01
暑いですね。
夏だから当たり前か。
暑くなるとあまり動きたくなくなり、本を読みたくなる。
今月の読書記事です。
今月は
6冊。
半分が自然系、やっぱり幅広くないかな・・・(笑)・・・
02
袖のボタン
丸谷才一
朝日文庫
丸谷さん、相変わらず読んでます、これで4か月連続。
今回は2004年から2007年の間に朝日新聞に連載されたコラムを
集めたものですが、日本文化や日本文学への評論集といった趣で、
丸谷さんらしい日常のエッセイとは少し違いました。
でもやはりその考え方には基本的に共感するものばかり。
今回最もよかったのは、「日本美とバーコード」というコラムで、
日本文化はたとえば襖など、美術が日常の中に溶け込んでいて、
西洋のように美術が隔絶されたものではないと説いていて、
まずはそこでなるほどと思わされる。
さらに、そのような日本の美が現在の日本人の生活に最も
寄与しているものといえば、本の装釘(そうてい)であるという。
なるほど、その通り、確かに最も身近にある美術品ですね。
なお、装丁の「てい」の字を丸谷さんは「釘」で書いているので
ここでもそれを踏襲しました。
しかし、バーコードが導入されるに当たり、表紙の裏の左上に
2列のバーコードを入れなければならなくなったのは、日本人が
受け継いできた美意識からはにわかに受け入れ難いものである、
とは、現象としては気づいていても、意識をしたのは初めてでした。
僕の場合は特に書店でアルバイトをして本に関わるようになってから
その変化が起こったので、余計に感じ入る部分があります。
今でも家にある本や古本でバーコード以前の文庫の裏を見ると、
その部分に著者の顔写真があって本らしくていいなと思います。
というわけで、僕の丸谷さんへの思いはもう「心酔」になりました(笑)。
03
クジラの謎、イルカの秘密 100問100答
ネイチャープロ編集室(編)
河出書房新社
僕は山人間ですが(登山という意味ではない)、実は鯨類も
大好きで、いつか自分で見たいと思っています。
だから時々クジラやイルカの本を読みたくなりますが、今年は、
3月に家にあった鯨類の図鑑を再読し、ブルーバックスを1冊買って
読み、さらに勢いでこの本の存在を知りネットで買っていました。
クジラとイルカについての疑問を生態から文化との関わり合いまで
100問100答形式で解説してゆく本で、まさに痒いところに手が届く
というくらいに網羅され、鯨類のことがよく分かります。
ただ、やはり海人間ではない僕には、海に囲まれた土地に住んでいる
とはいっても、どこでいつみられるかはまだ雲を掴むような話ですね。
まあそうした情報は本では得られないものだと思いますが、でも
クジラやイルカを見たいという思いの下支えにはなる良書に出会えた、
読んでよかった、自然が好きな多くの人におすすめできる1冊です。
04
野鳥ポケット図鑑
久保田修
新潮文庫
この本については独立した記事を上げており、
こちらをどうぞ。
それから一度も本を手に取っていませんでしたが、そうか、
まだひと月も経っていなかったんだ・・・
05
ピーター・バラカン音楽日記
ピーター・バラカン
集英社インターナショナル
先月に続いてのピーター・バラカン。
先に枝葉の話で、これもAmazonで古本を探して買いましたが、
帯付き初版で普通にきれい、「賭け」が当たってほっとしました。
これは月刊PLAYBOY誌が2008年に廃刊になるまでの
足かけ7年間の連載コラムをまとめたもので、バラカンさんの
趣味を反映し、ロック、ソウル、ブルーズ、ジャズ、カントリーから
近年のこだわりであるアフリカの音楽にまで話が広がっています。
本人もまえがきで断っていたように、雑誌の連載で紙幅に限りがあり、
もっと読んでいたかったという話が多いのが不満といえば不満。
ここで最も印象的だったのは、バラカンさんがその音楽を好きか
どうかは、そのアーティストに「ブルーズ心があるかどうか」による、
というもので、「ブルーズ心」については本人もうまく説明はできない
ということだけど、でも僕は読んでそれがよく分かり、共感を得ました。
デレク・トラックスをバラカンさんは大変買っていて、僕はまだ1枚しか
聴いたことがないので、また買って聴いてみようと思いました。
ジョン・クリアリーの話があったのも、最近気に入ったのでうれしかった。
バラカンさんの本はまだ読みたいけれど、入手できるものが
限られてきてしまい、歯痒い思いでネットで入手状況を追っています。
06
イネ科ハンドブック
木場英久・茨木靖・勝山輝男
文一総合出版
これを買ったのは、6月に「北海道フラワーソン2012」の際に、
イネ科は同定が難しいので調査の対象から外されたことで、
逆に僕の中でのイネ科への興味が高まったからです。
イネ科の植物なんて身近も身近、おそらく身の回りに最もたくさんある
といっても過言ではないくらいだから、それを知りたいと思って。
文一の「ハンドブック」シリーズは多岐に渡る動植物のものが出ていて
定評があるので、やはり最初に買うならこれだろうと。
買った最初の日にA公園で早速見たところ、あったのは、
オーチャードグラス、ケンタッキーブルーグラス、ティモシーと、
なんだかイーグルスのような名前の海外移入種ばかりでしたが(笑)、
以前よりもイネ科が身近になったように感じました。
ちなみにカモガヤ、ナガハグサ、オオアワガエリ、というのが、
その3種類の標準和名です、念のため。
これを見ていてふと思ったのは、図鑑の写真は当然平面ですが、
写真から立体像をいかに想像できるかが図鑑の活用の鍵、ということ。
環状に出ている茎が平面の写真ではもちろんそうは見えないわけで、
見え方が違うけど同じものだと考えられるかどうか、です。
じゃあ逆に実物を写真で撮って同じ平面で見比べればと思いますが、
図鑑のものとそっくり同じ状態の植物というのはめったにない、
そこが昆虫よりも難しい部分だと思いました。
さて、秋までに幾つ同定して覚えられるかな。
07
古寺巡礼 初版
和辻哲郎
ちくま学芸文庫
本とは、書いてあることをすべて理解し覚えるのが理想でしょうけど、
実際問題としては、基礎知識が足りなくて分からないことも多い。
でも一方で、その中から共感を得られる部分や納得する部分、
そして積年の疑問が解けるようなことがひとつでもふたつでもあれば
その本を読んでよかったと感じるのではないか。
ということをこの本を読んで強く感じました。
「古寺巡礼」は名著として大学生の頃から知っていましたが、
読んだことがなく、それがちくま学芸文庫で「幻の名著が復活」
として初版が刊行されていたことを知り、読んでみたくなりました。
繰り返し、僕には基礎知識がないのでこの本について詳しいことは
話せないのですが、ひとつだけ印象的だった部分について書きます。
唐招提寺、僕は高校時代に修学旅行で訪れましたが、その時に
訪れた中でもっとも気に入った場所がその唐招提寺でした。
なぜだろう、でも、敷地の中の建物の配置、周りの緑との調和、
もちろん建物の見事さなどに感銘を受けたのだと思いますが、
この本ではやはり「風景との調和」についての考察が重ねられていて、
そういうことだったのかと、30年近くを経て納得しました。
しかし、それ以前に文章が流麗で読むだけでも気持ちがいい。
ただ、ものすごく細かいことですが、話に出てくる知人などを
Aさん、Zさんなどと書いていたのは、せっかくの日本語の流れの中で
もったいない、違和感がありました。
かといってこれ、阿部さん(仮称)、残間さん(仮称)などと書くのも、
やはり興ざめする上に、実際の名前である以上、読んだ人が
要らぬ想像を働かせてしまうのも問題かもしれない、難しいですね。
なんて、枝葉の話で盛り上がってしまいましたが、僕はいつか
京都奈良のお寺巡りをしたいと思っているので、その際には再読し、
かばんにこの本を入れて訪れたいと思いました。
読書したという満足感がとても大きな1冊、読んでよかった。
その前に、初版ではない「通常版」も読むと違いが分かるかな。
今回読んだことが意外と頭に残っているかもしれないし(笑)。
08
いかがでしたか!
ロンドン五輪が始まりましたが、読書のペースは
今まで通り保ち、暑さにも負けずに夏を過ごしたい。
8月はお盆もあるので、時間が取れるかな。
次回はまた小説を、なんでもいいから1冊は入れたいです。