HEARTBEAT CITY カーズ

guitarbird

2016年07月14日 21:09

01


HEARTBEAT CITY The Cars
ハートビート・シティ カーズ (1984)

今日は久し振りアルバム記事です。
80年代洋楽を聴き育った者としては忘れられない1枚。

ザ・カーズを僕はこの中の曲You Might Thinkで知りました。
いつものように「ベストヒットUSA」で観て聴いて、
一発でノックアウトされました。

次のシングルMagicもそこそこ以上によく、そしてさらに次の
Driveは今となっては名曲と言われるほどのバラードでよかった。

でも僕は当時LPを買わなかった。
タワーレコードをはじめ店頭で何回も手に取りはしたのですが。

簡単な理由がふたつ、ひとつめは財力。
小遣い月4000円くらいでは買いたいLP全ては買えないですからね。

もうひとつはビデオクリップ。
当時SONYのビデオデッキもちろんβをわが家で初めて購入。
ビデオクリップを録画して観て聴くことも楽しみのひとつになっていて、
LPで音だけ聴くより映像観て聴く方がいいという曲もあった。
You Might Thinkはその典型的な例でしょうね。

アートワークも僕の好みじゃないかな。
ただ僕は、音楽がよくてもアートワークがよくないから買わなかった
という例はほとんどないので、やっぱり音楽が引っかかったのでしょう。

さらにいえば、僕は高校生の頃からいわゆる「アメリカンロック」が
大好きになっていましたが、カーズはアメリカ人なのに
「アメリカンロック」的なものを感じなかった。
ニューウェイヴの影響を受けているとは当時から言われていましたが、
もっと土臭いのが好きだったようです。

そしてもうひとつ、当時、どうも買うには至らない何かがありました。
当時はそれが分からないまま時が過ぎ、
やがてアルバムもヒットチャートから落ち、僕の中では終わりました。
時代はCDになり、大学生の頃、懐かしくてCDを買い、
そこで初めてこのアルバムを聴きました。

さらに後になって、それが何か、なんとなく分かりました。
簡単にいえば、曲にメッセージ性を感じなかったからでしょう。
ノリがよく歌メロもよくて楽しい音楽だけど、それ以上ではない、と。
僕はビートルズ特にジョン・レノンの影響で、
曲には何某かのメッセージ性を求めていました。
ブルース・スプリングスティーンのDancing In The Darkのように、
ただのラヴソング以上に人間の心の中を描いた曲が好きでした。

カーズにはそれを感じませんでした。
でもそれは彼らが意図するところだったのだと思います。

先月、弟が、カーズのアルバム6枚を紙ジャケットで再現した
ボックスセットを買いました。
それまでこれの他に1枚目のデラックスエディションと2枚目を
買って聴いていましたが、どちらも、まあいいかな、くらいで、
カーズ大好きとまではなりませんでした。
でも今回、弟が買ったボックスセットを通して聴いて初めて、
カーズいいかも、と思いました。
通して聴いて、カーズにメッセージ性を感じないのは
彼らの意図するところだったと思ったのでした。

ノリがよくて楽しければそれでいいと考え、
それに徹しているのがカーズというバンドなのでしょう。

僕は僕で、昔ほど聴くアルバムすべての歌詞を具に追いつつ
歌おうというほどの意欲がなくなっていて、そうなると
単純にサウンドが気持ちいい音楽も聴けるようになりました。
だから今、カーズいいかも、と思ったのでしょう。
そうなるとこのアルバムはいい曲がたくさん入っていて聴きやすい。

もちろんメッセージ性云々は聴く人それぞれですが、
僕にとってのカーズはそういう存在だった、いや存在だ、
という話でした。

このアルバムはカーズで最も売れました。
シングルはYou Might Thinkが7位、Driveが3位と
2曲のTop10ヒットの他Magicも12位を記録。
アルバムはビルボード誌アルバムチャート最高3位。
「ベストヒットUSA」がチャートを利用していた今はなき
ラジオ&レコーズでは年間No.1になったそうです。

プロデュースはかのロバート・ジョン・マット・ランジ。
ということを僕は当時は知らず、デフ・レパードのHYSTERIAが
ヒットした時に遡って知りました。
カーズは4枚目まではクイーンで有名なロイ・トーマス・ベイカーが
プロデュースしていましたが、1枚目を最初に聴いた時、
コーラスワークと音の厚みにクイーンぽさを感じたものでした。

カーズは1枚目から時代の先を行く音と言われていたそうですが、
このアルバムが大ヒットした次のアルバムが、まあ言ってしまえば
期待外れに終わり、自然消滅のような形で解散。
小林克也さんが「あのカーズもついに時代に追いつかれた」
と言っていたのを、今でも強烈に覚えています。
やはりこのアルバムが最大の輝きでしょうね。



02


1曲目 Hello Again
これは確か4枚目のシングルカット曲だったと思いますが、
もうその頃は僕の気持ちも切れていたし、そこで覆すほどの
インパクトも受けなかった、だからLPを買わなかった。
ほの暗いけれど軽快、曲は古臭いけれど音は斬新という
まあカーズらしい曲でしょうね。
イントロのコーラスがやっぱりクイーン風ではあるかな。


2曲目 Looking For Love
ヴァースの部分はちょっとだけアフリカっぽいリズムになっていて
そういう部分でも時代の先を行っていたのかなと今にして思う。
"Here she comes"というコーラスが耳について離れないのですが、
歌メロではなくコーラスが、というのが面白いところ。


3曲目 Magic
2枚目のシングル曲で中ヒット。
カーズはほんとシンプルな曲を聴かせるのが上手いと思う。
これなんてA-D-E、I-IV-Vというコード進行のギターが
ひょうきんなリック・オケイセックの声の後ろで気持ちよく流れ、
ギターキッズにとっても嬉しい曲でした。
そしてやっぱりコーラスワークが聴きどころ、楽しい。
コーラスの点ではビーチ・ボーイズの影響も大きそうです。

この曲はビデオクリップを




 Magic
 The Cars

リック・オケイセックが水の上に立ってる。
透明の板の上にいるのは見てすぐに分かりましたが、
そうしたチープさもこのバンドらしさなのでしょうね。


4曲目 Drive
今となっては必殺キラーチューンに挙げられるバラード。
いや、ほんとに、すごくいいですね、好きです、と今は言える。
でも高校生当時、この曲は好きになれなかった。
僕が素直じゃない、はい、それはもちろんあるとして、
やっぱりこれは「ただのラヴソング」に聴こえたのでしょう。
でも「失恋ソング」と捉えるとこれはかなりいい、
ということに僕が実際にその後失恋してから気づきました。
今はそういう思い出がまさに走馬灯のようによみがえる曲かな。
そしてこれを歌うのはベースのベンジャミン・オール。
曲はリック・オケイセックが作っているのですが、正直いえば
「へたうま」系のベンジャミンが歌うことでこの曲が持っている
痛々しさのようなものがリアルに感じられるのでしょうね。
もちろん高校時代にはそんなことも気づかなく、ただ単に
「あまりうまくない人」としか思わなかった。
ベンジャミン・オールに歌わせたのは作戦勝ちですね。
そしてベンジャミン・オールは2000年に癌で亡くなった、
ということが、この曲を聴くと重くのしかかってきます。




 Drive
 The Cars

メンバーがマネキンのように動かないシーンが印象的。
もう10年以上経つけれど、やっぱりこのクリップを観ると、
ベンジャミン・オールへの哀悼の念が湧いてきますね。


5曲目 Stranger Eyes
カーズのキーボードは80年代サウンドらしいけれど、
そのらしさが良い面に強く出ているように感じます。
うるさすぎない、適材適所、雰囲気を壊さない。
そしてこの曲はやっぱり当時のUKにむしろ近いサウンドですね。



6曲目 You Might Think
やっぱりこの曲は思い出も思い入れもたくさん。
詳しくはこちらの記事をお読みいただければと思いますが、
曲自体はオールディーズなのにサウンドがモダン過ぎるという、
カーズの斬新な魅力が詰まった名曲であり傑作ですね。
高校生でも聴き取りできた簡単な歌詞もいい。
で、3番の最初"You might think I'm delirious"というくだり、
"delirious"が聴き取りできたのはプリンスのおかげ、と、
ここでまたプリンスにも思いを馳せるのでした。
もしかして曲を作ったリック・オケイセックは
プリンスのDeliriousが気に入っていたのかな、と。

もちろんビデオクリップも。




 You Might Think
 The Cars

イントロ10小節目から入る下降するベースラインが好きで、
やっぱり僕はベースに耳がいってしまうことを、
そろそろ自覚し始めた頃でしたかね。

正直、今ならストーカーとか言われそうですよね。
ベッドにまで入ってくるのだから・・・
ただ当時はもっと時代がおおらかで、僕はこれ
100%ユーモアとして感じることができました。
今なら真似する人がいるからダメとか言われるのかな・・・

あとこのクリップの女性が当時のクラスのKさんに似ていると、
「ベストヒットUSA」で流れた翌日にクラスメートの一部で
盛り上がりましたが、僕は似てると思わなかったなあ。

それより僕は、ギターのエリオット・イーストンが、
別の男子生徒に似ていると思いましたが、口には出さず。
エリオットが左利きであることがなんだか衝撃的でした。
そしてこの曲の最後、"All I want is you"の"you"という声に
かぶさる軽く歪んがギターの音が最高にいい。


7曲目 It's Not The Night
カーズはサウンドはからっとしていても曲には湿り気がある、
というのも特長でしょうね。
それらが違和感なく成り立っているこのセンス。
そうか、僕にはそのセンスがなかったんだな(今もか・・・)
そして、きらびやかなサウンドだけどバンドらしいしっかりとした音。
カーズの魅力のひとつでしょうね。


8曲目 Why Can't I Have You
この曲は5枚目のシングルカットで最高33位。
これまた湿り気のある哀愁系ともいえるもので、
ラジオでフルではなくちょっと聴いて、結構いいなと思い、
CDを買って聴いてさらによかった、そんな曲。
これもやっぱりUKの音っぽく感じられますね。
今にして、アメリカ人でそれが出来たのはすごかったのでは、と。


9曲目 I Refuse
アルバムとして聴くとここから2曲が弱いですかね。
シングルカットした曲がこの前で終わる上に、
シングル曲とそうではない曲の差が大きいような気も。
まあでも最後までずっと(意味が)重たい曲が並んでいると
疲れるし、楽しく聴ける音楽であるならこれでいいかな。
と、「アルバム至上主義者」の戯言・・・


10曲目
まあでも最後はアルバム表題曲が控えているのですが、
こうして聴くと意外と湿り気のある哀愁系の曲が多いことが分かり、
それもカーズの魅力だったのだと気づかされます。
もしかして僕は当時それが苦手だったのかな、そんな気がする。
哀愁系の洋楽は何か違う、と思っていたような。
この後でワム!のCareless Whisperを聴いて激しくそう思ったっけ。
今はもちろんそんなことはないですけどね。
カーズに戻って、これは表題曲だけあってアルバムの流れを
劇的にダイジェストしているといった趣きですね。
先ほど「メッセージ性を感じない」と書いたけれど、
最後にこの重たい曲、何か引きずられるものがある。
そう考えるとやっぱりメッセージ性はあるんだな。
アメリカが楽しいだけではなくなってきた、と感じていたのかも。




リンクは左が6枚組ボックスセット、右がアルバム単体。

このアルバムより前の4枚、ボックスセットを買ったことで、
熱心には聴かないかもだけど、ちょくちょく聴いてゆこうと思う。

最近、休日にひとりで昼食を食べる時と洗濯する時、つまり
じっくりと音楽と向き合うのではなく音楽をかけておきたい時は、
ロック系のCDを聴くことが多くなりました。
先日のフィル・コリンズもそういう時には選びたい音楽ですね。
人によりそういう聴き方はどうかと思われるかもですが、
いろんな聴き方があっていいのではないかと。
そう、いろいろな聴き方があっていい、ということ自体、
僕が昔は思わなかった、否定していたことなので、
そう思えるようになったのは僕にも「成長」なのです。

と最後は多少大袈裟にしめてみました(笑)。


最後は3ショットにて。

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