いつものように
写真へのコメントも
大歓迎です!
01
FLOWERS IN THE DIRT Paul McCartney
フラワーズ・イン・ザ・ダート ポール・マッカートニー
released in 1989
ポール・マッカートニーの1989年のアルバムです。
ポールで5指に入るくらいに、僕が大好きなアルバム。
ポールについての概略は、もはや要らないですかね・・・(笑)。
話を早く進めたいので、今回は手短にこのアルバムまでの流れを。
ポールは、1982年に、
ジョン・レノンへの思いなどを、
かつての名パートナー、
ジョージ・マーティンと再び手を組み、
TUG OF WARという大傑作アルバムにまとめました。
(これは僕がいちばん好きなポールのアルバムですね)
しかし、その後のポールは、
音楽的にも、チャート的にも低迷します。
次の1983年、
PIPES OF PEACEはそれでもまだ、
マイケル・ジャクソンとのデュエットが話題を呼んだ
Say Say SayがシングルNO.1となり、アルバムもいい曲が多いけど、
TUGの二番煎じという感じが拭いきれず・・・
(それなり以上にいいアルバムですが・・・)
次は1984年、映画
『ヤァ! ブロード・ストリート』も手掛け、
そのサントラ
GIVE MY REGARDS TO BROAD STREET、
ついにポールも過去の遺産にすがるようになったかと言われ、
映画もアルバムも、さして成功もせず・・・
(愛着は湧きやすいアルバムですが・・・)
次、1986年、再び「現役」のロッカーとして目覚めたのか、
当時売れ線だった音を狙った
PRESS TO PLAY、
しかしこのサウンドはポールらしくlないとそっぽを向かれ・・・
(ただし僕は今は大好きなアルバムですが・・・)
さらには、当時のソ連でのみ発売された
ロックンロールのカバーアルバムを録音したり(後に全世界で発売)、
アニメ映画のテーマ曲
Once Upon A Long Agoで、
ポールらしさを見せたりしつつ、CDの時代になって、
ALL THE BESTをリリースし、
そろそろポールもキャリアをまとめて、趣味の世界に入ってしまうのか、
と思っていたところ・・・
1989年に出たこのアルバムは、
ポールがまだまだ「現役の」ロッカーであることを
これ以上なく証明してくれた出来のいいアルバムでした。
作りがかっちりしていて、落ち着いて引き締まった音で、
ポールがこれだけ真剣に音作りをしたアルバムは
BAND ON THE RUN以来じゃないかという
手ごたえ十分のアルバムをリリースして、僕は当時、大絶賛。
02
LPと本とアイーダ
充実したアルバムを作ることが出来たのは、
エルヴィス・コステロとの共作が実を結んだのでしょう。
前に記事にしましたが、僕はコステロが・・・苦手です。
だから当時は、ポールがコステロと一緒に曲作りをしていると聞いて、
正直、ああ、そうなのか・・・としか思いませんでした。
コステロがお好きな方、申し訳ありません。
この記事はここからも、コステロに対してあまり
いい印象を抱いていないように受け取れるかもしれません。
でも、それは、個人のBLOGの範ちゅうのことであるとして、
どうかお許しください。
コステロがお好きな方は、読まないほうがいいかもしれません。
続けると、当時はこんなことが言われていました。
「ポールは、コステロの中にジョンの姿を見たのではないか」
コステロがジョンに似ているというよりは(似てなくもないかも)、
ポールは、自分の「生徒」ではなく、お互いを尊重しつつ
何でも意見をぶつけ合える「パートナー」をずっと探していた、
そしてついに、ジョンと別れて18年、コステロを見つけた。
少なくともポールは、コステロから「いい刺激」を受けたことは
間違いないのは、曲の充実を聴けば分かります。
それは、共作曲のみならず、ポールだけの曲にも感じられます。
このアルバムにはまた、それ以上の意味もありました。
ポールが47歳にして「現役」であることが
今の「大人のロック」の流れを、「作った」とまではいわないですが、
聴き手も演じ手も大人になることをみんなで認め合った、
今思えば、そんな時代の走りだったように思います。
その流れは、90年のポールの来日公演で決定的になりました。
当時は、80年に麻薬で捕まった件があって、
来日は不可能ではないかと言われていたのが、
日英の政治家もポールの来日に触れるほどの問題になり、
ついに実現した東京ドームコンサート。
コンサートの話は、想い出がたくさんあって長くなるので、
今回は敢えてしませんが、あのコンサートは、
僕より年上の人のほうが多かったと思っています。
(僕も当時は大学生でしたから・・・)
このアルバムが出たのは確か5月。
上野のCISCOで見つけて買ってそのままバイト先に行き、
当時は毎日残業をしていたのですが、
今日はポールの新譜を聴きたいので先に上がらせてください、
と帰ったことを覚えています。
そして、身構えて聴きました。
聴いてみて・・・ポールにしては硬質すぎるイメージを受けました。
当時は、「ポールでこれはやり過ぎだ」と言っていた人もいました。
真面目すぎ、落ち着きすぎというか、遊びが少ないというか。
真面目すぎるといえば、TUG OF WARもそうでしたが、
でも、TUGは、いかにもポールらしい音世界ではありました。
そう考えてみると、やっぱりこのアルバムは、
コステロの参加によるところが大きいのでしょう。
まあ、このアルバムについては出来がとってもいいので、
コステロとの共同作業が成功した「歴史的な」アルバム、
ということはできるのでしょうね。
ポールらしからぬ「落ち着き」があって、
ゆったりとじっくりと聴くことができるアルバムではあります。
03
2009年4月17日の青空、新得町
Tr1:
My Brave Face
アルバムからの先行シングルは、「ビートルズっぽい」曲。
早速、コステロ(名義はMc Manus)との共作で、
中間部のもぞもぞいう歌メロの部分はコステロでしょうね(笑)。
これはビデオクリップが面白くて、日本人のポールのマニアが、
ポールの秘蔵映像などを盗んできて自慢しているところに
警官が来て連行される、というもので、
その中にビートルズ時代の映像なども織り込まれていました。
ビートルズへのマイナスのこだわりを捨てたのも、
コステロとの共同作業により自信が戻ってきて、
「現役アーティスト」として割り切れたからかもしれません。
ポップで明るくて聴きやすい曲であるとは思います。
そして「大人のロック」が幕を切って落としました。
Tr2:
Rough Ride
そういうジャンルがあるのか分からないですが、
「ハードなレゲエ」、という感じ。
コンサートでは5弦ベースを弾く姿が印象的でしたが、
でも、コンサートでいちばん、会場が静かだった曲・・・
だから僕には逆に印象的でした(笑)。
間奏のブラスの使い方などは、さすがと言わせるものがあります。
トレヴァー・ホーンがキーボードで参加(他数曲も)。
Tr3:
You Want Her To
早速
エルヴィス・コステロとのデュエット。
コステロに合わせて、ポールもかなり力んで歌っています。
でも、ごめんなさい・・・
僕は、この曲については、2人楽しそうにやっていてよかった、
以上のことを思ったことがありません・・・
アルバムの流れの中でここにあるのが良い曲だと思います。
フォーク調のワルツ、最後だけなぜかジャズ調になって終わり。
Tr4:
Distraction
軽い肌触りのバラード調で、ああ、この人はかつて、
For No Oneを作った人なんだな、と実感できる曲。
ちょっとだけフレンチポップ風。
歌メロもよく、聴いていて気持ちがいい曲で、
ポールお得意の「小品」の部類かな。
「不安定」なのに明るく楽しく感じるのは、ああ、そうか、
心がふわふわした状態だからなのかな(笑)。
しかし、曲がなんとなく何か物足りない感じがするのも、
もしかして「不安定」だからかな・・・
Tr5:
We Got Married
そしていきなり、ふわふわした心がここにたどり着くのか・・・
もはや朋友である
デヴィッド・ギルモアが参加。
そのせいかどうか、プログレのような緊張感ある展開。
しかしそれも、ポールらしくない部分ではあるかもしれません。
コンサートで演奏して、やっぱり、静かだったし・・・
アルバムの流れの中で聴くと、メリハリがあって好きですが。
それにしても、たった4行で結婚してしまうのか・・・(笑)・・・
余談、「flat」がアパートのことを指すのを、この曲で知りました。
Tr6:
Put It There
ポールお得意のアコースティック小品の名曲、傑作。
もう「名曲」と断言してしまう、歌メロがとにかく美しい。
強引な喩えをすれば、
ジョン・レノンの
Beautiful Boyを
ポールのセンスで作った、というところかな。
そして、そのモチーフというのはやはり、
ポールが小さい頃にお父さんに言われたことを
思い出していたのかもしれません。
ポールでいちばん優しい曲じゃないかなぁ。
ポールを聴く楽しみは充実した小品だと、
僕は、当時、これを聴いて悟りました。
今後、あまり規模が大きくないコンサートで、
アコースティックギターだけでこの曲を聴きたいなぁ・・・無理かな・・・
聴く時の気分によってはほろりと涙する「小さな名曲」。
05
2009年4月17日のノスリ、新得町(写真はトリミング)
Tr7:
Figure Of Eight
90年東京ドームコンサートの1曲目がこの曲でした。
ビートルズ時代の曲を持ってきそうなものを、ノリはいいけど、
何かがすごくいいということでもないこの曲を選んだのは、
ポールが「現役」であることの意地を感じました。
そうそう、このアルバムのもうひとつの魅力が、
ポールが再びバンドとしてやれる楽しさを見出したことでしょう。
このアルバムのツアーでは、このアルバムに参加した
Gt
ヘイミッシュ・スチュワート(元
アヴェレイジ・ホワイト・バンド)、
Gt
ロビー・マッキントッシュ(元
プリテンダーズ)、
Ds
クリス・ウィッテン、そしてもちろん
リンダ・マッカートニーが
バンドメンバーでもありました。
(もうひとりキーボードが
「ウィックス」)。
名刺代わりの力強い1曲。
そして、バンドメンバーとしてのポールの魅力は、
次作OFF THE GROUND(記事はこちら)に結実します。
Tr8:
This One
僕がポールのソロで最も好きな曲3曲のひとつ。
いつかは単独で記事に・・・出来るかな・・・
要は恋愛関係で、僕も若かったということなんですが・・・(笑)・・・
それはそうと、この曲のメッセージは、サビに要約されています。
If I never did it, I was only waiting
for a better moment that didn't come
何もしないで後悔はするな、ということ。
そしてさらにこの部分は、
ポールが、歌メロに言葉をのせる天才であることが
あらためてよく分かります。
この曲は全体がそうなのですが、特にこの部分は
歌っていてとっても気持ち良く流れてゆきます。
サビが2段構えになっているのも面白くて、その2つが、
This OneとThe Swanの韻というより「ダジャレ」になっています。
そしてやっぱり歌詞作りの才能も感じ、例えば、
3コーラスめの歌詞の一部が、
1コーラスめと「I」と「you」が入れ替わっていて、
つまりお互い同じ気持ちだったことを間接的に表わしていて、
ちょっとしたことでよりリアリティが出るという例でしょう。
ただ、最後がなぜ暗い雰囲気で終わるのがなぜか、
いまだに僕はつかめていません。
単なるユーモアかなぁ・・・
僕の中学時代からのビートルズの友達は、この曲いいけど、
最後が暗いのがどうしてぇと思う、といつも言っていました。
なにはともあれ、僕はほんと大好きで、
今この記事を書くのに久し振りにこのCDを聴いて、
またこの曲を繰り返しで聴いてしまっています・・・(笑)。
余談、写真06の左下は、この曲の12インチシングルレコードで、
リリース後何年かして中古で2500円で見つけて買いました。
右下は当時かった7インチシングルレコードで、
インド風の絵などもおまけで入っています。
しかしなんで、インド風・・・!?・・・
ふと思ったのは、89年といえば、
ジョージ・ハリスンが復活した後なので、
その対抗意識・・・!?・・・
Tr9:
Don't Be Careless Love
コステロとの共作の3曲目。
この曲の歌詞を最初に読んだ時、あまりの他愛のなさに
驚くと同時に、そこにものすごく共感を覚えました。
話を要約します。
男女が同棲していて(結婚しているのかも)、
夜になっても女性が帰って来なくて、
男性は不安のままベッドに入る。
彼女はどうしたんだろうと男性は不安が募り、やがて朝になり
朝刊を見ると、彼女が通り魔に襲われていた・・・
というのは夢で、朝起きてみると、
彼女はいつものようにちゃんと横に寝ていた。
そうだよ、いいんだよこれで、いつも通りで。
妄想が独り歩きしだすところは、読んでいておいおい、
と思ったりもしましたが(笑)、実感こもった歌詞だなぁ、と。
いつものように君がいることのちょっとした幸せ、
がテーマですが、この曲ですごいと思ったのは、
大スターであるポール・マッカートニーの「小市民」としての感覚
でした。
ポールがえらいのは、これだけの大スターになると、
小市民的感覚がなくなりそうなところが、ポールは持ち続けていて、
こんな他愛ない内容を切々と歌えて、しかも説得力があるところ。
コステロとの共作では、僕はこれがいちばん好きですね。
この曲については、小走りするBメロディがコステロっぽいけど、
歌詞はコステロとポールのいたずら心が生きていると思います。
Tr10:
That Day Is Done
コステロとの共作の4曲目、最後の曲。
恐ろしいくらいに良い曲だ、と、まずは言っておきます。
曲のクオリティはものすごく高くて、クオリティという点では
このアルバムいちばんではないかな。
でも、僕はこの曲は、「やり過ぎ」だと、今でも思っています。
ここまでくるともう
ポール・マッカートニーらしさがないというか、
「身が詰まった」感じがするこの曲は、ポール本来の「遊び心」が
ほとんど抹殺されているようにすら感じます。
具体的には、もう冒頭の歌詞から違和感がありました。
I feel such sorrow, I feel such shame
ジョンがこんなこと言うと、なるほどもっともですが、
ポールがこんなこと言う人だとは思っていなくて、
これを最初に読んだ時、ある意味とてもショックでした。
タイトルからして、ポールのイディオムではないですし。
そしてこの曲、どこをどっちが作ったか、まるで分からりません。
ほとんどコステロの色に染まっている、といっていいのかな。
でも、この時のポールは、それをやりたかったのでしょうね。
なんせポールという人は、身の回りで起こっていることを
自分でもやってみないと気が済まない性格の人ですから(笑)。
この曲は、ポールに合うかどうかは別として、
すごくいい曲だと思うし、好きな曲ではあります。
今聴くと、当時ほど心の抵抗感もないですし(意外なことに)。
ラスト近くの重たいキーボードの音は、威厳すら感じます。
そしてピアノは
ニッキー・ホプキンス、そうか
だからこの曲、荘重な雰囲気が増しているのか。
余談ですが、この曲にはFlowers in the dirtという歌詞があり、
このアルバムにはアルバムタイトル曲が存在せず、これは
曲の歌詞からアルバムタイトルをとったパターンですね。
ニルヴァーナのNEVERMIND(記事はこちら)と同じく。
Tr11:
How Many People
この曲は、
熱帯雨林を守る活動をしていて殺害された
シコ・メンデスという人に捧げられた曲です。
写真02でアイーダが紹介している本は、
まさにそのシコ・メンデスのことを書いた本で、
このアルバムの3年後の92年に邦訳が出たので買いました。
(この本に気づいたのはたまたまでしたが)。
本格的なレゲエで、ポールも気分良さそうですが(笑)、それは、
この少し前に、
ボブ・マーリーのベスト盤リリースを機に
One Love / People Get Readyのビデオクリップが作られ、
ポールがそこに顔を出ていたことが影響したのかもしれません。
サビにOneという単語が使われているのも、そんな感じがします。
この曲はいろいろと話すことがありますが、先ずは、
僕はこの歌詞を読んで、またある意味ショックを受けました。
このアルバムにはショックを受けっ放しでしたが(笑)、
それだけ僕には「新鮮」だったのでしょう。
歌詞を思いっきり要約すると、こんな感じです。
僕はみんなのお話を聞きたいんだけど、僕は忙しいから、
「普通の人々」が平和に暮らしているのを見ていたい
さっきは「小市民」であるのがえらいと書いたんだけど、
いやはや、傲慢で高飛車な人ですよね(笑)。
しかし、僕はそれもまた「小市民的感覚」の延長と思いました。
というのも、ポールくらいの人になると、きっと誰もが、
「ポールはそんな人なんだろうな」と思うのではないでしょうか。
しかしポールはずっと「小市民」であり続けていたので、
ポールがこの歳でこう言ったところで「やっぱりか」と、
ある意味ほっとした、そんな感じがします。
ここではまた、
ポールが高飛車に出ることによって、
普通の人の生活が浮き彫りになり、その尊さを歌っている、
のかもしれません。
そして、ほんとうに見ていてくれるならうれしいし。
もうひとつこの曲は、上記のようなテーマであることもあって、
「環境への意識」がポールの中で、
そして人々の間で高まっていたことも表わしています。
今は「エコロジー的思考」は誰もがすることですが、
もう20年(もうそんなに経ったのか!)も前のこと、
たとえポーズでもそんな姿勢を示したことは、
それなりに意味があったことだと思っています。
この曲はですね、本音をいえば、かなり好きなんです。
特に、曲中で何度も出てくるキメのフレーズ、
Am→G→F→C→Dというギターコードがカッコいいし。
ちょっと切ない歌メロも、じわっとしみてきます。
そうそう説明を忘れていましたが、エコロジーといえば、
写真02のLPは英国盤で、
そのジャケットには古紙再生紙を使っていると聞いて、
わざわざ英国盤を探して買ったものです。
僕ものせられやすいですね・・・(笑)・・・
Tr12:
Motor Of Love
この曲は、直接的には、この前に亡くなった
ポールのお父さんに捧げられています。
そして同時に、ずっと一緒にいてくれた妻のリンダさんへの、
それまでの愛憎入り混じった複雑な時期を経た上で、
今でも一緒にいてくれることの感謝の念を表わしています。
thanks to youと繰り返し歌う部分が、とっても感動的。
当時、僕が知っている限りでは、ポール・マッカートニーは、
離婚したことがなかった唯一のロッカーでした。
リンダさんがいたから、ポールの数多の名曲が生まれたのは、
間違いのないことだと思います。
リンダさんはまさに、ポールのモーター。
時々鍵を投げ出そうと思ったこともあったけど・・・
この曲の歌詞を読んで、やはり当時僕はショックを受けました。
ポールがこんなにも個人の想いを反映させた歌って、
今まであっただろうか・・・
この曲には、ポールの「ソウル」を感じます。
曲調も古臭い3拍子のソウルバラードスタイルで、ドラムスは打ち込み、
曲の流れも一本調子だし、コーラスもいかにも古臭い響き、
曲や音に凝るポールにしてはシンプルすぎるくらいに響いてきます。
そして実際、
(you) touched me deep in my soul
という歌詞も出てきますが、言葉に鋭敏な感覚のポールが、
ソウルミュージックを意識しないでこの単語を歌詞に使うとも
思えないですし。
さらにはこの曲、わざと下手に歌っているようにも聞こえます。
ここのポールは、いつものようにカッコよくありません。
それは、妻への、父への素直な思いを表すのに、
そんなカッコつけたやり方は違うと感じたからではないかな、と。
下手でもいいから、素直に気持ちを表したい。
そして、下手だからこそ、気持ちがうんと伝わってくる。
こんなに素直な気持ちのポール、他にはない。
ソウルであることは、今だから見えてきたことですが、
でも当時、そんなことを漠然と感じながら聴いていました。
素晴らしい曲です、ほんとに、ほんとうに!
世界一下手っぴなソウルミュージックをどうぞ!
06
このアルバムのシングルレコードを集めてみました
Tr13:
Ou Est Le Soleil
これはCDのみのボーナストラックですが、
最初から聴いていたので、ここで取り上げます。
なんせ大好きな曲だから。
この曲のポールは、「サウンドクリエーター」と呼ぶのがぴったり。
重たい音で軽いフレーズを奏でるベースにのって、
無機質に響く乾いた重たいサウンドの中で、
ポールが、フランス語の歌詞を無邪気に繰り返して歌う。
歌はあるのでインストゥルメンタルではないんだけど、
でも、インスト部分がより印象的な曲。
歌詞は、フランス語が出来る友達にかつて聞いたところ
太陽はどこへ行ったの?
頭の上だよ
探してごらん
というものだそうです。
前の曲で真面目に自分をさらけ出したことの照れ隠しのように、
さらりとかわすカッコよさがある曲ですね。
そして僕は、Tr11があるために、当時からずっと
環境保護を訴えたい曲かな、と感じていました。
太陽がなくなったら・・・
良いかどうかは別として(あざといという声もあったような・・・)
ポールのその辺の嗅覚の鋭さは、さすがですね。
余談、
写真06にこの曲の12インチシングルレコードが写っていますが、
実は、今回この記事のために写真を撮るのに出してきた今日まで、
それを買っていたことを忘れていました・・・
でも、12インチを買うくらい、やっぱり当時から好きだったんです!
現行のCDには3曲のボーナストラックが入っているので、
それもさらりと紹介します。
Tr14:
Back On My Feet
Once Upon A Long AgoのB面曲ですが、
これが記念すべきコステロとの最初の共作曲。
オールディーズ風の素軽いロックンロールで、良い雰囲気。
最初はその事実を知って少し引きましたが、でも最初から好きで、
コステロだからといって毛嫌いしているわけではないことを
ここでは敢えて言わせてください(笑)。
Tr15:
Flying To My Home
これは
My Brave FaceのB面曲、ドゥ・ワップのパロディで、
かなり間の抜けたポールの歌い方がひたすら楽しい。
この曲もある意味ショックを受けましたね、当時。
アルバムの色にはそぐわない曲、というか、
アルバムで硬質に攻めすぎたうさ晴らしをB面でやってみた、
という感じもしますが、この楽しさは反則ですね(笑)。
しかも歌メロもいいし、B面曲の魅力も再発見した曲。
なお、写真06の右上がその12インチシングル。
Tr16:
Loveliest Thing
これは
Figure Of EightのシングルB面曲。
アメリカン・スタンダード風のゆったりとした曲で、
ポールの趣味がよく表れた曲。
そして、ポールのお父さんが好きだった感じの音楽、かな。
余談ですが、そのシングルA面曲は、
アルバムとはまったく違うミックスになっています。
さて、このアルバムを記事にしたのは、理由があります。
Tr12:
Motor Of Loveについてもう一度触れますが、
それは、ポールが、亡くなった父に捧げた曲。
昨日4月17日は、僕の父の命日、今年は三回忌でした。
一昨日、遠征先でそのことを考えていて、ふと、
その
Motor Of Loveが頭に浮かんできて、
青空を見上げて、札幌に帰ってから記事にまとめて命日に上げよう、
と思いました。
歌詞に、こんな一節があるからです。
heavenly father look down from above
そして、一昨年から、この曲は、僕にとって
また別の大きな意味が加わったことになりました。
しかし、これだけの文章になってしまい(笑)、
昨日のうちには上げることが出来ませんでした。
というわけで、今回はとりわけ個人的なことになりましたが、
長々とお読みいただき、ありがとうございます。
最後に繰り返し強調させていただきますが、このアルバムは、
「名盤」というより「傑作」という言葉がふさわしいくらい、
ほんとによく出来ていて、音楽としてじっくりと向き合える
充実した作品になっています。
07
2009年4月17日の夕景