Buddy Holly ウィーザー

guitarbird

2016年04月19日 20:58

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Buddy Holly
Weezer
バディ・ホリー
ウィーザー
(1992)

久し振りに「笑う洋楽展」絡みの1曲を。

4月17日の回は「七三分け」がテーマ。
そこで取り上げられていた1曲が今日のお題。

Buddy Holly  ウィーザー

これも暫く聴いていなかったので懐かしい、
とまではいかないかな、数年前に一時期よく聴いていたし。

この曲はもう死ぬほど大好きで、僕個人の
1990年代ベストソング20曲に必ず入る1曲ですね。

極端にいえば、ハードロックに乗せたオールディーズ。

ではまず曲から。



 Buddy Holly
 Weezer
 (1992)


ウィーザーは1992年に出てきたいわゆるオルタナティヴ系バンド。
当時流行りのざらついた手触りのギターサウンドに、
ちょっと、いやかなり懐かしい歌を乗せて人気者になりました。

先に断っておくと、僕はウィーザーが特に好きというわけではない。
この曲が入ったアルバムと次は買って聴いたけれど、
次がそれほど気に入らなくて、僕の中ではそこで終わりました。

でも、そのアーティストが特に好きというわけではないけれど、
1曲だけ異様に大好きという例は多くの方にあるのではないかと。
僕にとってウィーザーのBuddy Hollyはまさにそれ。

MTVを観ていた頃、先ずUndone The Sweater Song
がファーストシングルとしてビデオクリップで流れ、
当時職場にいたグランジ/オルタナティヴ系が好きな人と、
「このぐにゃっとした感覚がなかなかいい」と話していました。
でもCDを買うまではなあ、と思っていたところで第2弾PVとして
このBuddy Hollyが流れて、もう1発でノックアウト。
曲がいい上にバディ・ホリーですからね、なんせ
ポール・マッカートニーが尊敬する人だから(笑)。
翌日すぐに仕事の帰りに秋葉原の当時まだあった
石丸電気に寄ってCDを買い求めました。

アルバム全体も意外と気に入って当時よく聴きましたが、
全体的にウィーザーの音楽はまさに「ぐにゃっとした」感覚で、
大学1年生が無理矢理背伸びして演奏しているけれど、
子供っぽい部分ばかりが目立つという感じの音楽に聴こえました。

歌は上手いというのとは違うし(声はいい)、
コーラスのつけかたもハモるというよりは力任せに合わせて歌う、
といったもので、ビーチ・ボーイズとはまるで違う。
しかしそれでもコーラスをつけてくれるのが僕には嬉しいのですが。

合わない人はとことん合わないバンドだと思う。
でも、それが彼らの個性であり、90年代前半の音楽業界に
あいていたニッチを見つけて上手く入り込んだのでしょうね。

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ただ、ただし、このBuddy Hollyだけはまったく違う。
先ずもって曲がこれだけ別次元。
他の曲もアルバムが気に入ったくらいだから好きですが、
それらの曲の中からどうしてこんな別次元の曲が出てくるの、
どうやって書いたの、浮かんだの、と不思議でならない。
演奏はシャープだしオルタナ特有の拡散するギターサウンドも、
この曲に限ってはそうは感じられないシャープな音が出ている。
今日久し振りにアルバムを通して聴いたけど、やっぱり違う。

歌メロがいい、すごくいい、素晴らしい。
もうそれは大前提なんだけど、この曲はよすぎる!
Aメロがマイナー調でほの暗く感じる、このつかみがいいし、
後半は希望が見えてきたように明るくなるのもいい。

イントロなしに歪んだギターとダブルトラックヴォーカルスが
いきなりフルスロットルで始まる、もうここで心が動かされる。
ダブルトラックのヴォーカルなんて当時はほとんど廃れていて、
ずっとそれをしていたオジー・オズボーンがからかわれていたくらい
だから、このヴォーカルは一発で懐かしいと感じるのでしょうね。

先ほど書いたようにギターサウンドがいい。
Bメロの後半8小節で入る「タラタラタラタラ」という
高音の装飾音、こいつらロック分かってるなって。

サビ=Cメロはコードの低音弦を弾くだけなんだけど、
やっぱりロックってこういう歌のことをいうんだよなった。
ここの歌とギターが超気持ちいい(笑)。
ギターでコード弾いているだけで楽しい曲ですね。

1番と2番の間に4小節の短いオルガンが入るのも、
シンプルなようで意外と曲作りに凝っている部分。
(ビデオクリップでバンドにオルガン奏者がいないのはご愛嬌)。

さらにいいのは2番が終わってからの一度しか出てこない中間部。
ビデオクリップでは、一度曲が終わって始まる2'20"からの部分。
ギターのバッキングの「ズンズンズンズン」という音が気持ちよく、
早口で喋るようなヴォーカルと素っ頓狂な声のコーラスが面白い。
その早口がチェンジ・オヴ・ペースになる曲作りも上手い。

そしてそして、2'37"からの♪お~お~お~おお~おお~っ 
と歌う部分がもう懐かしさに溢れていて、なぜか涙が出そうになる。
そんな気持ちになる自分に今回は驚きました。
やっぱり人間、懐かしい響きに弱いんだな。
それを受けて短く入るギターソロ、ソロともいえない、
歌をそのままギターで受け継いだその旋律も涙もの。

その後サビに戻り、少し後ろを長くして終わる。
この途中でぶった切ったような終わり方もまたいい。

この曲は完璧といっていい。
これほど完璧なポップソングは年に何曲でるかな、というくらいに。

番組で観て聴いてからずっと口ずさんでいて、いつものように
これは記事にしないと自分の気持ちが落ち着かないんだな、と。

ところで、なぜバディ・ホリーなんだと当時思っていました。
思っていたけれど、結局20年以上放置だった・・・
番組で分かりました。
ヴォーカルでギターのリバース・クオモ Rivers Cuomoが歌う姿が
バディ・ホリーに似ている、ということのようです。
番組ではみうらじゅん氏が、確かに似ていると言っていたけれど、
でもバディ・ホリーの場合あの眼鏡をかければ、
細面の人ならみんな似てくるのではないかと(笑)。
と思ってビデオクリップを見ると、リバース・クオモはやっぱり、
眼鏡を外したバディ・ホリーに似てるかもしれない、いや、
似ているような気がしてきました。

ただですね、それが分かった上でいえば、
当時ウィーザーを聴いていたような若者が
バディ・ホリーと言われてすぐに分かったのかなという疑問が。
日本ではなく本国アメリカだったら知名度高そうですが、
日本ではほんとに洋楽が好きな人くらいしか、
バディ・ホリーは知らなかったのではないか。

そもそもバンドのメンバーも今調べると僕より若くて、
バディ・ホリーなんて当然歴史上の人だっただろうに、
それをこんな身近に感じながら音楽を作っていたんですね。
やっぱり音楽は時代を超える、ということですね。
ちなみに僕はバディ・ホリー大好きで、緑色のベスト盤が、
車のコンソールボックスにいつも入っています。


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ビデオクリップは、1970年代のアメリカのテレビドラマ
「ハッピー・デイズ」のシーンにウィーザーが番組に登場する
バンドに扮して演奏するシーンを埋め込んだもの、
とこれも番組で説明されていました。
そのことは知っていましたが(ドラマの名前は知らなかった)、
確かにいわれれば違和感なくはめ込んでいる監督の
スパイク・ジョーンズの手腕が見事、と再認識。

リバース・クオモはバディ・ホリーと同じ、サンバーストで
メイプルネックのストラトキャスターを弾く凝りよう。
というよりも愛用のギターかもしれないけれど
ちなみにバディ・ホリーの時代はまだ、
ローズウッドネックのストラトキャスターはなかったはず。

バンドのメンバーがドラマに入り込んでいるのも面白い。
僕は先ほど、ウィーザーはバンドとしては特に好きではない
と書いたけど、いい奴らですね、もしかして好きかも(笑)。

興味深いのは、3'13"で写る日本人ぽい人が、日系人俳優の
ノリユキ・パット・モリタじゃないかなと当時思っていましたが、
今調べるとその通り。
映画「ベスト・キッド」でラルフ・マッチオの先生だった人。
日本人としては嬉しいですよね。
しかもモリタさんあんな楽しそうにはしゃいでる(笑)。
ただ、「笑う」でみうらじゅん氏も安斎さんも、モリタさんには
まったく触れなかったのが意外で少々残念でした。

そのモリタさんが頭にあり、ウィーザーの次のアルバム
PINKERTONのジャケットには浮世絵を使っていたのを見て、
もしかしてこの人たちは親日家なのかと当時思いました。

実はそれもその通りで、リバース・クオモは大の親日家。

ここで、リバース・クオモと日本の関係について
ウィキペディアから引用します。

***

2ndアルバム『ピンカートン』では、ジャケットに歌川広重の
東海道五十三次の一幕を使用するなど、非常な親日家である。
2006年6月8日にハーバード大学を卒業。
専攻は当初は音楽だったが、途中から英文学に転向。
英文学士号を取得した。
卒業後にイトウ・キョウコという日本人女性と結婚。
Miaという名前の娘がいる。
夫人の実家がある熊本県に年に数度来日したり、
熊本のゆめタウン内で作曲をしたこともある。
リヴァースの2008年のフェイバリット・アルバムは、
Perfumeの『GAME』である。

スコット&リバース
2012年、兼ねてから親交のあった、アリスターの
スコット・マーフィーとスコット&リバースを結成。
親日家の2人がオリジナルの日本語楽曲を制作。
「HOMELY GIRL」のリリック・ビデオが公開されている。
このビデオの文字は、2人の手書き文字が採用されている。
(中略)
カタカナ表記は、本人の希望により
リバース・クオモとされるようになった。


***

奥さんの出身が熊本なんだ。
これはほんとうに今の今まで知らなくて驚きました。

「笑う洋楽展」のその回はまさに熊本大地震の後に放送され、
しかも録画した放送を見ると地震速報も入っていました。
リバース・クオモも奥さんも気が気じゃないでしょうね。
たとえ親族や親しい人は助かっていたとしても、
これから大変ではないか。
年に数回来日とあるけれど、今すぐに来たいでしょうね。

話が思わぬ展開になりました。
そうだ、今日この瞬間から、この曲Buddy Hollyは、
僕の中でも熊本復興を願う曲とさせていただきたく思います。

今この記事を書くのにYou-Tube観て聴いてCDも聴いて、
今日はもうずっとエンドレスで歌いそうです。
きっと、明日朝起きても先ず歌うでしょうね。


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