01
All My Loving
The Beatles
(1963)
The Beatles 44/213
ビートルズの曲の記事です。
WITH THE BEATLES1曲目、2曲目ときたので、
そのまま3曲目にいきましょう。
何の偶然か、今の僕の気持ちにぴったりのこの曲を。
All My Lovingはビートルズ2枚目のアルバム
WITH THE BEATLESのA面3(=CD3)曲目として
1963年11月22日に世に出ました。
作曲者はレノン・マッカートニー、でも実際はポール、
リードヴォーカルもポール・マッカートニーです。
この曲は1963年7月30日(火)、アルバムのためのセッションで
録音されましたが、その日の最後に取り組んだ曲であって、
もしかすると暦日ではもう7月31日(水)だったかもしれません。
いつもの本ではこの曲もあまり詳しいことが書かれていません。
通常通りのセッションの曲ということなのでしょう。
楽器も普通にエレクトリックギター2本にベースとドラムスであるし。
では曲を。
☆
All My Loving
The Beatles
(1963)
この曲はまさに「愛らしい」曲ですよね。
ビートルズでいちばん好きという人も多いかもしれないし、
そうではなくてもほぼすべての人が「好き」と言うのではないか。
僕自身がまさにそうですね。
好きな曲を上から20曲並べていくと入らないかもしれないけれど、
この曲はなぜか特別扱いしたくなります。
20曲挙げてから、「ああ、あとAll My Lovingはもちろん大好きだよ」
といった感じで。
シングルヒットしなかったけれどファン以外でも知っている人は多い、
そんな曲でもあるでしょうね。
そしてこの曲、『ジョン・レノン・プレイボーイ・インタビュー』での
ジョンの言葉がとてもいいのです。
***
これは残念なことにポールの曲だよ(笑)。
原稿にここで「(笑)」と入れておいてくれよ。
くやしいほどいい曲さ。
(ジョンが歌い出す)
バックで思い入れたっぷりのギターを弾いているのが僕。
***
くやしいほどいい曲。
ポールとお互いの才能を認め合った上での
ジョン最大最高の賛辞ですよね。
この本の中でも僕がいちばん好きなジョンのコメントがこれで、
愛情が言葉の端々からこぼれ落ちていますね。
ジョンもやっぱりポールは好きだったんだ、ということもあるし、
この曲を「特別扱いしたい」という人々の思いを代弁している。
思い入れたっぷりのギター。
あの「三連符」ですね。
ビートルズが好きなギター弾きは必ず通る門でしょう。
僕も中学の頃にビートルズの音楽を解説した本で読み、
弾くようになりました。
もちろん、人前で演奏できるほどにはできないですが。
この曲はベースも密かに素晴らしい。
そのビートルズ解説本では「ランニング・ベース」という
奏法の例として紹介され、さらに少し前にここで触れた
「ポール・マッカートニー・サウンド」という楽譜本には
フルでベース譜が載っており、弾いて覚えました。
僕の中では初期の密かなベース名演として、これと
Please Please Meを挙げたいです。
ジョージ・ハリスンのギターソロもやはり解説本に楽譜もあって、
それも覚え、2フィンガーピッキングという弾き方を知りました。
もし僕がグレッチのギターを買ったら、間違いなく
最初にこのギターソロを演奏すると思います(笑)。
だから、リンゴ・スターのドラムスが叩ければ、
僕はこの曲を演奏できることになります。
多重録音で一人で録音したり、なんてことはしないし
できないけれど。
でもまあ、そういうビートルマニアも多いでしょうね。
02 ※CDなし、WB「日陰」の1枚
この曲が愛らしいのはもちろん
歌詞が愛情に満ちているからでしょう。
どこかに旅に出る男性が恋人と会えなくなって寂しい、キッスをしたい、
毎日手紙を書くからね、僕の愛のすべてを君に贈るよ、というもの。
初めて読んだ中学生の頃、この男性はどうして旅に出るのだろう、
と思ったものですが、よくよく考えると簡単なことで、これは
ポール・マッカートニーがコンサートで地元を離れる時に
恋人に対する思いを告げた、ということなのでしょう。
戦争に行くほど悲惨な響きはないし、もしそうであるなら
「愛らしい」曲にはならなかったでしょうから。
つまり、これも実はポールの実体験から来ている。
ラヴソングなんてほとんど実体験から来ているものなのだ、
と僕は最近この齢になって漸く漸く気づいた次第。
でも、実体験が基になってはいても、ポールの場合、
ジョン・レノンのようなある意味えぐい直接的な表現とは
まったく違って聴こえてきますよね。
ポールの場合は普遍性が感じられる言葉を選んで
歌詞を紡いでいっていると僕は思っています。
しかもそれが意図的ではなくほぼ無意識のうちの行われる。
一方でジョンは事実を描写してゆく。
ジョンとポールの歌詞の違いの根源はそんなところでしょう。
しかもその言葉がこれ以上ないほど音符にきれいに乗っている。
出だしの
"Close your eyes and I'll kiss you"なんて、
若干21歳の若者が考えたにしては言葉の乗りが完璧すぎる。
もうそういうセンスを持って生まれた人としか言いようがない。
次の
"And then while I'm away, I'll write home everyday"
この ♪ あん(ど) ぜん わ~ぃる あぃむぁうぇぇい
という言葉の響きが僕は最高に好きだったりしますが、特に
"And then while"はこの音符の並びにはこれしかないというくらい。
ところで、この曲では「毎日手紙を書くよ」と言っています。
昨日口ずさんでいて、ここの部分に引っかかりました。
手紙って速くて翌日に着くものですよね。
それを見た恋人がすぐに返事を出したとしても、
自分が書いたことへの反応が分かるのは最短2日後、
ということになります。
毎日手紙を書くような相手にこの2日は大きな穴だっただろうなあと。
もし自分が書いたことで相手が気を悪くしていたらどうしよう、
などなど、僕だったら気持ちが滅入ってしまうかもしれない。
しかし幸い今の世の中にはe-mailというものがある。
メールの場合すぐに相手の反応が分かる。
さらに今は「ライン」なるものもある。
だけどやっぱり、メールでもすぐに返事が来ないと
不安になることはある。
ほんとうに2、3日返信が来ないこともあるけれど、
そうではなくても返信まで間があるとやっぱり気になる。
その点、この曲で歌われていることは、
長いか短いかの違いだけで、会えないことの寂しさ、不安は
いつの時代になっても同じであることがリアルに響いてきます。
ただ、今の人はメールのせいでせっかちになっているかも(笑)。
この曲が「愛らしい」のは、そうした寂しさや不安を
まったく感じさせずに明るく振る舞っていることであり、
その明るさも嘘ではないと伝わるからではないかと。
"tomorrow I'll miss you"なんて爽やかに歌っているけれど、それは、
会えないことの不安をプラス思考で会う時のパワーに変えている。
そんなポジティヴさがこの曲の人気の秘密かもしれません。
でも、後に僅かなほろ苦さが残る、そこがまたいい。
ラヴソングは実体験から来ている。
僕はそう書きました。
でも。
聴く側に実体験がなければ、曲の持つリアルさが
ほんとうは伝わっていないのかもしれない。
最近僕は、そのようにも思うようになりました。
All My Lovingを僕はもう35年以上聴いてきていますが、
ほんとうにリアルな歌であると、つい最近、気づきました。
この曲は2013年と2015年のポール・マッカートニー来日公演でも
演奏されましたが、ポールが歌い始めた瞬間、
その場の空気が和んだように僕は感じました。
歓声も上がり、いや、歓声というかなんだろう、ため息に近い
「ああっ」という声だったように記憶していますが、この曲は
曲名の通り、本当に愛されているんだなと実感しました。
しかしいろいろ書いてきましたが、とどのつまり、
この曲は歌メロが「愛らしい」、まさにそこでしょうね。
自分で口ずさんでみれば分かります。
何と素晴らしく楽しい歌メロであることか。
発語することで言葉が口の中でとろけて脳に伝わり、
言葉と音が自分の体すべての感覚になるような歌。
しかもそれでテンポが速い、だから気持ちがのるし心地いい。
世の中にある最高の「歌」のひとつだと思います。
ところで。
All My Lovingで手紙を書くことを歌っていますが、
WITH THE BEATLESのA面の最後には、
マーヴェレッツのカヴァーPlease Mr. Postmanが入っている。
ビートルズは男性だから歌詞を男性側の視点に変えていますが、
女声コーラスグループのマーヴェレッツは当然女性側の視点。
つまり、ポールが書いた手紙を待っている恋人がそこにいる。
偶然かどうか分からないけれど、上手くできていますね。
このアルバムは手紙と結びつきますね。
最後にどうでもいい話。
この曲を自分でギターを弾いて歌う場合、バンドではなくてですが、
三連符で弾くと歌いにくいしギターの音が大きすぎるんですよね。
でもじゃあどういうビートで弾けばいいかというと、
どうもしっくりくるものがない。
今のところ(仕方なく)三連符で弾いて歌っています。
まあ、多くの人の前で歌うことはないだろうから、
それでいいのです(笑)。
03
最後は3ショット、と思いましたが、
今日はハウが2回出たのでマーサとポーラを。
キャバリア2頭の2ショットも珍しいかと。