CENTERFIELD ジョン・フォガティ

guitarbird

2013年07月26日 20:53

01


CENTERFIELD John Fogerty released in 1985
センターフィールド ジョン・フォガティ

ジョン・フォガティの80年代の名盤が、
25周年記念盤として、ボーナス・トラックが2曲追加されて出ました。
このアルバムは僕のリアルタイムの中でも特に意味が大きく、
いつか記事にしようとずっと思ってきていたのですが、
ちょうどいいきっかけがあったので、ついに書きました。

ジョン・フォガティは、言わずと知れた、C.C.R.
クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル
Creedence Clearwater Revival
のフロントマン。
僕はC.C.R.が大好きといつも言っていますが、
実は、順序としてはジョン・フォガティのソロを先に聴き、
後からC.C.R.のすごさを知ったのでした。

85年のこれは僕のリアルタイムで、ジョンが「復活」したアルバム。
当時高3の僕はまだジョン・フォガティは知らなかったのですが、
ベスト・ヒットUSAで最初にTr1のビデオクリップが流れた際に、
小林克也さんが、彼がいかに大物かをいつも以上に熱く語っていて、
そんなにすごい人なの、と頭に「???」3つくらい並びました。
曲は、重たくてちょっとブルージーでカントリーっぽい響きで、
いかにもアメリカ人が好きそうな音楽だなと思い、
当時は既にアメリカン・ロック人間と化しつつあった僕は、
大物の件と絡めて、かなり気になり、少しして、
当時の僕としては思い切ってLPを買いました。
聴いたところ、音楽的なことももちろんですが、
この人の声のキレがとにかくものすごいと思いました。
それまで聴いたことがない、とにかく凄い声の人だと。

ジョン・フォガティがなぜ「復活」したかというのは
これまたいつも言う、アメリカのロック史における汚点のひとつ、
契約問題のこじれによるものでした。
C.C.R.は、所属していたFantasyとの契約が残ったまま解散してしまい、
ジョンも最初は別レーベルからソロを出していましたが、やがて
C.C.R.の契約期間が満了するまでレコードを出すことができない
という事態に陥り、活動休止を余儀なくされてしまいました。
それでもレコードを出したかったジョン、苦肉の策として、
ブルー・リッジ・レンジャーズ The Blue Ridge Rangers
という変名を使ってリリースもしましたが、
それについてはこちらもご参照ください。

時は経ち、ジョンはWarnerと契約し、晴れて活動再開となりました。
アメリカの人がどれだけ彼の復帰を待ち望んでいたかは、
「C.C.R.サウンド復活」と大きな話題となった上に、
アルバムがビルボードでNo.1に輝いたことからも分かります。
今回のリイシュー盤では、当時の新聞記事の切り抜きが
コラージュ風に並べられ、当時の様子をうかがい知ることができます。

アルバムタイトルの「センターフィールド」は、野球が大好きなジョンが
小さい頃からの野球とロックへの思いを込めて表現したものでしょうけど、
ロックのアルバムというのはダブルミーニングのものが多く、これは
「音楽の真ん中に戻ってきた」ことの宣言とも受け取れますね。
まさに、「C.C.R.の音が復活」したのです!
その後のジョン・フォガティは、売れ線に微妙に色目を使いつつも、
そこに走ることなく自分らしい音楽を発表し続けています。
よかった、と思うのですが、でもやはりしつこい僕は、
暗黒の契約期間がなければな・・・と、思わなくもないです。
しかし、逆に、休めたことがその後の活力につながっている部分も
あるでしょうし、外野の僕がとやかく言うことではないですかね。

なお、アルバム本編すなわちTr9までの曲は、すべて、作詞作曲、
歌、楽器演奏、アレンジなどをジョン・フォガティひとりが行っており、
彼の才人ぶりもよく分かります。
(All songs written by John Fogerty)


02 LPはポーラより大きい・・・後ろのハウは白トビで見えない・・・


Tr1:The Old Man Down The Road
晴れて活動再開となったはずのジョン・フォガティ、
しかし、またまたトラブルに見舞われます。
復活作の1stシングルであるこの曲が、C.C.R.時代の
Run Through The Jungleに酷似しているとして、
C.C.R.の曲の版権所有者から訴えられたのです。
これ、どちらもジョン・フォガティ自身が作曲しているので、
自分で作った曲が自分で作った曲の盗作と言われた、というわけ。
僕は、それは個性の範囲内でいいのではないかと思うのですが、
版権所有者が違うため、訴訟社会アメリカでは、
このような事態に発展したのでしょう。
しかも、ジョンがギターを持って法廷の場に立ち、
自ら歌って証言するということにまでなりました。
繰り返します、僕としては、同じ人が作っているのだから、
ある程度似るのは当たり前というか、それが個性だと思います。
実際、僕は、この2曲は似ていると思うのですが、
だからといってそれでジョン・フォガティの評価がどうということもなく、
むしろユーモアの範囲で彼が好きと言える部分でもあります。
それはともかく、シングルチャートでも10位を記録するヒット曲をもって、
ジョン・フォガティは華々しく復活したのは間違いないことでした。
この曲は間奏のギターソロが、テクニック的には難しくないけど、
「ギターソロは歌の流れ」という見識にのっとった印象的なもので、
高校生の僕には、そのことがよく分かるギタープレイでした。


Tr2:Rock And Roll Girls
当時、レコードの針がここに来た瞬間、うれしさ爆発しましたね。
タイトルのごとくシンプルなGの3コードのロックンロールで、
すぐにギターを持って弾き始めていました。
歌いだしの部分の歌詞を書き出すと
♪ Sometimes I think life is just a rodeo
「人生はロデオみたいだと思うことがある」
ううん、そうきたか、さすがアメリカ、と僕は唸りました。
その"rodeo"の部分で声がヨーデル風に引っくり返るのが印象的です。
この曲、3コードと書きましたが、サックスのソロが入る間奏のみ
Emが入って4コードになっていたり、そもそも同じコード進行で
AメロとBメロを用意したりと、シンプルなようで実は結構凝った曲です。
ロックンロールだけど激しくなく、人を見る目の優しさを感じる曲です。


Tr3:Big Train (From Memphis)
この曲の2つの偶然。
ひとつは「てっちゃんソング"train"編」で取り上げましたが、
その記事を書いた時はまだ、この25周年記念盤が出ることを知らず、
少しして、弟がこのCDを持っていたのを見て驚きました。
もうひとつはもちろん、シェリル・クロウの新譜との偶然。
メンフィスは名前は当時から知っていましたが、しかし、
ソウルのメッカであることは、ずっと後になってから知りました。
だからこのLPを聴いた当時は、ただなんとなく、
少年が列車を見つめている情景だけを思い浮かべました。
これもやっぱりどう聴いてもC.C.R.風、もちろんいい意味で。


Tr4:I Saw It On T.V.
テレビで見た政治経済社会そして音楽にまつわる思い出を
実名を出さずに振り返ってゆく、ノスタルジックな曲。
1コーラス目の最後、ビートルズ The Beatles
Please Please Meのイントロのあのハーモニカの旋律を
ベースで奏でているのがうれしい限り。
後にはそれを受けて、"four guys from England"という歌詞も。
そして最後は自分の曲であるWho'll Stop The Rain
イントロのアルペジオを彷彿とさせる音で終わっていて、
60-70年代ノスタルジーに浸れる曲。
テレビがノスタルジックというのは、今の僕はそう感じますね。
このアルバムを知った深夜のMTV番組、タイヤのCM、
続けて見ていた白バイ野郎、共産圏の国の臨時ニュース、
吹き替えの映画、ローカルCM、夜中の静止画・・・
音楽は思い出と深く結びついていますね。


Tr5:Mr. Greed
これが当時は話題になった曲。
「ミスター・グリード」つまり「強欲さん」とは、
自分がレコードを出せないように手を施した
Fantasyレーベルの社長を指していますが、僕は後に、その人物が
ソウル・ゼインツ Saul Zaentzなる人であることを知ります。
僕も、これはよっぽどひどい人なんだなとこの曲で思ったのですが、
何年かして、僕にしては意外なところでその人の名前に接します。
僕が好きな映画十指に入る1本である「アマデウス」を手がけた人、
それが、ソウル・ゼインツだったのです。
ちなみに、このアルバムよりその映画のほうが先ですが、
僕は映画をアルバムより後に観ていました。
彼が手がけた映画では、「アマデウス」「カッコーの巣の上で」
「イングリッシュ・ペイシェント」
と3本がアカデミー賞に輝いているように、
ソウル・ゼインツ氏は映画製作者としては有能な人です。
でも、ジョンにはとにかく許せない人だったのでしょうね。
ただ、ゼインツ氏も、Fantasyレーベルの社長になった頃は、
まだまだショウビジネスのことがよく分かっていなくて、
とにかく契約社会だからそれを優先させただけなのかもしれません。
とはいえ僕は、後からそのことを知ったのですが、それ以降、
「アマデウス」が大好きというのはなんとなく
ジョンに申し訳ないと感じるようにも、少しですが、なりました。
曲はまさに強欲一直線の重たいロックンロールで分かりやすいです。
そして今回聴き直すと、これがかなりカッコいい曲。
高音を張り上げて歌うジョン節が炸裂していますが、
それが決して爽快には聴こえないのがミソ。
こうして考えると、やはり聴きどころが多いアルバムです。

03 札幌ドームのセンターフィールドは・・・B.B.!?


Tr6:Searchlight
思わせぶりなイントロからしてもうC.C.R.の世界が炸裂!
カントリーとソウル(R&B)とロックがうまく混ざり合っている
ジョン・フォガティの音楽世界がよく分かる1曲。
まあ、混ざり合っているというよりは、むしろ
それらは不可分なものかもしれないのですが。


Tr7:Centerfield
今や札幌ドームではおなじみの曲。
といって、曲名までは知られていないかな・・・
この曲、札幌ドームのファイターズ戦の試合中、回と回との間に、
エレクトーンで演奏されて場内に流れています。

もしかしてカントリー系の音楽が大好きで自らCDも出している
ヒルマン前監督の選曲かもしれないですね。
僕は、これがあるから札幌ドームが好き、ともいえます。
ハンドクラップで軽快に始まる、心が小躍りする楽しげな曲。
歌詞にはJoe DiMaggioが出てきますが、ジョー・ディマジオは、
サイモン&ガーファンクルのMrs. Robinsonと
ビリー・ジョエルのWe Didn't Start The Fireにも出てくるように、
アメリカでは最高の野球選手のひとりなのでしょうね。
歌詞にはまた、Brown-Eyed Handsome Man
チャック・ベリー Chuck Berryの曲のタイトルも出てくるに及んで、
この曲はまさにロックと野球へのオマージュといえるでしょう。
そしてジョンは、昨年、ヤンキー・スタジアムが新装された際に、
最初の試合のセレモニーでこの曲を歌ったということです。
このようにこの曲は、音楽の世界を飛び出て親しまれており、
まだまだ年を経るごとに広がっている、そんな曲でしょうね。
そんな名曲が最初に出てきたところに僕は立ち会い、
その後もだんだん広がってゆくのを見て感じていたのは
ファンとしてもうれしい限りです。
ギター弾きのはしくれともしてひとこと、この曲は、
リズムギター、歌のバックの演奏の部分が聴きどころ満載で、
まさにこういう風に弾けると楽しい、というギターになっています。
バットがボールに当たる瞬間のSEも入って、ひたすら楽しい曲。

さて、ここで写真を1枚。
04


これは、今回の25周年記念盤のブックレットにある写真で、
おそらくこの曲のビデオクリップの1シーンだと思われますが、
おい、いくら野球とロックを愛しているからといって、
ストラトキャスターを持って打席に立つなんて!
と突っ込みたくなりますよね(笑)。
でも、スウィングするのは大変でしょうね、打っても壊れるでしょうし。
もしかしてバント専用かな(笑)。
ただ、ストラトのネックに使われているのはメイプル材で、
アメリカではバットにも使われていて、松井秀樹選手が、
日本で使っていたバットがアオダモだったのを
アメリカでメイプルに変えたという話を聞いたことがあります。
ジョンが着ているユニフォームがぴちぴちでヘルメットが小さい、
そんなところにも僕は時代を感じました、懐かしい。
横に立てかけてあるのは、ファイターズが札幌ドームに移転して
5周年の時にもらった記念のボールペンです。
ファイターズのセンターフィールドは糸井選手でもう不動ですね。
あんなに化けるとは、正直、思っていませんでした(笑)。
今回は糸井選手の写真を使いたかったのですが、
探したところ、うまく撮れた写真がなかったのが残念でした。


Tr8:I Can't Help Myself
疾走系のシンプルなロックンロール。
アルバムの最後の前にアップテンポでささっとまとめに入る
という流れが僕は大好きだったりします。
これももろC.C.R.路線ですが、盗作問題に絡めて補足すれば、
ジョン・フォガティの曲はコード進行もシンプルなものが多いし、
基本的にはブリッジがなく展開しない曲ばかりな上に個性が強いので、
他の人よりも似てしまいやすいかな、と僕は考えます。
繰り返しますが、ファンとしては、そここみで大好きなのですから。


Tr9:Vanz Kant Danz
そして最後はとにかく印象的な曲。
当時は僕はLPをカセットテープに録音して寝る前に聴いていたことは
今まで何度か書き、その際に、B面の最後のほうの曲は
たいがい寝ていて覚えていないと言っていました。
しかしこのアルバムは、最後のこの曲がいちばん印象的でした。
なんというのかな、不気味だったんです。
歌メロが呪文みたいで、コーラスともども、全体的にねちっとした曲。
寝る前に聴くだけ余計に、それが至って感覚的に響いてきました。
それもそのはず、この曲も、ゼインツ氏を豚に喩えて皮肉ったものです。
踊りは出来ないけど人のお金を盗む豚、というモチーフで
強引にいえば、ビートルズのYou Never Give Me Your Moneyの
ジョン・フォガティ版と言えるかもしれません(笑)。
よっぽど腹にすえかねていたのでしょうね。
この曲、最初は"Zanz Kant Danz"と
Zaentz氏の苗字を彷彿とさせるものだったのが、
やはりそれではということで"Vanz"に変えられたということです。
なお"Kant Danz"は"Can't Dance"の発音の訛りだと思われます。
当時、シングルカットされた際に作られた、
豚のクレイアニメのビデオクリップが話題にもなりました。
そのようなどろどろした内容だから余計に恐かったのかもしれません。
しかしこれ、インパクトは大きな曲ではあると思います。
「踊れない」と歌いながら心地よく踊れそうなミドルテンポの曲。
ソウルっぽいけどソウルじゃない、そして何でもない、
ジョン・フォガティの咀嚼力の大きい音楽世界を堪能できます。
ただ、今回はボーナスが2曲入りましたが、
それがなければアルバムは35分くらいしかなくて、
もっと聴いていたい、短すぎるのが最大の不満ですね(笑)。


さて、ここから2曲は25周年記念盤のボーナストラックですが、
どちらも自作ではなく、また他のメンバーも演奏に加わっています。

Tr10:My Toot Toot
これは調べたところ、Rockin' Sidneyの1984年の曲で、
作曲者自身もアコーディオンでここに参加しています。
テックス・メックスというかロス・ロボスっぽい感じの楽しい曲。
この曲は多くの人にカバーされているようですが、
僕は今回初めて聴いて知りました。


Tr11:I Confess
こちらは作曲者が(T.Vann-N.Nathan)となっていますが、
僕の力では調べがつきませんでした。
パワフルに歌いまくるR&BでCDが終わります。



25周年記念盤とはいっても、2曲追加になっただけで、
価格も安く、こちらがこれからは通常盤になるのでしょう。
Amazonのランクは7/26時点で1820位、意外と高いですね。
やっぱり名盤は聴き継がれてゆくのかな。
ほっとしました、うれしいです。

そして当時は、札幌にプロ野球チームができるなんて
夢にも思っていなかった。
ファイターズが北海道にやって来て、僕の中では
このアルバムの意味はさらにますます高まりました。

時は更に流れ、先ほどこれはWarnerから出たと書きましたが、
現在のジョン・フォガティは、元の鞘というか、
Fantasyレーベルが所属しているUniversalから、
C.C.R.時代など過去のカタログを再リリースしていて、
このアルバムはGeffenレーベルとなっています。
僕と弟は、リマスター盤がFantasyから出ると聞いて、
信じられない、嘘だろ、と話したものですが、
ジョンはジョンで人間が丸くなり、レーベルのほうは、
もはやアメリカの宝物であるC.C.R.をようやく正当に評価し始めた、
というところだと思いたいです。

最後に、このLPを買った頃の思い出話をひとつ。
僕がこのLPを買った高校生の頃は、当時は五番街ビルにあった
初代のタワーレコード札幌店にそれこそ入り浸っていました。
当時は、僕より若い人は弟以外は一度も見かけたことがなく、
それが密かな自慢だったのですが、ある日、年末のセールの時、
当時中学生と思われる、僕より若い人を店で初めて見ました。
レジに並んでいたその人が手に持っていたLPが、
このCENTERFIELDだったのですが、それを見て、
なんだか負けたぁ、と、僕は意味もなく思いましたとさ(笑)。

05


今朝の記事のグローブとハウは、
この記事のちょっとした予告編でした。

いつかこのグローブで
札幌ドームのファウルボールを捕るぞ!

なんて、高いのか低いのか、よく分からない志ですかね(笑)。



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