ヴァン・モリソン2枚と今年の新譜CD

guitarbird

2017年12月31日 07:54

01


大晦日。

今はもうそれほどたくさんCDを買っていないので、
昨年までのように新譜だけでTop10というわけにもゆかず。
そこで今年は弟が買ったものも含めて、
よく聴いた洋楽新譜CDをすべてさらりと紹介します。


☆1枚目



ROLL WITH THE PUNCHES
Van Morrison
(2017)


今年いちばんよかったのはやっぱりヴァン・モリソン!
昨年も新譜を出しましたが、もう出るのかと驚いた。
しかもというかしかしというか、これが素晴らしい!
正直、ここ10年くらいのヴァン・モリソンの新譜では
いちばん好きです、もちろん他も素晴らしいのですが。

音的にいえば「ロック以前のR&Bヒット曲」といった趣き。
強調したいのは「ヒット曲」という部分、つまり聴きやすい。
ブルーズなんだけど完全なブルーズではなくて、
かといってソウルとまでは至っていない。
歌手でいえばボビー・ブルー・ブランドのような味わい。

ジェフ・ベックが参加しているのも大きい。
ヴァン・モリソンに名のあるアーティストが参加するのは珍しい。
しかもそれが超大物ジェフ・ベックとくれば、お得感満載(笑)。
ジェフとは60年代ロックの興隆期に競い合ってきたわけだし、
ジェフもまた「ロック以前のR&Bヒット曲」が大好きなのでしょうね。
当然のことながらギターも攻めていて、その部分は
今までのヴァン・モリソンにはなかった醍醐味です。

僕のベスト曲はTransformation。
ぐにょっとしたバラード風のスロウな曲ですが、
この味わい深さがたまらない。
大物がもうひとりクリス・ファーロウが参加していますが、
彼の暖かくてユーモラスな低音がここでは抑え気味に
ヴァン・モリソンを支えています。
当然彼が前面に出た曲もありますが、これもまたいい。

もう1曲、サム・クックのあのBring It On Home To Me。
僕ですら中学時代から知っていたもう手垢まみれのこの曲、
まだこんなやり方があったのかと驚き感動しました。
もうこれは完全にヴァン・モリソンの曲といえますね。

今年のベストはヴァン・モリソンのこれです!

そして僕のベスト曲を。




 Transformation
 Van Morrison
 (2017)



☆2枚目



VERSATILE
Van Morrison
(2017)

ヴァン・モリソンはしかも、2年連続の上に1年2枚!!
今年はヴァン・モリソン・イヤーと名づけましょう。

こちらは「多様性」というタイトル通り、自作曲から
ガーシュウィンやコール・ポーターといったスタンダード、
「想い出のサンフランシスコ」といった有名曲までを集めた1枚。
ROLL...がR&Bサイドならこちらはジャズサイド。
どちらもヴァン・モリソンの根幹をなす音楽であるわけですが、
ジャズが好きというよりはジャズが当たり前に身の周りにある、
ヴァン・モリソンとはそういう人なんだと思いました。

正直いうと僕はROLL..の方が断然好きです。
僕はジャズにはあまりなじんできていないロック人間である、
ということがよく分かりました。
その上かつての僕はアルバム至上主義者だった名残りで、
ROLL...のようにぴしっと筋が通ったアルバムの方を、
うん、今でもやっぱりどちらをといわれれば取りますね。
もちろんこのアルバムも素晴らしいと思うし好きですが。
ただ、ROLL...はしっかりとアルバムを聴く時に聴きたい1枚ですが、
VERSATILEは逆に気軽に聴けるのはいい点ですね。

僕のベスト曲はヴァンさん自作のBroken Record。
冒頭からスウィングでのせてくれますが、タイトルの如く、
"Talking like this"と執拗なまでに繰り返す。
ヴァン・モリソン得意技早くも炸裂ですが、もしかして
ほんとうにあの言葉の繰り返しはまるで擦り切れた
レコードのようだ、と言われたことがあるのかも。
その自分に向けた茶化し精神がたまらない。
もう1曲カヴァーでBye Bye Blackbird。
僕はジョー・コッカーで知った曲ですが、やはり全然違う。
真面目に歌ったジョー・コッカーが聴くと怒るんじゃないか、
というくらいに手を抜いています、もちろんいい意味で、
そのぬるさが持ち味でしょうね。

タイトルの「多様性」は生き物に関わる僕としても
大切にしたい言葉ではあります。

2017年の洋楽はヴァン・モリソンの年でした!



☆3枚目



THE GREATEST HITS LIVE
Steve Winwood
(2017)


スティーヴ・ウィンウッドのこれが素晴らしい!
その通り、トラフィックから2000年代のソロまでを、
ライヴで振り返る素晴らしい企画、演奏、そして歌。

僕のベスト曲はThe Low Spark Of High Heeled Boys。
こうした企画盤、ベストやライヴって、知ってはいたけれど
こんなにいい曲だったかと思い直すことが多いですよね。
今回はこれがそうでした。
トラフィックが一度解散し再結成した1971年の曲で、
それが入ったアルバムも好きですが、アルバムだと
流れて聴いて曲として浮かび上がりにくいのかもしれない。

カヴァーもあります。
ティミ・トーマスのWhy Can't We Live Together。
2003年のABOUT TIMEからの曲ということになりますが、
僕はそのアルバムがスティーヴのそろではいちばん好きで、
その時からこれは大好きだったので、これが入っていたのは
いろんな意味で嬉しかった。
これももう完全にスティーヴの曲になっていますね。

そしてWhile You See A Chanceでは、2011年に
エリック・クラプトンと札幌に来てくれた時のことを思い出し、
また違った趣きと感動がありました。
当然というかこのアルバムにエリックはいないですが。

エリック絡みでもう1曲、
ブラインド・フェイスのHad To Cry Today。
パワフルさは微塵も失われていない。
円熟はしているけれど若さも保っている。
スティーヴ・ウィンウッドとはそんな恐るべき人なのです。

80年代男としてはThe Finer Thingsが入っていないのが
まあ残念ですが、こういう企画ではそれを言ってもしょうがない。
スティーヴ自身もその曲は好きじゃないかもしれないし(笑)。
まあでも最高に素晴らしいベストライヴアルバムです。



☆4枚目



CARRY FIRE
Robert Plant
(2017)


ロバート・プラント。
元レッド・ツェッペリン。
もちろんそのことを僕も常に意識しますが、悲しいかな、
と言っておく、今のアルバムを聴く時にはもうそのことを
頭から追いやってしまいたい。
今の彼の音楽は「中東風エスニックアコースティック路線」。
前々作、前作ととっても気に入っていたのですが、
今回もやっぱりそれと同じかそれ以上に気に入った。
つまり僕はこの路線がそもそも好きなのでしょう。
人それぞれだから、プラントにはツェッペリンのような
ハードロックを今でも求めているというのであればそれでいい。
だけどやっぱり、プラントがやりたいことに素直に耳を傾けて、
この路線も聴いていただきたいというのが本音ではありますね。
ただ時々、ツェッペリン時代の自分をまるでおちょくるかのような
今回でいえば2曲目冒頭のハードなギターのような音が混ざるのは、
さすが英国人と思わざるを得ないですね。

僕のベスト曲は3曲目Season's Song。
穏やかに愛を語るバラード風の曲ですが、よぉ~く聴くと、Aメロの
歌メロがエルヴィス・プレスリーのDon't Be Cruelに似てる。
そうだった、プラントはエルヴィスフリークでもあるんだ。
うん、悲しいかなと言ったけど、やっぱりツェッペリンとは
切り離せない、昔の上に今がある。
でも、だからこそやっぱり聴いてほしいのです。
この曲のタイトルもいいですよね。
そういう世界観もまた僕は好きなのです。



☆5枚目



NOW
Shania Twain
(2017)

シャナイア・トウェイン実に17年振りの新作。
僕も期待していましたが、ビルボードアルバムチャート
初登場No.1を記録。
アルバムとして端的にいえば聴きやすくていいです。
You're Still The OneやUpのようなキラーチューンはないけれど、
曲はどれも歌心をしっかりと刺激してくれる。
全体のイメージはカントリーというよりはアメリカーナかな。
少なくともどカントリーではないし、かといって
テイラー・スウィフトのような王道ポップスでもない。
もしそうだとすればこれからも期待できますね。
でも10年も待てない、3年以内に次作を出して欲しいな。

ベスト曲は2曲目Home Now。
アメリカのカントリーサイドからアイルランドにつながる。
カントリーといえばカントリーだけど、カントリーも含めたものが
アメリカーナだということなのでしょうね。

このアルバムも根詰めて聴くというよりは気楽に聴きたい1枚。
もちろん僕にとっては、です。



☆6枚目



GIVE MORE LOVE
Ringo Starr
(2017)

今朝6時のNHKニュースで、リンゴ・スターに
英国ナイトの称号が送られることになったと聞きました。
これでリンゴも「サー」になるわけですが、嬉しいことです。
そう、NHKではリンゴは今でも音楽活動をしていることを
殊更強調していたのですが、そこは本人も強調したいところで、
ちょっとだけNHKを見直しました(笑)。
今回もオールスターのメンバーのスティーヴ・ルカサーをはじめ、
ジョー・ウォルシュ、ピーター・フランプトン、ジェフ・リン、
デイヴ・スチュワートといった旧友総出でリンゴを支える。
ほんとうに人徳の厚い人なのですね。

アルバムはもうリンゴといえばこうという音で、
それが嫌いなら聴かなければそれでいい、ただそれだけ。
曲はすべてリンゴと参加メンバー誰かの共作ですが、
僕としては1曲は有名な曲のカヴァーを入れてほしかった。
というのも5年前の前々作に収められていたバディ・ホリーの
Think It Overがよかったからで、前作は(今見直すと)すべて
オリジナル曲だったから、僕も古いねぇ、となるのかな。
リンゴはまだまだ元気で音楽を楽しんでほしいですね。



☆7枚目



THE VISITOR
Neil Young and Promise Of The Real
(2017)


12月に出たばかりでまだ数回しか聴いていない
ニール・ヤング&プロミス・オヴ・ザ・リアルの新作。
ニール・ヤングは今年は過去音源発掘シリーズの
HITCHHIKERも出ていましたが、純粋な新録音である
こちらを取り上げることにします。

バンド名はついているこれはニール・ヤングの今の
ハードな面を出すためのバンドということになるでしょう。
今回は妙なフレーズが耳にこびりつく曲が多いですね。
典型的なのがベスト曲でもある5曲目Carnival。
珍しくラテンのノリにラテンっぽい哀愁系の歌メロで
"Carnival"とコーラスを繰り返すサビは、な、な、なんだ、と。
でも何度か聴くとやっぱり心のどこかに突き刺さって来るのが
ニール・ヤングのニール・ヤングらしいところで、
そこはいささかも失われていないのはよかったです。
これから聴いてゆくかな。



☆8枚目



DARK MATTER
Randy Newman
(2017)


ランディ・ニューマンのこの新譜は8月に出ていたことを
12月になって知り慌てて買ったもの、間に合ってよかった。
ランディ・ニューマンって「大阪のおばちゃん」みたい。
男性ですが、でも「おばちゃん」。
いやこれは僕の勝手なイメージでしかないのですが、
そうかそういうノリの人だったかとあらためて思いました。

音楽でいえば、この人は南部のスウィング感覚が
体の芯までしみ込んでいる人なのだとこちらも再認識。
ロックンロールとかできないのかなぁ。
あ、別にやらなくてもいい、人それぞれ個性があるから、
でもロックンロールを変に歌う「大阪のおばちゃん」を
勝手に想像してひとりで笑ってしまう僕なのでした。
まあ、楽しめる1枚、いい意味で相変わらず、よかったです。
まだ数回しか聴いていなくてベスト曲は選べませんでした。



☆9枚目



HERE
Alicia Keys
(2016)


2016年後半に出て昨年取り上げなかった2枚にも触れます。

アリシア・キーズ現時点での最新作。
これがですね、正直最初は「むむむっ」と。
生の感覚というか、ちょっと昔風にいえばアーシーな音。
都会的に洗練されたネオソウルとは違う。
こんなざらざらした音もできたんだって、ひとまず感心。
でも、2009年リリースのTHE ELEMENT OF FREEDOMを
2000年代で好きなアルバムTOP10くらいに好きな僕としては、
これはちょっと違うのではないかと。
買って10日ほどで何度か聴いて、暫く塩漬けにしておいて、
この記事を書くのに10か月ぶりくらいに聴いたのです、実は。
印象は変わらなかった。
でも、その音が好きな自分がいた。
遅くなりましたがこれから聴き込んでゆくつもりです。
だからこのアルバムのベスト曲はまだ選べません、悪しからず。



☆10枚目



DARKNESS AND LIGHT
John Legend
(2016)

なんだ、結局10枚になりましたね(笑)。
ジョン・レジェンドのこれも2月に既に出ていたことを知り、
やはり慌てて買いました(慌てる必要ないのかも、ですが)。
まあAll Of Meのような大量殺戮キラーチューンは
そうめったに出るものではないとして、それは事前から
そうだろうとは思っていましたが、それを抜きにすれば
やっぱりいい歌が多くて素晴らしい。
Love Me Nowなんて最高レベルのヒット曲だし。
ただこれ、All...とは正反対、アップテンポでなんだか
焦るような、煽るような感じの曲ではあります。
今回は音楽的ギミック感に凝っている曲が多くて、
作り込んでいる感じが強く、その点ややロック寄りかもしれない。
そしてだから僕はそこが好きなのかもしれない。
しかしその割に全体的に落ち着いた雰囲気なのは、
もはや10年選手となった貫禄がもたらすものなのでしょう。

ベスト曲は1曲目I Know Better。
これですが、最初に聴いてローリング・ストーンズの
You Can Always Get What You Wantに似てるなぁ、と。
パクリとかではなくて、でも雰囲気似せてるかもしれない。

ジョン・レジェンドは僕の中で安定期に入りました。
今回記事のために久し振りに聴いて、やっぱりよかったし。



クラシックからも新録音の新譜を1枚。





SIBELIUS
Leif Ove Andsnes
(2017)


クラシックで新録音の新譜は今年はこれ1枚しか買っておらず、
しかもこれも12月になってから知ってのものでしたが、
買ってからは毎日聴いているので取り上げました。

日本盤には「悲しきワルツ~シベリウス」と邦題がついていますが、
その通り、シベリウスのピアノ小品を集めた1枚です。
最近ショパン以外のピアノ曲を聴きたくて(ショパンはあるから)、
でもピアノソナタとなると多少は構えて聴かなきゃと思ってしまう、
何かいいのがないかなと思っていたところでこれをネットで発見。
感情が零れ落ちてゆくような繊細な響きの音は冬によく合う。
アンスヌスはノルウェイのピアニスト、フィンランドではないですが、
まあ北欧ということでイメージは損なわれるものではないですね。
ただ、録音の音が低くて音が小さいのがやや難点かな。
そういうイメージの曲に合っているといえばそうかもですが。


そして、うん、やっぱり今年はこれに触れないわけにはゆかない。




GREATEST HITS
Tom Petty & The Heartbreakers
(1993)


トム・ペティの死。
いまだにそれを語りたいとは思えない。
さすがにもう受け入れてはいるのですが。

シャナイア・トウェインがビルボード初登場No.1の週に
2位だったのがトム達のこのベスト盤でした。
もう14年前に出たアルバムですが、それが2位まで上がる、
シャナイアが相手じゃなきゃ1位だったかもしれないというくらいに
トム・ペティはアメリカで広く親しまれ人気があったんですね。




 Refugee
 Tom Petty & The Hearbreakers
 (1979)


さて、今年もお読みいただきありがとうございました。

どれくらいのペースになるか分からないけれど、
来年もまたよろしくお願いします!








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