The Tide Is High ブロンディ

guitarbird

2015年12月03日 21:29

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The Tide Is High
Blondie
(1980)

ブロンディ「夢見るNo1」、今日はこの曲のお話です。

洋楽以外のテレビ番組で洋楽が流れてくると嬉しくなる。
この曲もそのひとつ、しかも地上波NHKの番組でした。

NHK毎週日曜日8時25分から放送の「サキドリ↑」がその番組。
ジョン・カビラと片山千恵子アナが司会。
経済の最前線で起こっている事をバラエティ形式で紹介するもので、
楽しみながら日本の「底力」を感じられる番組です。
僕は基本日曜日仕事ですが、出勤が遅い日は、
朝7時のニュース、7時45分からの「さわやか自然百景」の流れで
そのままテレビをつけて観ています。
ジョン・カビラが最初ミスマッチ感覚だったのですが、
今はそのミスマッチ感覚がむしろこの番組の味だと思っています。
片山アナの小芝居も毎回和みます、多少恥ずかしいですが(笑)。

11月29日は「あなたの知らないニッポンのすし最前線」。
話題そのものが興味深くて、例えば日本の料理学校に
寿司職人養成講座に外国からの受講者が増えていたり、
築地のすし店で外国人向けに自分で寿司を握る体験コースがあり
人気を博している、など。
回転ずしで「回らない」店が増えている、という話題もありました。
客がタッチパネルで注文したものが鉄道車両を模した皿にのって
客のテーブルまで直接運ばれるというもの。
注文に直接答えられて対応が早いことと、回転していると客がとらずに
廃棄される率が高くなるのを抑えるために考案されたシステムで、
僕はまだ見たことがないけれど、これから増えていくだろうとのこと。
また、家で寿司を簡単につくれる冷凍のしゃりがあるのは知らなくて、
どこかで見つけたら買って自分で作ってみたい、と思ったり。

番組は毎回最後に、ジョン・カビラがその話題にちなんだ
洋楽曲をかけて終わります。
この日は、回転ずしの「潮目」が変わってきていることにかけて、
「潮目」="tide"で、ブロンディのThe Tide Is Highがかかりました。
寿司だから海、海に潮、というロック的ダブルミーニングでもあるのは
さすがジョン・カビラ上手い、と。
そもそもこの曲が大好きなので、いい気分で出勤しました。

まあ、NHKで地上波だからかかるのは有名な曲ばかりですが、
それでもやっぱり洋楽バカとしては嬉しいのです。

だから今週はこの曲をよく口ずさみ、時々ギターを弾いています。



The Tide Is Highはブロンディが1980年に発表したアルバム
からのシングルとしてリリース。
邦題「夢見るNo.1」、まさにビルボード誌No.1を獲得しました。
この邦題は、以下の歌い出しの歌詞
"The Tide is high but I'm holdin' on,
 I'm gonna be your number one”
からとられたものですが、なかなかいい邦題だと思います。
静かだけど恋い焦がれたものを歌っていく

この曲の背景を『ビルボード・ナンバー1・ヒット』(下)(音楽之友社)
より引用して紹介します。
なお、引用者は適宜改行や表記変更などを行っています。

***

デボラ・ハリーの言葉。
「ロンドンにいた時、誰かがくれたテープに入っていた曲だったの。
私もだけど(メンバーの)クリスがメロディをとても気に入って、
とりあげることに決めたの。
絶対にヒットする曲だと思ったわ。
美しいメロディで、オリジナルはハーモニーも
とてもエキサイティングだった」

作者はジョン・ホルト。
オリジナルはジョンをリードシンガーにフィーチャーした
ジャマイカのバンド、パラゴンズだった。
ブロンディのヴァージョンも、3人のパーカッショニストとストリングス、
ホーンのアレンジを加えてウェスト・インディーズ風のサウンドで、
パラゴンズのオリジナルに似た出来であり、
過去のブロンディの曲とは異なるタイプの曲だった。
1981年1月31日にブロンディ3曲目のNo.1曲となった。


***

ここで曲いきます。



ビデオクリップは相変わらず(!?)ブロンディらしい、
ちょっとばかり意味不明な、ストーリーでもないイメージでもない
映像になっていますね。
黒い甲冑はダース・ベイダーのイメージかな。
まあ、ブロンディは茶目っ気があってちょっと変、
というパブリックイメージのバンドだったのでしょうね。

曲は、オリジナルがまあいってみれば本物のレゲェですが、
この曲を聴くと、妙な言い方ですが、ブロンディというバンドは
「本物の偽物」だったんだなと思います。
別の言い方をすれば「ものまねが上手い」というか。
イントロだけ聴くと本物のレゲェだけど、デボラ・ハリーが
歌い始めると、ああこれはロックなんだなと分かる。
分かっていて騙される快感というか。
この曲は他とは違うと書いてありますが、
ブロンディの音楽の魅力はそこなのでしょうね。
別のNo.1ヒット曲Raptureではラップを取り入れていますが、
本物っぽい上手さはないけれど自分たちのものにしているし。
だから「本格派」が好きな人には響かない。
曲がいいので聴きやすくてヒット曲は多い、というバンドですね。

しかしよく聴くと、イントロはジャマイカのスティールドラム風に
普通のドラムスで叩いているのが分かります。
ここを本物のスティールドラムでやってしまうとブロンディじゃない。
そこは自身でもよく分かっていたのでしょうね。

もうひとつ、ブロンディがやると、レゲェというかカリプソですね。
本場ジャマイカではなく、メキシコのアカプルコを思い浮べます。
もちろん、行ったことはないのですが、知り合いがアカプルコに
行った時の話をしてくれた時なぜか僕はこの曲を思い浮かべ、
そうかなるほどそういうことだったのか、と思いました。
まあ、これは僕の勝手な妄想かもしれないですが、でも、
ジャマイカのしんどさよりはリゾートのアカプルコに合う、という感じ。

しかしそれにしてもこの曲はデボラの言う通り歌メロがいい。
しかも、イントロに出てくるブラスの旋律がまたよくて、
僕はもうここから口ずさんだり口笛吹いたりしています。
特にブラスの旋律の2小節目の音が低くなるところが好き。

コーラスも楽しげでいいですね。
パーティバンドというか、雰囲気盛り上げるのは上手そうです。

最後コーダの部分、"high"の部分で声をひねったように
音を上げて歌うのは、コケティッシュさを出しているところですね。

さらに、今回この曲をギターで弾いてみて気づきました。
コードが3つしかないんですね。
B(1小節)、E(2拍)、F#(2拍)、I-IV-Vのコードの繰り返しで、
"No.1”と伸ばして歌うところだけE(1小節)、F#(1小節)に変るだけ。
ただこれ、ネットで調べるとA-D-Eになっているのですが、
レコードを聴いて合わせるとキィがBになっています。
カポ2フレットでAということなのかな。
ただ、レゲェだから「んっカッんっカッ」とリズムを刻むわけで、
開放弦コードよりバレーコードの方がカッティングしやすいので、
カポしないでBの方がいいのではないかな、というのは僕の考え。
まあそれでもEは開放弦コードではあるのですが。


さて、ここでオリジナルのジョン・ホルトのヴァージョン。
実は僕も今回初めて聴きました。



画面が揺れていて見にくかったでしょうか。
作成者は、レゲェっぽく揺らしたかったのかな(笑)。

オリジナルはキィが低い。
もしやと思いギターで合わせると、Aだった。
そうか、ネットのブロンディのがAなのはそのせいなのか。

やはりオリジナルはスティールドラム使ってますね。

ブロンディのデボラ・ハリーが"I'm not a kind of girl"と
歌っている部分は「歌手と歌詞の性の一致の法則」により
ここでは"a kind of man"になっています。

しかしいちばんの違いは、ブロンディの印象的な
イントロのブラスの旋律がないこと。
そうか、あの旋律はブロンディのものだったんだ。
僕はそこが好きなので、この曲はカヴァーの勝ち、ですね。
もちろんオリジナルには敬意を表するものですが。

02


ブロンディのThe Tide Is High、発表されたのは1980年だから、
年代で区切ればこれは80年代の曲ということになります。
しかしブロンディの属性は1970年代だと思う。
だからこの曲、僕の中では、80年代ソングと言われると微妙に違う。
この曲の頃はまだ洋楽を聴いていなくてリアルタイムで知らない
という個人的な体験もそう感じさせるところです。
そう、この曲は、ビートルズを聴き始めた中2の頃に、
少し前にヒットしていた曲としてラジオで知りました。

ただ、最初から好きだったわけではなく、
なんだか面白い曲だなあ、と、最初は思っただけでした。
多分洋楽に慣れていなくて、特にレゲェがそうだったのだと。
大学時代にラジオで聴いて、むむっこんないい曲だったかと思い、
すぐにベスト盤CDを買ったのが、僕の聴き始めでした。

ところで。
この曲はビルボード誌における535曲目のNo.1ヒットですが、
そのひとつ前、534曲目のNo.1ヒットが
ジョン・レノン (Just Like) Starting Overだったのです。
ジョンのその曲は、1980年12月27日から5週間No.1でした。
そう、あの1980年12月8日の後のことでした。
そう思うと感慨深いものがありますね。
ましてや、「その日」が近づいているこのタイミングでもあるし。
断っておきますが、これはまったくの偶然。
ただNHKで観て聴いた曲を記事にしただけのことですから。

ちなみに、ブロンディの次、536曲目のNo.1は何かといえば、
クール&ザ・ギャング Celebrationと、これは余談でした。


最後は今日の3ショット。

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マーサが今日はポーラを踏み台にしていました(笑)。

今日は予報通りひどい雨。
水が乗った氷の上を歩くのは大変でした。



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