いつものように
写真へのコメントも
大歓迎です!
時にはカントリーもいい。
01
THE BLUE RIDGE RANGERS RIDE AGAIN John Fogerty
ブルー・リッジ・レンジャーズ・ライド・アゲイン ジョン・フォガティ
released in 2009
ジョン・フォガティの新譜が出ました。
昨年も出ていたので、2年連続のリリースは、
ファンとしてはうれしいことですが、今回は
カバーアルバム、
しかも、
「カントリーとその周辺の曲」ばかり集めています。
クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル C.C.R.
時代から一貫してよい曲を作り続けてきたジョンですが、
カバーアルバムであると知った僕は、
正直、最初は少しがっかりしました。
しかし、一度アルバムを聴くと、その素晴らしさに圧倒されて、
そのことは気にならなくなりました。
というよりむしろ、今この時期に、自分が知らない
「カントリーとその周辺の曲」を素晴らしい演奏で再現して
聴かせてくれたことこそがうれしいと思うようになりました。
アルバムタイトルの解題から先にいきましょう。
ブルー・リッジ・レンジャーズとは。
C.C.R.を「打ち切る」かたちで解散させた後のジョン・フォガティ、
1970年代にはレコード会社との契約闘争に明け暮れてしまい、
自分やバンドの名前を使ってレコードが出せなくなりました。
そんな1973年に、
ブルー・リッジ・レンジャーズという
「変名バンド」として、カントリー系のカバー曲を録音し
なんとかアルバムをリリースしました。
そこには有名な
Jambalayaも収録されていますが、
カバー曲を録音したのはおそらく、
著作権の問題が発生しないから、もしくはあてつけでしょう。
しかし、カントリー系の音楽も愛していて、
自らの音楽に反映させていたジョンにとって、
それはちょうどいいタイミングだったのかもしれません。
02
これがその
ブルー・リッジ・レンジャーズのCD。
このアルバムのリンクは、後に、新譜と一緒に設けました。
いろいろな楽器を演奏するジョン・フォガティの顔が見えないように、
彼の写真がシルエットになっているところに、苦労の跡が見えます。
また、その姿が、今回のアルバムジャケットにも再登場していて、
なにより今回、36年振りにそれを名乗ったということは、
ジョンもその頃をまともに振り返られるようになったのかな、
と、ファンとしてはひとまずよかったところです。
そして、だから今回はタイトルも
RIDE AGAIN。
ちなみに、
ジェイムズ・ギャングにも
RIDES AGAINというアルバムがありますが、
この言葉はアメリカの、カウボーイの常套句なのかもしれません。
とここで少しまた話がそれて、いつも言うことですが、
僕は、この
ジョン・フォガティの契約問題は、
ロック史上の悲劇のひとつだと思っています。
もしこれがなければ、C.C.R.がもっと続いていたかどうかは
バンド内の問題もあるから無理だったとしても、
ジョン・フォガティという稀代の作曲家が、もっとたくさんの曲を、
人生でも油が乗った時期にリリースできたのかもしれない
と思うと残念でなりません。
まあ、歴史のifは語ってもしょうがないのでやめますが。
なお、
C.C.R.クリーデンスの記事はこちらへどうぞ。
本題に戻って、今回のアルバムは全曲が、
「カントリーとその周辺の曲」で構成されています。
ただし1曲のみ自作の曲をリメイクしていますが、
よくよく考えると、ジョン・フォガティも(こそ)、その
「カントリーとその周辺の人」であるので、納得、
というより、入っていて当たり前だと思います。
このアルバムの音そして魅力を一言で表すと、
僕が描いている、そしておそらく世の中でイメージされている
カントリー&ウェスタン(以降これを「カントリー」と表する)を
奇を衒わずにまっすぐに表現したアルバム、です。
しかも、演奏もプロ中のプロにして成し得るもので、
そうした点でも中途半端な部分がない音作りが素晴らしい。
ジョン自身こそがとても楽しそうに演奏している様子が、
CDのどの瞬間からも伝わってきて、こちらも楽しくなりますね。
そうですカントリーは楽しいです。
ただ、ジョン・フォガティの声は、結構癖があって、
むしろソウル向きの黒っぽいフィーリングに溢れた人で、
「正調カントリー」という感じとは少し違うかもしれないですが、
しかしここではそれは問題ではありません。
とにかく聴いて楽しんで歌ってみてください。
なお、僕はカントリー系には詳しくないので、
この中では2曲しか知らなかったのですが、今回は、
読まれたかたの参考になるかもしれないという意味も含めて、
全曲、
作曲者の名前を()の中に記しておき、
調べて分かったことについてはそれも記してゆきます。
03
このポニーには乗れるのか・・・
Tr1:
Paradice
(
John Prine)
ワルツでゆったりとアルバムが幕を開けます。
なんだかほっとする。
作曲者の
ジョン・プラインは、1946年生まれ、
カントリー系のシンガー・ソングライターということです。
Tr2:
Never Ending Song Of Love
(
Bonnie Bramlett / Delaney Bramlett)
これは
デラニー&ボニーの曲だと分かりました。
ということは純然たるカントリーではないのでしょうけど、
「カントリーの周辺の曲」として違和感はないです。
でも、そう聞くと、曲が少しポップに聞こえてくるから
人間の心理というのは不思議なものです(笑)。
イントロなしに歌い始めるジョンの声がよい響き。
4ビートのゆったりとしたよく歌っている曲。
Tr3:
Garden Party
featuring Don Henley and Timothy B. Schmit
(
Rick Nelson)
これは有名、
リック(リッキー)・ネルソンの曲、ネルソンの親父。
ゲストはいきなり超大物が2人、
イーグルスの
ドン・ヘンリーと
ティモシー・シュミット。
いかにも田舎の町のパーティという、こじんまりとした雰囲気、
少ししんみりとしたノスタルジーを煽られる曲。
ドンの声が大好き、それはベスト盤の記事でも言いましたが、
今回、
ティモシー、いいヴォーカリストになったなぁと感じました。
元々柔らかい口調で繊細な心をうまく表していましたが、
ここでは、言いだしたいけど言えないもどかしさ、
青春の傷痕みたいなものが、ストレートに伝わってきます。
ところで、Merrylouって名前は歌によく出てくるけど、
日本でいうところの「花子さん」みたいなものなのかな(笑)。
Tr4:
I Don't Care (Just As Long As You Love Me)
(
Buck Owens)
バック・オーウェンスは、
ビートルズがカバーした
Act Naturallyを作曲して歌い、
前
北海道日本ハムファイターズ、現
カンザス・シティ・ロイヤルズ
の監督である
ヒルマン監督が大好きなカントリー歌手、
ということくらいは知っています(笑)。
でも、編集盤以外で彼の歌はまだ聴いたことがありません。
やっぱりCD買って聴こうかな。
エレクトリック・ギターが小躍りする、シャッフルの軽快な曲。
ここでは、
as long as you love meの部分の特にmeが、
とにかく耳につくように印象的に歌われています。
エレクトリックギターの間奏、テレキャスターの音かな、
やっぱりこの音とフィドルそしてジョンの掛け声が、いい雰囲気。
Tr5:
Back Home Again
(
John Denver)
ジョン・デンヴァーはなんとか知っています、
あの
Country Roadを歌っている人・・・
でも残念ながら、CDは持っていません。
少し前に中古でベスト盤を見つけたのですが、
どうせ誰も買わないだろうと思っていたら売れてしまい、
買う機会を逸してしまいました・・・
そのうち必ずCDを買って聴きたい人のひとりです(ずっと前から)。
ブルーグラスの香りが色濃く漂う大人しい曲。
Tr6:
I'll Be There
(
Ray Price / Rusty Gabbard)
レイ・プライスは1926年生まれ、カントリーのシンガー、
ソングライター、ギタリスト。
ラスティ・ガバードは、検索しても最初のほうに当たるのが、
このアルバムのこの曲で、調べがつきませんでした。
この曲の歌詞にはriverが出てきますが、やっぱり、
アメリカ人はriverが好きなんだなぁ、と。
これもブルーグラスっぽい感じ。
04
アオサギがいる風景・・・
Tr7:
Change In The Weather
(
John Fogerty)
これは
ジョン・フォガティ名義のソロ3作目、1986年の
EYE OF THE ZOMBIE収録の曲のリメイク。
ただし僕は、そのアルバムはあまり聴いていなかったので、
曲を覚えていなくて、ブックレットを見てから調べて分かりました。
だからか、この中ではいちばんロックっぽい重たさがある曲。
曲自体はオリジナルとあまり変わっていないのですが、
よりカントリー色が濃い味付けになっていて、これを聴くと、
曲以外で、演奏や使われている楽器も
カントリーらしさを醸し出す重要な要素であると感じます。
Tr8:
Moody River
(
Gary Bruce)
ゲイリー・ブルースなる人も調べがつきませんでしたが、
このタイトルの曲は、
パット・ブーンや
ジョニー・リヴァースが
歌っていることがHMVの曲目検索で分かり、この曲は、
1960年代に活躍した人には耳になじんだ曲なのでしょうか。
マンドリンが奏でる、イントロからずっと流れる旋律が印象的で、
曲のイメージをうまくまとめて進めています。
そしてやっぱりアメリカ人はriverが好きなんだな。
moody river, muddy waterの部分の語呂がいい響き。
ちょっと切ない感じが胸に押し寄せる曲。
カントリー・ブルーズのちょっと手前という感じで、
曲だけとるとむしろブルーズっぽい感じもします。
このアルバムの僕が選ぶベスト曲は、これか、次の曲です。
Tr9:
Heaven's Just A Sin Away
(
Jerry Gillespie)
これは、
ケンドールズ Kendallsという
カントリーの男女デュオの代表作であることが分かりましたが、
ジェリー・ギレスピーという人はプロデューサーのようです。
このアルバムは全体を通して、
ジョディ・ケネディという女性が
コーラスをとっているのですが、この曲はデュオということで、
ジョンとジョディのツインヴォーカルがとっても魅力的。
ビートルズで育った僕はやっぱり、このように2人で歌ったり、
コーラスが楽しい曲は無条件で大好きですね。
2人で、「ほぉおぅほぅ」と掛声をハモるところも息ぴったりで、
そこもまた印象に残ります。
Tr10:
Fallin' Fallin' Fallin'
(
D.Deckleman / J. Guillot / J. D. Miller)
曲目検索をかけたところ、前述の
レイ・プライスが当たりましたが、
しかしHMVの検索は、「'」が入った省略形を受け付けないので、
それ以上調べるのは断念しました。
ホップした歌い方が楽しく、さびがとにかく印象的な曲。
曲の展開もいかにもカントリーっぽいし、
間奏は、フィドルやギターが技を競うような楽しさがあって、
ああ、カントリーもいいなぁと思い直す曲。
Tr11:
Haunted House
(
Robert L. Geddins)
ロバート・L・ゲディンズは1913年生まれのブルーズマン。
曲目検索をかけたところ、
ロイ・ブキャナンも演奏していて、
それは僕が持っているアルバムに入っていました・・・
余談ですがロイ・ブキャナンのそれは雰囲気が好きなので、
これを機にまた聴き直そうかな。
これは最初に聴いた時から、曲自体はブルーズっぽい雰囲気だと
思いましたが、まだブルーズとカントリーが近かった、
そんな時代の名残りの曲なのかもしれません。
間奏のせり上がるようなフィドルと、ロイ・ブキャナンつながりか、
テレキャスターの音が華やかに踊りまくっています。
なんだか楽しい曲。
僕は、ラストの前に軽やかに盛り上げる曲を置くという
アルバムの流れが実は大好きだったりします。
Tr12:
When Will I Be Loved
featuring Bruce Springsteen
(
Phil Everly)
最後の最後によく知っている曲が出てきました(笑)。
これは「Phil & Don」の
エヴァリー・ブラザーズの曲で、
リンダ・ロンシュタットのカバーも有名。
僕はリンダのを先に聴きましたが、エヴァリーも大好きです。
そして聴き応えたっぷりのアルバムの最後の曲のゲストは、
な、な、なんと、
ブルース・スプリングスティーン。
アメリカを代表するシンガーソングライターの共演!
もうそれだけで鳥肌もの、僕は満足(笑)。
それまでコーラスだけで「この人誰だろう」と思わせたところに、
間奏でいきなりジョンが喋り出し、それに応えたのが、
誰がどう聴いてもボスの声、ちょっと漫談のような雰囲気。
そしてボスの独唱が始まる。
この登場の仕方、もうカッコよくて背筋がぞくぞくします!
喋りで出てくるのがカッコいいし、ボスの声の質というか存在感、
もうそれだけでもすごい。
そしてボスの独唱を聴いて勝手に想像したのですが、
ボスという人は、「ここをこうして歌ってください」と指示しても
絶対にその通りにしなそうな人、そんな感じもしました(笑)。
エヴァリー・ブラザーズの曲ということで、
ヴォーカルが2人必要だったのでしょうけど、
その相手としてボスを選んでくれたのは、
ファンとして、音楽好きとして、もうこれ以上ない贈り物ですね。
最後まで楽しいままアルバムが終わります。
左が今年の新譜AGAIN、右が1973年の「1st」。
曲がシンプルなだけに、歌メロの素晴らしさが
ストレートに伝わってきて、ついつい歌ってしまいます。
世の中にはまだまだ「鼻歌によい曲」がたくさんあるんだな、
と、歌メロには人百倍こだわる僕としては(笑)、
うれしい発見があったアルバムですね。
歌っていいなぁ。
そして、そんな音楽を見せて聴かせてくれた、
ジョン・フォガティ。
僕の敬意はますます大きくなりました。
秋の陽気がいい日のドライブにはいいですよ。
特に、北海道にはぴったりのアルバムです。