーヴランドで録音されたテイクを使っているのはわざとかな。
というのも、歌詞の"in Cleeveland"というくだりが印象的だから。
まあでもそれを言うなら、これはアメリカの地名を羅列して
歌っているのでどこでもいいのかもしれないけれど、でもやっぱり、
"in Cleeveland"のところは羅列ではないので印象に残りやすい。
後楽園球場のコンサートでは、"Detroit!"とシャウトするところを
"Tokio!"に変えていて会場が盛り上がり、僕もうれしかった。
このライヴテイクでもうひとつ時代を感じて興味深いのが、
2ndのヴァースでオリジナルでは"hard rock music"というところを
"heavy metal music"と歌詞を変えて歌っていること。
このライヴが録音された1988年は、ヘヴィメタルが大ブームで
チャート上でも席巻していた頃でしたからね。
Tr4:I Want A New Drug
これは1989年だから、SMALL WORLDのツアーからでしょうか。
イントロが長くなり、Purple Hazeのギターイントロを織り込んだりと、
レコードとはいちばん印象が違うテイクですが、コンサートでも
前述のように前も後ろも長くて、ライヴで映える曲ということでしょう。
Tr9:Honky Tonk Blues
レコードよりもカントリーっぽさが増しています。
今回のライヴを聴いて強く思ったこと。
僕は、ライヴ盤として聴くものの場合、できるなら
オリジナルレコードと同じ音を出してほしいと思う人間です。
ボブ・ディランみたいに毎回アレンジが違うというのは、
コンサートの「体験」としては楽しいけれど、レコードとして聴く場合は、
自分の好きなツボにはなかなかはまりにくいものがあります。
ポール・マッカートニー&ウィングスのMy Loveのように、
ごくたまに、ライヴのほうが好きな曲もありますが。
ただし最近は、そういうライヴ盤も面白いと思うことは増えました。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースは、コンサートに行った時も、
ギターソロや歌詞の細かい部分を除いては、レコードになるべく
忠実に演奏していて、コンサートが初めてだった僕は、
だから余計に感動した覚えがあります。
確かヒューイ自身も、コンサートに来る人はレコードの音を
期待するだろうからなるべく同じに演奏したいと考えていると、
何かのインタビューで読んだこともあります。
彼らの音楽は、数多のライヴで鍛えながら得られたことを
レコードにしている「だけ」なので、レコードとライヴが同じなのは
当たり前といえば当たり前のことでしょう。
でもやっぱり、30周年記念盤のライヴを聴いて
その姿勢がありがたいと思いました。
元々好きなアルバムだけど、このDisc2のライヴで
新たな魅力を発見したようで、暫くは聴いてゆくことになるかな。
国内盤も出るんですね。
そうだよ出るはずだよ。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース、今秋来日公演決定!
まさにこのSPORTS30周年を記念して、
東京と大阪で各1夜限りのコンサートが決まりました。
■ 東京公演
2013年10月7日(月) 渋谷公会堂 19:00
■ 大阪公演
2013年10月10日(木) メルパルクホール大阪 19:00
行きたい、これは行きたい!
でも、10月は忙しいからなあ、平日だし・・・
もし近くになってまだチケットがあり、予定がなんとかなれば行くぞ、
と、諦めずに希望を持って生きてゆくことに決めました(笑)。
これは1980年代を代表するロックアルバムの1枚ですね。
当時、あのTHRILLERの頃に、本格的ロック側の代表として
応援されていたこともあり、パンクの後の動きも落ち着いた頃、
時代に恵まれた、時代ならではの幸せな大ヒット作といえるでしょう。
実際、聴いていると、ついついどこか楽しい気分にさせられていまう、
楽観的、前向きというか。
しかも、リリースからそろそろ30年という今聴いても色あせていない。
それはきっと、逆に80年代軽薄サウンドにこびなかったからでしょうね。
懐かしさとともに、心がますます前に向かって行く、
そんな気分にさせられる大切なアルバムです。
05

今日はポーラもいます、ご安心ください(笑)。
2013年01月26日
ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス
01

ARE YOU EXPERIENCED?
The Jimi Hendrix Experience
アー・ユー・エクスペリエンスト?
ジミ・ヘンドリックス (1967)
僕は「自然と音楽を愛する者」のBLOGを7年やっていますが、
ジミ・ヘンドリックスを記事にするのは今回が初めて。
曲やジャケットについては触れたことはありますが。
なぜ今かと言われれば、誕生日でも命日でもないし、
ただ単に、一昨日、CDの棚で目が合ったからです(笑)。
ジミ・ヘンドリックス、日本でいうジミヘン。
さて、何を語ればいいのだろう(笑)。
僕は、洗礼を受けた、とまではいかなかったかな。
初めて見たのは、高2の時、「ベスト・ヒットUSA」で見た
Johnny B. Goodeのライヴ映像でした。
それまでに、かつてものすごいギタリストがいたことは
聞いていましたが、それがこの人か、と。
最初に驚いたのは、チャック・ベリーのあまりにも有名な曲を
歌っていたことでした(その曲はもう知っていました)。
当時はビデオデッキを買って録画して観るようになっていたので、
その映像も何度も何度も見ました。
そしてすぐにLPを買おうと思い、タワーレコードに行って、
アメリカ国歌とヴァン・モリソンのGloriaが入った編集盤LPを買いました。
その後すぐに、Are You Experienced?のビデオクリップが
流れるようになり、それも録画してよく観て聴いていました。
ここまでは、まあ、一応は普通に熱中しました。
でも、洗礼を受けた、とまではいえないのにはわけが。
僕は、高2の頃は既に自分はギターが下手であると認識していて、
こんな僕がジミに憧れるなんておこがましい、と思うに至り、
そうなると、心が近づけなくなったような気もします。
要は、ジミみたいに弾けるはずがない、と思ってしまった。
でも、好きかどうかでいえば、好き、間違いなく。
ジミ・ヘンドリックスは、ロックを聴く人であれば必ず、
一度は聴いてみるものだと思います。
そうじゃない人は「ロック」が好きなわけではないし、それに
あれだけの人に興味が湧かないというのは理解ができない、
というのがあくまでも僕の見解、ロックを聴く人という意味での。
ただ、好きかどうかとなると、聴けない人は聴けないかな。
ジミ・ヘンドリックスは、音楽に個人が反映され過ぎていて、
ポップソングとしてはささくれ立ち過ぎています。
僕も本来はポップソング人間であり音楽がよければ人は関係ない、
個人をさらけ出す音楽は本来は苦手という立場の人間ですが、でも、
ジミ・ヘンドリックスについては逆にそこに最初から引かれました。
僕が洋楽を聴き始めた時は既に伝説の人だったから、
そうなるのはむしろ自然のことではないかと。
要は、引かれるか、受け付けられないか、どちらかの人。
ジミ・ヘンドリックスがポップスではないことについてもう少し話すと、
曲のとっつきにくさがその要因として挙げられるでしょう。
彼の曲にはまったくもって独特のセンスがあります。
センスというか、そもそも、「作曲」という概念が普通の人とは違う。
ギターを弾いて頭に浮かんだことに旋律のようなものをつけて口から
発しているといった感じで、曲を作ろうという意気込みは感じない。
だから旋律があまり明確には感じられないし、実際に、
特にヴァースの部分では喋りに近いものがあるけれど、
ではラップかというとそれは違う、明らかに歌おうとはしている。
曲を作るのに、歌詞を書いて曲を書いて(同時のこともあるけれど)、
といった流れで臨むのではなく、ジャムセッションの流れと考えると
彼の曲の在り方は大いに納得ができるのですが、そのせいで
歌メロが流麗で歌っていて気持ちいいという感じでもない。
演奏、アレンジ、流れなど曲全体として聴く音楽であって、
歌だけが印象に残るということはあまりない、それが彼の音楽。
だから聴けない人は聴けないし、だから、ギターを弾かない人には
あまり訴えるものが大きくないのかもしれない。
かもしれない、というのは、僕はジミ・ヘンドリックスを知ったのは
ギターを弾くようになった後であり、想像するしかないからです。
ジミ・ヘンドリックスの曲でもうひとつの「問題」は、彼の曲には
フラストレーションを表しているものが多いことでしょう。
常に自分自身と格闘しもがき続ける姿が、音楽を通して
リアルに感じられてしまうところが、あくまでも聴いて楽しくなりたい、
夢を持ちたい音楽であるポップスとしてみれば減点対象といえます。
実際、僕の友だちにもそれがだめという人がいるし。
逆をいえば、そこがロックたるところでもあるのですが。
ジミのギターも、普通の概念でいえば、「演奏」ではないですね。
ギターは彼の体の一部とはよく言われることですが、例えば
スケールを覚えてこうすればこういう音が出るというものではなく、
多くの人が自然と歌を歌うことができるように、ギターに触るだけで
思いが音程として出てくるという、もはや「感覚」なのでしょう。
一方で向上心が強く、もっと上手く演奏したい、というよりも
自分が思った通りの音を出したいという思いを常に抱えていて、
他の人が称賛しても自分では決して納得できなかった。
彼の曲がフラストレーションを表しているのは、歌というよりは
ギターへの思いが歌にも反映されていると考えると自然です。
しかし、そんなジミ・ヘンドリックスの曲をよく聴くと、
彼が意外とロマンティストでであることを感じます。
意外と、というのは、ともすればハードロックともいえるハードな
音から繰り出されるにしては、というくらいの意味ですが、
でも、常にもがき続けている彼の姿勢の基本には、
ロマンティックでセンチメンタルな心があるのでしょうね。
だから、例えばデレク&ザ・ドミノズのLittle Wingのように、
カヴァーする人によってはそこが強調されて聴こえてきて、
えっ、これがジミヘンの曲なの、と思うこともあります。
(ドミノズのヴォーカルは言わずと知れたエリック・クラプトン)。
ジミ・ヘンドリックスに慣れていない人は、そこが
受け入れられないのかもしれない、ミスマッチ感覚というか。
しかし、聴き込んで慣れてゆけば、そこに人間味を強く感じます。
そうですね、「伝説」だから、あまり聴かない人にとっては
「人間味」が響いてこないのかもしれない。
ロックミュージシャンが「伝説」になるのも良し悪しですね。
「伝説」になる前は、ただの(ちっぽけな)人間だったはずなのに。
今回は、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの
最初のLPを基にしたこのCDを聴いてゆきます。
当時はシングルが主流、LPああくまでもシングルの曲を集めただけ、
アルバムとしてどうのこうのという段階にはまだ至っていないけれど、
でも、音楽が持つ力にただただ圧倒されて聴き通すアルバムです。
LPでは11曲入りでしたが、CDでは6曲のボーナストラックが入って、
今ではこのスタイルで定着しています。
ただ、LP当時からアメリカとカナダではジャケットと曲順が違っていて、
それがCDの今でも踏襲されていますが、あくまでもこれは
曲の寄せ集めだから、どちらもあまり印象が変わりません。
アルバム至上主義の僕として、これは珍しい例ですね(笑)。
なお、ベースはノエル・レディング、ドラムスはミッチ・ミッチェル。
ミッチは後にジョン・レノンのインスタントバンドでも演奏したことで
僕には身近な、そして特に好きなドラマーのひとり。
02 今日のポーラ

Tr1:Foxy Lady
これはブルーズだよなあ。
いや違うのかな、と、若い頃は意味もなく悩んでいた曲。
この曲はヴァースが喋りでサビの歌メロが印象的な典型でしょう。
いきなりギターのフィードバックでフェイドインしてくるのがなんだかすごい。
ところでその昔、王様の「日本語ロック」でこれを取り上げられていて、
「狐っぽい女」というタイトルに大笑い。
「っぽい」というのがポイント高いですよね(笑)。
Tr2:Manic Depression
この曲にはちょっとした思い出が。
1990年代前半、F1が盛り上がりフジテレビで放送していた頃、
僕はレース本番はもちろん予選やまとめの番組も見ていました。
いつかは忘れたけれど、この曲がその番組で使われていて、
セナのマクラーレンがコーナリングするシーンが印象的でした。
曲名は「躁鬱病」という意味ですが、確か、その時は、
マクラーレンが予選でタイムがあまり上がらず葛藤していた
そんなことでこの曲が使われたのだと思いました。
「躁鬱」というだけあって重たいけれどのりがいい明るいワルツ。
Tr3:Red House
これは、完全なブルーズだよなあ・・・
もしかして僕はジミ・ヘンドリックスでブルーズを知ったのかな。
実はレッド・ツェッペリンより先にLPを買って聴いていました。
なんて書くとブルーズ好きの人には怒られるのか・・・
この曲は、ストラトキャスター50周年を記念したコンサート
「ストラト・パック」(記事こちら)でゲイリー・ムーアが演奏し
まさに度肝を抜く演奏に圧倒されましたね。
Tr4:Can You See Me
まるで庖丁のように細かく切り刻むようなリズム。
曲は軽快だけど重たいものをひきずる、ジミらしい曲。
Tr5:Love Or Confusion
ジミはこのような呪術的な曲がよくありますね。
ギターがおまじないのようにずっと高音で鳴っている。
アンダーグラウンドな響きというか、恐い人は恐いと思う。
Tr6:I Don't Live Today
葛藤の中で生きているとこんなことを感じるのでしょうね。
もっとしっかりと生きたいけれど、気持ちが弱い人だったのかな。
まあ、そうじゃなければクスリに逃れることもなかったのかも・・・
音が下降するギターリフもカッコいいけれど、まるでノイズのように
歌のバックというか頭の上でなるギターの音が革新的で、
後の、いや既に当時からその影響が大きかったことを感じます。
Tr7:May This Be Love
この曲はサイケデリック。
もわっとした雰囲気、まさにもやに包まれたような。
Tr8:Fire
これはコード進行丸見えのロックンロール。
僕はそういうロックンロールにはめっぽう弱くて、すぐに虜に。
もし僕がバンドをやるなら、この曲は演奏したいですね。
まあ、ギターソロはごまかしますが・・・(笑)・・・
それとサビの歌メロはコーラスが歌うというアイディアがいいけれど、
そこはやっぱり自分で歌うことになるのだろうか。
ギターのリフをはじめ低音弦がめまぐるしく動き回るのが、
僕が特に引かれる部分で、特にサビのギターのバッキングがいい。
その上歌メロもよくてジミヘンの曲ではよく口ずさむ曲。
間奏のギターソロに入る前にちょっとしたパッセージが設けられていて、
そこに入る前に"Let Jimi take over"と自分の名前を言ってから
ソロが始まるのが、今聴いても背筋がぞくぞくするほどカッコいい。
ミッチのドラムスがまさに炸裂、ノエルのベースもまさに唸り。
とにかくすべてがいい、僕が最も好きなジミの曲。
Tr9:Third Stone From The Sun
語りは入るけれどインストゥロメンタルといえる曲で、
ジャムセッションではないけれど、ジミとミッチとノエルの
バンドとしての力量を感じることができます。
そしてジミはここで自らのギターサウンドを確立させたといっていい、
縦横無尽にギターを、楽器以上の感覚器として鳴らしています。
さらに注目はジャズっぽいリズムであることで、そういえば
ブラック・サバスもデビュー前はジャズっぽいことをやっていたし、
ジェスロ・タルもジャズの要素が感じられるというように、
当時の英国はブルーズとジャズの間を狙った感覚が
普通だったのかもしれないですね。
Tr10:Remember
この曲は割と普通のポップソングっぽいところがあって、
ジミも普通に歌おうとしているようなところを感じるんだけど、
でもやっぱり、歌メロが際立つというほどでもないのかな。
なんというのか、音符がとっ散らかった感じがしないでもない。
これはソウル系の歌手が歌メロを再構築して歌えば、
歌としていい曲に仕上がるのではないかと思います。
ただ、ジミのロマンティストぶりが感じられる曲ではありますが。
フェイドアウトで急に終わるのがなんとなく不自然で、この辺は
アルバムとしてしっかりと作ろうとはしていない部分かな。
Tr11:Are You Experienced?
この曲のビデオクリップは高校時代から流れるようになりましたが、
なんだろう、とにかく若い人に向けてジミの魅力を伝えようという
意図のもとに作られたものだと思います。
ジミの映像の(多分)16mmのフィルムが、リールに巻かれ、
箱に収められて倉庫に眠っていたところ、フィルムが突然目覚め、
伸び始めて自分で箱をあけて再生機にセットされて再生される、
という凝ったビデオクリップでしたが、そこから流れるジミの映像は、
ステージでギターを燃やす有名な映像もあるし、ジミが演奏中に
まるでヘビのように舌をペロペロ出したり、それはもうすごい。
ギターを壊すシーンもあったと思う、暫く観ていないけれど、
うちにあるなら久しぶりに見てみようかな。
曲が終わるとフィルムがまた自分で箱の中に戻っていき、
掃除のおじさん(おばちゃんだったか?)に気づかれなかったという
落ちまでついた面白い映像でした。
曲も、初めて聴いたのは高校2年の頃でまだそれほどたくさんの
音楽を聴いていたわけではなかったけれど、こんな曲があるの、
と固定概念を覆され、やはり驚きました。
冷静にギターを持って聴くと、コード進行がとても変わっているとか
そういうことはないんだけど、曲を包み込むサウンド、歌が
ここでしか聴けない独特の雰囲気を作り上げています。
まさに「体験したことあんのか?」という曲ですね。
03 紫の

Tr12:Hey Joe
ここからがCDのボーナストラック扱い。
だけど、今はもうそう思わなくなっていますね。
アルバムではこの曲のみ他人の曲で、1960年に発表された
アメリカのビリー・ロバーツの手になるもの。
でも、ロック世代の人にはジミヘンの曲として膾炙しているでしょう。
もちろん僕もジミが最初の上に、オリジナルはまだ聴いたことがない。
この曲はC→G→D→A→Eというコードでずっと進んでいくのが、
高校時代にギターでコードを当ててみて分かったのですが、
何か不思議なコード進行だなと思いました。
だからこれは永遠に続くループ音楽のようにもに感じます。
Tr13:Stone Free
この曲はジミの中では異様ともいえるくらいストレイトな曲で、
ジミ・ヘンドリックスはいくら特異で唯一無二の存在だとしても、
やはり60年代英国ロック勢のひとりだったんだと感じられる曲。
(ジミはアメリカ人だけど、当時は英国で活動していた)。
そしてやはりロックは時代と切り離せない部分はありますね。
まあ、そこがロックの魅力でもあるんだけど。
タイトルからの想起じゃないけれど、ローリング・ストーンズっぽい
曲とも言える、歌メロが分かりやすい曲。
だから多分ジミの曲では演奏しやすいほうではないかなと。
Tr14:Purpe Haze
ジミ・ヘンドリックスといえばこの曲。
この曲については、独立してひとつの記事にできそうだけど、
今回は短く、この曲の存在を知り始めて聴いた時、
これほどまでにロックな曲があるんだって感激しました。
まあ、感激した内容としては、クスリによる精神世界を
そのまま描写したものであっていいことではないのだけど、
それにしてもこのリアルさは腹の底にまで響いてきました。
もちろん僕はクスリはやったことはないけれど、でも、ロックを
語る上でそれは避けて通れない、やっぱりリアルなものだと。
ジミ・ヘンドリックスは、代表曲がこの曲であるがゆえに、
個人の部分に強く引かれる人がいる一方で、
受け付けられないという人も多いのではないかと。
曲は、ギターの旋律も口ずさめるほど印象的だし、歌メロいいし、
間奏のギターソロの音の入り方が、誰もが思いつかないような
独創的なフレーズで、もはやこの世のものでもないかのような響き。
1960年代のロックを1曲で表すとすれば、ストーンズの
Satisfactionと並んで筆頭格の1曲でもあり、また
全ロック史を見渡してもロックを代表する1曲でしょう。
Tr15:51st Anniversary
これはこの中ではいちばん特徴がないというか印象が薄いですね。
歌詞によれば、金婚式は過ぎたけど翌年まで持たなかったと始まり、
結婚するのはいいことなのか、と問いただしている内容。
ジミも曲の題材は身近なものから取っているんだけど、でもやっぱり
音楽として表されてしまうと、なんだか恐い世界になりますね。
Tr16:The Wind Cries Mary
実はロマンティスト、この曲はそんなジミの内面の塊、魂。
「風がメアリーと嘆く」、この抒情性。
内容に合わせて情感を込めて歌おうとしているんだけど、
ジミの声では気持ちがもうひとつ上手く表し切れない。
歌詞の内容以前に、ジミの自分自身に対するもどかしさが、
この曲の場合は内容に見事に合っていてむしろ感動的。
曲も静かなジミの曲の代表作といえるでしょうね。
Tr17:Highway Chile
この"Chile"、「チャイル」と発音しているけれど、これは何?
と昔は思っていたけれど、どうやらチリ、国のチリのことらしいと。
しかし、英和辞典を見ると発音は「チリ」しか載っておらず、
「チャイル」というのはジミ独自のものかもしれない。
ちなみに辛いのは"Chili"で「チリ」ですね。
車にギターを積んであてどもなく放浪している様子を描いていて、
ジミの葛藤を心の旅として表現したものでしょうけど、
国のチリは世界で一番南北に長い国であり、そんな所を
ずっとハイウェイで走ると余計にふさいでしまう、ということかな。
ちなみに、3作目にVoodoo ChileとVoodoo Child(Sight Return)
という曲があるので、「チャイル」は「チャイルド」かもしれない。
そんな謎めいた部分があるのも逆に、
ジミ・ヘンドリックスをリアルと感じる部分だと思います。
左はオリジナルのUK盤、右はUS盤。
ジミ・ヘンドリックスは死後にリリースされたアルバムのほうが多く、
いわば無法地帯的にたくさんアルバムが出ていたものが、
今から15年ほど前に、遺族が、ジミのエンジニアをしていた
エディ・クレイマーを通してUniversalと契約を結び、
一元管理し再編集して出し直されました。
しかし、一昨年、版権をすべてSONY/BMG系に移し、
再編集され一部は新規のものとして出直しています。
ジミ・ヘンドリックスは、そもそも音楽のジャンルが分からなかった。
中高生の頃は、なぜ黒人なのに彼だけロックと言われていたのか、
他にそういう人を当時は知らなかったので、そこが大きな謎でした。
でも、逆にいえばそれもロックの力ということなのでしょうけど。
ジミ・ヘンドリックスはなぜ死後何十年も経っても、
これだけ人気があり影響を与え続けているのか。
そこも僕は若い頃には分からない部分でしたが、でも、
こう思うことで漸く納得できました。
ジミ・ヘンドリックスとは「現象」だったのではないか。
ひとりのアーティスト、以上のものだった。
僕は洗礼は受けなかったと書いたけど、でも、10代の頃は、
ジミの逆で、左利き用のストラトキャスターに右利き用に
弦を張って弾いてみたい、と思ったことはあります(笑)。
まあ、結局は、大好きで割とよく聴く人ですからね。
どうでもいいことだけど、「ヘドリックス」と入力すると、
「辺土リックス」と何度も出てくるのが、なんだかおかしかった。
ということで、今日のハウの写真でこの記事は終ります。
04


ARE YOU EXPERIENCED?
The Jimi Hendrix Experience
アー・ユー・エクスペリエンスト?
ジミ・ヘンドリックス (1967)
僕は「自然と音楽を愛する者」のBLOGを7年やっていますが、
ジミ・ヘンドリックスを記事にするのは今回が初めて。
曲やジャケットについては触れたことはありますが。
なぜ今かと言われれば、誕生日でも命日でもないし、
ただ単に、一昨日、CDの棚で目が合ったからです(笑)。
ジミ・ヘンドリックス、日本でいうジミヘン。
さて、何を語ればいいのだろう(笑)。
僕は、洗礼を受けた、とまではいかなかったかな。
初めて見たのは、高2の時、「ベスト・ヒットUSA」で見た
Johnny B. Goodeのライヴ映像でした。
それまでに、かつてものすごいギタリストがいたことは
聞いていましたが、それがこの人か、と。
最初に驚いたのは、チャック・ベリーのあまりにも有名な曲を
歌っていたことでした(その曲はもう知っていました)。
当時はビデオデッキを買って録画して観るようになっていたので、
その映像も何度も何度も見ました。
そしてすぐにLPを買おうと思い、タワーレコードに行って、
アメリカ国歌とヴァン・モリソンのGloriaが入った編集盤LPを買いました。
その後すぐに、Are You Experienced?のビデオクリップが
流れるようになり、それも録画してよく観て聴いていました。
ここまでは、まあ、一応は普通に熱中しました。
でも、洗礼を受けた、とまではいえないのにはわけが。
僕は、高2の頃は既に自分はギターが下手であると認識していて、
こんな僕がジミに憧れるなんておこがましい、と思うに至り、
そうなると、心が近づけなくなったような気もします。
要は、ジミみたいに弾けるはずがない、と思ってしまった。
でも、好きかどうかでいえば、好き、間違いなく。
ジミ・ヘンドリックスは、ロックを聴く人であれば必ず、
一度は聴いてみるものだと思います。
そうじゃない人は「ロック」が好きなわけではないし、それに
あれだけの人に興味が湧かないというのは理解ができない、
というのがあくまでも僕の見解、ロックを聴く人という意味での。
ただ、好きかどうかとなると、聴けない人は聴けないかな。
ジミ・ヘンドリックスは、音楽に個人が反映され過ぎていて、
ポップソングとしてはささくれ立ち過ぎています。
僕も本来はポップソング人間であり音楽がよければ人は関係ない、
個人をさらけ出す音楽は本来は苦手という立場の人間ですが、でも、
ジミ・ヘンドリックスについては逆にそこに最初から引かれました。
僕が洋楽を聴き始めた時は既に伝説の人だったから、
そうなるのはむしろ自然のことではないかと。
要は、引かれるか、受け付けられないか、どちらかの人。
ジミ・ヘンドリックスがポップスではないことについてもう少し話すと、
曲のとっつきにくさがその要因として挙げられるでしょう。
彼の曲にはまったくもって独特のセンスがあります。
センスというか、そもそも、「作曲」という概念が普通の人とは違う。
ギターを弾いて頭に浮かんだことに旋律のようなものをつけて口から
発しているといった感じで、曲を作ろうという意気込みは感じない。
だから旋律があまり明確には感じられないし、実際に、
特にヴァースの部分では喋りに近いものがあるけれど、
ではラップかというとそれは違う、明らかに歌おうとはしている。
曲を作るのに、歌詞を書いて曲を書いて(同時のこともあるけれど)、
といった流れで臨むのではなく、ジャムセッションの流れと考えると
彼の曲の在り方は大いに納得ができるのですが、そのせいで
歌メロが流麗で歌っていて気持ちいいという感じでもない。
演奏、アレンジ、流れなど曲全体として聴く音楽であって、
歌だけが印象に残るということはあまりない、それが彼の音楽。
だから聴けない人は聴けないし、だから、ギターを弾かない人には
あまり訴えるものが大きくないのかもしれない。
かもしれない、というのは、僕はジミ・ヘンドリックスを知ったのは
ギターを弾くようになった後であり、想像するしかないからです。
ジミ・ヘンドリックスの曲でもうひとつの「問題」は、彼の曲には
フラストレーションを表しているものが多いことでしょう。
常に自分自身と格闘しもがき続ける姿が、音楽を通して
リアルに感じられてしまうところが、あくまでも聴いて楽しくなりたい、
夢を持ちたい音楽であるポップスとしてみれば減点対象といえます。
実際、僕の友だちにもそれがだめという人がいるし。
逆をいえば、そこがロックたるところでもあるのですが。
ジミのギターも、普通の概念でいえば、「演奏」ではないですね。
ギターは彼の体の一部とはよく言われることですが、例えば
スケールを覚えてこうすればこういう音が出るというものではなく、
多くの人が自然と歌を歌うことができるように、ギターに触るだけで
思いが音程として出てくるという、もはや「感覚」なのでしょう。
一方で向上心が強く、もっと上手く演奏したい、というよりも
自分が思った通りの音を出したいという思いを常に抱えていて、
他の人が称賛しても自分では決して納得できなかった。
彼の曲がフラストレーションを表しているのは、歌というよりは
ギターへの思いが歌にも反映されていると考えると自然です。
しかし、そんなジミ・ヘンドリックスの曲をよく聴くと、
彼が意外とロマンティストでであることを感じます。
意外と、というのは、ともすればハードロックともいえるハードな
音から繰り出されるにしては、というくらいの意味ですが、
でも、常にもがき続けている彼の姿勢の基本には、
ロマンティックでセンチメンタルな心があるのでしょうね。
だから、例えばデレク&ザ・ドミノズのLittle Wingのように、
カヴァーする人によってはそこが強調されて聴こえてきて、
えっ、これがジミヘンの曲なの、と思うこともあります。
(ドミノズのヴォーカルは言わずと知れたエリック・クラプトン)。
ジミ・ヘンドリックスに慣れていない人は、そこが
受け入れられないのかもしれない、ミスマッチ感覚というか。
しかし、聴き込んで慣れてゆけば、そこに人間味を強く感じます。
そうですね、「伝説」だから、あまり聴かない人にとっては
「人間味」が響いてこないのかもしれない。
ロックミュージシャンが「伝説」になるのも良し悪しですね。
「伝説」になる前は、ただの(ちっぽけな)人間だったはずなのに。
今回は、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの
最初のLPを基にしたこのCDを聴いてゆきます。
当時はシングルが主流、LPああくまでもシングルの曲を集めただけ、
アルバムとしてどうのこうのという段階にはまだ至っていないけれど、
でも、音楽が持つ力にただただ圧倒されて聴き通すアルバムです。
LPでは11曲入りでしたが、CDでは6曲のボーナストラックが入って、
今ではこのスタイルで定着しています。
ただ、LP当時からアメリカとカナダではジャケットと曲順が違っていて、
それがCDの今でも踏襲されていますが、あくまでもこれは
曲の寄せ集めだから、どちらもあまり印象が変わりません。
アルバム至上主義の僕として、これは珍しい例ですね(笑)。
なお、ベースはノエル・レディング、ドラムスはミッチ・ミッチェル。
ミッチは後にジョン・レノンのインスタントバンドでも演奏したことで
僕には身近な、そして特に好きなドラマーのひとり。
02 今日のポーラ

Tr1:Foxy Lady
これはブルーズだよなあ。
いや違うのかな、と、若い頃は意味もなく悩んでいた曲。
この曲はヴァースが喋りでサビの歌メロが印象的な典型でしょう。
いきなりギターのフィードバックでフェイドインしてくるのがなんだかすごい。
ところでその昔、王様の「日本語ロック」でこれを取り上げられていて、
「狐っぽい女」というタイトルに大笑い。
「っぽい」というのがポイント高いですよね(笑)。
Tr2:Manic Depression
この曲にはちょっとした思い出が。
1990年代前半、F1が盛り上がりフジテレビで放送していた頃、
僕はレース本番はもちろん予選やまとめの番組も見ていました。
いつかは忘れたけれど、この曲がその番組で使われていて、
セナのマクラーレンがコーナリングするシーンが印象的でした。
曲名は「躁鬱病」という意味ですが、確か、その時は、
マクラーレンが予選でタイムがあまり上がらず葛藤していた
そんなことでこの曲が使われたのだと思いました。
「躁鬱」というだけあって重たいけれどのりがいい明るいワルツ。
Tr3:Red House
これは、完全なブルーズだよなあ・・・
もしかして僕はジミ・ヘンドリックスでブルーズを知ったのかな。
実はレッド・ツェッペリンより先にLPを買って聴いていました。
なんて書くとブルーズ好きの人には怒られるのか・・・
この曲は、ストラトキャスター50周年を記念したコンサート
「ストラト・パック」(記事こちら)でゲイリー・ムーアが演奏し
まさに度肝を抜く演奏に圧倒されましたね。
Tr4:Can You See Me
まるで庖丁のように細かく切り刻むようなリズム。
曲は軽快だけど重たいものをひきずる、ジミらしい曲。
Tr5:Love Or Confusion
ジミはこのような呪術的な曲がよくありますね。
ギターがおまじないのようにずっと高音で鳴っている。
アンダーグラウンドな響きというか、恐い人は恐いと思う。
Tr6:I Don't Live Today
葛藤の中で生きているとこんなことを感じるのでしょうね。
もっとしっかりと生きたいけれど、気持ちが弱い人だったのかな。
まあ、そうじゃなければクスリに逃れることもなかったのかも・・・
音が下降するギターリフもカッコいいけれど、まるでノイズのように
歌のバックというか頭の上でなるギターの音が革新的で、
後の、いや既に当時からその影響が大きかったことを感じます。
Tr7:May This Be Love
この曲はサイケデリック。
もわっとした雰囲気、まさにもやに包まれたような。
Tr8:Fire
これはコード進行丸見えのロックンロール。
僕はそういうロックンロールにはめっぽう弱くて、すぐに虜に。
もし僕がバンドをやるなら、この曲は演奏したいですね。
まあ、ギターソロはごまかしますが・・・(笑)・・・
それとサビの歌メロはコーラスが歌うというアイディアがいいけれど、
そこはやっぱり自分で歌うことになるのだろうか。
ギターのリフをはじめ低音弦がめまぐるしく動き回るのが、
僕が特に引かれる部分で、特にサビのギターのバッキングがいい。
その上歌メロもよくてジミヘンの曲ではよく口ずさむ曲。
間奏のギターソロに入る前にちょっとしたパッセージが設けられていて、
そこに入る前に"Let Jimi take over"と自分の名前を言ってから
ソロが始まるのが、今聴いても背筋がぞくぞくするほどカッコいい。
ミッチのドラムスがまさに炸裂、ノエルのベースもまさに唸り。
とにかくすべてがいい、僕が最も好きなジミの曲。
Tr9:Third Stone From The Sun
語りは入るけれどインストゥロメンタルといえる曲で、
ジャムセッションではないけれど、ジミとミッチとノエルの
バンドとしての力量を感じることができます。
そしてジミはここで自らのギターサウンドを確立させたといっていい、
縦横無尽にギターを、楽器以上の感覚器として鳴らしています。
さらに注目はジャズっぽいリズムであることで、そういえば
ブラック・サバスもデビュー前はジャズっぽいことをやっていたし、
ジェスロ・タルもジャズの要素が感じられるというように、
当時の英国はブルーズとジャズの間を狙った感覚が
普通だったのかもしれないですね。
Tr10:Remember
この曲は割と普通のポップソングっぽいところがあって、
ジミも普通に歌おうとしているようなところを感じるんだけど、
でもやっぱり、歌メロが際立つというほどでもないのかな。
なんというのか、音符がとっ散らかった感じがしないでもない。
これはソウル系の歌手が歌メロを再構築して歌えば、
歌としていい曲に仕上がるのではないかと思います。
ただ、ジミのロマンティストぶりが感じられる曲ではありますが。
フェイドアウトで急に終わるのがなんとなく不自然で、この辺は
アルバムとしてしっかりと作ろうとはしていない部分かな。
Tr11:Are You Experienced?
この曲のビデオクリップは高校時代から流れるようになりましたが、
なんだろう、とにかく若い人に向けてジミの魅力を伝えようという
意図のもとに作られたものだと思います。
ジミの映像の(多分)16mmのフィルムが、リールに巻かれ、
箱に収められて倉庫に眠っていたところ、フィルムが突然目覚め、
伸び始めて自分で箱をあけて再生機にセットされて再生される、
という凝ったビデオクリップでしたが、そこから流れるジミの映像は、
ステージでギターを燃やす有名な映像もあるし、ジミが演奏中に
まるでヘビのように舌をペロペロ出したり、それはもうすごい。
ギターを壊すシーンもあったと思う、暫く観ていないけれど、
うちにあるなら久しぶりに見てみようかな。
曲が終わるとフィルムがまた自分で箱の中に戻っていき、
掃除のおじさん(おばちゃんだったか?)に気づかれなかったという
落ちまでついた面白い映像でした。
曲も、初めて聴いたのは高校2年の頃でまだそれほどたくさんの
音楽を聴いていたわけではなかったけれど、こんな曲があるの、
と固定概念を覆され、やはり驚きました。
冷静にギターを持って聴くと、コード進行がとても変わっているとか
そういうことはないんだけど、曲を包み込むサウンド、歌が
ここでしか聴けない独特の雰囲気を作り上げています。
まさに「体験したことあんのか?」という曲ですね。
03 紫の

Tr12:Hey Joe
ここからがCDのボーナストラック扱い。
だけど、今はもうそう思わなくなっていますね。
アルバムではこの曲のみ他人の曲で、1960年に発表された
アメリカのビリー・ロバーツの手になるもの。
でも、ロック世代の人にはジミヘンの曲として膾炙しているでしょう。
もちろん僕もジミが最初の上に、オリジナルはまだ聴いたことがない。
この曲はC→G→D→A→Eというコードでずっと進んでいくのが、
高校時代にギターでコードを当ててみて分かったのですが、
何か不思議なコード進行だなと思いました。
だからこれは永遠に続くループ音楽のようにもに感じます。
Tr13:Stone Free
この曲はジミの中では異様ともいえるくらいストレイトな曲で、
ジミ・ヘンドリックスはいくら特異で唯一無二の存在だとしても、
やはり60年代英国ロック勢のひとりだったんだと感じられる曲。
(ジミはアメリカ人だけど、当時は英国で活動していた)。
そしてやはりロックは時代と切り離せない部分はありますね。
まあ、そこがロックの魅力でもあるんだけど。
タイトルからの想起じゃないけれど、ローリング・ストーンズっぽい
曲とも言える、歌メロが分かりやすい曲。
だから多分ジミの曲では演奏しやすいほうではないかなと。
Tr14:Purpe Haze
ジミ・ヘンドリックスといえばこの曲。
この曲については、独立してひとつの記事にできそうだけど、
今回は短く、この曲の存在を知り始めて聴いた時、
これほどまでにロックな曲があるんだって感激しました。
まあ、感激した内容としては、クスリによる精神世界を
そのまま描写したものであっていいことではないのだけど、
それにしてもこのリアルさは腹の底にまで響いてきました。
もちろん僕はクスリはやったことはないけれど、でも、ロックを
語る上でそれは避けて通れない、やっぱりリアルなものだと。
ジミ・ヘンドリックスは、代表曲がこの曲であるがゆえに、
個人の部分に強く引かれる人がいる一方で、
受け付けられないという人も多いのではないかと。
曲は、ギターの旋律も口ずさめるほど印象的だし、歌メロいいし、
間奏のギターソロの音の入り方が、誰もが思いつかないような
独創的なフレーズで、もはやこの世のものでもないかのような響き。
1960年代のロックを1曲で表すとすれば、ストーンズの
Satisfactionと並んで筆頭格の1曲でもあり、また
全ロック史を見渡してもロックを代表する1曲でしょう。
Tr15:51st Anniversary
これはこの中ではいちばん特徴がないというか印象が薄いですね。
歌詞によれば、金婚式は過ぎたけど翌年まで持たなかったと始まり、
結婚するのはいいことなのか、と問いただしている内容。
ジミも曲の題材は身近なものから取っているんだけど、でもやっぱり
音楽として表されてしまうと、なんだか恐い世界になりますね。
Tr16:The Wind Cries Mary
実はロマンティスト、この曲はそんなジミの内面の塊、魂。
「風がメアリーと嘆く」、この抒情性。
内容に合わせて情感を込めて歌おうとしているんだけど、
ジミの声では気持ちがもうひとつ上手く表し切れない。
歌詞の内容以前に、ジミの自分自身に対するもどかしさが、
この曲の場合は内容に見事に合っていてむしろ感動的。
曲も静かなジミの曲の代表作といえるでしょうね。
Tr17:Highway Chile
この"Chile"、「チャイル」と発音しているけれど、これは何?
と昔は思っていたけれど、どうやらチリ、国のチリのことらしいと。
しかし、英和辞典を見ると発音は「チリ」しか載っておらず、
「チャイル」というのはジミ独自のものかもしれない。
ちなみに辛いのは"Chili"で「チリ」ですね。
車にギターを積んであてどもなく放浪している様子を描いていて、
ジミの葛藤を心の旅として表現したものでしょうけど、
国のチリは世界で一番南北に長い国であり、そんな所を
ずっとハイウェイで走ると余計にふさいでしまう、ということかな。
ちなみに、3作目にVoodoo ChileとVoodoo Child(Sight Return)
という曲があるので、「チャイル」は「チャイルド」かもしれない。
そんな謎めいた部分があるのも逆に、
ジミ・ヘンドリックスをリアルと感じる部分だと思います。
左はオリジナルのUK盤、右はUS盤。
ジミ・ヘンドリックスは死後にリリースされたアルバムのほうが多く、
いわば無法地帯的にたくさんアルバムが出ていたものが、
今から15年ほど前に、遺族が、ジミのエンジニアをしていた
エディ・クレイマーを通してUniversalと契約を結び、
一元管理し再編集して出し直されました。
しかし、一昨年、版権をすべてSONY/BMG系に移し、
再編集され一部は新規のものとして出直しています。
ジミ・ヘンドリックスは、そもそも音楽のジャンルが分からなかった。
中高生の頃は、なぜ黒人なのに彼だけロックと言われていたのか、
他にそういう人を当時は知らなかったので、そこが大きな謎でした。
でも、逆にいえばそれもロックの力ということなのでしょうけど。
ジミ・ヘンドリックスはなぜ死後何十年も経っても、
これだけ人気があり影響を与え続けているのか。
そこも僕は若い頃には分からない部分でしたが、でも、
こう思うことで漸く納得できました。
ジミ・ヘンドリックスとは「現象」だったのではないか。
ひとりのアーティスト、以上のものだった。
僕は洗礼は受けなかったと書いたけど、でも、10代の頃は、
ジミの逆で、左利き用のストラトキャスターに右利き用に
弦を張って弾いてみたい、と思ったことはあります(笑)。
まあ、結局は、大好きで割とよく聴く人ですからね。
どうでもいいことだけど、「ヘドリックス」と入力すると、
「辺土リックス」と何度も出てくるのが、なんだかおかしかった。
ということで、今日のハウの写真でこの記事は終ります。
04

2009年12月05日
BATTLE STUDIES ジョン・メイヤー
いつものように
写真など音楽に関係ないコメントも
大歓迎です!
この秋に出た新譜で、
僕が最近いちばん気に入っているCDです。
そして僕には「新しい人」。
01

BATTLE STUDIES Jonh Mayer relaesed in 2009
バトル・スタディーズ ジョン・メイヤー
ジョン・メイヤー。
僕は、1999年頃までは、割と積極的にMTVを観ていて、
「新しい人」のCDを買って聴いていました。
まあしかし、最後の頃はほとんどが、
それまで好きな人の新譜の情報を追いかけるだけで、
「新しい人」もそれほど響いてこなくはなっていましたが。
2000年頃についにMTVを観るのをやめると、
札幌に帰ってからFMはまったく聴かなくなっていたし、
情報以上の音楽に接する機会がなくなったので、
必然的に、「新しい人」を聴くのをやめました。
ジョン・メイヤーは、今世紀に入ってから出てきた
「新しい人」のようなので、音楽に接する機会もなく、
こんな人がいるんだ、という情報以上はないまま、
今年まできていました。
でも、僕が接していた数少ない情報の中には、
「ああ、売れてる人なんだな」以上に
僕にとっては意味があることがあったのです。
ギターのFender U.S.A.から、
ジョン・メイヤーのシグネイチャー・モデルの
ストラトキャスターが出ていること。
或る日、ネットでFender U.S.A.のサイトで、
Signatureシリーズを見ていてそれを発見し、驚きました。
彼はギターが上手い、それは情報として知っていましたが、
シグネイチャー・モデルが出ているということは、
かなり有名かつ認められたギタリストであることの証明。
すごい人なんだなぁ、と。
なお余談、この新譜を買ってから知ったのですが、
ジョン・メイヤーは「現代の3大ギタリスト」のひとり、
と呼ばれているそうです。
でも僕は、他の2人が誰なのかを、今のところ知りません。
ただ、この事実を知った時に、そうかやはり今でも、
そのようにして「付加価値を付けて」盛り上げる、
ということが行われているんだな、この業界は、
意外と体質が古いままなんだな、と思いました。
さて、でも、僕は一時期、「新しい人」に対して
意固地なまでに心を開かなくなっていたので、
聴いてみよう、とまでは思いませんでした。
02 旧譜3CDのセット

しかし、今年になってまた「新しい人」に目が向くようになり、
「新しい人」を聴かないのは音楽の楽しみを自ら奪っている、
と自覚するようになってから、ジョン・メイヤーは
そろそろ聴くかな、と思うようになりました。
そんな折、彼の旧譜アルバムのCD3枚のセットが、
2500円くらいで売られていることを知り、
興味があるのでそれを買うことにしました。
当初はブックオフなどで中古を探してとも思いましたが、
1枚当たり800円以下ならむしろ安いし、新品だし、
ちまちま探すよりは一気に買った方がいいかと思いました。
ただしもちろん、一気に3枚も買って気に入らなかったら
どうしよう、という思いもありましたが、
そうだとしても2500円は勉強代だと割り切ることにしました。
まあ、物としても欲しかったというのもあったんですが。
なお余談、この中のROOM FOR SQUARESというアルバムは、
この箱にあるジャケット写真と実際のCDのジャケットの
デザインが違ったのですが、もちろん内容は一緒、
国によりジャケットが違うのでこうなったのでしょう。
さて、ジョン・メイヤーを聴いてみると・・・
すごく気に入った、という感じには少し足りなかったけど、
どういう人でどういう音楽かは実際に聴いて分かったし、
悪くはない、聴いてゆけば何かがつかめそうだな、
という、やや微妙な好感触を得ました。
ただ、僕の劣った音楽記憶力ではもちろん、
アルバム3枚もいっぺんには覚えられないので、
何度かひと通り聴いた後、1枚に絞って聴くことにしました。
03 HEAVIER THINGS・・・ハウのことじゃない(笑)

その1枚がこれ、HEAVIER THINGS
このアルバムが実は、僕とジョン・メイヤーの
最初の接点になりかけたCDだったのです。
というのも、このアルバムは、数年前、
僕がフェンダーのギターの件を知って少し興味が出た頃に、
さるレコード店の輸入盤セールに1000円であったのを、
迷って買わなかった、ということがあったのです。
ジャケットも、まさにストラトを持っていますし。
そしてこれを聴くことにしたもうひとつの理由が、
この中の曲Daughterが、2005年度グラミー賞において、
「最優秀楽曲賞 Song Of The Year」を受賞していたことが
分かったからでした。
僕は、毎年ニュースでグラミー賞の情報は
追っているつもりでしたが、それは知りませんでした。
その頃は、「新しい人」への興味もなかったですし。
なお、僕は、グラミーのAlbum Of The Yearを受賞した
アルバムはすべて買うことにしているのですが、
2005年度は、レイ・チャールズが亡くなられた後で、
レイが、エルトン・ジョン、ウィリー・ネルソン、
ノラ・ジョーンズなど、
多くの人と「デュエット」したアルバム
GENIUS LOVES COMPANYがその賞を受賞しており、
そのCDは当時既に買って持っていました。
ジョン・メイヤーに戻って、そのアルバムを聴いてゆくと
これはかなりだいぶ気に入ってきました。
それを聴いていたところ、この秋に
彼の新譜が出ることを知りました。
それはまったく知らなくて、よい偶然でしたが、
僕は「音楽(と本)には呼ばれる時がある」
と常々思っていて、この偶然は偶然ではない、
きっと呼ばれたんだと思い(笑)、
新譜が出るのをわくわくしながら待っていました。
そして、ついに聴きましたが、
正直、予想していたよりはるかに良かったのです。
「微妙さ」がなくなり、ほんとに好きになりました。
全体の印象としては、よい意味で
「クールな人だな」と感じました。
決して熱くならない人というか、
歌の中で感情がこもって力が入ることがあっても、
熱くはならず、さらっとやり過ごす感じがします。
そう感じさせる要素のひとつとしては、彼は歌の中で
高音になると声がファルセットになることがありますが、
それにより、声や音楽に「熱さ」をこもらせずに、
「熱さ」を逃がしている、そんな感じがしています。
歌、曲、ギターの音は、とにかく心地よさを追い求めていて、
その辺も熱くなりすぎていないと感じる部分です。
そうですね、「涼しい心地よさ」ですね。
これは新しい感性なのかな。
もうこの年代になると、どんな音楽の影響を受けている、
ということを具に見るのは意味がないとも思いますが、
いろんな音楽のいい部分を消化吸収していき、
「涼しいけど心地よい音」を持ち味としたのでしょう。
とにかく、すぅっと気持ちが自然と高ぶり、
またすうっとすぐに落ち着く、そんな音です。
そしてもちろん、歌心はとてもある人であり、
僕はそこが気に入りました。
そうそう、この人の声は、もう少し太くすれば荒れた声、
もう少し細くすればハスキーという
ぎりぎりのところで踏みとどまっている感じの、
決して美声じゃないけど、かなり独特な声ですが、
やっぱり声もまた重要な部分であることも分かります。
しかし一方で、新譜のタイトル
BATTLE STUDIES「戦いの科目」が気になりました。
ジョン・メイヤーは、優男というほどでもないけど、
僕が抱いたイメージからして、「戦い」という言葉が
似合わないような気がしていたからです。
でも実際このアルバムには、少なくとも3曲の曲名に、
直接的に「戦い」に関係する単語が入っていますし、
他も「戦い」に関すると解釈できるものがあります。
だけど歌詞を読んでも、例えばアイアン・メイデンのように
直接的に戦場のことを歌っているわけではないですし、
声高に反戦を歌っているわけでもないようなので、
やはりこれは「男女の仲」であったり、
現代社会において人間はいろいろと「戦っている」ことを
象徴的に表したものであると僕は読みました。
そしてこのタイトルは、そうした「戦い」に備えた
気持ちのありようを科目として上げた、ということでしょうか。
ジャケット写真、コートの襟に手を当てるジョンは、
戦いに備えている心持をよく表わしていると思います。
アルバムは、ジョン・メイヤー自身と、
ドラムスのスティーヴ・ジョーダンのプロデュース。
作曲も、1曲のカバーを除いてはジョン自身。
ベースは、今のザ・フーにいるピノ・パラディーノ、そして
キーボード数曲には、あのフェイシズの名オルガニスト
イアン・マクレガンが参加しています。
若いのに、こうした名のあるベテランを
バックに起用しているというのは、
やはりギタリストとして認めてられるのでしょうし、
それ以上に、彼が古きよきロックの伝統を受け継いだ
「正統派」であることも表わしていると思います。
なお、他のゲスト参加ミュージシャンについては、
曲を追う中で触れてゆきます。
04 ヒヨドリは戦っているのか・・・

Tr1:Heartbreak Warfare
イントロのフェイドインしてくる楽器の音が、
ベートーヴェンの第九の最初に似ていて、僕は、
そこからもう「なんだろう」って引き込まれていました。
軽やかに鳴り続けるエレクトリック・ギターが心地よい
ミドルテンポの、曲名とは裏腹に、爽やかな曲でスタート。
Tr2:All We Ever Do Is Say Goodbye
2曲目にしっとりとしたバラードを持ってきて「落とす」のは
ちょっと反則気味だけど、でも、いい流れを作っています。
逆にこれでぐぃっと気持ちが入っていきます。
言ってしまえば、雰囲気がちょっとジョン・レノン風の曲。
そう感じた時点でこのアルバムは素晴らしいと思いました。
ギターのゲストが、元プリテンダーズ、そして
元ポール・マッカートニーのバンドで僕もステージで観た
ロビー・マッキントッシュ、これはうれしい!
それにしても、新しく出てきた曲で、
こんなにも美しい曲に出会ったのは、いつ以来かな、久しぶり。
何年かすると、新たな「さようなら」の歌の
定番になりそうな予感の、「名曲候補」の曲。
Tr3:Half Of My Heart (with Taylor Swift)
ミドルテンポの素軽いポップな曲、ヒットしそう。
ゲストは、曲名の後に明記されているのですが、
カントリー界の新歌姫、テイラー・スウィフト。
この人はアメリカでかなり売れているのは知っていて、
ちょっと興味はあったのですが、それがこんなかたちで
聴くことができて、ちょっとうれしかったです。
朝の散歩に似合いそうな曲。
Tr4:Who Says
カントリータッチの軽やかで落ち着いた曲は、もちろん、
アコースティック・ギターの響きがまたいい雰囲気。
♪ Plan a trip to Japan alone
という歌詞があるのが、やはり気になる(笑)。
アコースティックギターのゲストは、名手ワディ・ワクテル。
ギタリストがギタリストをゲストとして招く、
このことからも先達への敬意が感じられます。
Tr5:Perfectly Lonely
打って変って少し硬質なエレクトリック・ギターのイントロが
その場の空気をゆっくりとかき回すように切り込んでくる、
ミドルテンポの明るい曲。
だけどタイトルはやっぱり寂しい、はず。
そこをさらりと表すのが新しい感覚、都会的なのかな。
かといって強がりにも聞こえない、自然体で響いてきます。
ギターソロも待ってましたという感じ、ストラトでしょうけど、
でも独特な響きで鳴ってきます。
Tr6:Assasin
この曲名Assasin=暗殺者は特に最初は違和感がありました。
重たくて暗い曲で、サビが印象的で胸に迫ってきます。
でも、やっぱり、熱くはないんです、さらっとしている感じ。
しかし、暗殺したいような気持というのは・・・
後からじわっとしみてきます。
Tr7:Crossroads
そして彼の「熱くないところ」がよく出ているのが、これ。
そう、クリームで有名、ロバート・ジョンソンのあの曲のカバー。
ぜんまい仕掛けのおもちゃみたいな軽いギターリフとリズム隊で、
さらっと歌っているこれは、クリームと比べて聴くと、
マレーシアとスウェーデンくらいに温度感覚が違います。
僕はそして意外とこれが気に入りました。
Tr8:War Of My Life
これは80年代風という感じですね。
僕が育った年代だし、安心して聴けるポップソングです。
♪ I've got a hammer and a heart of glass
だけど、歌詞をじっくりと読むと、
何か尋常ではない恐怖心が描かれていて、
音の心地よさとこの歌詞の心持ちのアンバランスさが
不思議ではあります。
しかしこれ、曲としてはむしろ元気づけられる系で、
敢えて軽く表わすことで前向きさを訴えているのかも。
Tr9:Edge Of Desire
泡が沸き立つみたいなギターのイントロが印象的。
ワルツの、全体的にふわふわした響きの曲。
Tr10:Do You Know Me
アコースティックギターの高音のアルペジオが印象的な、
アルバムでいちばん静かな、落ち着いた曲。
微妙にアフリカのリズムを思い起こさせるのは、
やはり音楽がいろいろと混ざり合った上で表現されている
そんなことも感じました。
アルバムの最後は静かな曲が続きます。
Tr11:Friends, Lovers Or Nothing
ピアノの短いイントロを受けた後、
気持ちがゼロから一気に舞い上がったような
とろけるようなギターの音が心地よい、もう絶品。
歌も、いちばん気持ちがこもっています。
グラミーを取ったDaughterもそうだったけど、この人は、
人と人とのつながりを大切にする人なんだなと思いました。
ゆったりとしたバラードで、これまでの「戦い」を
ここでひとつにまとめる、いわば「大団円」、
これを聴けばすべてがうまく、という感じです。
テンポは遅いけど静かではない、盛り上がる曲。
これもまた将来の名曲候補ですね。
そういう曲が少なくとも2曲あるのが、
このアルバムの充実を物語ってもいます。
このゆったりと構えた曲でアルバムは最後を迎え、
「涼しくて気持ちいい」時間が終わります。
いいですねぇ、とってもいいですよ!
「涼しい心地よさ」がなんともいえない味です。
このアルバム、この人からは、
ロックが培ってきた何か大切なものを、
しっかりと受け継いでいる人であると感じ、
そこがまた安心して聴ける部分だと思いました。
持っていないCDも買い揃えないと(笑)。
もう12月。
毎年僕は、大晦日に、
その年の好きなアルバムの順位を記事にしていますが、
ジョン・メイヤーのこのアルバムは、もしかすると、
逆転で1位になるかもしれない、それほど気に入りました。
やっぱり、「新しい人」を聴く楽しみを、
自ら奪ってはいけないですね、人生、損しますね(笑)。
そして僕は、40代でそのことに気づいて、よかった。
写真など音楽に関係ないコメントも
大歓迎です!
この秋に出た新譜で、
僕が最近いちばん気に入っているCDです。
そして僕には「新しい人」。
01

BATTLE STUDIES Jonh Mayer relaesed in 2009
バトル・スタディーズ ジョン・メイヤー
ジョン・メイヤー。
僕は、1999年頃までは、割と積極的にMTVを観ていて、
「新しい人」のCDを買って聴いていました。
まあしかし、最後の頃はほとんどが、
それまで好きな人の新譜の情報を追いかけるだけで、
「新しい人」もそれほど響いてこなくはなっていましたが。
2000年頃についにMTVを観るのをやめると、
札幌に帰ってからFMはまったく聴かなくなっていたし、
情報以上の音楽に接する機会がなくなったので、
必然的に、「新しい人」を聴くのをやめました。
ジョン・メイヤーは、今世紀に入ってから出てきた
「新しい人」のようなので、音楽に接する機会もなく、
こんな人がいるんだ、という情報以上はないまま、
今年まできていました。
でも、僕が接していた数少ない情報の中には、
「ああ、売れてる人なんだな」以上に
僕にとっては意味があることがあったのです。
ギターのFender U.S.A.から、
ジョン・メイヤーのシグネイチャー・モデルの
ストラトキャスターが出ていること。
或る日、ネットでFender U.S.A.のサイトで、
Signatureシリーズを見ていてそれを発見し、驚きました。
彼はギターが上手い、それは情報として知っていましたが、
シグネイチャー・モデルが出ているということは、
かなり有名かつ認められたギタリストであることの証明。
すごい人なんだなぁ、と。
なお余談、この新譜を買ってから知ったのですが、
ジョン・メイヤーは「現代の3大ギタリスト」のひとり、
と呼ばれているそうです。
でも僕は、他の2人が誰なのかを、今のところ知りません。
ただ、この事実を知った時に、そうかやはり今でも、
そのようにして「付加価値を付けて」盛り上げる、
ということが行われているんだな、この業界は、
意外と体質が古いままなんだな、と思いました。
さて、でも、僕は一時期、「新しい人」に対して
意固地なまでに心を開かなくなっていたので、
聴いてみよう、とまでは思いませんでした。
02 旧譜3CDのセット

しかし、今年になってまた「新しい人」に目が向くようになり、
「新しい人」を聴かないのは音楽の楽しみを自ら奪っている、
と自覚するようになってから、ジョン・メイヤーは
そろそろ聴くかな、と思うようになりました。
そんな折、彼の旧譜アルバムのCD3枚のセットが、
2500円くらいで売られていることを知り、
興味があるのでそれを買うことにしました。
当初はブックオフなどで中古を探してとも思いましたが、
1枚当たり800円以下ならむしろ安いし、新品だし、
ちまちま探すよりは一気に買った方がいいかと思いました。
ただしもちろん、一気に3枚も買って気に入らなかったら
どうしよう、という思いもありましたが、
そうだとしても2500円は勉強代だと割り切ることにしました。
まあ、物としても欲しかったというのもあったんですが。
なお余談、この中のROOM FOR SQUARESというアルバムは、
この箱にあるジャケット写真と実際のCDのジャケットの
デザインが違ったのですが、もちろん内容は一緒、
国によりジャケットが違うのでこうなったのでしょう。
さて、ジョン・メイヤーを聴いてみると・・・
すごく気に入った、という感じには少し足りなかったけど、
どういう人でどういう音楽かは実際に聴いて分かったし、
悪くはない、聴いてゆけば何かがつかめそうだな、
という、やや微妙な好感触を得ました。
ただ、僕の劣った音楽記憶力ではもちろん、
アルバム3枚もいっぺんには覚えられないので、
何度かひと通り聴いた後、1枚に絞って聴くことにしました。
03 HEAVIER THINGS・・・ハウのことじゃない(笑)

その1枚がこれ、HEAVIER THINGS
このアルバムが実は、僕とジョン・メイヤーの
最初の接点になりかけたCDだったのです。
というのも、このアルバムは、数年前、
僕がフェンダーのギターの件を知って少し興味が出た頃に、
さるレコード店の輸入盤セールに1000円であったのを、
迷って買わなかった、ということがあったのです。
ジャケットも、まさにストラトを持っていますし。
そしてこれを聴くことにしたもうひとつの理由が、
この中の曲Daughterが、2005年度グラミー賞において、
「最優秀楽曲賞 Song Of The Year」を受賞していたことが
分かったからでした。
僕は、毎年ニュースでグラミー賞の情報は
追っているつもりでしたが、それは知りませんでした。
その頃は、「新しい人」への興味もなかったですし。
なお、僕は、グラミーのAlbum Of The Yearを受賞した
アルバムはすべて買うことにしているのですが、
2005年度は、レイ・チャールズが亡くなられた後で、
レイが、エルトン・ジョン、ウィリー・ネルソン、
ノラ・ジョーンズなど、
多くの人と「デュエット」したアルバム
GENIUS LOVES COMPANYがその賞を受賞しており、
そのCDは当時既に買って持っていました。
ジョン・メイヤーに戻って、そのアルバムを聴いてゆくと
これはかなりだいぶ気に入ってきました。
それを聴いていたところ、この秋に
彼の新譜が出ることを知りました。
それはまったく知らなくて、よい偶然でしたが、
僕は「音楽(と本)には呼ばれる時がある」
と常々思っていて、この偶然は偶然ではない、
きっと呼ばれたんだと思い(笑)、
新譜が出るのをわくわくしながら待っていました。
そして、ついに聴きましたが、
正直、予想していたよりはるかに良かったのです。
「微妙さ」がなくなり、ほんとに好きになりました。
全体の印象としては、よい意味で
「クールな人だな」と感じました。
決して熱くならない人というか、
歌の中で感情がこもって力が入ることがあっても、
熱くはならず、さらっとやり過ごす感じがします。
そう感じさせる要素のひとつとしては、彼は歌の中で
高音になると声がファルセットになることがありますが、
それにより、声や音楽に「熱さ」をこもらせずに、
「熱さ」を逃がしている、そんな感じがしています。
歌、曲、ギターの音は、とにかく心地よさを追い求めていて、
その辺も熱くなりすぎていないと感じる部分です。
そうですね、「涼しい心地よさ」ですね。
これは新しい感性なのかな。
もうこの年代になると、どんな音楽の影響を受けている、
ということを具に見るのは意味がないとも思いますが、
いろんな音楽のいい部分を消化吸収していき、
「涼しいけど心地よい音」を持ち味としたのでしょう。
とにかく、すぅっと気持ちが自然と高ぶり、
またすうっとすぐに落ち着く、そんな音です。
そしてもちろん、歌心はとてもある人であり、
僕はそこが気に入りました。
そうそう、この人の声は、もう少し太くすれば荒れた声、
もう少し細くすればハスキーという
ぎりぎりのところで踏みとどまっている感じの、
決して美声じゃないけど、かなり独特な声ですが、
やっぱり声もまた重要な部分であることも分かります。
しかし一方で、新譜のタイトル
BATTLE STUDIES「戦いの科目」が気になりました。
ジョン・メイヤーは、優男というほどでもないけど、
僕が抱いたイメージからして、「戦い」という言葉が
似合わないような気がしていたからです。
でも実際このアルバムには、少なくとも3曲の曲名に、
直接的に「戦い」に関係する単語が入っていますし、
他も「戦い」に関すると解釈できるものがあります。
だけど歌詞を読んでも、例えばアイアン・メイデンのように
直接的に戦場のことを歌っているわけではないですし、
声高に反戦を歌っているわけでもないようなので、
やはりこれは「男女の仲」であったり、
現代社会において人間はいろいろと「戦っている」ことを
象徴的に表したものであると僕は読みました。
そしてこのタイトルは、そうした「戦い」に備えた
気持ちのありようを科目として上げた、ということでしょうか。
ジャケット写真、コートの襟に手を当てるジョンは、
戦いに備えている心持をよく表わしていると思います。
アルバムは、ジョン・メイヤー自身と、
ドラムスのスティーヴ・ジョーダンのプロデュース。
作曲も、1曲のカバーを除いてはジョン自身。
ベースは、今のザ・フーにいるピノ・パラディーノ、そして
キーボード数曲には、あのフェイシズの名オルガニスト
イアン・マクレガンが参加しています。
若いのに、こうした名のあるベテランを
バックに起用しているというのは、
やはりギタリストとして認めてられるのでしょうし、
それ以上に、彼が古きよきロックの伝統を受け継いだ
「正統派」であることも表わしていると思います。
なお、他のゲスト参加ミュージシャンについては、
曲を追う中で触れてゆきます。
04 ヒヨドリは戦っているのか・・・

Tr1:Heartbreak Warfare
イントロのフェイドインしてくる楽器の音が、
ベートーヴェンの第九の最初に似ていて、僕は、
そこからもう「なんだろう」って引き込まれていました。
軽やかに鳴り続けるエレクトリック・ギターが心地よい
ミドルテンポの、曲名とは裏腹に、爽やかな曲でスタート。
Tr2:All We Ever Do Is Say Goodbye
2曲目にしっとりとしたバラードを持ってきて「落とす」のは
ちょっと反則気味だけど、でも、いい流れを作っています。
逆にこれでぐぃっと気持ちが入っていきます。
言ってしまえば、雰囲気がちょっとジョン・レノン風の曲。
そう感じた時点でこのアルバムは素晴らしいと思いました。
ギターのゲストが、元プリテンダーズ、そして
元ポール・マッカートニーのバンドで僕もステージで観た
ロビー・マッキントッシュ、これはうれしい!
それにしても、新しく出てきた曲で、
こんなにも美しい曲に出会ったのは、いつ以来かな、久しぶり。
何年かすると、新たな「さようなら」の歌の
定番になりそうな予感の、「名曲候補」の曲。
Tr3:Half Of My Heart (with Taylor Swift)
ミドルテンポの素軽いポップな曲、ヒットしそう。
ゲストは、曲名の後に明記されているのですが、
カントリー界の新歌姫、テイラー・スウィフト。
この人はアメリカでかなり売れているのは知っていて、
ちょっと興味はあったのですが、それがこんなかたちで
聴くことができて、ちょっとうれしかったです。
朝の散歩に似合いそうな曲。
Tr4:Who Says
カントリータッチの軽やかで落ち着いた曲は、もちろん、
アコースティック・ギターの響きがまたいい雰囲気。
♪ Plan a trip to Japan alone
という歌詞があるのが、やはり気になる(笑)。
アコースティックギターのゲストは、名手ワディ・ワクテル。
ギタリストがギタリストをゲストとして招く、
このことからも先達への敬意が感じられます。
Tr5:Perfectly Lonely
打って変って少し硬質なエレクトリック・ギターのイントロが
その場の空気をゆっくりとかき回すように切り込んでくる、
ミドルテンポの明るい曲。
だけどタイトルはやっぱり寂しい、はず。
そこをさらりと表すのが新しい感覚、都会的なのかな。
かといって強がりにも聞こえない、自然体で響いてきます。
ギターソロも待ってましたという感じ、ストラトでしょうけど、
でも独特な響きで鳴ってきます。
Tr6:Assasin
この曲名Assasin=暗殺者は特に最初は違和感がありました。
重たくて暗い曲で、サビが印象的で胸に迫ってきます。
でも、やっぱり、熱くはないんです、さらっとしている感じ。
しかし、暗殺したいような気持というのは・・・
後からじわっとしみてきます。
Tr7:Crossroads
そして彼の「熱くないところ」がよく出ているのが、これ。
そう、クリームで有名、ロバート・ジョンソンのあの曲のカバー。
ぜんまい仕掛けのおもちゃみたいな軽いギターリフとリズム隊で、
さらっと歌っているこれは、クリームと比べて聴くと、
マレーシアとスウェーデンくらいに温度感覚が違います。
僕はそして意外とこれが気に入りました。
Tr8:War Of My Life
これは80年代風という感じですね。
僕が育った年代だし、安心して聴けるポップソングです。
♪ I've got a hammer and a heart of glass
だけど、歌詞をじっくりと読むと、
何か尋常ではない恐怖心が描かれていて、
音の心地よさとこの歌詞の心持ちのアンバランスさが
不思議ではあります。
しかしこれ、曲としてはむしろ元気づけられる系で、
敢えて軽く表わすことで前向きさを訴えているのかも。
Tr9:Edge Of Desire
泡が沸き立つみたいなギターのイントロが印象的。
ワルツの、全体的にふわふわした響きの曲。
Tr10:Do You Know Me
アコースティックギターの高音のアルペジオが印象的な、
アルバムでいちばん静かな、落ち着いた曲。
微妙にアフリカのリズムを思い起こさせるのは、
やはり音楽がいろいろと混ざり合った上で表現されている
そんなことも感じました。
アルバムの最後は静かな曲が続きます。
Tr11:Friends, Lovers Or Nothing
ピアノの短いイントロを受けた後、
気持ちがゼロから一気に舞い上がったような
とろけるようなギターの音が心地よい、もう絶品。
歌も、いちばん気持ちがこもっています。
グラミーを取ったDaughterもそうだったけど、この人は、
人と人とのつながりを大切にする人なんだなと思いました。
ゆったりとしたバラードで、これまでの「戦い」を
ここでひとつにまとめる、いわば「大団円」、
これを聴けばすべてがうまく、という感じです。
テンポは遅いけど静かではない、盛り上がる曲。
これもまた将来の名曲候補ですね。
そういう曲が少なくとも2曲あるのが、
このアルバムの充実を物語ってもいます。
このゆったりと構えた曲でアルバムは最後を迎え、
「涼しくて気持ちいい」時間が終わります。
いいですねぇ、とってもいいですよ!
「涼しい心地よさ」がなんともいえない味です。
このアルバム、この人からは、
ロックが培ってきた何か大切なものを、
しっかりと受け継いでいる人であると感じ、
そこがまた安心して聴ける部分だと思いました。
持っていないCDも買い揃えないと(笑)。
もう12月。
毎年僕は、大晦日に、
その年の好きなアルバムの順位を記事にしていますが、
ジョン・メイヤーのこのアルバムは、もしかすると、
逆転で1位になるかもしれない、それほど気に入りました。
やっぱり、「新しい人」を聴く楽しみを、
自ら奪ってはいけないですね、人生、損しますね(笑)。
そして僕は、40代でそのことに気づいて、よかった。