2015年のCD新譜Top10+

guitarbird

2015年12月31日 12:29

01



毎年大晦日恒例、良かったCDの記事です。
昨年まではポピュラー音楽の新録音による新譜のみを
ここで取り上げてきましたが、今年から変えました。
ポピュラー音楽の新録音の新譜はTop10として紹介し、
後半では旧譜でもリイシュー盤でも、ジャズもクラシックも含め、
初めて聴いた音源はすべて対象にします。



★新譜Top10

☆1位


CROSSEYED HEART
Keith Richards

栄えある2015年新譜の第1位はキース・リチャーズ!!
予想していたよりもうんとローリング・ストーンズっぽいのが嬉しい。
昨年のストーンズのコンサートでキースはいかにもおじいさん
という感じで、アルバムももっと枯れていると予想していたので、
この颯爽とした姿にはいい意味で驚かされました。
しかも、事前に何も知らずに聴き進めると、11曲目Illusionで
なんとノラ・ジョーンズの声が!
思わず「ノラだ!」と言いそうになってしまいました!
キースなかなかやるじゃん(笑)。
僕の選ぶベストチューンは、でも、もろストーンズのTroubleで。





☆3位


DUETS : RE-WORKING THE CATALOGUE
Van Morrison

ヴァン・モリソンの新譜が出たからには入れないわけにはゆかない。
自分の曲を1曲ずつゲストを招いてデュエットした企画盤ですが、
もはやスタンダードといえる曲にヴァンさんの存在感の重さを感じます。
ゲストもスティーヴ・ウィンウッド、マーク・ノップラー、ジョージ・ベンソン、
メイヴィス・ステイプルズ、タジ・マハール、マイケル・ブーブレから
ジョス・ストーンと幅広いジャンルや年代の人が集まっていますが、
なんといってもSome Peace Of Mind、ボビー・ウーマック最後の声。
涙を誘い、感謝の念が湧いてきます。
ベストチューンもその曲、意味が大きいですね。



☆4位


CASS COUNTY
Don Henley

ドン・ヘンリーの新譜は、郷愁を帯びたカントリー路線。
ただ、カントリーチャートで1位を記録したからカントリーなのだろうけど、
本人はカントリーだどうだとは特に意識せずに聴いていた、
小さい頃の音楽をやってみたかったということでしょう。
それが基礎となり、アメリカの「国民ロック」であるイーグルスになった。
この郷愁、音の響き以上にドンの気持ちが色濃く反映されています。
ところでこの邦題、「カス」だったのか、「キャス」ではないのか・・・
なんだか「カス」と書かれると妙に間抜けな・・・
ベストチューンは郷愁マックスのTake A Picture Of This。



☆5位


TENDERNESS
JD Souther

JDサウザーの新譜は、セルフカヴァー集NATURAL HISTORY
以来4年振り、しかし寡作の彼にしては早いリリースでした。
普通のロックに慣れているとこの音はジャズっぽいと感じるのですが、
JDにはその辺がニュートラルな感覚なのだろうなという自然さがある音。
声の若々しさは相変わらず、そのせいかこちらはドン・ヘンリーとは逆で、
懐かしいというよりは、今でも青春を謳歌している感じがしますね。
60歳になった今でも、夜の酒場で、照れ笑いを浮かべながら
口説き文句を言っているのかな、なんて姿を想像します。
僕はJDよりはるかに年下だけど、このアルバムより老けている。
そう感じてしまうところが自分としては寂しいのですが(笑)。
でも逆にいえば、僕の中に眠っているそういう心が
触発される(た)のかもしれない。
ベストチューンはDance Real Slow、表題曲がない代わりに、
この曲で"Tenderly"と歌うのが印象的、真に優しい音楽です。



☆6位


THE BOOK OF SOULS
Iron Maiden

ブルース・ディッキンソンが咽頭癌との闘病生活。
心配しましたが、活動再開できるほどに回復。
晴れてリリースされたアイアン・メイデンの新譜は2枚組超大作。
宇宙に飛んだ前作とは違いそれこそ地に足がついた音作り。
1970年代ハードロックぽさが色濃いのは意外でした。
作品としては文句なく大好きで弟の評価も高いのですが、
やはり2枚組というのは聴くのに心的抵抗がある。
構えて聴かなければならないし、日々物理的に時間が足りない。
僕が、途中でやめたりピックアップして聴ける性格だったら
よかったかもしれないですが・・・(笑)。
ベストチューンは、これほどまでに70年代っぽいとはと驚かされた
1曲目のIf Eternyty Should Fail。



☆7位


SHADOWS IN THE NIGHT
Bob Dylan

ボブ・ディランの新作はなんと、彼のアイドルだったという
フランク・シナトラを中心としたスタンダード集。
音楽の「ミスマッチ感覚」がこれほどまでにスリリングなものとは。
しかも、そんなものを落ち着いてじっくりと聴かされてしまうとは、
ディランはほんとうに歌うことが好きなんだなと再確認したしだい。
来年また来日公演がありますが、この中の曲は歌うのかな?
行きたいけど、ううん、4月は無理だな・・・
ベストチューンはLucky Old Sun、もったりとした中に
光明が差し込んでくるような味わいのある歌唱です。



☆8位


BORN TO PLAY GUITAR
Buddy Guy

バディ・ガイには、おおこれぞ「ドブルーズ」という音を聴かせてもらえた。
前作ではロックっぽい音に寄り過ぎた、それはそれで悪くはない。
ブルーズを好んで聴くようになってほんとによかったと実感。
しかし驚いたのが、ヴァン・モリソンの参加。
その曲だけどう聴いてもヴァン・モリソンの世界。
冷静にいえば浮いているんだけど、ヴァン・モリソンだから
その浮き具合が嬉しいことこの上ない。
でもやっぱり「ドブルーズ」を求める人にはただ浮いているだけかな。
ベストチューンはもちろんその
Flesh & Bone (Dedicated to B.B.King)。
今年亡くなられたB.B.キングに捧げられたものでもあります。



☆9位


A FOOL TO CARE
Boz Scaggs

ボズ・スキャッグスのR&Bフリークぶりを堪能できる1枚。
ボズ、今年は札幌に来てくれました、感謝。
コンサートでもこの中の曲を演奏しましたが、終演後のロビーには、
この新作を買い求める人の列が出来ていたのは、
新譜が出ていたことを知らなかった人が多かったのでしょう。
僕が行ったコンサートでCDを買うのにこれだけ行列ができたのを
見たのは初めてでした。
ベストチューンは国内盤ボーナストラックで申し訳ないですが、
インプレッションズのGypsy Woman。
でも、コンサートではアンコールのLast Tango On 16th Street
が印象的でした。



☆10位


UPTOWN SPECIAL
Mark Ronson

80年代洋楽で育った人間には音の響きが懐かしい。
もちろん安っぽいキーボードはもっとしっかりした音になっていて、
物理的な音の響きは同じではないけれど、サウンドプロダクションが。
冒頭いきなりスティヴィー・ワンダーのハーモニカが入った曲で
始まりますが、80年代にはハーモニカで客演することが多かったことも
思い出され、うまい仕掛けです。
気合を入れて聴くものではなく、かけておくと気持ちがいい音楽。
懐かしいという感慨はやはり人の心を動かすものなのだ。
「パクリ」とか「二番煎じ」などと言う人もいるかもしれないが、
僕はそこまで冷淡にはなれない、音楽を愛しているから。
それに「懐かしさ」という感慨は齢を追うごとに大切なものになってきている。
過去にしがみついているのではない。
過去の良い思い出があるから人間は生きてゆけるのだから。
その極め付けがUptown Funkであり、2015年に出会った新曲で、
同率1位でこの曲が好き、当然このアルバムのベストチューンもそれ。


次点として3枚を短く

・BLACK MESSIAH ディアンジェロ
 プリンスっぽいのは意外でした、癖になる1枚

・TRACKER マーク・ノップラー
 「現代のトラッド」路線はますます充実してきました。

・4 NIGHTS OF 40 YEARS LIVE ロバート・クレイ・バンド
 活動40周年を凝縮したダイジェスト的ライヴ盤。


02


レンズ曇っちゃったぁ・・・(笑)


続いて旧譜部門。
ポップス、ジャズ、クラシックという順番です。




SONGBOOK
Allen Toussaint
(2013)

アラン・トゥーサンは今年スペインで亡くなられました。
前夜までコンサートを行っており、あまりに急なことで・・・
このCDはピアノ弾き語りにより自分の曲を紹介したライヴ盤で、
彼は近年何度か来日して小さな会場でのコンサートを行っており、
また来日したらこんなコンサートに行きたいと思っていました。
それが、かなわぬ夢に。
今年も多くのミュージシャンが亡くなられましたが、僕個人としては、
急だったことも含め、アラン・トゥーサンの訃報が最もショックでした。
R.I.P.
ベストチューンはWith You In My Arms。
アーロン・ネヴィルで知っていた曲ですが、この曲の優しさといったら。






LET'S MAKE A DEAL
Z.Z.Hill
(1978)

Facebookで記事を見るまで名前すら知らなかったZ.Z.ヒル。
早速買い求めると、もうそれこそはまりました。
純粋なソウルがディスコに駆逐されかけていた70年代後半に
孤軍奮闘するマラコレーベルから出た本格的ソウル。
マラコの話はピーター・バラカンさんの本で読んでいて、いつか
聴いてみたいと思っていたのがここでつながりました。
純粋なソウルだけど新しさもあるUniversal Loveがベストチューン。





DREAM ON
George Duke 
(1982)

ジョージ・デュークのShine Onが例のAMの洋楽リクエスト番組で
かかっていて、僕はその曲を知らず、ジョージ・デュークが大好きな
友だちにメールで話を聞くと、彼の日本で最も有名な曲だという。
知らないのも悔しく(笑)、早速買って聴いてみたところ、はまりました。
ほぼフュージョンといえるファンキーなR&B、でしょうか。
もう少し泥臭い人かと思っていたら都会的でスマートな音楽。
いい意味で、真剣に聴くのではなくかけておくと非常にいいですね。
なお、気に入ったので近い年代のもう1枚を買ったのですが、
同じような感じで(当たり前か)、最初ほどインパクトがなかった、
ということは一応付け加えておきます。
ベストチューンはやっぱりShine On。





WHAT TIME IS IT?
The Time
(1982)

先日、NFLミネソタ・バイキングスのホームの試合を観ていたところ、
プレイの合間の現地映像でザ・タイムのJungle Loveがかかっていて、
ミネアポリスサウンドは今でも息づいているんだあ、と妙に感動。
その曲はこのアルバムには入っていませんが、それを含め、
ザ・タイムのカタログが今年国内リマスター廉価盤でリリース。
20年くらい前からずっとザ・タイムを聴きたいと思っていたのが
ついに叶いました。
アルバムではこれ、キレと粘りの驚異的な共存が素晴らしい。
777-9311がベストチューン、さいたまのソウルマニア友だち絶賛。
余談ですが、今年はR&B系旧譜の当たり年だったようですね。





THE VICAR ST. SESSIONS VOL.1
Paul Brady And His Band
(2005)

ポール・ブレイディが昨年の好評を受け再来日公演を行う、
というニュースをFBで見るまで、僕は名前すら知りませんでした。
調べると英国のフォーク歌手、なんとヴァン・モリソンがゲスト参加した
ライヴ盤があるというので買い求めたのがこれ、よかった。
フォークですがちょっと面白い曲を書く人だなって。
ヴァン・モリソンはIrish Heartbeatを共演していますが、
彼が"Van Morrison!"と紹介して会場が異様に盛り上がる、
ライヴ盤だからその音が入っていて、ヴァン・モリソンを
コンサートで観て聴けるなんてとんでもなく羨ましいなあ、と。
ベストチューンはもちろんそれですが、全体的に気に入りました。





DUST BOWL BALLADS
Woody Guthrie
(1940)

村上春樹の本で紹介されていたのを読んだ後買ったウディ・ガスリー。
これがほんとうに気に入りました。
純粋に歌として素晴らしい、だからメッセージも強調される。
重たい話を明るい声で歌うからこそ、より重たく響いてくる。
少し聴いてからまた他のCDも買ってみよう。





OPEN SESAME
Freddie Hubbard
(1960)

フレディ・ハバードのこれ、タイトルの如くひとつの物語を紡いでいます。
似たようなモチーフが何度も出てきて強調されていて、
物語に気持ちよく浸ったまま最後までたどり着きます。
ジャズはインプロビゼーションを楽しむもの、そうかもしれないけれど、
アルバム至上主義者の僕は、このように作り上げられた音楽を
より身近に、分かりやすいと感じます。
ジャズでこういう作品があるのは意外でもありました。
ただ、これ逆に、聴く以上は物語に浸っていたいので、
気軽にかけることができない、そんな大切な1枚となりました。





ADAM'S APPLE
Wayne Shorter
(1966)

一方、ウェイン・ショーターのこれ、はっきり言います。
なぜ、どこが、どういいのか僕にはまるで分かりません。
でも、なぜかこのCDがとっても気に入りました。
今年買ったジャズのCDではいちばんかけた回数が多かったはず。
きっと分からないけどいいというのもジャスの魅力なのでは、と。
ウェイン・ショーター自体僕が大好きなジャズマンではありますが。





RAINBOW SEEKER
Joe Sample
(1978)

ジョー・サンプルのこれもまた懐かしい音。
しかし、マーク・ロンソンのように追体験としての懐かしさではなく、
僕が洋楽を聴く前に世の中に流れていた音楽であって、
音楽自体ではなく、小学生時代を懐かしく思い出したという感じ。
何だろうね、人間のこの懐かしむという気持ちは(笑)。
もちろん音楽としてもとても気に入ったのですが、正直、
5年前の僕なら気に入らなかったかもしれない。
7年前にソウルを真剣に聴くようになり、そこからジャズも見直し、
フュージョンにつながった今だからこそ好きになったようなもので、
やっぱり音楽には聴くタイミングがあるんだなと再認識。
ベストチューンはMelodies Of Love、この手の脆い曲を聴いて
感動したのは久し振りのことでした。





BRAHMS:PIANO CONCERTOS Nos.1 & 2
Helene Grimaud
(2013)




MOZART:PIANO CONCERTOS Nos.19 & 23
Helene Grimaud
(2011)




RACHMANINOV:PIANO SONATA No.2;
CHOPIN:PIANO SONATA No.2,
      BARCAROLLE, BERCEUSE
Helene Grimaud
(2006)

2015年は結局、エレーヌ・グリモー様の年だったわけです(笑)。
その中から3点、特に気に入ったものを。

ブラームス・ピアノ協奏曲は元々大好きな曲でしたが、
グリモーの精緻で清らかな演奏に魅力を再発見。
特に2番はオケもウィーンフィルとあって、この曲の決定盤かな。

モーツアルトは、グリモーの生真面目さと曲の遊び心が
合わないかなと聴く前は危惧していましたが、さにあらず。
実は彼女もユーモアがあるけれど普段は隠しているのかな。
ピアニストとしての技量以上の奥深さを感じたCDでした。

ラフマニノフとショパンのピアノソナタを集めたCD。
ここは当然オケがないソロ演奏曲ですが、彼女の演奏は
リズム感、ドライヴ感、グルーヴ感がいかにも現代的で、
要するにノリのいい音楽であることが分かりました。
ショパンの2番ソナタは例の「葬送」ですが、僕はこれ、
寝る前に聴くとなんだか妙に落ち着くんですよね。
ただ、このCDのジャケットは今風の女の子っぽ過ぎて、
音楽はそうだとしても、ちょっと違うかなあ、と・・・
いやもちろんお美しい!





SCHUBERT: FORELLEN-QUINTETT
(1993)

もちろんクラシックはグリモー様だけではないですよ。
シューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」。
ジェイムス・レヴァインをピアノに迎えたこの盤も、
僕の中ではリファレンス、最も気に入った盤となりそうです。
今や軸足を指揮者の方に移しているレヴァインですが、
ピアニストとしても優れ技巧と感性の持ち主だと分かりました。
それにこのCDは鱒が水面を跳ねる絵のジャケットがいい。
グリモーのショパンとともに今年最も多く聴いたクラシックCDです。
それにしても楽しい!





BEETHOVEN:COMPLETE PIANO SONATA
Maurizio Pollini

今年最後に紹介するCDは
マウリツィオ・ポリーニのベートーヴェン・ピアノソナタ全集。
ベートーヴェンが優れたメロディメイカーであることに気づきました。
そして、ピアノソナタ第12番 変イ長調「葬送」の第2楽章、
まさに「葬送」の部分は、今年聴いたCDで最も心に響いてきた。
僕が死ぬ時はこの曲をかけてほしいですね。
8枚組を全部聴き込むにはまだ至っていないのですが、
途中からジャズっぽいリズムになる曲もあったりと、ベートーヴェンは
強面でいながらユーモアのある人だったんだと分かりました。
ポリーニの演奏はどうだ、というのは正直まだ自分の言葉で
言うことができないのですが、これはとっても気に入りました。
今後当面ベートーヴェンのソナタは他のピアニストのCDは要らないなと。
それにしても、これが5000円くらいで買えてしまうのだから、
クラシックの箱ものCDも安くなりましたね。
だから次々買ってしまいそうで危険でもあるのですが・・・(笑)。


03


いかがでしたか!

今年は家でCDを聴く時間の半分はクラシックでした。
でも、それは別に意識したものではなく、自然な流れ。
2016年はどういう音楽を気に入って聴くかも分からない。
自分の中に何が聴きたいか、自然と浮かんでくるのが楽しいのです。
だから来年も基本はそのスタンスで聴いていくことでしょう。


さて、今年1年お読みいただきありがとうございます。

来年も平常通り元日、つまり明日から記事を上げてゆきます。
倒れたり不測の事態がない限りは、ですが(笑)、
だからさらりとご挨拶のみにて失礼いたします。

みなさまよいお年をお迎えください。


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