「風のガーデン」鑑賞記

guitarbird

2017年09月26日 22:43

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先日、少し前のドラマを観ました。

「風のガーデン」
2008年放送 全11話
脚本:倉本聰
主な出演者:中井貴一、黒木メイサ、神木隆之介、緒形拳

富良野を舞台にしたドラマ。
富良野と倉本さんが大好きな彼女に勧められていましたが、
ケーブルテレビで放送され、録画しBDに焼いて観ました。

当初は1話ずつ観てゆくつもりでしたが、
最初に観たのが外出の予定がない休みの日で、
1話また1話と観ているとだんだん面白くなってきて、
その日だけで7話まで、残りも1日2話、
結局足かけ3日で鑑賞し終わりました。

結論からいえば非常に面白かった。

東京の大学病院で麻酔科医を務める白鳥貞美(中井貴一)は、
自らが膵臓ガンに冒され余命幾ばくもないことを知る。
彼の妻は彼の浮気が原因で妻が6年前に自ら命を絶っていた。
彼にはルイ(黒木メイサ)と岳(神木隆之介)2人の子どもがいるが、
岳は知的障害があり施設で育てられ、妻とルイで面倒を見ていた。
岳はお父さんつまり貞美は死んだと説明され信じていた。
今ルイは「風のガーデン」を切り盛りし、岳はそこで働いている。
貞美の父白鳥貞三(緒形拳)は富良野の医師で、
在宅ケアによる終末期医療に携わっており、
人の死を多く見てきている。
貞三はかつて、貞美の妻の死に及んでついに見るに見かね、
家庭を顧みない放蕩息子貞美を勘当した。
しかし貞美は、自らの余命を知り、家族とともに過ごしながら
生まれ育った富良野で人生を終えたいと考えるようになる。
そして息子は父と再会し、和解し、最期を迎える。
というお話。
挿入歌「カンパニュラの恋」を平原綾香が歌っていますが、
彼女はドラマでも中井貴一の恋人でまだ売れない歌手の役で
ドラマに出演していました。
この「カンパニュラ」の意味はドラマ終盤で分かります

終末期医療がテーマとなっていますが、
父が息子の死を看取るという衝撃的な流れが
ドラマの核になっていて心が大きく揺り動かされました。

ひとつ観ていてずっと頭から離れなかったのが、
緒形拳さん、この作品がドラマとしてに遺作なのですよね。
放送が始まった2008年10月9日の4日前、緒形拳さんは
この世去りましたが、その緒形拳さん、このドラマの
演技に自らの姿も重ね合わせているのかどうか、ということ。
ネットで調べると、亡くなる僅か5日前9月30日の記者発表には
緒形拳さんも中井貴一さんとともに人前に出て喋っていて、
少なくとも元気そうに見えていたとのこと。
緒形拳さんはその少し前から肝臓を患っていて、亡くなった
10月5日の前日に容態が急変した、というのが事実のようですが、
そうであるならドラマ撮影中はまだ自分の死期は近いとは
漠然と感じてはいたけれど余命幾ばくという切迫した状況ではなく、
となると自らの姿を重ね合わせるとまではまだいっていなかった
かもしれないと僕は想像しました。
真相は分かりませんが、でも僕は、このドラマにおける
ユーモアのある緒形拳さんの姿を見ていると、この直後に
亡くなられたことがにわかには信じがたかったです。
まあ、緒形拳さんほどの人であれば、自分自身の状況を
演技には出さずに役をこなすことはできたかもしれないですが。

とここまで書いて、この先こんな風に書いていたらとんでもなく
長くて読みにくくなってしまうのは申し訳ない、と。
書きたいことはいっぱいあるけれど、ドラマについては
あと2点ほど短めに書いて先に進みます。


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ひとつめは、「風のガーデン」で働く岳こと神木隆之介の演技。
ピアノを弾いたり調律したり、そして花言葉をすべて覚えていて
説明してゆく姿には感心しうっすら感動すら覚えました。
ドラマは毎週花の名前がサブタイトルになっていて、
例えば第2話「エゾエンゴサク」、第9話「ラムズイヤー」など、
冒頭のテーマ曲が流れる際にはその絵も紹介されるなど、
花を話の中心に据えているのがよかった。

花言葉はおじいちゃんつまり緒形拳が考えたものという想定で、
世の中に流布する花言葉とは違ってユーモアたっぷりのもの。
劇中で岳の父である貞美(中井貴一)は岳の前では
「大天使ガブリエル」を演じているのですが、その貞美が岳に
お父さんの花言葉がある花はないのですかと質問したところ、
岳は「ありません」とひとことだけ言うシーンが印象的でした。
実際の花言葉は倉本聰さんが考えたもので、ガーデンにあっても
ドラマでは使われなかったものも含め365種の花があります。
それをまとめた本も出ています。





風のガーデン 貞三先生の花言葉365篇
倉本聰
エフジー武蔵



そしてもうひとつ。
ドラマの中で貞美は東京にいた頃に同じ病気に犯され
余命幾ばくもない患者からキャンピングカーをもらい、
そこに自らを治療する器具や薬品を積んで富良野に赴き、
最初は森の影から子どもたちのいるガーデンを見守ります。
ある日、岳はエゾエンゴサクの球根を植える作業をしていた。
姉のルイ(黒木メイサ)に言われて千個植えなければならない
と愚痴をこぼす岳を貞美は手伝います。
後に貞美は自分のキャンピングカーの周りにもエゾエンゴサクの
球根を植え始め、今度はそれを見たルイも手伝います。
この話の流れが好きでした。
そう、貞美はその花が咲くのを見られないのが分かっている。
亡くなったら思い出してほしいという思いもあったのでしょう。
そして僕は、エゾエンゴサクの球根を庭に植えたい、と。
あ、僕は今のところ余命幾ばくもないわけではないですよ。
僕の庭には以前エゾエンゴサクが出ていたのですが、今はない。
エゾエンゴサクは球根で増やせるのは知らなかったので、
それならぜひとも植えてみたい、と思ったのでした。


さて、「風のガーデン」のドラマを観たからには、
富良野に行って実際の「風のガーデン」に行きたい。
というわけで先週の撮影小旅行で行ってきました。

ガーデンの前に、富良野市街地でドラマのロケに使われた
場所に2カ所ほど行きました。

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緒形拳演じる白鳥貞三先生の「白鳥医院」。
実際に病院として今でも使われていますが、
ドラマとは別にしても趣のある建物ですね。


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緒形拳をはじめ車で走行するシーンでよく写るのが、
空知川にかかるこれ「ふらの五条大橋」。
アーチがきれいな橋ですね。

この病院と橋は俯瞰で写るシーンが何度かあり、
僕はしーんとしてもきれいで大好きでしたが、
ビルか山の縁からでも撮ったのか、或いはクレーンか、
現地では分かりませんでした。
まあ、クレーンならもうないので分からないはずですが。

そしていよいよ「風のガーデン」へ。

新富良野プリンスホテルの敷地内にあって、元は
ゴルフ場だった場所の一部をガーデンにしたという場所。

「ニングルテラス」横のゲートで入場料800円を払って入場。
歩いて5分ほどというので歩くつもりでしたが、その時は
僕たちの他に客はなく、無料送迎車の運転手さんが
声をかけてくれて乗らないと申し訳ないかと思い、
車で3分ほど揺られて着きました。


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ドラマで見るほど花が一面に咲いているというわけでは
なかったのですが、秋ですから、仕方ないかな。


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これが「グリーンハウス」
ドラマで貞美と岳が「乙女の祈り」のセッションをした場所。

そう、音楽絡みの話。
貞美は大学時代にオーケストラでチェロを演奏していたことがあり、
卒業後20年経っても時々い家でチェロを弾いていて
時々友人知人ともアンサンブルを楽しんでいるという設定。
ここでは岳のピアノと貞美のチェロで弾いたわけですが、
クラシックでもそのように身近に気軽に演奏できるというのは、
以前読んだ「バロック音楽」の著者皆川達夫さんが
望んでいること、そうかこういうことかと、まあこれは逸話。


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「グリーンハウス」の辺りはちょっとだけ高くなっていて、
「見晴台」と名前がついています。
ここからは、俯瞰というほどではないけれど
ガーデンを見下ろすことができます。
この控えめなところがまた気に入った。


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「大天使ガブリエルの像」もガーデン内3カ所にあります。

七三分け、中井貴一がモデルなのは間違いない。


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ガーデンで咲いていた花の写真、02とこれ2枚の3枚ほど。

ごめんなさい、しかし名前が分かりません。
園芸植物の勉強もしないと・・・


少し離れた場所に「薔薇の庭」もあります。
行きましたが、庭の写真はうまく撮れなかったので、
ごめんなさい、お見せできません(また行かないと)。

そこで咲いていた薔薇を2種類。

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「ルイの涙」

ドラマのイメージに合わせて作出した品種で、
京成バラ園で扱っているもののようです。

ルイ(黒木メイサ)の「涙」ということで白い花。


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「岳の夢」

深紅とまではゆかない赤い花ですが、
花びらの真ん中辺に白い部分があるのが、
岳(神木隆之介)の夢が少しだけ見えているのかな。


ガーデンにはたくさんの蝶がいました。
どれもA公園にいる蝶ですが、場所が違うとまたきれいに見えました。

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クジャクチョウ

花にはこの目玉模様が似合いますね。


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ヒメアカタテハ

北海道では発生せず毎年南から渡って来るという蝶。


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シータテハ

今年はシータテハが多くて、僕がA公園で観察を始めて、
これだけ多かった年はなかったというくらい大発生しています。

一方、同じハルニレを食樹とするエルタテハが今年は
ほとんど見られないのは、何か相関関係がありそうですね。


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ドラマ放送から9年ほど経っていますが、
秋の平日の昼に僕らを含めて20人ほどが来ていて、
まだ結構人が来るんだなと思いました。

僕のようにケーブルテレビで初めて見たという人も
いるかもしれないですし。

また行きたい。
案内してくれてありがとう、と。


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お昼は富良野市内鳥沼公園前にある
「富良野バーガー」を食べました。

ここは前からおいしいおいしいと聞かされていましたが、
ようやく行くことができた。

ほんとうにおいしい。
意外と脂っこくないのがポイント。
レタスの量がサラダ1回分くらいと多いのもいい。

でもさすがにすべてを一気に口に入れるのはできない。
ナイフとフォークで少しずつ食べました。

ソーセージとフライドポテトが添えられているのも嬉しい。

これで1250円ですが、時々食べるなら
まったく高いとは感じませんでした。

おいしかった、ごちそうさま!


今回の富良野美瑛撮影小旅行の話題はひとまずこれまでにて。
ご覧いただきありがとうございました。


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最後は一昨日の朝、うちのガーデンの犬たち。

まだガーデンというほどきれいにはできていないかな・・・(笑)。





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