フィル・コリンズのリイシュー盤がなんだか「妙」だ・・・

guitarbird

2016年07月03日 21:49

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フィル・コリンズのスタジオアルバム8作のリイシュー・リマスター盤が
昨秋からほぼ隔月で2枚ずつリリースされ、この6月に完結しました。

今のところすべてボーナストラック付き2枚組デラックスエディションのみ、
アルバム単発でのリリースはないですが、今後はどうだろう。

このリイシュー盤がなんだか面白いというか「妙」で、
ぜひ記事にしたいと。
  
何が面白いかって?
冒頭マーサと一緒に写っている3作目NO JACKET REQUIREDの
ジャケット写真をご覧ください。

なにか「妙」じゃないですか?

どうやらこれ、リイシュー盤に合わせて、今のフィルが
オリジナル通りに新たに撮影し直したもののようです。
つまりリリース当時のジャケット写真ではない。

「妙」というか、面白い、そこからまず
フィル・コリンズのユーモア感覚が伝わってきますね。

ここからは1作ずつ、新ジャケットと旧ジャケットを並べ、
アルバムについてとりあえず短く話してゆきます。
写真は上が新盤、下が旧盤オリジナル、並び順にご注意ください。


◎1st FACES VALUE (1981) ※30歳



下のオリジナル、フィルの肌に張りがありますね。
こんなに若かったのかと逆に今驚いたくらい(笑)。

僕はこのアルバムは完全な後追いですが、高校時代に
ラジオで聴いたIn The Air Tonightにちょっと驚きました。
僕が知っていたフィル・コリンズはポップさ一筋、
曲調で暗いものはあっても、この曲にあるぬめっとした不気味さに
この人の恐さのようなものを感じ、ただのポップな人ではない、
なかなかやるなあ、すごい人じゃんと。
当時はジェネシスのMamaにも驚いたものですが、その後で
これを聴き、なるほどそういう人だったのかと理解できました。 

その曲は後にJ-WAVE日曜朝の「トヨタ・カリフォルニア・クラシックス」
という番組で、他の人が
"I can hear the TOYOTA CALIFORNIA CLASSCS on J-WAVE"
と歌詞を変えてジングルのように使われていたことで、
僕の生活に溶け込んだ曲となりました。

しかしアルバムは20代の頃にCD買って何度か聴いただけだったので、
今回リイシュー盤を聴いても他の曲はほぼぼ覚えていませんでした。
今回聴いた感想、意外と重たくなかった。
その曲のイメージに引っ張られ過ぎていたようですね。
5曲目Droned、アフリカンビートにのったアフリカ風の激しい
スキャットを聴いて、やっぱりこの人ただ者じゃないと再認識しました。
そしてビートルズTomorrow Never Knowsを
最後にカヴァー、これが嬉しい、この人カッコいい。




◎2nd HELLO I MUST BE GOING (1982) ※31歳




この角度では今の写真の頬骨の出っ張りが目立ちますね。
そして目つきも、若い頃の真剣さに齢を重ねた
思慮深さが加わっています。

僕がリアルタイムで初めて接したフィル・コリンズは、
中学時代、ここからのシングルヒット曲You Can't Hurry Love、
「ベストヒットUSA」を観始めた頃に流れました。
言わずと知れたダイアナ・ロス&スープリームスNo.1ヒット曲の
カヴァーですが、ビデオクリップのフィルがキューピー人形みたいで、
翌日朝のクラスメートで「おもろいおっさんやな」と
なぜか関西弁もどきでみんな言い合ったものです。
その曲はすぐにカヴァーと知りましたが、
日本ではフィルのカヴァーがあってから
オリジナルも見直されてCMで使われたりもしました。

しかし当時LPは買わず、1作目同様20代にCDを買うだけ買って
ほとんど聴いていないに等しく、アルバムの印象がまるでなかった。
今回やはりこれも思っていたよりずっとポップで、
スープリームスのその曲をカヴァーで選んだ理由も分かったし、
やっぱりジェネシスでABACABを作った人だとよく分かりました。
 
まあ逆にいえば、僕にとって2作目までのフィルのイメージは
ほとんどIn The Air Tonightだったということで、
イメージの刷り込みって恐ろしいなと。




◎3rd NO JACKET REQUIRED (1985) ※34歳



このアルバムは、なぜか汗をかいているフィルが当時は
恐かったのですが、新盤ではほとんど「妖怪」と化していますね・・・
やっぱり頬がこけたのがいちばん変わったところですね。

アルバムについてはもう話し出すと長いのですが、
フィルのアルバムでもいちばんよく聴いたし、
僕がLPで買ったリアルタイムのアルバムでもいちばん
聴いた回数が多い1枚だと思う、とだけ話して次に行きます。
何曲かは記事にしましたが、アルバムもそのうち。




◎4TH ...BUT SERIOUSLY (1989) ※38歳



新盤では目つきが険しくなっているのは一貫していますね。
そしてこのアルバムも若い頃は意外と
肌の艶がよかったんだって(笑)。

このアルバムは当時、グラミー賞を取った3作目以上の
傑作だと言われました。
今回リイシュー盤を聴いて、僕もそう思う。
「AORではない大人のロック」を構築した、そんな感じですね
(決してAORを非難してはいません念のため・・・)
タイトルも、フィル・コリンズは明るく陽気でお茶ら気もしかねない
おじさんというパブリックイメージが出来上がった後で、
「だけど真面目なんだよ」というそのユーモアがいい。
Another Day In Paradiseは重たいメッセージソングであり、
そこも評価が高かったところ。
I Wish It Would Rain Down邦題「雨にお願い」は
エリック・クラプトンが参加し素晴らしいギターソロを聴かせる
抒情的な名曲で、今回あらためて惚れ直しました。

そして今はこのアルバムをCDプレイヤーに入れっ放しで
聴き込んでいます。
元々このアルバムは当時おざなりに聴いていただけに、
いつかしっかりと聴き込もうと思っていたのです。




◎5th BOTH SIDES (1993) ※42歳



お気づきかと思いますがここまで5作みな顔のアップ。
フィル・コリンズは、かつて「顔のきれいな小遊三」と
「大喜利」で言っていた三遊亭小遊三師匠に通じる
キャラがあるのではないか、と。
ハンサムではない(イケメンという言葉は使いたくない)ことを
逆手に取ったのも、キャラクターとして
フィルが受け入れられた部分でしょうね。
まあ、額から上が写っていないのは内緒ということで・・・

アルバムは当時ほぼまったく聴いていないに等しく、
MTVで流れた曲しか知らない。
この頃から弟がCDを買うようになったのだと思う、
僕は持っておらず、弟が聴き終ったら借りてかけた、
それすらうっすらとそうじゃなかたったかと思うくらい。
フィルへの興味も薄れていました、白状すれば、
それは4作目を真面目に聴かなかったことを引きずっていたのだと
今にして思うけれど。

ただ、表題曲のタイトルを歌う部分が
「おっさんがひとーり」に聞こえる空耳が面白かった。
 
今回聴くと、うん、やっぱりフィル・コリンズはフィル・コリンズ、悪くない。
そのうち聴き込みたいですね。




◎6th DANCE INTO THE LIGHT (1996) ※45歳



下のオリジナルでは、全体に動きがある中で顔だけ
ぶれが少なくてよく見えるという、写真を撮る人間からいえば
かなり高度なテクニックを駆使していますが、
新盤では意図的かカメラマンが違うからかどうか分からないけれど、
顔がぶれた上で影になっていますね。
正直言えば、顔も同じような感じにしてほしかった、
個人的にはちょっとばかり残念。
(オリジナルはもしかして合成写真で今回はそれを嫌ったのかも)。

で、このアルバム、わけあって当時まったく聴いていません。
わけを聞くのは野暮ということで(笑)。

でも、聴かなかったおかげで音楽に個人的な思い出が
沁み込んではいないので、今なら冷静に聴けるかも。
 



◎7th TESTIFY (2002) ※51歳



さすがに今との顔の違いが少ないですね。
鼻横の八の字型の小じわはこの頃から目立ってきたんだな。
そしてやっぱり顔のアップに戻っています。

これは当時弟が買いましたが、コピーコントロールCDだったので
聴く気が失せました。
MTVも観なくなっていたので、これはまったく知らないに等しい。
と思ったけれどシングル曲はやっぱり知っていたのは、
さすがフィル・コリンズといったところか。

もちろんそのうち聴き込みたいと思っています。




◎8th GOING BACK (2010) ※59歳



これだけ大きくデザインもポーズも変えているのは、
さすがに子供の頃の写真と今とでは違和感あり過ぎるとの判断か。
それはそれで納得する反面、ここまで来たら
同じでやってほしかった気もしないでもない。

アルバムはほぼモータウンのカヴァー集ですが、
これがとってもいいですね。
昨年また引っ張り出してきて聴いたくらいに気に入っていますが、
ソウルのマナーによる「ソウルフル」な歌い方ではない、
こういうソウルの歌い方もあるのかと感心しました。
これはひとつの芸だと思いますね。
おかしなレトリックですが、「黒っぽくないけどソウルっぽい」、
そんな歌い方。
それを割と自然にやっているのは、
そういう資質があるということなのでしょうね。

曲ではスティーヴィー・ワンダーのBlame It On The Sun、
TALKING BOOKのアルバムの中の1曲としか
それまでは思っていなかったのが、
フィルの歌が僕にその本質と魅力を気づかせてくれました。
Papa Was A Rolling Stoneの緊迫感ある歌い方もはまっています。

ただ、今回のリイシュー盤では曲順を少し変えているのが
ちょっとばかり残念。
キャロル・キングのGoing Backは最後にあるからよかったのに。
まあでもそれは、今は次のアルバムを作っているという
フィルの意気込みなのでしょうね。

新作は期待したいです。

ボーナスディスクはライヴがメインですが、長くなったのでそれはまた。



さて、ここまでほぼほめる一辺倒で来ましたが、
ひとつだけ大きな大きな不満を。

ジャケット写真を今の姿で撮り直すという試みは
非常に面白いし大拍手もので僕も好きです。

しかし、オリジナルの古い写真を今回まったく使っていないのは
納得できない。

ないんですよ、裏にもブックレットの中にもどこにも。
裏をオリジナルの写真にしたり、ブックレットの中に入れたり、
別の紙に印刷して挿入でもよかったのに(コストかかるだろうけど)。
オリジナルはやっぱり大切にしてほしいという思いは、
僕にもありますね、残念。

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3作目のブックレットは、オリジナルのCD同様、
表が歌詞カード、裏がピンナップとなっていますが、
ここには当時の写真が使われています。

だから余計にオリジナルジャケット写真が欲しかった。

もしかして今の写真はデラックスエディションだけで
アルバムはオリジナルで出直したりするかも。
 
しかしですね、こうして並べて見ると明らかに違うのに
同じ人だと分かるという人間の能力の不思議も感じました。
人間は相手の目と鼻と口の位置関係でその人を認識している
という話を聞いたことがありますが、それにしても面白いですね。


最後は今朝の3ショットにて。

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