いつものように
写真へのコメントも
大歓迎です!
今回は、アルバムのタイトルに絡めて、
「雲の風景」の写真を集めてみましたので、
音楽とは関係ないコメントも入れやすいかと思います。
01
CLOUD NINE The Temptations
クラウド・ナイン ザ・テンプテーションズ released in 1968
かつて、
ジョージ・ハリスンのCLOUD NINEを記事にしましたが、
こちらは
テンプテーションズ。
同じタイトルのアルバムを記事にするのは初めて。
ジョージも、このアルバムのことが頭にあったのかな。
テンプテーションズは、あまりにも有名な
My Girlを始め、
4曲のNo.1を含むヒット曲多数のモータウンの看板グループ。
アメリカでいちばん愛されたコーラスグループでもあり、
ロックへの影響も計り知れない人たち。
さいたまのソウルマニアの友達に言われたことは、
ことあるごとに書いているのですが、今日はそこが主題なので、
あらためてまた書くことにします。
「昔のソウルのアルバムは、良い曲が1、2曲あって、
他はまあまあという曲を無理やり集めて作ったものだから、
アルバムとしていいなんてハナから期待しないほうがいいよ」
これは、若い頃のことを思い出すと、納得できる部分はありました。
誰とは言いませんが、大学時代に、とっても好きな曲がある
ソウルシンガーのその曲が入ったアルバムを買って聴いたところ、
その曲以外はほぼまったく引っかかってきませんでしたし、
他にも、ソウル系の特に古いアルバムについては、
「何か拍子抜けした」という感じのものが多かったのです。
それは僕が若かったからというだけかもしれないけど、
でも、やっぱり、今でも「アルバム」としては、
悪くはないけど、最良の部類ではないな、とは思います。
ただし、昔よりは「普通にいいし、気持ちいいし、好きだな」
と思うようにはなりましたが。
僕は、30になるまではガチガチの「アルバム主義」で
音楽を聴いてきていました。
ただ偶然にいい曲が集まっているだけだったり、
1曲名曲があっても他があまりぱっとしないものであれば
僕の中では、「アルバムとしてはそこそこ」でした。
ただし繰り返しますが、
僕も少し(かなり?)聴き方・聴こえ方が変わっていて、
今はそこまで突き詰めて聴いてはおらず、
聴いていて楽しくて気持ちよいことが優先してはいます。
そうなったのは特に、ソウルを傾聴するようになったからですね。
02
2009年4月6日、A公園の今朝の雲
それはさておき、またこちらもいつも引き合いに出す本、
『魂(ソウル)のゆくえ』において、
ピーター・バラカン氏も
このように書いていました。
(改行は引用者が施す、他は年号以外は原文ママ)
音楽市場がシングル中心からアルバム中心へと変わったのは
1967年頃ですが、ブラック・ミュージックの場合はもっと後で、
(中略)1972年頃のことです。
これは音楽業界の仕組みと関係しています。
当時の音楽業界を支配していた白人たちにしてみれば、
売れる見込みのない黒人のLPに投資する必要はなかったので、
必然的に黒人向けの音楽はシングル中心の発売となりました。
もちろん当時のブルーカラーの黒人たちには
LPを買うのが大変だったという購買力の問題もあります。
そんなわけで、モータウンにアルバムの時代が訪れたのも、
1970年代に入って(中略)からのことです。
アルバムが中心となった1967年というのはもちろん、
ビートルズのSGT.PEPPER'Sが出た年であり、そこまでの流れとして、
同じ
ビートルズのRUBBER SOULが1965年12月に、そして
ビーチ・ボーイズのPET SOUNDSが1966年5月にリリースされ、
その流れが決定的になった、ということでしょう。
(上記3枚のアルバムタイトルが記事へのリンクとなっています)。
ここで再び僕自身のことについて少し話させてもらうと、
上記引用文において、最後の行の(中略)の部分には、
マーヴィン・ゲイの
WHAT'S GOING ONと、
スティーヴィー・ワンダーの
INNERVISIONSをはじめ、
70年代以降の自作自演アルバムが例として挙げられています。
僕はそれらは大学時代に買って聴いていたのですが、
確かにそれらは、アルバムとして素晴らしいと最初から思いました。
だから余計に、さいたまのソウルマニアの友達の言うことが、
自分にはよく分かったというのもあります。
03
2009年3月23日、札幌、うちの近くのまちの夜明け
そしていきなり、話がこのアルバムに飛びます。
実はここまで、「良いアルバムとは何か」について
思うところを書いていたところ、かなり長くなってしまったので、
それはまたの機会にします。
別に、この記事を持ってアルバム記事をやめるわけでもないし・・・
ピーター・バラカン氏の本には、
このアルバムに関する記述もあるので、再び引用します。
話の流れとしては、モータウンのプロデューサー兼作曲家である
ノーマン・ウィットフィールドについて触れた中で出てきたものです。
(改行は引用者、一部表記に引用者が手を加えています)
1960年代に入ると、アメリカ社会全体がヴェトナム戦争の
泥沼化などを背景に混迷の様相を深めていきます。
黒人社会も公民権運動からブラック・パワーの時代へと移りますが、
それにつれてモータウン・サウンドも変化を見せはじめます。
その中心になったのが、ノーマン・ウィットフィールドです。
ウィットフィールドは若いときにモータウンのスタッフに加わり、
プロデューサーとして独り立ちする機会を待っていました。
とくに彼が狙っていたのがテンプテーションズです。
テンプテーションズは、副社長であるスモーキー・ロビンソンが
ずっと担当していましたが、ウィットフィールドは、
なんとしてもテンプテーションズを奪いたかったようです。
(中略)
しかし、モータウンの社長のベリー・ゴーディは、テコ入れのために、
テンプテーションズをウィットフィールドに任せることにしました。
モータウンのサウンドの変化を象徴するこの事件が起きたのは
1966年のことで、それから1970年代初めまで
テンプテーションズは大ヒットを連発します。
ウィットフィールドが特異な個性を発揮しだすのは、
テンプテーションズのリード・ヴォーカルが、デヴィッド・ラフィンから
デニス・エドワーズに代わった1968年の『クラウド・ナイン』からで、
このとき同時にサウンドも大きく変化しました。
サイケデリック・ソウルなどとも呼ばれた新しいサウンドは、
当時のサイケデリック・ロックやスライ&ザ・ファミリー・ストーンの
影響を受けたもので、ワウワウ・ギターなどのロックの要素も
取り入れたロック的なリズムのファンクです。
1曲の時間も長くなりましたし、歌詞の内容もドラッグを題材にした
「クラウド・ナイン」のように、普通のラヴ・ソングよりも
社会意識が表れている曲が増えます。
04
2009年3月20日、A公園のシラカンバと雲と青空
と思ったのですが、いきなり飛ばしすぎるのもどうかと思い、
少しだけ説明します。
僕が「良いアルバムだ」と思う要素を、
話を短くするために箇条書きにしてみます。
・
曲のばらつきが少ない、もしくは、
「名曲」級の曲を他の「普通の」曲が邪魔をしていない
・
曲と曲のつながりが良い
=前の曲の最後の音と次の曲の最初の音のつながり、
=もしくは曲と曲の間の「間(ま)」
・
曲の配置が良い
=「普通の」曲が「つなぎ曲」として生きてくる
・
アルバム全体の流れ(=勢い)が良い
・
アルバムに統一されたイメージがある
・
言いたいことが素直に伝わってくる
・
さらりと新しいことに挑戦している
・
「らしさ」に徹底してこだわる
・
アーティストの制作時の気持ちや境遇がみてとれる
というところでしょうか。
もちろん、数多ある良いアルバムには、
これらすべてが揃っているわけでもないでしょうし、
どれかは逆に「負の要素」になっているか、
そう感じるけどまったく気にならないものかもしれません。
あ、だから、もうひとつ付け加えておくと
・
「良くない」と思える部分を許せる雰囲気を持っている
でしょうか。
もし何かまた浮かべば、ひっそりと書き足しておきます(笑)。
なお、以下の4点はもちろん重要な要素ですが、
・そのアーティストそもそもの曲の質
・そのアーティストそもそもの音楽の趣向やセンス
・そのアーティストそもそもの演奏力・表現力
・ヴォーカルの声
これらは、他のアーティストでは代替が出来ないものであり、
聴く側もそれが分かって選んで聴いているわけで、それを加えると
同じアーティストの中で良いアルバムと良くないアルバムが
出来ることの説明がつかなくなるので、割愛しました。
回りくどくなりましたが、これらについては、
「そのアルバムが良い」以前の問題ということです、念のため。
ただし、声の状態の良し悪しは上の要素ではあるでしょう。
さて、遅くなりましたが、このアルバムを聴いてみることにします。
05
2009年3月26日、まるでマッターホルンのような雲
Tr1:
Cloud Nine
硬質なドラムスを受けて2種類の音色のギターが重たいリフを奏で、
ベースもそこに加わり、ハイハットが小気味よいリズムを刻む。
このイントロだけで「あ、これはいい曲に違いない」と、
最初に聴いて確信しました。
上記引用から、これはクスリのことを歌っているということですが、
緊張感のようなものに支配された鬼気迫る曲。
サビの部分はとにかくインパクトが強いですね。
♪あぃむどぅいんふぁあ~~~~~~ぃん おんくらぁくどなぁいん
ヴォーカルが次々と代わって歌い継いでゆくのは僕には新鮮。
そして確かにファンクですね、この曲は。
一気に胸倉を掴まれるタイプのすごい曲。
ただし、テンプスに対して僕は昔から、
どちらかというとクリーンで上品なイメージを抱いていたので、
クスリがテーマというのは、ミスマッチな気はします。
しかし、それもウィットフィールドの狙いなのかもしれません。
インパクトは大きいですし。
ちなみに、
cloud nineとは
「至福の一瞬」という意味ですが、
まあ、日本語の「天にも昇る気持ち」と同じとみていいのでしょうね。
なお、僕はまだテンプテーションズを聴き始めたばかりで、
どれが誰の声かがよく分かっていません。
映像を観ないとそれを知るのは難しいというのもありますが、
ここでは、それについては触れたくても触れられないまま
記事を進めているもどかしさがあることを、どうかご理解ください。
Tr2:
I Heard It Through The Grapevine
ええっ、これってあの、
「悲しいうわさ」、
マーヴィン・ゲイがNO.1に送り込んだあの曲でしょ!?
クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルも
カバーしてヒットさせたあの曲だべ!?
さらには、
グラディス・ナイト&ザ・ピップスも歌ってた曲!?
テンプスのバージョンは驚きのファンクに仕上がっています。
マーヴィンとCCRで印象的なギターリフがなくて、全体的に鋭く、
どこから誰の声が切り込んでくるか予測不可能な
わくわくどきどきするバージョンになっています。
ただしその分、歌メロが薄くなっているのは、マイナスかな・・・
イントロのギターがなぜかとっても印象的で、
日常生活の中で突然その音を思い出すこと多々あり(笑)。
ワインでいえば「辛口の白」という感じでしょうか・・・違うかなぁ。
て、あれっ、あまり「悲しい」雰囲気じゃないぞ・・・
Tr3:
Run Away Child, Running Wild
このアルバムにおけるファンク路線の到達点。
1曲挟んでいるけどTr1と同じイメージが続いています。
じわじわと不気味な感覚が少しずつ広がる様子が
曲を追うごとにリアルに伝わってきます。
それを可能にしたのはやはり多彩なコーラスワークで、
ウィットフィールドが、自分のアイディアを具現化するのに、
テンプスが欲しかったのがよく分かる曲。
長い後半は、攻め立てるようなリズムセクションにのって、
強力なリフレインが繰り出され、聴いていて飽きません。
最後オルガンの音で終わるのは、いかにもサイケという感じ。
ただし、途中に入っている子どもの悲しげな泣き声のSEは、
要らないのではないかなぁ・・・聴く度に悲しくなります。
最初にかけたとき、ポーラが反応して吠えました(笑)。
それがなければ完璧な強力ファンクチューン。
06
2009年3月15日、飛行機なら雲の上にも行ける
Tr4:
Love Is A Hurtin' Thing
このアルバム、オリジナルのLPでは、A面が3曲、
B面が7曲という配置となっていて、だからこれはB面の1曲目。
そしてB面ではファンクの要素はほぼなくなります。
つまり、
A面はファンク、B面は従来のモータウン・サウンド、
という構成になっているアルバムということです。
これは静かな演奏の、とろけるようなバラード。
でも、明るい中にも、緊張した雰囲気が漂っています。
Tr5:
Hey Girl
軽快な爽やか系のポップソング。
ストリングスがふわふわゆらゆらとした感覚を作りだし、
まさに「雲の上」のようなサウンド。
Hey Girlと連呼するのがとにかく印象的。
Tr6:
Why Did She Have To Leave Me
(Why Did She Have To Go)
ミドルテンポの落ち着いた曲。
ソフトで優しいヴォーカルが「心の隙間」を垣間見せてくれる、
一見明るいけど、じわっとしみてくる曲。
これがいちばん従来のテンプスっぽい響きの曲かな。
Tr7:
I Need Your Lovin'
ファルセットで歌い通す珠玉のバラード。
これは最初に聴いた時にかなりしびれました。
そして、後にNO.1になった
Just My Imaginationの下地になった、
そんな曲かな、要は雰囲気がよく似ています。
とろけるような音が心地よく、いや、素晴らしい!
07
2009年4月2日、手賀沼の1本の木と雲と青空
Tr8:
Don't Let Him Take Your Love From Me
そういえばこのアルバムはブラスがあまり目立たなかったけど、
このミドルテンポの曲で初めて前面に出てきています。
その辺もきっと「ロック的」なものを狙ってのことでしょう。
だだをこねるような歌い方が妙に心にまとわりつきます。
B面はずっと明るい雰囲気の曲で通しています。
Tr9:
I Gonna Get A Way (To Get You Back)
「意欲作」でありながら、
こうしたいかにも往年のモータウンサウンドという曲があるのは
やっぱりうれしくなるし、自然と心も体も踊り出します。
いきなり大幅に路線変更するのはさすがに難しかったのかな。
だけど逆に、こうした曲がしっかりとあるからこそ、
「大胆な」変化も受け入れられたのかもしれません。
ただし、これは、曲自体がちょっと詰めが甘いかな・・・
Tr10:
Gonna Keep On Tryin' Till I Win Your Love
もこもこ動く気持ちがこもったベースラインをバックに、
ややアップテンポな曲をバラードのようにソフトに歌う、
心がうきうきしてくる、とびっきり楽しい曲。
ベースが歌っている曲は無条件で大好き!
間奏のブラスがセンス抜群で、ブラスを口ずさんでしまいます。
そこにハンドクラップが絡んで、うきうき度がさらにアップ。
Keep on tryin' と繰り返し歌う部分がやはり印象的ですが、
そうですね、繰り返し歌うというのが武器のひとつでしょう。
最初の歌詞がBirds on the treeだし、春の曲ですかね(笑)。
個人的にはこのアルバムではTr1の次に好きな曲。
そしてアルバムは終わります。
でも、曲自体の良し悪しとは別問題として、
アルバムの最後の曲としてはあまりしっくりこない、
というかさらに続きがあるように感じてしょうがないというのは、
やはりまだ、アルバムを作るということに慣れていなかった、
そんな感じもちょっとしてきます。
左のリンクはこのアルバム単体のCDですが非リマスター盤、
右は
PUZZLE PEOPLEとの2in1ですがリマスター盤。
音は後者のほうがやはりよいですが、
でも好きなアルバムは単体も欲しい・・・
だから僕は両方持っています(笑)。
ちなみに左のリンクのものは、先日行った渋谷のタワーレコードにも
置いてあったので、今でも普通に購入できます。
ここまで書いてきて、大事なことを忘れていました。
このアルバムは、
今までの僕が経験してこなかったもの
であることに、聴いていて気づきました。
といのも僕は基本的には、これまではずっと
「自作自演」のものばかりを聴いてきていたからです。
同じ「自作自演」でも幾つかタイプはありますが、
ビートルズのように、多少の助けは借りても、
基本的には自分たちだけで作曲から演奏までこなすバンドから、
ブルース・スプリングスティーンのように、
固定のバックバンドがついている人、そして、
ソロだけどバックは随時スタジオミュージシャンで賄うと、
いろいろなタイプはあり、そして外部の曲を取り上げることはあっても、
基本はみな同じ「自作自演」でした。
このアルバムは、テンプテーションズという名前ですが、
彼らは基本的には歌っているだけで、作曲も演奏もしていません。
もちろん、歌は唯一無二であり、最大の魅力であって、
そんなことは忘れればいいのでしょうけど、やっぱり僕は、
聴いている間そのことが頭から離れませんでした。
制作者と表現者に妙な距離感があるのではないか・・・
しかしそれは杞憂でした。
だからといって音楽がつまらないとかそういうことではなく、
ははぁ、なるほど、こういうのもアリなのか、
と思えたのが、僕にとっては大きな収穫でした。
そして、それを可能にしているのはやはり、
テンプテーションズの表現者としての器の大きさでしょうね。
ますます僕はテンプスが大好きになりました。
そして、次々と買っています・・・
08
2009年4月6日、A公園の夕方の雲
なお、2in1のもう1枚のアルバムは、No.1になった
Can't Get Next To You 「悲しいへだたり」収録。
この曲はすごいです!
ポップとファンクの華麗なる融合!
今僕がいちばん好きなテンプスの曲です。