01
THE ART OF McCARTNEY
THE SONGS OF PAUL McCARTNEY
SUNG BY THE WORLD'S GREATEST ARTIST
ジ・アート・オヴ・マッカートニー (2014)
ポール・マッカートニーの曲を多くのアーティストがカヴァーした
トリビュートアルバム2枚組が出ました。
僕がこの秋いちばん楽しみにしていたCDです。
ビートルズ時代のポールが(主に)作った曲とソロ時代の曲、
国内盤では合わせて35曲が収録されています。
1曲ずつ、一組ずつ紹介するので詳しくは後ほど。
このプロジェクトの話は夏頃から聞いていました。
選曲は、各々参加アーティストに任せたのか、逆にプロジェクト側で
この人にはこの曲と進めたのかは分からないですが、とにかく
選曲が、気持ちいいくらいにその人にぴったり。
ほとんどのアーティストがアレンジはオリジナルのまま。
多少のパッセージを加えたり、その人らしく歌ってはいますが。
そしてキィもほとんどがオリジナル通り。
ポールの曲はそのキィだからこそ生きる、という証明でもあり、
ポールへの最大限の敬意の表れでもあります。
そして何よりポールのファンにはうれしい。
演奏は多くがプロジェクト側のバンドで行っており、
ポールのバックバンドでキーボードのウィックス・ウィケンズ、
ベースのエイブ・ラボリエル・ジュニアなどが参加しています。
長いのでもう進めます。
なお、曲名の横の西暦はそのオリジナルが発表された年です。
02
Disc1
1曲目 Maybe I'm Amazed (1970)
Billy Joel
冒頭を飾るにふさわしいソロ1枚目からの曲、そしてビリー・ジョエル。
ビリーの新録音が聴けるというのもうれしい、ピアノもビリー。
これは、ポールもビリーも聴く人にはおよそイメージ通りの出来。
でも、ポールがこの曲を作った頃はまだ30歳にもなっておらず、
一方今歌うビリーは60歳を過ぎて、曲に貫禄がついていますね。
寂しいけれど涙は出ない、という感慨。
そしていろいろな女性の姿がビリーの頭を去来した・・・
初めての人だったかもしれない。
コーダの部分にちょっとだけビリー独自のパッセージがあるのがいい。
2曲目 Things We Said Today (1964)
Bob Dylan
なんとボブ・ディラン!
1964年の曲を選んだのは、ポール=ビートルズとディランが
初めて会った年であり、ディランにも思い入れが深いのでしょう。
意外にも歌メロがほとんどオリジナルのまま、もちろんディランらしい
節回しで歌うのですが、オリジナル同様に歌おうとするディランが、
なんというか、いじらしいというか、どこかかわいらしい(笑)。
【追記】この曲でディランはキィを下げて歌っていました。
一緒に歌ってみて気づきました、お詫びして訂正いたします。
3曲目 Band On The Run (1973)
Heart
メドレー形式のこの曲、バラードありロックンロールありフォークありと、
ハートをダイジェストしたような選曲。
Bメロの"If I ever get out of here"の部分のロールする感覚が、
あらためてポールのロッカーとしてのセンスの良さを感じます。
そして最後の部分の盛り上がりは温かみに満ちています。
4曲目 Junior's Farm (1974)
Steve Miller
ポールの旧友でFLAMEIN PIEにも参加したスティーヴ・ミラー。
アメリカンテイストが濃いこの曲を、アメリカ代表として歌います。
ギターソロが完全コピーで、あの「高速三連符」もそのまま再現、
スリリングさもそのまま、さすがスティーヴ!
5曲目 The Long And Winding Road (1970)
Yusuf (Cat Stevens)
キャット・スティーヴンスは、少なくとも僕が洋楽を聴き始めてからは
第一線で活躍していたわけではない、でもそんな彼の参加はうれしい。
そんな彼が歌うのが、ポールがジョンにあてた「ラヴレター」のこの曲、
古い友だちに久しぶりに会ったような感激を受けました。
この曲が出た頃は、キャット・スティーヴンスもデビューしたての頃。
そういう思いも詰まっているのでしょうね。
シンガーソングライターらしくギターが前に出た演奏もいい。
6曲目 My Love (1973)
Harry Connick, Jr.
キィを変えている最初の曲、ハリー・コニック・ジュニア。
元々ジャズヴォーカルっぽい雰囲気がある曲なので、
これはこれでまたいいですね。
7曲目 Wanderlust (1982)
Brian Wilson
ブライアン・ウィルソン、ポールのライヴァルと言われた人。
彼がポールのどこが好きか、RUBBER SOULを初めて聴いて
何に心を動かされたか、この曲を選んだことでよく分かった気がする。
最後の部分でオリジナルにはないパッセージを入れているのは、
ライヴァル及び作曲家としての強い矜持、もちろんそれがいい。
僕がいちばん好きなポールの曲を、ブライアン・ウィルソンが
歌ってくれたことは、僕にとっても最高の幸せ。
8曲目 Bluebird (1973)
Corinne Bailey Rae
コリーヌ・ベイリー・レイは今回、僕が知っている中では最も若い人。
幸せのようでどこか不安、そんな朝を迎えたこの曲に、
けだるい雰囲気の彼女の歌い方はよく似合う。
ところで、そうだ思い出した。
コリーヌ・ベイリー・レイは2枚目の国内盤ボーナストラックで
My Loveを歌っていてそれがとってもいいらしいんだけど、
僕は輸入盤を買ってしまい、まだ聴いたことがない。
そろそろブックオフで安く買えるかな・・・無性に聴きたくなってきた。
9曲目 Yesterday (1965)
Willie Nelson
ウイリー・ネルソンの説得力にはもう黙って聴くしかない。
いい意味で、この歌にはそれ以上書くべき言葉が浮かびません。
ヴァースを一度増やしハーモニカのパートに当てているのがまたいい。
それにしても、このような曲を20代前半で書いていたポールって。
10曲目 Junk (1970)
Jeff Lynne
ジェフ・リンのこれが泣けました。
僕はジェフ・リンというと、今はどうしても
ジョージ・ハリスンを思い出してしまう。
ジョージの人生の最後に真の友人となり、ジョージの遺作の
リリースに尽力、しかしそのことをおくびにも出さない真面目な人。
ポールが「思い出なんてくずみたいなものだ」と歌うこの曲。
ジョージとの思い出を、ポールの曲を借りて表現しているようで。
しんみりとした曲だけ、余計に涙腺を刺激されました。
11曲目 When I'm 64 (1967)
Barry Gibb
ビー・ジーズのバリー・ギブがこの曲を歌うのは、
家族の大切さを歌ったこの曲を通して、64歳まで生きることなく
この世を去ったた弟たち、モーリス、ロビン、さらにはアンディへの
思いがにじみ出ているようで胸にしみてきます。
でも、それを敢えて大きなユーモアで包んで歌う、そこがまたいい。
キィを変えているけれど、アレンジはオリジナルのイメージ。
コーラスはビー・ジーズ風でもありますね。
なお、原曲の表記は"Sixty-Four"ですが、
ここではこの盤の表記に従っています。
12曲目 Every Night (1970)
Jamie Collum
ジェイミー・カラムはまったく知らない人でしたが、調べると
1979年英国生まれのジャズミュージシャン、マルチプレイヤーとのこと。
なるほど、いい線ついてくる選曲だ。
この曲はとりわけ英国の香りが強いと思うし。
13曲目 Venus And Mars / Rock Show (1975)
Kiss
キッスずるい(笑)、2曲歌ってる、なんて。
ただ、前半はポール・スタンレー、後半はジーン・シモンズと
一応、メインヴォーカルは分けています。
この曲の当時は、ポール・マッカートニーが解散後の混迷から
抜け出して再びトップに返り咲き、人気絶頂の中で全米を
コンサートで回りファンが大熱狂した、という頃。
キッスのこの曲は、そんな人々の喧騒をよく表していますね。
可笑しいのは、中間部の"Kitty"と繰り返して歌うところ。
妙に感情がこもっている、その響きだけも面白いのですが、
キッスはハローキティとコラボした商品が出ていますよね、
どうしてもそれを思い出してしまい可笑しかった。
なお、キッス名義ですが、演奏はプロジェクト側のバンドで、
ポール・スタンレーとジーン・シモンズはヴォーカルのみです。
14曲目 Let Me Roll It (1973)
Paul Rodgers
ポールが本格的R&Bを彼なりに再現したこの曲を、
ポール・ロジャースは本格的なR&Bに仕立て上げている。
カッコいい、ひたすらカッコいい、もうそれだけ!
まるでポールがポールのために作曲したかのよう。
て、それだけを文字通り解釈すると間違いではないのだけど・・・
昨年の来日公演で演奏した中でも特に印象的だったこの曲、
今はもう昔よりも人気も上がってきているかな。
15曲目 Helter Skelter (1968)
Roger Daltrey
ロジャー・ダルトリーは恐いヴォーカリストですよね。
彼自身はクスリをまったくやらないように健康志向の人ですが、
彼の歌には、日常に隠された狂気が感じられる。
そうなるともう、歌うのはこれしかないでしょ。
声が破裂してますね、それもすごい。
最後のヴァースの"Do you do you do you don't you"や
"Tell me tell me tell me tell me"と執拗に繰り返して歌うころは、
ぞくぞくっときます。
16曲目 Helen Wheels (1973)
Def Leppard
英国代表デフ・レパードは歌のみならずバンド全員参加。
ということはジョー・エリオット、フィル・コリン、ヴィヴィアン・キャンベル、
リック・サヴェージ、リック・アレンが楽しみながら演奏している!
と思うだけでファンとしてはうれしくなりますね。
いい意味で深刻ではない選曲も彼ららしくて好感が持てます。
ところで、そうか、この曲の歌詞には"Liverpool"と
"West Coast Sound"が出てくるんだ、今にして思った、
それもポールらしいところだ。
17曲目 Hello Goodbye (1967)
The Cure featuring James McCartney
キュアーはMTV時代によくかかっていたのですが、申し訳ない、
CDではまともに聴いたことがないのです。
でもいつか聴いてみたいと思っているバンドではあります。
そしてジェイムス・マッカートニーはポールの長男。
ロバート・スミスの艶っぽい歌い方はこの曲の深層心理をえぐるよう。
声にエフェクトをかけているのは、サイケの時代っぽいようで、
キュアーらしくもある、なかなかに効果的。
18曲目 I Will (1968)
Yosui Inoue
日本盤ボーナストラックには井上陽水のこれが収録されています。
ポール側が、日本盤ボーナストラックを入れるに際し、日本を代表する
アーティストとして井上陽水を指名し、彼も快く引き受けた、
というネット上の記事を見ました。
井上陽水は、この曲を楽しげなカリプソに仕立てました。
でも、正直言うと、僕のこの曲のイメージとはまるっきり違う。
とだけ話してここは終わらせていただきたいと思います。
03 今朝もコゲラが近くで撮れた