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早いものでもう7月、2015年も上半期が終わりました。
そこで今日の記事は、「2015年上半期CDTop10」です。
新譜も旧譜も合わせ、その音源を初めて聴いたもので
良かった10枚をランクアップ方式で紹介します。
では早速。
☆1位
BRAHMS CONCERTOS
Helene Grimaud / Andris Nelson
(2013)
今年上半期の1位はエレーヌ・グリモー様とさせていただきました。
昨秋、ERATO音源のボックスセットをジャケット買い。
その美しさと人間性に魅かれ、もはや彼女なしの生活なんて・・・
いや、ここはレコード評だから冷静に(笑)。
ブラームスのピアノ協奏曲は元々1番も2番も大好きでしたが、
その演奏の決定打と巡り合えたのが大きい。
しかも2番はウィーンフィルというのが嬉しい。
彼女の演奏は「精緻」で、清らかで、透明感が高い。
そして彼女自身が過度に演奏に反映されていない。
この部分は人で聴く人には物足りないかもしれない。
もちろん僕も人で聴いているといえばそうだけど、
彼女の存在で聴いているのであって、気持ちではない。
彼女の気持ちが要らない、というわけではないけれど、
人間性が濃く出ている演奏はその人と合わないと疲れるものです。
ああ、何を言っているか自分でも分からなくなってきたぞ(笑)。
音楽を音楽として聴きたい人にはこの演奏は向きますが、人間性で
選ぶ人であれば、彼女を好きにならなければ受け付けないでしょう。
彼女の性格は、なんとなく人を心にあまり入れ込まない人、
冷たい、と紙一重のように最近は思う、とだけ書いておきます。
しかしやっぱりこのジャケット写真は美しい!
僕が買ったすべての女性演奏家のジャケット写真で1番!
ああ困ったもんだ(笑)。
ほんとはモーツアルトもベートーヴェンもピアノ協奏曲良かったので、
それも取り上げたいけど、節操がないのでやめました。
☆2位
DUETS : RE-WORKING THE CATALOGUE
Van Morrison
(2015)
2位はヴァン・モリソンを入れないと怒られますね(笑)。
いや、ひいき目なしでもやっぱり2位です。
あ、いや、ヴァン・モリソン大好き人間だから、やはりひいき目か(笑)。
まあそれはともかく、ヴァン・モリソンが自分の歌をゲストを招いて
デュエットするという企画、待ってましたよ。
スモーキー・ロビンソンでもありましたが、この企画はいいですね。
冒頭からボビー・ウーマックの「遺言」、嬉しいようでやっぱり悲しい。
若手からヴェテランまで幅広い人選も納得。
僕個人はスティーヴ・ウィンウッドの参加が嬉しい限り。
ヴァン・モリソンの音楽は、ロックでも、ジャズでも、ケルトでも
なんでもない、ただの「音楽」としてこの世に存在する。
そのことがよく分かった1枚でした。
詳しくは
こちらの記事をご覧ください。
3位
TENDERNESS
JD Souther
(2015)
JDサウザーの新譜が出たことは、ちらとだけ触れました。
早く単独記事を上げようと思いつつ、この場が先に来てしまいました。
やっぱり、JDの音楽は深いですね。
ジャズの要素を感じられるのがその最大の要因でしょうけど、
そういう意味ではヴァン・モリソンのアメリカ版といえるかもしれない。
「永遠の青年ヴォイス」も枯れていない、不思議な感覚。
やっぱり夜に聴きたい音楽ですね。
というわけで、今月中に単独記事を上げたく、続きは後ほど。
3位
5位
OPEN SESAME
Freddie Hubbard
(1960)
ジャズからも1枚、フレディ・ハバード。
このアルバムの存在は前から知っていたけれど、
ジャズもまた少し聴くようになり、買ってみました。
これが素晴らしい!
勝手なイメージで話して申し訳ない部分もありつつ話すと、
ジャズって、特にモダン以降ではインプロビゼーションを中心として
スリル、二度と訪れないマジックの瞬間、そして演奏技術を楽しむもの、
というイメージが僕には強くあります。
もちろんそれを否定するなんて大それたことは言いません。
このアルバムもそういうイメージで聴いたところ、驚きました。
アルバム全体の完成度の高さ、モチーフの統一性、コンセプトが
はっきりしているなど、「アルバム至上主義者」の僕は、
ジャズにもこういうのがあったのかと膝を打ちました。
似たようなモチーフの曲が手を変え品を変え出てくる感じで、
入り込んだ者は二度と放さない、完璧な世界観がある。
基本的にラテンとジャズの邂逅、といった趣きで、
むしろラテンものとしても聴けるのではないかな。
さらにはラテンを通してアフリカもほのかに感じられる。
僕はフレディ・ハバードは名前しか知りませんでしたが、
このアルバムは、ジャズ全体の中でもしかしてマイルスの
KIND OF BLUEの次に好きかも、というくらい気に入りました。
その次のBITCHES BREWと同率くらいかな。
聴いて損はない1枚と申しておきます。
02
6位
LET'S MAKE A DEAL
Z.Z.Hill
(1978)
Z.Z.ヒル。
2月まで名前すら知りませんでした。
Facebookで、山下達郎氏がこの中の曲が大好きという記事を見て
興味が湧き、国内盤紙ジャケットだけどすぐに注文しました。
山下達郎氏は音楽を聴くということはないのですが、でも、
強く感じ入るものがありました。
もうひとつ、「Z.Z.トップ」みたいな名前も気になりました(笑)。
買って聴いて大正解。
78年ということでポストディスコでありブラコンの時代ですが、
そういう流れにはまったく乗っていない正攻法のソウル。
濃い、でもこの人の声とサウンドはどこか明るくて抜けている。
その絶妙のバランスがいい、そこが新しい感覚だったのでしょう。
曲も山下達郎氏が好きなUniversal Loveをはじめ、もちろんいい。
彼はこの後マラコに移籍し、マラコのソウルはピーター・バラカン氏が
著書でほめていたのを思い出し、この後の2枚も買いましたが、
やっぱりそれも素晴らしかった。
3枚合わせて6位、といった感じでしょうかね。
やっぱりソウルは深い、と、あらためて教えてくれた人です。
☆7位
TRACKER
Mark Knopfler
(2015)
マーク・ノップラーのこれは、5月の新譜の記事でも触れましたが、
今回はそこに書いたことを、以下にほぼそのまま引用します。
***
マーク・ノップラーのこれ、今回一番いいと思うアルバム。
まあ、いつものマーク・ノップラー節ではあるんだけど、
今回のはとりわけ歌としていい曲が揃っている感があります。
中でも4曲目Skydiverはフレンチポップ風で意表を突かれた。
6曲目Broken Bonesのかんなで削るようなギターの響きがいい。
他、どの曲も説得力を持って響いてきます。
別に今までのアルバムが曲が良くなかったというわけではないけれど、
歌としての曲の良さに今回は重きを置いたのではないかと推測します。
ギタープレイは言うに及ばず。
心の中をくすぐられるような音色と決めのフレーズは健在です。
ところで僕は、僭越ながら、彼の音楽をこう名付けました。
「スコティッシュ・アメリカーナ」
ブルーズだのカントリーだの以前の段階で、スコットランドから
移住した人々がアメリカで演奏していた音楽の雰囲気を感じさせる。
彼のソロ時代のアルバムは、アメリカへの強い意識がありつつ、
もっと「大きくて深い」アメリカを目指したものなのだろう。
「懐かしい」という言葉が、地域限定のものではないと感じます。
まあ、それはダイア・ストレイツ時代から大筋変っていないんだけど、
マークのルーツを求めた長い旅はまだまだ続いてゆきそう。
それに付き合えるのは、音楽聴きとして幸せだなあと感じました。
***
今回引用したのは、実は、僕がこの文章を気に入っているのです。
いつもこれくらいの長さでアルバム評が書ければなあ、と
常々思っていたのが、この時はできた、というわけです。
マーク・ノップラーはヴァン・モリソンにも参加していますが、
ヴァンさんは職人肌のマークがいかにも好きそうと、納得でした。
8位
A FOOL TO CARE
Boz Scaggs
(2015)
ボズ・スキャッグスの新譜。
正直、前作MEMPHISの方が好きなのですが、これも好きだし、
札幌に来てくれたのでもちろんTop10入り.
今回のアルバムもカヴァー曲を中心としたものですが、彼が、
ビートルズ以前、1960年前後のR&Bフリークであると分かりました。
今の彼の音楽はエネルギーがみなぎっていて、70を過ぎて
いい場所にたどり着いたんだなあと思います。
ボニー・レイットを迎えたHell To Payでは彼女との相性が良く、
同じ方向を向いていることが感じられてほっとする1曲。
一方ルシンダ・ウィリアムズを迎えたWhispering Pinesは逆で、
異質なものを求めて激しくぶつかり合っているスリルがいい。
あと僕は、国内盤ボーナストラックの、カーティス・メイフィールド
というよりインプレッションズのGypsy Womanが好き。
コンサートではこのアルバムから2曲演奏しましたが、新譜が
出ていたことを知らなかったのか、帰りにCDを買い求める人が、
今までのコンサートで一番というくらいに多かったのが印象的でした。
あらためて、ボズありがとう、そして誕生日おめでとう、でした!
9位
SCHUBERT : "FORELLEN-QUINTETT"
(TROUT QUINTET)
Levine / Hetzel /Christ / Faust / Posch
(1993)
9位はシューベルト「ます」。
春先に突然「ます」を聴きたくなり、ネットでCDを探したところ、
ジャケットの絵が断然これがよく、中古で購入。
いいですね、爽やかで、躍動感があって、生き物みたいな音楽。
ジェイムス・レヴァインは今やニューヨークMETオペラ指揮者として
君臨していますが、彼はピアノの名手でもある。
「ます」が跳ねる様子は、超絶テクニックといっていい。
それでいて身近に感じる、クラシックの中のポップな人なんだと
あらためて思いました。
「ます」も僕にはこの演奏が決定打かな。
クラシックの場合、全体はよくても細かい部分でここがどうも、とか
逆にここは素晴らしいけど全体としてはどうかな、ということが
多々あって、自分に合った理想の演奏にはなかなか巡り会えない。
しかし、一度巡り会うと、他のを聴こうと思わない。
今年上半期は、そんな決定打に2枚も巡り会えて嬉しいですね。
何が嬉しいって、もうその曲のCDは買わなくて済むから(笑)。
クラシックって実は、根詰めて聴くとお金がかかるんですよね。
まあそれはともかく、夏に聴くとまた涼しくていいですね、「ます」。
なお、このリンクのCDは「ます」、併録曲が僕のと違いますが、
僕が買ったのはもう廃盤で、併録も弦楽四重奏「死と乙女」で
こちらの方が聴きやすいかと思い、これにしました。
10位
SHADOWS IN THE NIGHT
Bob Dylan
(2015)
最後はボブ・ディラン。
Top10とか言いながら、内容関係なくトリにしたかった。
それはともかく「歌うお化け」、あ、いや、失礼
「歌に取りつかれた」ボブ・ディランが今度歌うのは、
フランク・シナトラをはじめとしたスタンダード。
自作曲がないのは残念だけど、ボブの歌が聴ける。
もうそれだけで十分ではないですか。
と言ってしまえば身も蓋もないかな(笑)。
ボブは昨年札幌に来てくれて、その後初めて出た
新しいボブの歌声、だからこのCDは僕にも感慨深い。
買ってひと月は、結局、毎日聴いていました。
少し置いて、また聴き始めているところです。
僕の場合、買ってすぐに聴いて、少し置いてまた聴き始める、
という過程を経ると「愛聴盤」になるのです。
03
いかがでしたか!
次点はジョージ・デュークDREAM ONかな。
今家で聴く音楽の半分くらいはクラシックなのですが、
ここではクラシックは2枚、意外と歌ものが多くなりました。
まあ、そのクラシックも過半がグリモー様だから、
1演奏家1枚とした結果がこれ、ということなのですけどね。
後半にかけて、既に1枚挙げたいものがありますが、
いいCDに出会うのは幾つになっても嬉しいですね。
今年下半期は、アイアン・メイデンの新譜が出るのが、
わが家では楽しみを通り越してえらいことになりそうです(笑)。
そうそうその前に、ニール・ヤングの新譜が今日届きました。
今回はどうだろうなあ。
最後は3ショット。
04
おおっ、奇跡だ、みんなこっち見てる!