いつものように
写真など音楽に関係ないコメントも
大歓迎です!
時々、思い出して聴き直して、
そのまま数日聴いてしまうアルバムがあります。
そして、そんなアルバムの中に、
ちょっとした偶然があるのはうれしいです!
今日の偶然は・・・
ニュー・オーリンズ・セインツがスーパーボウル制覇!
01
THE DREAM OF THE BLUE TURTLES Sting
ブルー・タートルの夢 スティング released in 1985
スティングです。
前回のアルバム記事のジャクソン・ブラウンは、
最初は(そしてかなりずっと)、人があまり好きになれなくて
レコードを買わなかった人ですが、
スティングは、最初はあまり好きじゃなかったけど、
すぐに翻意して好きになってCDを買い始めた人です。
なぜ好きじゃなかったかについては、いつかまた別の機会、
ザ・ポリスのその記事を上げる際に触れたいと思います。
なお、この記事のタイトルで、アルバム名を邦題にしているのは、
BLOGの字数制限に引っかかるためです、念のため。
このスティング初のソロアルバムは、CD時代の始まりの始まり、
LP時代の最後の頃にリリースされ、僕はLPは買いませんでした。
一方で当時はMTVの全盛期といっていい頃で、
ビデオクリップは録画してよく観て聴いていました。
しかし、その頃はまだスティングを好きではありませんでしたが、
CD時代になり、CDでは音が良さそうなものを聴きたくなったのと、
Tr2のビデオクリップが気に入ったので、
CDを買うようになってすぐに買って聴きました。
多分、僕が最初に買ったCD30枚に入ると思います。
このアルバムは当時、
「スティングがジャズを演った」
「ロックとジャズの融合」
という触れ込みで取り上げられていました。
ザ・ポリスの活動を一度終わらせたスティングが、
念願だったジャズとロックの融合を目指して、
当時の若手実力者ジャズメンを集めてバンドを結成しました。
メンバーは
スティング Sting (Vo)(Gt)
オマー・ハキム Omar Hakim (Ds)
ケニー・カークランド Kenny Kirkland (Pf)(Key)
ダリル・ジョーンズ Daryl Jones (Bs)
ブランフォード・マルサリス Branford Marsalis (Sax)
僕は、ジャズのことは(も)よくは知らないので、
このメンバーがどれだけ凄い人たちなのかは分かりかねますが、
でも、とにかく凄いと言われていて、実際にこれを聴き、
ああきっと凄い人たちなんだろうなと感じました。
それじゃあ身も蓋もないですかね(笑)。
でも、そう感じたのは間違いのないことです。
ブランフォードは、弟の
ウィントン・マルサリスが、
当時売れっ子で名前を知っていて、そのつながりもありましたが、
しかし僕がブランフォードを近しく感じたのは、
彼のアルバムに、ジャケットのデザインが、
レッド・ツェッペリンの
PHYSICAL GRAFFITIを
イメージしたものがあることを知ったからです。
ダリルは後に
ザ・ローリング・ストーンズの
サポートメンバーとして加わることになります。
オマーは、僕が聴く音楽でも時々名前を目にしていました。
そしてケニーは、最近亡くなったと思っていたんですが、
実はもう12年も前の1998年に急死しています。
当時は少なからぬショックを受けましたが、でも、今、
それが10年以上前のことだと知って、またショックでした。
ところで僕は当時、「この音楽はジャズなのか!?」
と割と真面目に考えていましたが、でも実際は、
「音楽が、というよりは、音がジャズ」と感じます。
当時の僕にはそれが新鮮でカッコよく映りました。
しかし、当時よりは多くの音楽を聴くようになった今、
あらためてこのアルバムを聴いたところ、
「R&Bを通したロックとジャズとのつながり」
を表した音楽ということじゃないかな、と思いました。
そして、音が良さそうだから買ってみたくなった、
と先ほど書きましたが、音はやはり良いと感じました。
かなり満足感を覚えたCDの1枚でもあります。
僕がこのCDを買ったのは大学1年生の時で、
当時は、一応は向学心に燃えていたらしく(笑)、
英語の歌詞というものを自分なりに真面目に勉強していました。
そんな中で聴いたこのアルバムの歌詞には刺激を受けました。
「それにしても難しい単語が好きな人だな・・・」
まあ、スティングは知的というイメージがありましたが、
この皮肉や風刺が効いたメッセージ性に富む内容、
だけどユーモアも決して忘れないでいたいという姿勢は、
実際にそうしたイメージを抱かせるには十分な歌詞でした。
でも、歌詞カードを読んでいると、難しい単語のみならず、
大仰な言い回しもまた楽しくなってきました。
そこで今回は、曲ごとに
歌詞のどこに気に入ったか、印象に残ったかを
書き出しながら進めます。
02 2月3日の朝の風景
Tr1:
If You Love Somebody Set Them Free
これは高校時代にビデオクリップが華々しく流れて
新譜として出た当時からよく知っていた曲でしたが、
でも、実は最初は、特に好きな曲でもありませんでした。
僕は、あるんです、各アーティストに1曲くらい、
その人の曲では人気があるけど自分はそうでもないという曲が。
当時あまり好きじゃないと思ったのは、
かなり強引で力任せの曲作りをしていると感じたからでした。
一度しかない中間部の終わりの元に戻る部分
♪ So many riches, so many souls
Everything we see we want to possess
この歌メロがかなり強引で、昔はどうかなと思いました。
でも、今はそこがむしろカッコいいと思います(笑)。
サビのタイトルの言葉の歌メロも、当時は乱暴に聴こえ、
突然突き抜けてしまったような驚きがありました。
でも、そこを歌うと気持ちいいことも確かです。
曲自体は割とシンプルなR&Bだと思っています。
この曲は、タイトルの言葉自体が含蓄があるというか、
そういうものなんだって、二十歳の僕は思ったものです。
ストラトキャスターの写真集の記事でも触れましたが、
VCでスティングが持っていた黒のメイプルのストラト、
ピックガードも黒かったのがカッコよかったです。
あ、今は大好きな曲ですよ。
Tr2:
Love Is The Seventh Wave
これいいよね、すっごくいいよね!
スティングの僕が好きな曲で五指に入ると思う。
これもCDを買う前にMTV番組でVCを観て知った曲ですが、
え、この人、とんがってるだけじゃなくって、
こんな優しい歌も歌える人だったんだって驚きました。
ビデオクリップが成功した例でしょうかね(笑)。
この曲を観て聴いて、ようやくスティングが好きになりりました。
本格的なレゲエの、まろやかで和やかで明るい雰囲気。
♪ There is a deeper world than this that you don't understand
というサビのフレーズは、僕が大好きな
ロックの歌詞のフレーズのひとつとなりましたし、
この曲は歌詞をすべて引用したいくらいですね。
これ、楽しいのが、サビでやけに"every"を連発するなと思ったところ、
案の定というか、かの名曲
Every Breath You Take
の一節を最後にさらりと挿入するところですね。
このアルバムは硬派な曲がほとんどで、ともすれば
明るいこの曲が浮きそうなところが、逆に、
ここにあるからアルバムが引き締まってよいと思います。
Tr3:
Russians
冷戦でしたね。
愁いを帯びた哀愁漂う東欧やロシア風の曲想に、
かなり辛辣なメッセージを詰め込んだまさに硬派な曲。
僕が凄いと思ったフレーズは
♪ We share the same biology, regardless of ideology
西側の人も東側の人も同じ人間なんだ、
その通りだけど、こんなにも堅い表現を使うなんて。
また、
♪ How can I save my little boy from Oppenheimer's deadly toy
核の恐怖を表したものですが、
僕はこの曲でオッペンハイマーの名前を知りました。
さらには
♪ Mr. Reagan says we will protect you,
I don't subscribe to this point of view
ちなみにスティングは「レーガン」と発音しています。
歌詞の中にSovietも出てくるんだけど、今の若い人は
ソヴィエトって何? なんでこの曲はこんなにも脅えているの?
と思うかもしれないですね、時代を感じます。
でも、僕が10代の頃は、悲しいかな、それが現実でした。
間奏のオーケストラが奏でる旋律は、ロシアの作曲家
プロコフィエフ Prokofievの交響組曲
「キージェ中尉」Lieutenant Kije
の一説を引用していて、ブックレットには、
以下の写真のようにその部分の音符が記されています。
なおこれについて2つお断りで、
ひとつは、ロシア語の原題を表記できず英語で示していること、
もうひとつ、「キージェ」は旧来日本で言われているものですが、
本来の発音は「キジェー」のほうが近いということです。
それはともかく、曲全体が冷徹に響いてくる中で熱く語りかける
スティングのヒューマニストぶりが浮かび上がってきて、
ああこの人は凄い人だ、と思った曲ですね。
Tr4:
Children's Crusade
このアルバムをまた聴くきっかけになったのが、
ストラトキャスターのジャケット写真集の記事の編集の際に、
スティングのライヴを出してついでに聴いたことでした。
その中ではこの曲がとってもいいなと再認識して、
このアルバムにたどり着いた、ということでした。
♪ The children of England would never be slaves
They're trapped on the wire and dying in waves
The flower of England face down in the mud
And stained in the blood of a whole generation
この部分の旋律が、とにかく美しい。
最近は気がつくとここを鼻歌で歌っています。
僕が大人になって、僕には子どもはいなんだけど、
知り合いの子どもさんたちを見てると、
スティングのこの思いが理解できるようになりました。
そう思うと、これは泣ける曲でもありますね。
子どもたちが暴力などの被害に遭わない世の中になることを
ただただ願うのみです。
Tr5:
Shadows In The Rain
この曲は、
ZENYATTA MONDATTA(記事はこちら)収録の
セルフリメイク。
当時は、少なくとも僕がよく聴いていた音楽の中では、
ライヴ盤以外でのセルフリメイクは一般的ではなく、
これは、純然たるスタジオの新作アルバムにおいて
僕が初めて接したセルフリメイク曲でした。
あ、でも、厳密にいえば、ザ・ポリスとスティングだから、
「セルフ」じゃない、「セミセルフ」リメイク、かな(笑)。
これは一聴して、「おおぅ、これはジャズだ」と思いました。
シンコペイションが前に進む気持ちを演出するのが分かる曲。
ほとんど破たんしそうなスティングのヴォーカルも、
鬼気迫るというか、恐いというか、凄いですね。
「チャッ」という掛け声は、得意技のひとつ(笑)。
ゼニヤッタのオリジナルより、こちらのほうが断然好きです。
04 雪の中のツルアジサイのドライフラワー
Tr6:
We Work The Black Seam
炭鉱で働く人たちの悲哀を描いた曲。
そういえばスティングは、前述のZENYATTA MONDATTAにも
Canary In A Coal Mine、炭鉱からテーマを取った曲があります。
イントロの軽快なバイブラフォン風の音の楽器が奏でる、
単純だけど引き込まれるそれこそワークソング風の旋律が
曲全体に流れてイメージを固定しています。
♪ One day in a nuclear age, they may understand our rage
They build machines that they can't control
And bury the waste in the great big hole
Power was to become cheap and clean
Grimy faces are never seen
このサビの部分の絞り出すような歌メロが印象的で、
そこをまた声を絞り出して歌うのが好きです。
ただ、スティングのこの声は、だめなひとはだめなようで、
ロッドが好きな友達Sは、拒絶反応を示していました。
ちなみにSはダリル・ホールの声も嫌いでしたが、
なんとなく、分かりますね。
Tr7:
Consider Me Gone
この曲は当時、
こんな感じの曲は聴いたことがないと思いましたが、
今聴いてもやっぱり同じように思う、独特の響きの曲。
ゆったりとしたベースラインの動きが、
心の安定と不安定を行き来している感じがします。
まろやかな歌詞をつければ、ゆったりとした気持ちになれそう。
♪ But to look for heaven is to live here in hell
こういうフレーズが、僕は無性に好きだったりします(笑)。
Tr8:
The Dream Of The Blue Turtles
「ジャズとロックの融合」を謳っているだけに、
アルバムタイトル曲はインストゥルメンタル、ジャズの雰囲気。
「おお、これはジャズだ!」と、若かった僕は素直に思いました。
この曲の最初の部分の旋律が、僕は、昔から、
駅のホームの発車ベルにいいんじゃないかな
思っているのですが、どこかの駅で採用してくれないかな・・・
Tr9:
Moon Over Bourbon Street
恐ぁ~。
この曲の歌詞を読んで、そえこそ背筋が凍りつきました。
♪ There's a moon over Bourbon Street tonight
I see faces as they pass beneath the pale lamplight
I've no choise but to follow the call
Hotel Californiaと同じ「巻き込まれもの」、
囚われて逃れられない状況だと解釈しました。
でも
♪ I was trapped in this life like an innocent lamb
あの強面の大人の塊みたいなスティングが子羊かい!
と、この部分では少しおかしくもなりました。
ただしこれ、何度か聴いて読んで歌っていくうちに、
これは、
スティングがいかにジャズが好きかを表した曲だと
思うようになっていました。
Crossroadsのスティング版というか、
ロバート・ジョンソンが悪魔と取引をしてギターが巧くなった
その逸話と同じ類い、魂を奪われるほど好きな音楽を表した曲。
そうまさに、スティングは、「ジャズの虜」。
いろんな意味でこの曲はこのアルバムのハイライトではないかな。
とここで、ちょっとした偶然が。
ニー・オーリンズ・セインツ
第44回スーパーボウル制覇おめでとう!
スーパーボウルの放送の中で、優勝が決まった瞬間の、
地元ニュー・オーリンズのBourbon Streetで
人々が歓喜する様子が写っていました。
僕は、セインツがSBに出たのは知っていましたが、
ちょうどその頃にまた聴き始めたこのアルバムが、
こんな形でつながるとは思っていなくて、
うれしかったです!
Tr10:
Fortress Around Your Heart
君の心を武装ならぬ知識の壁で守りたい。
アルバムの最後は、恐いけど優しいスティング。
♪ It took a day to build this city
We walked through its street in the afternoon
この中ではいちばんシンプルに響く曲ですが、
余韻残りまくりで、アルバムを聴き終わると、
なんともいえない大きな心が残ります。
それにしても、ブランフォードのサックスは
この曲のみならず、アルバム全編で印象に残り、
スティングの歌と絶妙の呼吸で展開しています。
そしてこのアルバム、全10曲があっという間に終わってしまう。
そう感じるくらいに充実しています、短かすぎます(笑)。
このアルバムは二十歳のまだ頭が軟らかめな頃に
かなり聴き込んだので、全曲ソラで思い出せます。
そうした若い頃の「体験」は貴重だったんだな、と思います。
最後にもう一度
ニュー・オーリンズ・セインツおめでとう!
僕は、セインツは、
かつては好きでも嫌いでもなかったのですが、
あのハリケーンの被害の時から、
積極的に応援するようになりました。
だから今回は、優勝してよかったです。
「聖者の行進がここに完結す」
と、アナウンサーはうまい表現を用いていましたし、
「マルディ・グラは2/9だが、ひと足早く盛り上がった」
「マルディ・グラは永遠に続いて欲しい」
と、クォーターバックの
ブリーズ選手は
セレモニー後のインタビューで話していたり、
セレモニーの後の会場内では、さすがというか、
DR.ジョンの
Iko Ikoなどが流れていたりと、
音楽好きにはとにかくうれしいセインツの優勝でした。
やっぱり、アメリカでも
ご当地ソングみたいなものはあるんですね(笑)。
ニュー・オーリンズの復興にも弾みがつくことを願います。
そして、ニュー・オーリンズは、死ぬまでに
一度は行ってみたい場所のひとつになりました。
ということで・・・
話はすっかりスティングから離れてしまいましたが、
スティングは、コンサートに2回行った人でもあり、
昔から大好き、というよりは「支持をしている」人でもあるので、
また折をみて記事を上げたいと思っています。
そしてこのアルバムは、
1980年代の僕が好きな全ロックアルバムの
十指に間違いなく入るくらい大好きです。