01
Yesterday
The Beatles
(1965)
The Beatles 41/213
今日はビートルズの1曲。
Yesterday
あまりにも有名ですよね。
NHK風にいえば「世界記録を集めた本」つまりギネスブックに、
「世界で最も多く録音された曲」として載っているそうです。
それほど有名な曲だから、どういう経緯で作られたなどといった
逸話には事欠かない。
ネット検索すればいくらでも出てくるし、
僕がここでまたわざわざ書くものでもない。
だから今回はあえて、
僕の思いと感じてきたことだけを話させていただくことにします。
今なぜこの曲か。
前回の記事で僕はPMFのコンサートに行き、
今は弦楽四重奏曲に凝っていると話しました。
そのコンサートの帰り、ふと頭に浮かんで聴きたくなったのが
Yesterdayだったのです。
ビートルズ1のCDは車のコンソールボックスに積んであるので、
ラジオを止めてすぐにCDをかけて聴き、
家に着くまで繰り返し聴き歌っていました。
その夜はギターを弾きながら歌い、翌日以降も車の中で聴き、
家でも歌っています。
Yesterdayが弦楽四重奏の演奏を入れているから、
というのが聴きたくなった理由でしょう。
ポール・マッカートニーがギターを弾いているので、
厳密にいえば弦楽五重奏ということになるのかもしれないですが。
弦楽四重奏という言葉に僕が初めて接したのは
やはりYesterdayだったと思う。
僕はそれまで、というより30歳になるまで、
学校で聴かされた以外はクラシックをまったく聴いていなかったので。
ということを書き込みのやり取りの中で書いて、
そうだ、記事にしようと。
ここで最初の映像。
☆
Yesterday
Paul McCartney
You-Tubeでたまたま見つけましたが、
ここ10年くらいのテレビ番組か何かのショーの映像でしょうね。
ポール自身がこの曲が生まれるまでを
ジョーク交じりで語ってくれているのが面白いですね。
字幕もあるのでぜひ見てください。
弦楽四重奏をバックにレコードに忠実に演奏しているのがまた
嬉しいですね。
◇
Yesterday
僕の時代、ビートルズといえばYesterdayでした。
僕自身、ビートルズを聴く前から曲とタイトルを知っていました。
いつどんなきっかけで覚えたのかはまるで覚えていない。
時代の中にその曲と言葉が転がっていたのを、
赤ちゃんが言葉を覚えるかのようにいつしか身についた
感覚だったのかもしれない。
なんせビートルズが解散してまだ10年も経っておらず、
毎年のように再結成が噂されていたような頃だったから。
僕と同じくらいの世代では、ビートルズに限らず、
なんとなく知っていた洋楽の曲が結構あるのではないかと思います。
時代の感覚ですね。
いつも言いますが、僕が最初にビートルズを自分の意志で聴いた
NHK-FMを録音したカセットテープにももちろん
Yesterdayは入っていました。
すぐにYesterdayをレコードで聴きたくなり、僕が2枚目に買ったLPが
HELP!だったのは、Yesterdayが入っていたから。
ちなみに1枚目はアメリカ編集ベスト盤HEY JUDEで、
HELP!はMAGICAL MYSTERY TOURと一緒だから
厳密には同率2位ということになります。
でも、今はどうなのかな。
ネットで情報が簡単に得られる時代だから、「時代感覚」とは別の
「情報」としてより広く知られているのかもしれない。
時代が変わると曲に対する思いも変る。
僕が中高生の頃、ビートルズの曲の人気投票をすると、
日本ではYesterday かLet It Beが、海外ではHey Judeが1位、
と言われていました。
僕は、Let It Beはビートルズを聴くようになるまで知りませんでした。
ちょうどその頃映画『悪霊島』のテーマ曲になり、
B面がGet Backのシングルレコードが出て僕も買いましたが、
今思うとよく許可が下りたなと。
しかし、今は違うようです。
2011年にEMIミュージック・ジャパンが行った
ビートルズ213曲の人気投票Top10は以下の通り。
1位:Let It Be
2位:In My Life
3位:Hey Jude
4位:Help!
5位:Strawberry Fields Forever
6位:A Day In The Life
7位:The Long And Winding Road
8位:Yesterday
9位:Something
10位:While My Guitar Gently Weeps
Yesterdayは8位、一方Let It Beは1位と、
大きな差がついたといえるでしょうね。
この2曲について僕なりに考察してみましたが、
何であれやはりネット時代になり情報が知れ渡ったことが
大きく影響していると思います。
YesterdayとLet It Beを比べると、やっぱりYesterdayは
「こじんまりとしている」と感じるかな。
弦楽四重奏以外はポール・マッカートニーにしか参加していないことは
今や有名ですが、そのことでグループとしての魅力が薄い、
ポールの曲というイメージが強くなったのかも。
昔はその辺の情報はファンしか知らないもので、僕も実際
自分でレコード買って初めてそのことを知り、正直いえば
多少がっかりしたものでした。
昔は単に「いい歌」として人気が高かったのかなと。
Yesterday は失恋の歌というのもあるかな。
特にJ-POPが広まってからは日本でも
歌に意味を求める人が増えたように思いますが、
失恋の歌となると引いてしまう部分があるのかもしれない。
Let It Beだって第一義的には物事がうまくいっていないときの
心象描写ですが、でもこの曲は祈りのようなものを感じるという点
前向きである上に、"let it be"という言葉の意味自体が今では
外来語のように日本でも定着しているというのもあるでしょう。
ちなみに僕は失恋の歌が大好きです(笑)。
そうなるまでの背景としてはもちろんCDの時代になり
ビートルズを聴く人が増えたということもあったはず。
YesterdayとLet It Beが双璧と言われなくなったのは、
思い出してみると1990年代後半くらいからだったような気がするし。
もうひとつ、Yesterdayはビートルズだけに限らず
「オールディーズ」の曲という意識が高いような気がしてなりません。
ビートルズじゃなきゃ、という部分はLet It Beの方が高く、
「ビートルズ」の人気投票をするとより票が集まる。
などなど、あくまでも考察というより個人的な思いなので
さらりと読んでいただければと思うのですが、しかし、
Yesterdayを取り巻く環境がこの30年で少し変わったことを
僕は確かに感じています。
人気投票についてもっともっと話したいのですが、
ここは涙を飲んで先に進みます。
と思ったけど一つだけ。
昔に比べてジョン・レノンの曲が強くなっていますね。
具体的に2、4、5、6がジョンの曲ですが、特にIn My Lifeは
僕が中高生の頃は「裏名曲」的だったのが、今やすっかり
表に出てビートルズの代表曲にまでなっている。
しかもジョンの曲はみな曲の意味も込で評価し投票しているように
感じられる。
一方でポールの4曲はいわゆる「5大バラード」の4曲で、
これは多分30年前とあまり変わっていないのではと思いつつ、
昔の人気投票の3位以下を覚えていないので何ともいえないですが。
そしてジョージ・ハリスンも2曲も入っているのがまた興味深い。
02
今年はビートルズ来日50年ということで、
例年よりもその話題で盛り上がり、
記念の書籍や雑誌も幾つか出版されました。
へそ曲がりの僕は「ビートルズ来日記念日」の6月29日に
あえてこの話題に触れませんでした(笑)。
しかし僕も1冊雑誌を買いました。
ミュージック・ライフ別冊「ザ・ビートルズ日本公演1966」。
へそ曲がりだけど1冊は買っておこうと思っていたのですが、
Facebook友だちがこれを買ったという記事を上げていたのを見て、
ある部分に引かれてこれに決めました。
日本公演で演奏した曲の演奏方法の解説が載っているのです。
僕は中学時代に今のザ・ビートルズ・クラブ
旧ビートルズ・シネ・クラブに入会しグッズなどを買っていましたが、
武道館公演のカセットテープも買って聴いていました。
まあ言っていれば海賊盤ですが、でも
公式ファンクラブが出しているのはどうなんだろう。
Yesterdayも日本公演で演奏したので、
僕もそのカセットテープで聴いていました。
Yesterday はレコードより1音キイが高いのですが、それは、
オリジナルFの曲をレコードでは一音下げてGで演奏しているものを、
コンサートでは弦を下げずにGのまま演奏したから、ということ。
その他、ポールのギターをジョンがカジノで、ポールのベースは
チェロの音をなぞるように、そしてジョージは主にビオラの音を
オブリガート的に入れているなどなど勉強になりました。
ここで「G」で演奏されたキィの高い映像と音を。
☆
Yesterday
The Beatles
武道館の完全なものがなかったので、
ほぼ同じと思われる西ドイツ(当時)でのもの。
ポールいきなり歌詞間違えているのですが・・・
この映像ではジョージがポールを紹介して曲が始まりますが、
武道館でも同じでした。
それで思い出した、武道館の面白いシーン。
ジョージがこの曲を紹介する時、最初は「HELP!のLPから」と
言ったところ、客がHelp!を演奏すると勘違いして盛り上がってしまう。
そこでジョージは「LP、LP」と強調してさらに話を進める、というもの。
ビートルズのライヴによるYesterdayをもうひとつ。
☆
Yesterday
The Beatles
ビートルズ時代にポールひとりでギターで歌っている珍しい映像。
弦楽四重奏はテープと思われ、これはテレビ用かな。
ポールひとりでギターだけなので、チューニング下げた
レコードと同じキイで歌っていて違和感ないですね。
ただ、この後武道館のようにアレンジを変えたのは、
やはりコンサートで4人がいないとつまらないからでしょうね。
そうそうまた話は逸れますが、キィ=調の話。
音楽ってやっぱりキィ=調を変えると雰囲気というか
イメージというかニュアンスが変わりますよね。
Yesterday はGに上げて歌うとあまり切実さが伝わってこない。
まあ、カラオケやカヴァーなどでキィを変えて歌う人も多いし
それに対して僕が何かを言うものではもちろんありませんが、でも、
キィを変えると響きが変わるのは確かな「事実」だと僕は思っています。
もちろん、変わったことでむしろ良くなる例も、
人(声)と曲の相性によってはあるのですが。
続いてポールのウィングス時代のライヴ。
☆
Yesterday
(Paul McCartney &) Wings
1976年の映像とのことですが、この頃のライヴでは
Yesterdayのイントロを弾いた後カントリーっぽい他の歌を歌う
というおとぼけも聴くことができます。
ポールはこの頃までビートルズ時代の曲をあえて
歌っていなかったのですが、ウィングスで成功したことにより
あらためて「ビートルズのポール」だったことを再認識し、
封印を解いて数曲歌い始めた、そんな頃のライヴ。
だからその「カントリー」も、
ポールにはまだ照れのようなものもあったのでしょうね。
最後にもう1曲
☆
Yesterday
Paul McCartney
2015年5月24日ロンドンでの映像。
来日公演ほぼひと月後ということですね。
Yesterdayには最近あらたな思い出ができました。
2013年11月21日。
ポール・マッカートニー「アウト・ゼア」ツアー日本公演最終日。
東京ドーム入場の際に、サイリウムと注意書きが手渡されました。
今日がポールの日本公演最終日、Yesterdayの演奏の際に、
ポールには内緒で客がサイリウムを振って
ポールにサプライズプレゼントをしようというもの。
いつのタイミングとまで指摘されていたので慌てることは
なかったのですが、その瞬間を友だちと待ちながら
いざYesterday。
曲が始まり、会場の映像がスクリーンに映ると、
みんな赤い光を左右に振っている。
僕ももちろん、生まれた初めてコンサートでそんなことしました。
ポールも感動したというコメントを何かで読みましたが、
あれはYesterdayだからよかったんだと今にして思いますね。
Yesterday
歌っていると、言葉と旋律が口のなかでとろけて
体にしみ込んでいくのを感じる。
この曲は歌ってこそ。
上手くなくてもいい、人前で歌わなければいけないわけでもない。
でも、歌うことで曲の良さを感じることができる。
歌としては世の中で最良の曲だと思いますね。
さて、今回は「ビートルズの213曲」外伝的なものになりました。
最初はそれでいいと思いましたが、いざ書き終ると、
やっぱりいつもの「フォーマット」も必要だったかなと。
しかしもう長いので、それはまたいつか、41-2/213
というかたちで記事にしたいと思います。
でも、Yesterdayなら話したいことは幾らでもあるので、
また何かのきっかけでこの曲に凝る瞬間があれば、
さらなる外伝を書くかもしれないですね(笑)。
今日の犬たち3ショットで終わります。
03